【獣医師監修】もしかして治療が必要?犬のくしゃみで考えられる疾患

愛犬がくしゃみをしているのを見たことがありますか?おそらくほとんどの方が見たことがあると思いますが、大抵のくしゃみは単発で終わります。

しかし、一日に何度もくしゃみをしているのを見れば、「おや?」と思いますよね。春先では「犬にも花粉症はあるのか」などの質問はよくいただきます。

今回は犬のくしゃみで考えられる疾患について解説します。

鼻腔の異常

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まず、くしゃみの原因として考えるのは鼻腔の異常でしょう。人間でも、アレルギーや風邪によってくしゃみが出ることはよくあります。

年齢やワクチン接種歴などによって考えられる原因は多少異なりますが、犬のくしゃみの原因になる鼻腔異常は以下のようなものがあります。

鼻炎

【症状】
鼻汁、くしゃみなど。
【原因】
細菌、ウイルス、真菌などの感染、アレルギー性(ハウスダスト、花粉など)による。
【備考】
アレルギー性鼻炎が疑われる場合、掃除機や空気清浄機の使用、フローリングでの飼育などによって症状が軽減されることがある。

犬伝染性喉頭気管炎(ケンネルコフ)

【症状】
咳、鼻汁、くしゃみ、えずきなど。進行すると元気消失、食欲低下も見られる。
【原因】
犬アデノウイルスⅡ型、犬パラインフルエンザウイルス、ボルデテラ菌などの微生物の感染による。
【備考】
細菌性肺炎が合併症としては多く、この場合は命に関わることもある。ウイルスについては混合ワクチンで予防が可能。

鼻腔内腫瘍

【症状】
一般的に多い初期症状はくしゃみ、片側性の鼻汁排泄、鼻出血、流涙、瞬膜突出など。進行すると顔面の変形、呼吸困難などが見られる。
【原因】
扁平上皮癌、線維肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、腺癌、悪性黒色腫などが見られる。
【備考】
長頭種や都会犬に多発傾向があると言われている。

鼻腔内異物

【症状】
突然のくしゃみ、鼻汁、鼻出血、いびきなど。重症例では睡眠呼吸障害、睡眠時無呼吸発作を認め元気消失や食欲低下が見られることもある。
【原因】
植物の種、草などが多い。異物は外鼻腔から混入することもあるが、口に入れたものが鼻咽頭側に逆流して鼻腔内に混入する例も多い。
【備考】
症状は劇的で、見逃されると睡眠に影響することもあるため注意が必要。

口腔内疾患

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意外かもしれませんが、くしゃみを主訴に来院する犬で多いのは口腔疾患です。主に歯周病によるものが多いのですが、3歳以上の犬の80%以上が何らかの歯周病を患っていると言われています。

歯周病の原因となる歯垢と歯石の除去には全身麻酔が必要なので、できれば日頃のオーラルケアで予防したいところです。

歯周病

【症状】
口の痛み、口臭、くしゃみ、鼻汁、眼の下の腫れや膿汁排出など。
【原因】
歯石の沈着および歯石の周りでの細菌の増殖によって歯周組織に炎症が起こる。
【備考】
犬の唾液はヒトのものよりややアルカリ性で、歯垢が歯石に変化するのが早い(2〜3日と言われている)。よって歯みがきは毎日行うことが重要。

病気ではないくしゃみの原因

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くしゃみの原因は病気によるものだけではありません。生活環境が変わったなど、何かきっかけがある場合もあります。

いずれも鼻を刺激するようなものですが、人間には気付かないレベルの刺激も犬のくしゃみの原因となり得ます。愛犬がくしゃみを連発するときは、思い当たる節がないか確認してみてください。

また、病気によるくしゃみとの違いとして、鼻汁や鼻出血を伴っているか、何日も続くかなどのポイントにも注目しましょう。

芳香剤

お香、香水、アロマディフューザーなどを自宅で使用している方もいるかと思います。

犬の嗅覚はヒトの100万倍と言われており、我々にとってはわずかな香りでも、愛犬にとっては強すぎる可能性もあります。室内のニオイが気になる場合は、窓を開けて換気をするなど愛犬への配慮が必要です。

香辛料

特にキッチン周りでは、胡椒や各種スパイスなどの香辛料のニオイが残っていることがあります。胡椒でくしゃみをするとは古典的ですが、芳香剤と同様、犬にとっては強いニオイ刺激となることでしょう。

愛犬がくしゃみを連発しているときは、料理で何か香辛料を使用しなかったか確認してみてもいいかもしれません。

殺虫剤

害虫などに対処するために殺虫剤を室内で使用する機会もあると思います。殺虫剤の成分は節足動物にしか効果がないため、通常の使用方法で愛犬に中毒症状が現れることは少ないでしょう。

しかし、殺虫剤のニオイに反応してくしゃみが見られることがあります。換気扇を回す、空気清浄機を使用するなどの配慮は必要かもしれません。

まとめ

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犬のくしゃみは、治療が必要なのかの判断が微妙なものも多くあります。動物病院を受診するか悩む方も多いのではないでしょうか。

くしゃみ以外に鼻汁や咳、口臭などの症状が見られる場合には受診をおすすめします。そうでなくても、異常かどうかの判断がつきにくいようなときにはお気軽に動物病院に相談してください。

【獣医師監修】原因はいろいろ!犬の流涙で考えられる疾患とは

涙は眼の保護や、眼の汚れを洗い流すのに重要な役割を果たしています。人間は悲しい時や感動した時などにも涙を流しますが、犬ではそのような場合は稀だと考えられます。つまり、涙の量が増えることは何らかの眼の異常があるということです。

また、涙が増えることで眼の周りの皮膚に炎症が起こることもあります。

そこで今回は、犬の流涙で考えられる疾患について解説します。

犬の涙の量が増える原因

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犬の涙が増える原因を大きく分けると、「涙液の産生増加」と「涙液の排泄異常」の2つが考えられます。

涙液の産生増加で考えられる疾患

  • 睫毛異常
  • 角膜潰瘍
  • ぶどう膜炎
  • 緑内障

涙液の排泄異常で考えられる疾患

  • 先天的鼻涙管異常
  • 後天的鼻涙管閉塞

また、涙の量が増えることで、いわゆる「涙やけ」になってしまうこともあります。涙やけは複数の原因が考えられるため、早めに対処する必要があります。

涙液の産生増加

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単純に涙の産生量が増えれば、流れ出る涙は多くなります。眼にゴミが入るなどの刺激によって、涙の量は増えます。これは生理現象で、病的な涙液量の増加とは区別されます。

しかし、例えば慢性的に眼の周りの毛が角膜を刺激していたり、眼に炎症が起きていても涙液量は増加します。流涙が一時的なものではなく、しばらく続くようなら眼の異常を疑った方がいいでしょう。

睫毛異常

【症状】
流涙、眼脂(目ヤニ)、羞明(眩しそうにして眼を細める)、結膜充血、角膜潰瘍など。
【原因】
眼瞼の裏側に睫毛が生える異所性睫毛、生えている場所は正常だが睫毛が角膜に接触する睫毛乱生(逆さまつげ)が臨床上問題となることが多い。
【備考】
多くは先天的に発生する。睫毛を抜いても根本的な治療にはならず、レーザーなどで毛根を焼く必要がある。

角膜潰瘍

【症状】
流涙、羞明、結膜充血などの疼痛症状、角膜浮腫など。重度の場合は縮瞳なども見られる。
【原因】
眼瞼内反、眼瞼外反、睫毛異常、外傷などによる角膜の損傷および二次的な細菌感染による。
【備考】
潰瘍の深さによる分類が行われ、表層性では治療によって予後良好だが、細菌感染を伴う角膜穿孔では眼球摘出が必要となることもある。

ぶどう膜炎

【症状】
流涙、眼瞼痙攣、羞明、結膜充血、角膜浮腫など。
【原因】
約半数は特発性(原因不明)で、他には感染症、代謝性、免疫介在性、腫瘍性などが挙げられる。この中には子宮蓄膿症やリンパ腫のような生命予後に関わる疾患も含まれるため注意が必要。
【備考】
犬では虹彩、毛様体といった前部ぶどう膜組織の炎症が多い。視覚消失の可能性もあるため早期の対応が必要となる。

緑内障

【症状】
流涙、眼瞼痙攣、羞明といった疼痛症状、眼脂、視覚障害など。眼圧の上昇時には元気消失、食欲不振、眼をこする、気にするなどの症状が見られることもある。
【原因】
遺伝が関与する原発性緑内障と、他の疾患からの続発性緑内障とがある。遺伝的な好発犬種は柴、アメリカン・コッカー・スパニエル、シーズーなど50種以上が知られている。続発性の原因となる疾患には水晶体疾患(白内障、水晶体脱臼)、網膜剥離、ぶどう膜炎、眼内腫瘍などが挙げられる。
【備考】
原発性でも続発性でも、視力保持のためには早期発見と早期治療が必須となる。

涙液の排泄異常

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涙腺から分泌された涙は、まぶたにある涙点という小さい穴から鼻涙管を通って鼻腔へ抜けていきます。先天的あるいは後天的に鼻涙管に通過障害が起こると、出口を失った涙は眼から排泄されます

充血などの眼の異常を示すような徴候が見られないにも関わらず涙液量が多いときは、これら鼻涙管の異常を疑います。ちなみに筆者も幼い頃に鼻涙管閉塞を患っていて、涙が溢れて常に泣いている状態でした。

先天的鼻涙管異常

【症状】
流涙、涙やけとそれに伴う眼の周りの皮膚炎。
【原因】
先天的な鼻涙管の不十分な発達による。
【備考】
マルチーズやプードルで多く、遺伝的な素因が要因としてあると言われている。

後天的鼻涙管閉塞

【症状】
流涙、涙やけとそれに伴う眼の周りの皮膚炎。
【原因】
結膜炎や鼻炎などの炎症の波及により、分泌物が閉塞する。他にも外傷や腫瘍も原因となり得る。
【備考】
原因となる疾患(炎症や腫瘍など)の早期発見と早期治療が予防となる。

小型犬の涙やけ症候群

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眼の周りの毛が涙によって茶色~黒っぽく変色すること「涙やけ」といいます。毛が白い犬種では外見の変化が大きく目立ちます。小型犬の中には、涙やけを起こしやすい特徴(体の構造や好発する眼の疾患など)を有する犬種があるため注意が必要です。

「小型犬の涙やけ症候群」は、単一または複数の要因によって涙やけを起こす病態の総称です。眼の周りの皮膚の不快感など、愛犬にとってストレスとなる場合も少なくありません。涙やけは原因を特定し、それを取り除いてあげる必要があります。

  • 内眼角の過剰な被毛の発育:毛が角膜に触れることで涙液の産生が増加する。
  • 涙管機能障害がある内眼角異常:解剖学的異常により鼻涙管が狭窄する。
  • 睫毛重生:プードルやコッカー・スパニエルで多く、睫毛がマイボーム腺開口部から生えている状態。
  • 眼窩が浅い:パグやチワワなどは眼が大きく、角膜が傷つきやすい。
  • マイボーム腺機能不全:マイボーム腺からの脂質分泌が障害されることで涙が眼の表面に留まりにくくなる。

まとめ

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愛犬の涙が多いことで緊急性を感じる方は少ないかもしれません。しかし、涙液量の変化は、何か異常のサインである可能性があります。

一回の診察で原因の解明から治療まで行うことは難しいかもしれませんが、愛犬のためにも異常が見られれば一度動物病院を受診してみてはいかがでしょうか。

【獣医師監修】目ヤニが気になる?犬の眼脂で考えられる疾患とは

眼脂とはいわゆる「目ヤニ」のことです。眼脂は眼の汚れを洗い流すために、健康な状態でもよく見られます。

しかし、あまりにも多い眼脂やドロドロの眼脂が見られた場合、眼や眼の付属器に何らかの異常があると考えられます。時間が経つと眼の周りがガビガビになってしまうこともあり、放置することはよくありません。

今回は犬の眼脂で考えられる疾患について解説します。

漿液性(しょうえきせい)の疾患

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漿液性の眼脂は多少ネバネバはしますが比較的サラサラで、色は白っぽいことが多いです。過剰に分泌されることにより眼の周りに常に眼脂がある状態になります。

ただし、寝起きなど眼脂が多いタイミングもあるため、病的な眼脂との区別が大切です。眼に充血など他の症状がないかを確認しましょう。

眼瞼内反症

【症状】
流涙、眼脂、羞明(眩しそうに眼を細める)、結膜充血など。
【原因】
先天的な眼瞼周囲の構造異常や加齢、外傷治癒後の引きつれ、他の疾患(角膜潰瘍、ぶどう膜炎、緑内障など)から続発することなどによって発生。眼瞼が内側に巻き込まれ、まぶたの縁が眼球表面に接している状態を指す。
【備考】
遺伝的に眼瞼内反症を呈しやすい犬種は、トイ・プードル、シーズー、パグ、ペキニーズ、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバーなどが挙げられる。

睫毛異常

【症状】
流涙、眼脂、羞明、結膜充血など。
【原因】
まぶたの裏側に睫毛が生える異所性睫毛や、正常な位置に生えている睫毛が角膜に接触している睫毛乱生が問題となる。
【備考】
異所性睫毛は様々な犬種で見られ、睫毛乱生はシーズー、パグ、フレンチブルドッグなどの短頭種で多い傾向にある。

鼻涙管通過障害

【症状】
流涙、涙やけとそれに伴う眼の周りの皮膚炎。
【原因】
先天的な鼻涙管の狭窄や、後天的な炎症や腫瘍が原因となる。
【備考】
先天的な鼻涙管閉塞はプードルやマルチーズで多いとされている。

結膜炎

【症状】
眼脂、結膜浮腫、結膜充血、眼瞼痙攣、眼の不快感など。
【原因】
アレルギー性(アトピー性、薬剤過敏症など)、濾胞性(花粉やハウスダストなどの抗原の慢性刺激)、免疫介在性、外傷、寄生虫などが原因となる。
【備考】
他の眼科疾患や全身疾患からの波及によって結膜炎が生じている場合もあり、全身状態の把握も重要となる。

ぶどう膜炎

【症状】
眼脂、流涙、眼瞼痙攣、羞明、結膜充血など。
【原因】
多くは特発性(原因不明)で、他には感染症(子宮蓄膿症など)、代謝性、免疫
介在性、腫瘍性(リンパ腫など)が原因となる。
【備考】
ぶどう膜炎は必ずしも原因が眼だけにあるわけではなく、全身症状にも注意を払う必要がある。進行すると緑内障を続発し、視覚にも影響を与える。

緑内障

【症状】
眼の痛み(流涙、羞明、眼瞼痙攣)、眼脂など。眼圧の上昇時には元気消失、食
欲不振なども見られる。
【原因】
原発性緑内障の多くは遺伝性で、柴、アメリカン・コッカー・スパニエル、シーズーなどの犬種で好発する。続発性緑内障は白内障、水晶体脱臼、ぶどう膜炎、眼内腫瘍、網膜剥離などが原因となる。
【備考】
眼圧の上昇によって視神経障害が引き起こされ、一度失明に至ると視力は回復しないため、早期発見と早期治療が重要となる。

粘性~粘液膿性の疾患

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漿液性眼脂よりももっとドロドロしていて、色は黄色味がかったような眼脂です。漿液性眼脂が見られるような眼疾患に細菌が感染することでも見られます。

このような眼疾患の治療には点眼薬を用いることになりますが、眼脂が大量にあると薬液が十分に眼に行き渡らなくなります。固まってガビガビにならないよう、クシなどで丁寧に眼の周りをケアすることも大切です。

また、固まってしまったときは、温かい濡れタオルで眼の周りの眼脂をふやかしてから取り除くようにしてください。

乾性角結膜炎

【症状】
涙液減少による角膜や結膜の乾燥のため、眼脂、結膜充血、角膜色素沈着、眼疼
痛が見られる。
【原因】
顔面神経麻痺、三叉神経麻痺、感染症(ジステンパーウイルスなど)、甲状腺機
能低下症、糖尿病、免疫介在性などにより涙液が減少することによる。
【備考】
原因として最も多いのは免疫介在性で、好発犬種はキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、アメリカン・コッカー・スパニエル、ペキニーズ、パグ、シーズーなどが挙げられる。

眼窩膿瘍

【症状】
膿性眼脂、膿が眼の下に溜まり膨らんで見える。
【原因】
歯周病の進行による根尖膿瘍や歯根膿瘍などから生じる。
【備考】
歯周病による症状として口臭や口の痛みが見られることも多い。

まとめ

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眼脂は眼の疾患でよく見られる徴候です。疾患によっては好発する犬種もあるので、毎日の眼のチェックはしっかりと行いましょう。

また、たかが目ヤニと思わずに、異常があればすぐに動物病院を受診してください。

【獣医師監修】眼がショボショボしてる?犬の羞明で考えられる病気

愛犬の眼がいつもより開いてなかったり、ショボショボしてると感じたことはありますか?そのような様子が見られたら、場合によっては失明につながることもありますので、少しでも愛犬の眼に違和感があったらすぐに動物病院へ相談するようにしましょう。

今回は犬の羞明を引き起こす疾患について解説します。

羞明とは?

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「羞明(しゅうめい)」とは、痛みなどによって眼が開けられない、眼がショボショボしているような状態を指します。電球などの明るいものを見た時のように、眩しそうに眼を細める表情が見られます。

明らかに見た目で異常がわかるため、発見したときに心配になる方も多いかもしれません。また、羞明以外にも、眼瞼痙攣や縮瞳(しゅくどう:瞳孔が収縮した状態)も同時に見られることも多いです。これらはいずれも眼痛を示す所見でもあります。

犬の羞明で考えられる疾患

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眼瞼炎(がんけんえん)

【症状】
眼瞼結膜の充血や浮腫、眼の不快感。過剰な流涙や眼を擦ることによる角膜損傷所見として羞明や眼瞼痙攣が見られることもある。
【原因】
アレルギーや感染(細菌、真菌、寄生虫)による眼瞼皮膚疾患、外傷、腫瘍、免疫介在性など。
【備考】
真菌、寄生虫、免疫介在性によるものでは他部位の皮膚(四肢や顔面など)にも症状が現れていることが多い。

麦粒腫(ばくりゅうしゅ)

【症状】
眼瞼皮膚表面の腫脹、眼瞼縁の紅斑、膿性眼脂、結膜充血、羞明、眼瞼痙攣など。
【原因】
ツァイス腺やマイボーム腺など、眼瞼縁に存在する脂肪を分泌する組織の化膿性炎症による。多くは黄色ブドウ球菌が原因となる。
【備考】
いわゆる「ものもらい」のことで、数週間以上にわたり病態が継続することもある。

乾性角結膜炎

【症状】
膿性眼脂、眼瞼痙攣、羞明、結膜充血、結膜浮腫など。
【原因】
涙液水成分が不足することによる。涙液分泌を抑制する因子として感染症(ジステンパーウイルス)、慢性眼瞼結膜炎、先天性(ヨークシャー・テリア、チワワなど)、免疫介在性(アメリカン・コッカー・スパニエル、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、パグ、シーズーなど)、外傷、甲状腺機能低下症、糖尿病などが挙げられる。
【備考】
犬で多いのは免疫介在性で、好発犬種は注意が必要。

結膜炎

【症状】
結膜充血、結膜浮腫、眼脂、流涙、羞明など。
【原因】
原発性として感染性、アレルギー性、濾胞性(慢性的抗原刺激による)、免疫介在性、外傷性、寄生虫性などが挙げられる。また他の眼疾患から波及することもある。
【備考】
原因は多岐にわたるため、適切な診断によって適切な治療を選択する必要がある。

表在性点状角膜炎

【症状】
流涙、羞明、眼瞼痙攣など。
【原因】
明確な病因はわかっていないが免役介在性疾患、もしくはジストロフィー(栄養障害、発育不良の意味)の一種と考えられている。
【備考】
ミニチュア・ダックスフント、シェットランド・シープドッグに多く、日本ではパピヨンに多い傾向にある。

角膜潰瘍

【症状】
結膜充血、流涙、羞明、角膜浮腫など。
【原因】
外傷、慢性的な角膜への物理的刺激(睫毛異常、眼瞼内反、眼瞼外反など)による。パグやチワワなどの眼が大きい犬種が、「散歩中に草むらに顔を突っ込んだ後から様子がおかしい」という主訴での来院も多く見られる。
【備考】
潰瘍の深さによって分類されるが、それぞれで治療の方法や予後が異なる。また細菌の二次感染を防ぐためにも、傷が浅いうちに治療する必要がある。

前部ぶどう膜炎

【症状】
羞明、眼瞼痙攣、流涙、結膜充血、角膜浮腫、縮瞳など。
【原因】
半数は原因不明だが、半数は感染症(子宮蓄膿症など)、腫瘍(リンパ腫、悪性黒色腫など)、代謝性(糖尿病、高血圧、高脂血症)、免疫介在性(水晶体起因性ぶどう膜炎、ぶどう膜皮膚症候群)、外傷、角膜潰瘍などが原因となる。
【備考】
眼だけでなく、全身疾患の一症状としてぶどう膜炎が見られることもあるため、注意が必要。特に子宮蓄膿症やリンパ腫などの疾患は生命予後に関わる。

緑内障

【症状】
眼圧上昇に伴う眼瞼痙攣、羞明、角膜浮腫、結膜充血、視覚障害など。また急激に眼圧が上昇する時には食欲不振や元気消失が見られることもある。
【原因】
原発性(眼圧上昇を引き起こすような先行疾患がないもの)は遺伝性が報告されている。続発性では水晶体疾患(水晶体脱臼、白内障)、ぶどう膜炎、眼内腫瘍、網膜剥離などが原因疾患となる。
【備考】
眼圧の上昇は視神経障害を引き起こし、一度失明すると視覚は回復しない。好発犬種は柴、アメリカン・コッカー・スパニエル、シーズー、ビーグルなどで、これらの犬種は定期的に眼圧測定を行うと早期発見に繋がる。

まとめ

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眼の違和感は、生活する上で非常に邪魔なものです。ヒトでも実際、眼にゴミが入ると痛くて他のことは考えられなくなりますよね。愛犬に羞明の症状が見られた場合はすぐに原因を取り除く、あるいは症状を緩和させてあげる必要があります。

また、羞明以外にも眼脂や充血などの他の眼症状、あるいは食欲低下などの全身症状がないかもしっかりチェックしておくと診察がスムーズかもしれません。気になることがあれば気軽に動物病院まで相談してくださいね。

【獣医師監修】愛犬の眼が赤い時に考えられる疾患とは?

愛犬の顔を覗き込んだ時、眼が赤いと思ったことはありませんか。充血などの眼の赤みは、飼い主がしっかりと観察しないと見逃してしまう可能性があります。

原因としては結膜炎などの軽いものや、あるいは緑内障などのすぐに治療を始めた方がいいものまで様々です。

今回は犬の眼の赤みについて詳しく解説していきます。

犬の目が赤くなる原因

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犬の目が赤くなる原因としていくつかの疾患が考えられます。

結膜や角膜の疾患

  • 結膜炎
  • 乾性角結膜炎
  • 慢性表層性角膜炎(パンヌス)
  • 角膜潰瘍

その他の眼疾患

  • 瞬膜線脱出(チェリーアイ)
  • ぶどう膜炎
  • 緑内障
  • 前房出血
  • 麦粒腫
  • 睫毛異常

それぞれ、何が原因でどのような症状があるのか、詳しくみていきましょう。

結膜や角膜の疾患

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結膜や角膜は、眼の表面に存在する構造物です。結膜には血管が分布していますが、何らかの原因で眼に炎症が起こると血管が拡張して眼が赤く見えます。日常的に遭遇する眼の赤みの原因としては最も多いものです。

眼の充血以外にも、眼脂(目ヤニ)などの眼症状が見られることも多いです。

結膜炎

【症状】
眼脂(性状は様々)、結膜浮腫、結膜充血、眼不快感、眼掻痒感など。
【原因】
原発性結膜炎は原因によってアレルギー性(アトピー性、薬剤過敏症など)、免疫介在性、外傷性、寄生虫性、濾胞性(慢性的抗原刺激)に分類される。また、他の眼科疾患(乾性角結膜炎など)や全身性疾患の波及によって続発することもある。
【備考】
原因が異なっても症状が類似するため、注意が必要となる。

乾性角結膜炎

【症状】
軽度では眼不快感、粘液性眼脂など。重度では結膜充血、膿性眼脂、眼痛など。
【原因】
涙腺および瞬膜腺からの涙液産生低下によって結膜や角膜に炎症が起こる。顔面神経や三叉神経麻痺、ジステンパー、甲状腺機能低下症、糖尿病などが涙液減少を引き起こす。
【備考】
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ラサ・アプソなどが好発犬種として挙げられる。

慢性表層性角膜炎(パンヌス)

【症状】
眼脂、眼瞼痙攣、結膜充血など。進行すると重度の視覚障害を引き起こす。
【原因】
免疫介在性と考えられている。
【備考】
強い紫外線が影響しているという報告もある。

角膜潰瘍

【症状】
眼痛、眼瞼痙攣、流涙、膿性眼脂、結膜充血、角膜混濁など。
【原因】
外傷や、逆さ睫毛などの慢性的な刺激が原因となり、そこに感染が生じる。
【備考】
角膜穿孔(深い角膜潰瘍)を伴う場合には、眼内炎症などの合併症から失明に至るケースもある。

その他の眼疾患

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結膜や角膜の異常の他にも、眼の赤みを呈する疾患はあります。中には緑内障などの、将来の視力に関わるものもあります。できるだけ早期に発見し、治療を行うことが大切です。

瞬膜線脱出(チェリーアイ)

【症状】
充血した瞬膜腺が内眼角(目頭)から脱出する。他にも結膜充血、結膜浮腫、粘液性眼脂など。
【原因】
原因は不明。
【備考】
2歳以下の若齢犬に多いと言われている。基本的には外科的に正常な位置に戻す必要がある。

ぶどう膜炎

【症状】
流涙、眼瞼痙攣、羞明(眼が開けられない)、結膜充血など。
【原因】
感染(細菌、ウイルス、寄生虫など)、腫瘍(リンパ腫、悪性黒色腫など)、糖尿病、高血圧、外傷、角膜潰瘍などが原因となる。しかし、約半数は原因不明(特発性)である。
【備考】
視覚消失の可能性もある重度な疾患である。原因となる疾患がある場合には、その疾患を治療する必要がある。

緑内障

【症状】
急激な眼圧上昇時における食欲不振、元気消失、眼をこする、眼を気にするしぐさ、羞明など。結膜充血、角膜浮腫、眼瞼痙攣などが見られることも多い。
【原因】
眼球を球状に保つための眼房水の産生増加、あるいは排出障害。
【備考】
水晶体疾患(白内障、水晶体脱臼)、ぶどう膜炎、網膜剥離、眼内腫瘍などは眼圧上昇の原因となる。視神経障害によって失った視覚は回復しないため、早期発見と早期治療が必要不可欠となる。

前房出血

【症状】
黒目の下のほうに血が溜まり、赤く見える。
【原因】
ぶどう膜炎、外傷、眼球内腫瘍、網膜剥離、高血圧、緑内障、血液凝固異常などが原因となりうる。
【備考】
角膜と水晶体の間には空間があり、眼房水で満たされている。そこに血液が貯留することで眼が赤く見える。

麦粒腫

【症状】
眼瞼縁の紅斑、腫脹、膿性眼脂、結膜充血など。
【原因】
マイボーム腺などの感染(主に黄色ブドウ球菌)による。
【備考】
ヒトで言う「ものもらい」のこと。片側あるいは両側に発生し、痛みを伴う。

睫毛(まつげ)異常

【症状】
流涙、結膜充血、角膜潰瘍など。
【原因】
睫毛重生(睫毛がマイボーム腺開口部から生えている)、異所性睫毛(眼瞼の裏の結膜から睫毛が生える)、逆さ睫毛などによって睫毛が角膜を刺激することによる。
【備考】
最も問題になるのは異所性睫毛で、毛根を処理する治療が必要となる。

まとめ

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動物は眼に異常があっても、言葉でそれを訴えることはできません。眼脂や羞明など、見た目にもわかりやすい症状を伴っていれば発見は容易かもしれません。

しかし、眼の赤みだけでは、異常を見落としてしまうことも十分に考えられます。日常的に愛犬の状態を確認し、異常があればすぐに動物病院を受診しましょう。

【獣医師監修】白内障だけじゃない!犬の目が白い時に考えられる疾患

愛犬の眼がいつもよりも白いかもしれない、という主訴は動物病院でもよくあります。

気のせいと思う方も多いかもしれませんが、その感覚は間違っていないことが多いように思います。毎日顔を合わせていると、徐々に起こる変化に気付きにくいかもしれません。

今回は犬の眼が白い時に考えられる疾患について、獣医師が詳しく解説します。

犬の目が白くなる原因

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犬の目が白くなる原因は、主に水晶体の疾患、角膜の異常、その他の眼疾患によるものが考えられます。

水晶体の疾患

  • 白内障
  • 核硬化症
  • 水晶体脱臼

角膜の異常

  • 角膜潰瘍
  • 結晶状角膜混濁(角膜ジストロフィー)

その他の眼疾患

  • 緑内障
  • ぶどう膜炎
  • 星状硝子体症(硝子体混濁)

それぞれ、何が原因でどのような症状があるのか、詳しくみていきましょう。

水晶体の疾患

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水晶体は、カメラにおけるレンズの役割を果たしています。水晶体の白濁は初期には気付きにくいことも多く、「何となく白い気がする」という主訴で来院することも少なくありません。

高齢になるにつれてこれら疾患の発生は多くなるので、定期的に検診を受けることを考えるのもいいでしょう。

白内障

【症状】
水晶体の混濁、視覚障害、失明。
【原因】
原発性(遺伝性)と続発性(糖尿病、加齢、外傷、炎症、栄養性など)に分類される。メカニズムは完全には解明されていないが、様々な要因により水晶体の蛋白質の構造が変化することによる。
【備考】
進行することにより水晶体起因性ぶどう膜炎、続発性緑内障、網膜剥離、水晶体脱臼などが続発する。

核硬化症

【症状】
水晶体の一部が白く見える。白内障と異なり、視覚障害はない。
【原因】
加齢によって水晶体線維の密度が上昇することによる。透光性は高い。
【備考】
白内障との鑑別は非常に重要。核硬化症は疾患ではなく、老齢性変化である。

水晶体脱臼

【症状】
眼痛、羞明、眼内出血、角膜浮腫など。
【原因】
チン小帯と呼ばれる水晶体を支える部位が生まれつき弱い、あるいは加齢による変化によって水晶体を支えきれないことによる。また、緑内障、白内障、ぶどう膜炎、外傷、腫瘍などによって続発することもある。
【備考】
緑内障、網膜剥離、ぶどう膜炎は、水晶体脱臼から続発することも多い。

角膜の異常

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角膜は眼の中央に存在する組織で、いわゆる黒目の部分です。角膜には血管がなく通常は無色透明ですが、浮腫によって白く濁ることで視力に障害が起こることもあります。

角膜潰瘍

【症状】
角膜浮腫、流涙、眼脂、結膜充血、羞明など。
【原因】
外傷、睫毛異常(睫毛重生、睫毛乱世、異所性睫毛)、ドライアイ、免疫介在性など。
【備考】
短頭種(パグ、シーズーなど)や涙液量が少ない犬は角膜潰瘍のリスクが高い。角膜潰瘍はその深さによって分類されるが、角膜穿孔に至ると外科的治療(角膜移植など)が必要になることもある。傷が浅いうちに発見し、適切な治療を行う必要がある。

結晶状角膜混濁(角膜ジストロフィー)

【症状】
角膜の白濁、角膜に白いもの(コレステロール、リン脂質、中性脂肪など)が浮かび上がっているように見える。
【原因】
原因は不明だが、遺伝性が示唆されている。好発犬種はシベリアン・ハスキー、ビーグルなど。
【備考】
基本的に視覚障害や失明は起こりにくいが、重症例ではこれらが見られることもある。また痛みや痒みなどの不快感を示すことも基本的にはない。

その他の眼疾患

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水晶体や角膜の異常以外にも、眼の白濁が見られる疾患があります。

中には水晶体異常や角膜異常を続発するものもあり、その場合には原因となるこれらの疾患の治療が必要となります。

緑内障

【症状】
角膜浮腫、眼痛、眼瞼痙攣、縮瞳、元気消失、食欲減退、羞明など。
【原因】
原発性(柴、アメリカン・コッカー・スパニエル、シーズーなどが好発犬種)と続発性(水晶体脱臼、白内障、網膜剥離、眼球内腫瘍などから続発)に分類される。
【備考】
痛みを伴う疾患であり、早期発見と早期治療が重要とされる。また眼圧の上昇は視神経障害を引き起こすため、失明に至ることもある。

ぶどう膜炎

【症状】
角膜浮腫、結膜充血、眼瞼痙攣、流涙、羞明、前眼房出血、縮瞳など。
【原因】
特発性(原因不明)、感染性(子宮蓄膿症、ウイルスなど)、代謝性(糖尿病、高血圧、高脂血症)、免疫介在性、腫瘍性(リンパ腫、悪性黒色腫など)、外傷など。
【備考】
犬のぶどう膜炎は前部(虹彩、毛様体)に多い。視覚消失の可能性もある。また全身疾患から炎症が波及した結果、眼に炎症が起こっている場合もあるので原因の究明も重要となる。

星状硝子体症(硝子体混濁)

【症状】
特になし。眼がキラキラしているという主訴で来院する。
【原因】
眼球の奥にある硝子体にカルシウムが沈着することによる。原因不明の特発性が多い。
【備考】
痛みや視力障害はないため、治療の必要はない。

まとめ

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犬の眼が白い原因としていくつか疾患を挙げてきました。白内障や緑内障など長期的に付き合う必要のある疾患もあり、これらの早期発見は愛犬の老後をより良くするためにはとても重要です。

日常的に愛犬の様子を観察し、異常をすぐに発見できる目を養いましょう。

【獣医師監修】放置すると危険かも!?犬の脱毛で考えられる疾患

犬は全身を毛で覆われており、犬種によっては生理的な範囲内で毛が抜け替わります。

生きる上である程度の抜け毛は仕方ありません。しかし、皮膚の赤みを伴っていたり、ある一部分だけが脱毛しているのは皮膚や毛包などに異常があるサインかもしれません。

今回は犬の脱毛で考えられる疾患について、獣医師が詳しく解説します。

犬の脱毛の原因

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犬の毛が抜ける原因は、主に内分泌疾患と遺伝によるものが考えられます。

内分泌疾患

  • 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
  • 甲状腺機能低下症
  • 性ホルモン関連性皮膚症(性ホルモン失調)

遺伝性

  • 脱毛症X
  • 虚血性皮膚障害
  • 淡色被毛脱毛症(カラーダイリューション脱毛)
  • 黒色被毛形成異常
  • パターン脱毛症

それぞれ、何が原因でどのような症状があるのか、詳しくみていきましょう。

内分泌疾患

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副腎や甲状腺のようなホルモンを分泌する組織に異常が起こると、脱毛が見られることがあります。

また、これらの内分泌疾患は脱毛だけでなく、全身症状を呈することも少なくありません。放置することによって、どんどん体調が悪くなることも考えられます。まずは、内分泌疾患について見ていきましょう。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

【症状】
多飲多尿、薄い皮膚、脱毛、色素沈着(皮膚が黒っぽくなる)、石灰化(硬い石のようなものが皮膚に沈着する)、腹部膨満、呼吸促迫など。
【原因】
脳の下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモンの過剰や、副腎腫瘍による副腎ホルモン(コルチゾール)の過剰分泌による。
【備考】
適切な治療により予後は良好とされる。7~12歳齢の老齢犬では一般的な内分泌障害であるため、これらの年齢に差し掛かったら定期的な健康診断が必要である。

甲状腺機能低下症

【症状】
皮膚症状(脱毛、被毛の光沢消失、角化異常、外耳炎など)、元気消失、低体温、体重増加など。
【原因】
免疫介在性のリンパ球性甲状腺炎、突発性甲状腺委縮が多いとされる。また甲状腺腫瘍も原因となりうる。
【備考】
治療には甲状腺ホルモンの投与が行われる。

性ホルモン関連性皮膚症(性ホルモン失調)

【症状】
会陰部、外陰部周囲、体幹部、頚部に対称性に生じる脱毛。
【原因】
メスでは卵巣腫瘍、オスでは精巣腫瘍(セルトリ細胞腫、ライディヒ細胞腫、セミノーマ)に関連して見られる。
【備考】
性ホルモンのうち、エストラジオールが増加する症例では非再生性貧血に注意が必要。治療は避妊手術および去勢手術によって行う。また、細菌の二次感染に関係のない痒み症状が現れる場合があるが、特にメスでは発情周期とともに増悪する。

遺伝性

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脱毛が見られる疾患には、遺伝による影響が大きいものもあります。好発犬種では、発生に注意が必要ですが、それ以外の犬種も発症しないわけではありません。

脱毛症X

【症状】
体幹部の脱毛。尾、お尻周り、頚部から始まり、経過とともに頭部や四肢を除く全身に拡がる。
【原因】
病態や原因については明らかになっていない。
【備考】
ポメラニアンに多く見られ、一般に1~2歳で発症する。命に関わることはない。

虚血性皮膚障害

【症状】
鼻、眼瞼、口唇などに紅斑、丘疹、水疱などを認め、やがて潰瘍化して痂皮、脱毛を呈する。また、咀嚼障害や嚥下障害、まれに巨大食道症に伴う誤嚥性肺炎を起こすこともある。
【原因】
コリーやシェットランド・シープドッグの家族性(遺伝性)疾患として知られている。
【備考】
通常は6ヵ月未満で初発し、加齢とともに症状は軽快することが多い。一方で有効な治療法は確立されていない。

淡色被毛脱毛症(カラーダイリューション脱毛)

【症状】
淡い毛色(グレーなど)の犬にみられる脱毛。
【原因】
メラニン色素が不均等に毛に分布されることによって毛がちぎれやすくなる遺伝性疾患。
【備考】
毛が抜けるのではなく、毛がちぎれることによって局所的に被毛が薄くなっているように見える。

黒色被毛形成異常

【症状】
黒色の被毛にみられる脱毛。
【原因】
毛根部でメラニン色素を毛に送り込む機能に異常が発生する遺伝性疾患。
【備考】
メラニン色素が過剰な部分は毛がちぎれやすくなる。生後1ヵ月齢になると徐々に脱毛が始まる。

パターン脱毛症

【症状】
耳、首、鼻先、胸部、腹部、内股、尾などの左右対称性脱毛。年齢とともに脱毛は進行する。
【原因】
遺伝性疾患である可能性が高いが、正確なメカニズムは解明されていない。
【備考】
犬種によって発症年齢と発生部位に特徴がある。ヨークシャー・テリアでは6ヵ月~3歳に鼻、耳介外側全体、四肢、尾に発生。ダックスフント、チワワ、トイプードル、イタリアン・グレーハウンド、ミニチュア・ピンシャーでは6ヵ月~9ヵ月に耳介外側全体のみ、あるいは複数の箇所に発生する場合がある。

まとめ

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愛犬に脱毛が見られても、大げさに考えない方もいるかもしれません。しかし、内分泌疾患などの病気を放置すれば、治療による効果が低下する可能性があります。

また、今回は紹介しませんでしたが、痒みを伴う皮膚疾患においても脱毛が起こる場合があります。何か気になることがあれば気軽に動物病院に相談してください。

【獣医師監修】アレルギーか感染症かも。犬の痒みがみられる疾患とは

耳が痒い、足が痒いなどの症状は遭遇する可能性が非常に高い徴候です。
痒みがあるからと言って直接命に関わることは少ないかもしれませんが、生活においては大きなストレスになることは間違いないでしょう。

また、強い痒みは食欲不振や寝不足などの悪影響をもたらすことも考えられるため、愛犬の病的な痒みは一刻も早く取り除いてあげる必要があります。

今回は犬の痒みについて解説します。

犬の痒みの原因

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犬の痒みの原因を大きく2つに分けると、アレルギー性皮膚炎と感染症が挙げられます。

アレルギー性皮膚炎が原因の痒み

  • アトピー性皮膚炎
  • ノミアレルギー性皮膚炎
  • 食物アレルギー

感染症が原因の痒み

  • 膿皮症
  • マラセチア性皮膚炎
  • 疥癬
  • 耳ヒゼンダニ症
  • 肢端舐性皮膚炎

それぞれ、何が原因でどのような症状があるのか、詳しくみていきましょう。

アレルギー性皮膚炎

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痒みの原因として、最初にアレルギーによるものを想像する方もいるのではないでしょうか。人間も花粉症で眼が痒くなったりしますよね。犬でもやはりアレルギーによる痒みは少なくありません。

まずは、動物病院でもよく見るアレルギー性皮膚炎を紹介します。

アトピー性皮膚炎

【症状】
初期に痒みが現れ、慢性経過により発赤、脱毛、苔癬化(たいせんか:皮膚が厚く硬くなる)を呈する。これらの症状は頭部(眼周囲、口周囲、耳)、頚部、腋窩、腹部、四肢、肛門周囲に見られやすい。
【原因】
遺伝的素因、皮膚バリア機能の異常、免疫学的要因、環境要因(多頭飼育、環境微生物など)などの複数の要因が関与していると考えられている。
【備考】
6カ月齢~3歳齢で発症し、生涯にわたる管理が必要となる。日本における好発犬種は柴、パグ、シーズー、ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバー、ヨークシャーテリア、ウエストハイランドホワイトテリアと言われている。

ノミアレルギー性皮膚炎

【症状】
強い痒み、発疹などが季節性(夏~晩秋)に現れる。腰部、胸背部、側腹部、尾部、会陰部に分布する傾向があり、吸血部位から離れた箇所でも症状が現れることがある。
【原因】
主にネコノミによる吸血が原因となる。少数寄生でも発症する。
【備考】
草むらや土への接触、公園やドッグランの利用、定期的・適切なノミ予防を行っていない、旅行後、湿度や温度の高い室内、屋外飼育などの環境ではノミとの接触に注意する。

食物アレルギー

【症状】
痒み、皮疹、脱毛、苔癬化の他に、外耳炎や膿皮症、消化器症状(嘔吐、下痢)を伴うこともある。
【原因】
食物中の成分に対する過剰な免疫反応が原因となる。
【備考】
皮疹は顔面、耳介、肢端部、腋窩部、鼠径部に好発する。

感染症

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皮膚に微生物が感染し、痒みを生じることもあります。

皮膚には元々、微生物に対するバリア機能が備わっていますが、免疫力の低下やその子の体質(垂れ耳で耳道の通気性が悪いなど)によって、感染が成立することがあります。

感染する微生物は皮膚に常在する細菌や真菌などが多く、実際に動物病院での症例でも、海外などの遠くから持ち込まれた微生物よりも、どこにでもいるありふれた微生物によるものが多いように思います。

膿皮症

【症状】
痒み、表皮小環(微生物の感染部位を中心に同心円状に広がるカサブタ)、鱗屑(フケ)、紅斑、脱毛など。
【原因】
常在するブドウ球菌の感染による。通常の免疫状態では感染は成立しないが、内分泌疾患、アレルギー、皮膚炎、他の感染症が背景にあると感染が起こると考えられている。
【備考】
近年では薬剤耐性を持ったブドウ球菌が問題となっている。また、再発を繰り返しやすい疾患である。

マラセチア性皮膚炎

【症状】
皮膚の紅斑、痒み、脱毛、脂漏、鱗屑(フケ)、苔癬化(皮膚が厚く硬くなる)など。
【原因】
マラセチアという酵母菌が原因となる。これは皮膚や外耳道周囲に常在している。
【備考】
好発部位は外耳、口唇、鼻、四肢、眼周囲、趾間、腋窩、内股、会陰部、肛門周囲など。

疥癬

【症状】
強い痒み、紅斑、丘疹、鱗屑、厚い痂皮など。
【原因】
ヒゼンダニの寄生による。公園、ドッグランなどが感染の機会となる。
【備考】
ヒゼンダニはヒトにも感染することがあるので注意が必要。

耳ヒゼンダニ症

【症状】
耳道の激しい痒み(頭を振る、耳介を倒しているなどの素振り)、黒色の耳垢、疼痛(耳付近を触ると怒るなど)、耳孔周囲の紅斑、腫脹。強い痒みによって睡眠不足になることもある。
【原因】
ミミヒゼンダニの寄生による。
【備考】
ペットショップから迎え入れた子犬に多い。

肢端舐性皮膚炎

【症状】
初期はよだれやけ、脱毛など。慢性化すると潰瘍、硬化などが見られる。
【原因】
肢端の感染症や常同行動(ストレスや暇つぶし)、飼い主の興味を引こうとする心理が起因となり、肢端を持続的に舐めたり咬むことによって発症する。
【備考】
腫瘍、関節炎、異物なども考えられるため、早期診断のためにも早めに動物病院へ。

まとめ

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愛犬が身体を掻きむしっていても、それが生理的なものなのか病的なものなのかの判断は難しいかもしれません。

普段から掻く頻度や皮膚の状態などをよく観察しておき、おかしいと思ったらすぐに動物病院まで相談してください。