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コラム

副作用を抑えられる!最新バイオ医療によるペットのガン治療

古池 彩乃
古池 彩乃 シェリー編集部

ペットの平均寿命が伸びるにつれて、ペットがガンになる可能性も高まってきています。実は、10歳以上の犬の死因の第一位はガンで、約50%の犬がガンで亡くなると言われています。

そして、現在では医療の発展により、ペットにも人間と同じように様々なガン治療を受けさせることができるようになりました。また、抗ガン剤や手術などの従来の治療法に加え、「バイオ医療」と呼ばれる最先端の治療法の研究も進んでいます。

今回は、大切なペットがガンになってしまった時のために、ガンのこれまでの治療法と最先端の治療を見ていきます。予め知っておくと、いざという時に病院での選択肢が増える、そんな情報を提供していきたいと思います。

ガン細胞とは?

ガン細胞とは一体何なのか?
ガン細胞は、通常の細胞が分裂する際に、正しく分裂できなかったときに生まれます。正しく分裂できなかった細胞は普通は死んでいくのですが、そのまま正しく分裂できなかった細胞が細胞分裂を繰り返し、増殖してしまうことがあります。私たちはこの細胞のことを「ガン細胞」と呼んでいます。

ガン治療には、このようなガン細胞の増殖を止めたり、物理的に細胞を取り除くなど様々な方法があります。

冒頭でも申しましたが、現在では医療の発展により、ペットにも人間と同じように様々なガン治療を受けさせることができるようになりました。さらに、抗ガン剤や手術などの従来の治療法に加え、「バイオ医療」と呼ばれる最先端の治療法の研究も進んでいます。

代表的な3つのガン治療法

代表的な3つのガンの治療方法とは

手術

外科手術により、悪性腫瘍を取り除きます。

放射線治療

脳や心臓など、手術には不向きな場所にできた腫瘍、手術で排除するには大きすぎたり、取りきれない腫瘍ができてしまった場合、放射線治療を行います。放射線であるX線は、細胞のDNAに傷をつけることができ、細胞の分裂を防ぎます。これを利用し、ガン細胞を傷つけることでガン細胞の増殖を止めることができます。

薬物療法

ペットへの薬物治療は、抗ガン剤がもっとも一般的です。薬物治療と言われてピンとこなくても、抗ガン剤は聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。手術と併用して用られることが多い療法でもあります。

薬物療法で用いられる抗ガン剤とは?

薬物療法で用いられる抗ガン剤とは?
先ほどご紹介した薬物療法に用いられる薬の一つが「抗ガン剤」です。抗ガン剤は化学合成によって作られます。「ガン治療」と聞いたときにまず最初に浮かぶのは、副作用によって髪が抜けたり、治療に大きな精神的、肉体的苦痛を伴う、ということではないでしょうか。この副作用は抗ガン剤の影響によるものです。

なぜ副作用が起きるのか?

抗ガン剤は、細胞の分裂過程に働きかけ、細胞の増殖を止めたり、細胞が成長するのに必要な物質の分泌を抑えるなどして、細胞を殺すために作用します。この働きは、ガン細胞だけでなく、正常な通常の細胞にも作用します

そのため、細胞分裂が頻繁に行われている、骨髄や口腔内の粘膜、毛根などの細胞も影響を受けてしまい、髪の毛が抜けたり、口内炎ができる、白血球が減るなどの副作用が起きるとされています。

抗ガン剤によるペットの治療

人間の抗がん剤療法と比べると、ペットなどの動物の場合、家族と一緒に過ごすことを重視し、治療計画が立てられます。つまり、抗がん剤治療を受けていたとしても出来るだけ副作用を出さないようにするため、薬の量を人間よりも少なし、いつも通りの生活を送れるようにすることが多いようです。

しかし、抗ガン剤を用いる以上、全く副作用が出ないとは言い切れず、吐き気や食欲不振、白血球・血小板の減少などの副作用が起きる可能性はあります。

最先端の治療!バイオ医療とは?

最先端の治療法であるバイオ医療
バイオ医療で用いられる薬をバイオ医薬品と言います。これはバイオテクノロジーを使って作る薬の総称です。

バイオテクノロジーは、バイオロジー(生物学)とテクノロジー(技術)を合わせた言葉で、遺伝子組み換えや細胞培養などを利用し、生物をもとにした副作用の少ないバイオ医薬品を作ることができます。

抗体医薬品

バイオ医薬品の中には、「抗体医薬品」という薬があります。抗体医薬品は、ガン細胞などの表面にある目印にのみ結合し、その細胞を攻撃する作用を持っています。

抗ガン剤とは違い、目印をもつ細胞だけを攻撃するので、正常な細胞が攻撃される可能性が低く、副作用が起こりづらいのです。そのため、抗ガン剤にとって代わることができる新たな医薬品として注目されています。

分子標的薬

「分子標的薬」もバイオ医薬品の一つです。分子標的薬は、ゲノム・分子レベルでがん細胞の特徴を認識し、がん細胞の増殖や転移をおこなう特定の分子だけを攻撃します。

抗体医薬品の中には分子標的薬に含まれるものもあり、抗体医薬品と同じく正常な細胞が攻撃されないため、副作用が起こりにくくなっています。

バイオ医薬品はペットには使われていない

バイオ医薬品はペット適用外
バイオ医薬品は生物に作らせているため、大量生産ができずコストがかかります。近年の医療の進歩により、コストは下がりつつあり、一般的にも用いられるようになってきたとはいえ、まだまだ発展段階で、ペットに使用できるバイオ医薬品はまだ一般的ではありません。

ペット向けのバイオ医薬品の研究

とはいえ、現在、ペット向けのバイオ医薬品の開発は次々に進められています。例えば、以下のような取り組みや研究が行われています。

免疫チェックポイント阻害薬の開発

2017年には北海道大学、東北大学および扶桑薬品工業で構成された研究グループが、犬のガン治療に有効な免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1抗体)の開発にはじめて成功したことを発表しました。

腫瘍はPD-L1という物質を発現し、PD-1と結合させることで、免疫の腫瘍に対する攻撃力を衰えさせます。免疫チェックポイント阻害薬はPD-L1とPD-1の結合を阻害し、免疫の腫瘍への攻撃を活性化させることができるそうです。

これまで人の免疫チェックポイント阻害薬はありましたが、ラットから作られていて、犬の体には合いませんでした。しかし、この研究によって、犬の体にも合う免疫チェックポイント阻害薬が開発されたのです。免疫チェックポイント阻害薬は、悪性黒色腫をはじめとした犬の難治性腫瘍の治療薬として期待できるということです。

日本医療研究開発機構 プレスリリース
https://www.amed.go.jp/news/release_20170825.html

抗体医薬テクノロジーによる犬アトピー性皮膚炎の治療薬開発

医薬品会社のゾエティスからは抗体医薬テクノロジーを用いた犬アトピー性皮膚炎の治療薬が発売されており、2021年には猫の骨関節炎痛のバイオ治療薬の販売を計画しているそうで、近いうちに動物病院でもバイオ治療薬が登場することになるかもしれません。

ゾエティス サイトポイント特別セミナーのご案内
https://zoetis-seminar.com/

このように、ガン治療だけでなく、バイオ医薬品は様々な病気に対して開発が進められています。

ペットのガン治療の未来

ペットに対するバイオ治療と未来
最初に述べたように、10歳以上の犬の約半数がガンによって亡くなっていると言われています。副作用が少ない治療を選択するとは言っても、ペットにとっても飼い主にとっても辛い戦いになることは否めません。このため、抗ガン剤による治療を選択しない飼い主も多いそうです。

ですが、もしバイオ医薬品が一般の動物病院でも使われるようになれば、副作用がほとんどない治療を行うことができます。

現在、世界中でバイオ医薬品をペットに使えるようにするため、最先端の研究が行われています。万が一、愛するペットが重い病気を患ってしまっても、元気になることができる世の中も遠くはないかもしれません。

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