[犬の飼い方]愛があれば何でもOK?虐待になりかねない対応4選
皆さんは、ご自身のペットへの対応がペットにはどのように伝わっているかを考えたことはありますか。ペットに愛情を持っていても、一時的なある対応がペットにとっては好ましくなく、度を越すと虐待になってしまう可能性もあります。
今回は、愛犬にやってしまいがちな好ましくない対応を、良くない理由や、好ましい対応方法と併せて紹介します。
①長時間の留守番
「平日は仕事で朝から夜まで8時間以上は留守番をさせている」という話はよく聞きます。しかし、本来ひとりで過ごすことが苦手な犬にとって、長時間の留守番は好ましくありません。
特に、迎えたばかりの子犬をすぐに留守番させるというのは、非常に酷です。知らない場所に連れてこられ、そこにひとり置き去りにされるのは多くの不安と恐怖を伴います。長時間の留守番は子犬の脳の発達にも悪影響を及ぼすとも言われています。
約4割の犬は6時間以上の留守番を毎週している
ドッグカメラFurbo(ファーボ)を展開するTomofun株式会社が、日米の25~45歳の女性の飼い主1,759名(うち日本は759名)を対象に実施した「愛犬のお留守番に関する実態調査」によると、日本の家庭犬のうち約9割が毎週留守番をしており、そのうちの約4割が1回6時間以上の留守番をしているという結果になりました。
スウェーデンの動物愛護法で禁止される6時間以上の留守番
スウェーデンの動物愛護法では、犬を室内で飼う場合は少なくとも6時間に1回は外に出すと定められています。つまり、6時間以上の留守番は禁止されています。では、スウェーデンの人たちはどのようにして、留守番を回避しているのでしょうか。
スウェーデンで行われた留守番に関する調査結果
200人の飼い主を対象にした留守番に関するある調査によると、7割以上の人が仕事の際は愛犬を家に残すと回答しています。しかし、愛犬をひとりにさせる方はそのうち16%で、それ以外の人は友人、近所、家族に頼むか、デイケアに預けており、愛犬をひとりにさせてはいませんでした。留守番時間の平均も4.5時間という結果になっています。
留守番時間を短くするには
スウェーデンの調査結果にもあったように、愛犬が慣れいて飼い主も信頼できる友人、家族に預けるのは良い方法でしょう。または、ペットシッターや犬の保育園、犬の幼稚園にお願いするのもおすすめです。
特に、保育園や幼稚園はトレーニングをするところも多いため、退屈になりがちな留守番にトレーニングや発散、他の犬と関わるといった良質な経験を通し、精神的な成長もできるのは一石二鳥、三鳥にもなるでしょう。
いまだに日本のペットショップなどでは、「犬は留守番できます」と言って購入をすすめるところもあるようですが、もしこれから犬をお迎えすることを検討されていて留守番が長くなることが予想される場合は、飼わない、またはひとりにさせない方法をしっかりと考えた上でお迎えしましょう。
②リードを強く引っ張る
よく聞くお悩みにお散歩時の引っ張りがあります。この対処法として、チョークチェーンなどを使用することがあり、実際にネットなどでも推奨していることがあります。
しかし、チョークチェーンは、犬に痛みや不快感、恐怖を与えることで引っ張りを回避しているため、精神的ショックに加え、首が締まって失神したり、首を痛める、ひどいと骨折といった身体的ダメージを受ける可能性もあります。
飼い主との関係性も悪化しかねないため、ドッグトレーナーの筆者としては小型犬はもちろん大型犬であったとしてもおすすめしません。
リードを引っ張る以外の散歩時の引っ張り軽減の方法
お散歩時の引っ張りを減らすためには、人と一緒に歩く練習をしましょう。
一緒に歩く練習のやり方
①おやつを親指で持ち、手の甲(掌も可)を静かに犬の顔の側に出し、犬が手の甲(掌)を鼻で触ったら持っているおやつをそのままあげる
② ①を何度も繰り返し、徐々に手を出す位置を顔の側ではなく犬から離れた場所に出しても鼻で触れたら、持っているおやつをあげる
③ ②を繰り返し、2回、3回連続で手を出しても鼻で触れたら、持っているおやつをあげる
連続で手を出す際は、左右など場所を色々変えても触れるようにする
④ これまでと同様に手におやつを持ち、犬を左右どちらか横に来てもらい、犬の顔の高さと同じ位置で進行方向にまっすぐ手を出し、犬が手に鼻で触れたら持っているおやつをあげる
⑤ ④を繰り返し、人が手を出したら鼻で触る流れを何度もやることで、人と一緒に歩く感覚を覚えてもらう
⑥ ⑤ができるようになったら、手を出すタイミングを少しずつ減らす
3、4歩に一回や5、6歩に一回など徐々に手を出すタイミングを減らしていく
ポイント
練習はまずは刺激が少ない自宅内で行い、自宅でほぼ完ぺきになったら、外でまた①から徐々にレベルをあげて⑥を目指していきましょう。うまくできない時は、レベルを下げたり家でも練習を行いましょう。
練習がなかなかうまくいかない時は、ドッグトレーナーに頼むのをおすすめします。失敗が続くと、愛犬も正解がわからず引っ張り癖がさらに付いてしまうかもしれません。そうなる前に、プロの力を借りるという判断をするのも大切です。
また、お散歩時に使用するものはチョークチェーンや首輪ではなく、負担の少ないハーネスをおすすめします。
③暑い日の散歩
最近の日本は、多くの地域で6月~9月にかけて30度を超える真夏日になることが多くなっています。今年の夏は35度を超える猛暑日の日も非常に多く、人にとっても犬や猫など多くの動物たちにとっても辛い暑さが続きました。
しかし、そんな中でも暑い日に犬を散歩させている人を見かけました。体温調節が得意ではない犬が、素足で地面から近い位置を歩いたら人以上に暑く危険であることを想像してほしいと思います。仮に真夏日に愛犬を散歩に連れて行くのが愛情からだったとしても、愛のある対応とは言えないのではないでしょうか。
犬の熱中症対策はしっかりと
犬は20度くらいから熱中症の発症率が上がるというデータがあります。人からすると20度は快適な温度でお散歩日和となりがちですが、以下の点に注意しながらお散歩をしましょう。
- 20度を超える日は散歩を短めにする
- 日中の散歩は避け、涼しい早朝、夕方に散歩をする
- 新鮮な水を頻繁にたっぷりあげる
- 体を冷やすための保冷剤を用意する(使用時はタオルなどを巻く)
- できるだけ日陰を歩く
- 日陰でこまめな休憩をとる
- 散歩後は涼しい室内で休憩する
真夏日にできるお散歩以外の発散
筆者は、真夏日はお散歩に行くべきでないと考えています。しかし、お散歩以外の方法でエネルギーを発散することは非常に大切です。以下の室内でもできる発散を参考に、発散や運動の機会をしっかり作り、お散歩が減る夏場や雨の日も運動不足やストレスが溜まらないようにしてあげましょう。
- 飼い主とおもちゃのひっぱりこやもってこい遊び
- 知育玩具
- ノーズワーク
- トレーニング
夏場は、水を入れたビニールプールの中を歩くのも良い運動になります。犬が足が付く程度の水を入れて、おやつやおもちゃを使いながら水の中を歩かせてあげます。水が苦手な子は、少しずつ水に慣れるところからやってあげましょう。ただし、プールに入っている間は絶対に目を離さないよう注意が必要です。
④犬嫌いな子にドッグラン
犬が苦手な子や、犬に慣れていない子をいきなりドッグランに連れて行くのは、多くのリスクがあります。犬に慣れてもらうためにドッグランに連れていくという話をよく聞きますが、それと同じくらいドッグランがきっかけで犬が苦手になり犬を見ると吠えるようになってしまったという話も聞きます。
ドッグランはある意味無法地帯であり、愛犬が怖い思いをする可能性も、他の犬に怖い思いをさせてしまう可能性もあります。犬が苦手な子からすると、ドッグランは楽しい場所ではなく恐怖の場になりかねません。
他の犬に慣れるには
安全に犬に慣れるには犬の保育園や犬の幼稚園が最適だと考えています。もちろん犬の保育園などでも絶対に事故がないとは言い切れませんが、ドッグトレーナーがいる保育園であれば、その多くが犬の相性や状態を見て会わせる犬を決めたり、犬同士で過ごしている際も安全管理を行っているはずです。
また、犬に慣れる=犬と遊べるようになるということではなく、周りに他の犬がいても落ち着いていられる状態が望ましいと考えています。周りに犬がいても落ち着けるようになると、お散歩やドッグカフェなどに行った際も、愛犬も飼い主も安心してストレスなく過ごすことができるため、多くのメリットがあります。
まとめ
愛犬が大好きで愛情を持って接していても、ある対応が実は愛犬に辛い、怖い思いをさせているかもしれません。叩く、蹴るなど身体的に傷つける対応は論外ですが、日頃の対応を愛犬はどんな風に感じているかを考え、見直してみてはいかがでしょうか。見直すことで愛犬との関係性もさらに深まるかもしれません。
今までもやっているから、慣れているから大丈夫ではなく、今からでも改善し愛犬の日々がより良いものになるようにしてあげてください。
知っていますか「アニマルウェルフェア」③私たちにできること
前回の記事では、アニマルウェルフェア後進国と言われる日本の現状を紹介しました。第三弾となる本記事では、日本の取り組みや私たちができることをご紹介します。
動物が好きではないという方も、動物の命をいただいている以上は関わりがあることです。今日からできることがないか、ぜひ考えてみてください。
日本の企業によるアニマルウェルフェアの取り組み
アニマルウェルフェア後進国の日本では、大手食品企業のアニマルウェルフェアに対する認識や対応レベルも非常に低いと世界的に評価されています。
しかし、日本企業や自治体でも少しずつアニマルウェルフェアへの取り組みを開始しており、認定NPO法人アニマルライツセンターが毎年実施している2022年度の「アニマルウェルフェアアワード」に選出された4つの企業をご紹介します。
アニマルウェルフェアアワード
畜産動物、水産動物のことを考え、アニマルウェルフェアへの取り組みをした企業を、日本の畜産動物を守る活動を行うアニマルライツセンターが選出しています。
https://www.hopeforanimals.org/animal-welfare-award/
1. 内閣府の食堂を運営する「株式会社ニッコクトラスト」
内閣府の食堂を運営している株式会社ニッコクトラストでは、食堂で提供する卵を、ケージフリーで飼育されているものに切り替えました。
内閣府の食堂という、アニマルウェルフェアの重要性を認識し、影響を最大化できるであろう場所での取り組みも評価されています。
2. 『やまなしアニマルウェルフェア認証制度』を創設した「山梨県」
山梨県は、全国の自治体で初となるアニマルウェルフェアの認証制度「やまなしアニマルウェルフェア認証制度」を創設しました。これにより山梨県内のアニマルウェルフェア推進と共に畜産物のブランド強化を目指しています。
認証制度の創設はもちろん、認証基準も世界にも認められる内容となっている点などが評価されており、日本のアニマルウェルフェア発展に大きな希望が持てる取り組みの一つです。
3. アニマルウェルフェアへの取り組みを重要課題にした「日本ハム株式会社」
日本ハムはアニマルウェルフェアに配慮した事業を行うことを重要課題とし、基本原則である「5つの自由」を推進、この考えを踏まえた家畜の飼養管理、生産体制の改善、継続的な技術革新などを進めるとしています。
さらに、「アニマルウェルフェアに配慮した取り組みの推進」として以下のような具体的な目標を掲げています。
- 2023年度末までに国内の全処理場内の係留所へ飲水設備の設置(牛・豚)
- 2023年度末までに国内全農場・処理場への環境品質カメラの設置
- 2030年度末までに国内の全農場の妊娠ストール廃止(豚)
4. 人と環境にやさしいお店づくりを目指す「TORIBA COFFEE」
TORIBA COFFEEを含め、都内を中心に飲食店を展開する株式会社バードフェザー・ノブでは、2020年にエシカルプロジェクトをスタートさせ、店舗の脱プラスチックや生ごみ削減など「エシカル化」を進めています。
その中でもTORIBA COFFEEでは、コーヒーショップとして地球への環境負荷をかけないためにできることをまとめた、「エシカル宣言15ヶ条」を2021年に出しました。そして2022年には、さらに10ヶ条を追加した「続・エシカル宣言」を発表しています。その中で、アニマルウェルフェアに最も関わりがあるものが21条です。
TORIBA COFFEE 続・エシカル宣言 21条
「牛乳はアニマルウェルフェアなもののみ使用します」
お店でドリンクに使用する牛乳は、乳牛を仔牛から親牛まで、自由な環境で育てられているもののみを使います。
これに加え、お店では通常のミルクと植物性ミルクは同じ価格であるため、無理なくアニマルウェルフェアに配慮したものを選択できます。
私たちができるアニマルウェルフェア
日本がアニマルウェルフェア後進国から脱却するためにも、まずは私たちが意識を変えていかなくてはいけません。
手軽にできる「食」を通して、アニマルウェルフェア実現のためにできることをやってみましょう。
1. アニマルウェルフェアに配慮した商品の選択
アニマルウェルフェアに配慮した商品を選ぶことは大切な行動です。具体的には平飼い、放し飼い卵、放牧されている牛の牛乳、グラスフェッドという飼育方法で育てられた牛の牛乳・牛肉、放牧豚など、動物の生態に合わせた飼育環境で育った動物たちを購入するという選択です。
このような情報は商品のパッケージに書かれていたり、ネット通販であれば商品情報として記載されていることが多いため、購入前にチェックしてみてください。
グラスフェッドとは、牧草のみで育てる飼育方法です。グラスフェッドは放牧で飼育されており、エサは牧草や干し草のみで、野生と同じような環境で育てることを目指しています。牛たちはエサを探すために広大な土地で動き回るため、従来の飼育方法で育った牛よりも赤みが多く低脂肪な肉質をしていることから、健康志向な人からも注目を浴びています。
2. 認証マークのついた食品の選択
よりわかりやすく、アニマルウェルフェアに配慮した商品を選択する方法として「一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会」が付与している認証マークが付いた商品を選択することもおすすめです。
「一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会」は、アニマルウェルフェアの推進・普及を目的に設立され、ヨーロッパの制度などを基準に、アニマルウェルフェアに特化した独自の認証制度を設定しています。
この制度は、2016年に乳牛から運用を開始し、5つの自由を守り、各評価項目を80%以上クリアした農場に対して認証をしています。その認証された農場で育った家畜から生産された食品に、認証マークをつけて販売をしています。
3. 植物性食品の選択
卵や乳製品、はちみつなどの動物性食品を一切口にしないヴィーガンとまでいかずとも、植物性食品を積極的に選択する方法もあります。最近ではプラントベースのお肉として大豆ミートなどをスーパーで購入できるようにもなってきました。
ここでは、具体的な大豆ミートの商品を紹介します。
マルコメ「大豆のお肉」
お肉のみならず、カレーや麻婆豆腐、ボロネーゼなど手軽に食べられるものもあるのが魅力です。
大塚食品「ゼロミート」
手軽においしく植物性食品が食べられます。ソーセージやハムなどもあり、様々な料理に使えるのが魅力です。
大塚食品 HPより
伊藤ハム「大豆ミート」
「まるでお肉のような」おいしさの食感・味・香りにこだわって作られた大豆ミート商品が多くあり、おつまみの王道ジャーキーもあります。
伊藤ハム HPより
日本ハム「ナチュミート」
大豆特有の青臭さを軽減する独自の製法で、大豆ミートながらお肉のような旨味を再現した商品が複数あります。
イオン「Vegetive(ベジティブ)」
健康や環境に配慮し、毎日の食事の中で植物由来の食品を積極的に取り入れられるよう、肉、乳製品、白米、小麦などを植物性の素材に置き換えた商品が多数あります。
まとめ
企業や行政の取り組み、植物性食品の増加など、アニマルウェルフェア後進国である日本でも、少しずつ前進してきているというのを感じられたのはないでしょうか。日本は遅れているなあと思うよりも、今自分たちに何ができるかを考えるきっかけになればうれしいです。
今回見てきた畜産以外にもペットショップ、動物園、水族館、飼育されているペットなど、日本が抱えるアニマルウェルフェアの課題は多くあります。動物たちのために、自分たちにできることを見つけ、少しずつでも行動に移していきましょう。
知っていますか「アニマルウェルフェア」②日本の現状
前編では「アニマルウェルフェア」先進国のイギリスの状況を紹介しました。
後編の本記事では、「アニマルウェルフェア」後進国と言われる日本の現状を紹介します。少しでもアニマルウェルフェア実現に向けて前進するために、まずは現状を知ることが大切です。
日本の実情を知り、アニマルウェルフェアを考えるきっかけになればうれしいです。
日本のアニマルウェルフェアに関する認知度
日本がアニマルウェルフェア後進国と言われる要因の一つに、知名度の低さが考えられます。
認定NPO法人アニマルライツセンターは、2016年から毎年「畜産動物に関する認知度調査アンケート」を実施しています。この調査では、毎回同じ10項目の質問を設け、回答者は「知っている」「聞いたことがある」「知らない」の3つから選択します。
質問項目
- 母豚の多くが、妊娠ストールという、方向転換できない狭い囲いの中に閉じこめられていることを知っていますか?
- 子豚の多くが、麻酔なしで去勢、歯・尾の切断をされていることを知っていますか?
- 卵用の鶏の多くが、バタリーケージという、狭い金網の中(一羽あたり22センチ×22センチほど)で飼育されていることを知っていますか?
- 卵用の鶏の多くが、麻酔なしでクチバシを切断されていることを知っていますか?
- 肉用の鶏(ブロイラー)が、早く成長するように品種改変されており、その結果、病気になりやすくなっていることを知っていますか?
- 乳牛の多くが、つながれた状態でほとんどの時間を過ごしていることを知っていますか?
- 牛の多くが、麻酔なしで去勢、角の切断をされていることを知っていますか?
- 「アニマルウェルフェア」、あるいは「動物福祉」という言葉を知っていますか?
- 平飼卵、あるいは放牧卵が、スーパーなどで販売されていることを知っていますか?
- ヨーロッパで禁止されている飼育方法が、日本で行われていることを知っていますか?
※質問5のみ2016年は未実施
結果
回答者全員の認知度
2022年は『「アニマルウェルフェア」、あるいは「動物福祉」という言葉を知っていますか?』という質問に対し、有効回答数1214のうち、81.5%が「知らない」と回答をしています。
81.5%という数字の多さに驚かれるかもしれませんが、2016年以降毎年実施している本調査で、「知らない」と答えた人の割合は2022年が一番低い結果です。
乳牛に関する質問の結果は前年との差はあまり見られませんでしたが、他の質問は前年よりもそれぞれ平均1.5%程認知度がアップしています。
しかしながら、全体の8割強が「知らない」と回答しています。
年齢別の認知度
上のグラフは2022年の結果です。10代から20代の認知度が高い傾向にあるのは毎年のことですが、2022年の結果の特徴としては、2021年と比べて、20代から40代にかけて特に認知度が上がっています。
低い年代から徐々に認知度が高まっており、今後も低い年代から認知度が上がっていくことが予想されています。
世界から見た日本
世界14か国に拠点を持つ国際的な動物保護団体、「世界動物保護協会(WAP)」が公表した 2020年版の動物保護指数(API)を紹介します。
評価対象は日本を含む50か国です。アニマルウェルフェアの法規制や政策に関する 10 項目に関して、最高レベルを指すAから最低レベルのGまで7段階評価で行われます。
日本は総合評価E、各項目も軒並み低い結果であり、日本のアニマルウェルフェアの対応の遅さを示す結果です。なお、本記事の前編でアニマルウェルフェア先進国として紹介したイギリスは総合評価Bでした。
<参考>10項目の内容と日本の評価
評価項目 | 評価 |
---|---|
動物の知覚は法律によって正式に認められているか | F |
動物に苦痛を与えることを禁止する法律があるか | D |
畜産動物の保護について | G |
管理下の動物の保護について(展示動物や毛皮産業など) | D |
コンパニオンアニマルの保護について | D |
使役動物および娯楽に用いられる動物の保護について(サーカスや闘犬など) | G |
科学研究に用いられる動物の保護 (動物実験) | E |
野生動物福祉の保護 | E |
動物福祉における政府の責任 | F |
OIE動物福祉基準の遵守状況 | F |
日本の採卵鶏の飼育状況
アニマルウェルフェアの中でも、消費者という立場で多くの人に関わりがある家畜業界の現状を見ていきます。
日本人は国際鶏卵委員会(IEC)の調査では世界第2位と、卵の消費量が多い国です。年間でひとり当たり平均338個の卵を消費しているとされ、ほぼ1日1個は食べている計算になります。
この卵を産むために育てられているのが採卵鶏です。採卵鶏の飼育方法としては主に4つあります。
- 放牧
- 平飼い
- エンリッチドケージ
- バタリーケージ
※アニマルウェルフェアの実現度が高い順に記載
最もアニマルウェルフェアの実現度が低い、つまり動物(採卵鶏)への負担が大きいバタリーケージでの飼育が日本で最も多い飼育方法です。
2015年の「採卵鶏の飼養実態アンケート調査報告書」によると、日本の養鶏場の92%以上がバタリーケージを採用していました。バタリーケージは、B5サイズくらいの非常に小さなケージを何段にも積み重ねた飼育方法です。効率的かつ安定的に生産できるといった理由から、この飼育方法が日本では主流になっていると考えられます。
養豚(母豚)の飼育状況
養豚の飼育方法の中で、アニマルウェルフェアという観点から特に問題視されているのが「妊娠ストール」と呼ばれる、母豚を飼育する檻の使用です。妊娠をした母豚を、出産までの約4カ月間、方向転換もできないほど狭い檻に一頭一頭入れる飼育方法です。
日本において2018年に日本養豚協会が実施した「養豚農業実態調査」の調査では、91.6%が妊娠ストールを採用していました。
この調査は2007年、2014年と、2016年以降は毎年行われており、2007年の調査結果では妊娠ストールの採用率は83.1%でした。有効回答数にばらつきがあるものの、約10年日本では変化がほぼなく、大多数が妊娠ストールを採用し、母豚がアニマルウェルフェアからかけ離れた状況下で飼育されていることがわかります。
2018年時点でストールを採用していると回答したうちの10%が今後「群飼養を検討する」と回答しており、この点は期待ができますが、実現には国による法整備といった、具体的かつ強制力のある対応が必要であると考えられます。
母豚の辛い一生
子どもを産むために飼育される母豚は、生後8カ月程度で人工授精またはオスとの交配によって種付けされ、母豚となる豚たちは1頭1頭が妊娠ストールへ入れられます。ここで約4カ月間の妊娠期間を過ごし、出産前には分娩ストールへ移動されます。分娩ストールも妊娠ストール同様に狭く、方向転換はできません。ここでは約20日間過ごします。
その後、次の種付けのために他の母豚とともにフリーストールという、何頭かの豚を群飼いする囲いに入れられます。フリーストールも4〜8畳程度しかない広さですが、方向転換や歩くことはできます。しかし、フリーストールにいられる期間はわずかです。発情し種付けが行われるとすぐにまた妊娠ストールへ戻されます。
母豚たちはこのようなサイクルで平均1年に2.2産させられ、生後4-5年で屠殺されます。多くの時間を方向転換の出来ない空間で過ごし、その一生を終えることになります。
まとめ
日本のアニマルウェルフェアの実現度は国内で見ても、世界から見ても非常に低いことがおわかりいただけたのではないでしょうか。
今回紹介した家畜に関する現状はほんの一部です。知れば知るほど、辛く、心を痛めることもあるかもしれません。しかし、消費者という立場から、さらに深く多くの現状を知っていただきたいと思います。
次回の記事では、日本の取り組みや、私たちにできることをご紹介します。
知っていますか「アニマルウェルフェア」①イギリスの取り組みと現状
突然ですが「アニマルウェルフェア」という言葉を聞いたことはありますか?言葉自体は聞いたことがあっても、実際に「アニマルウェルフェア」が何なのかを説明できる人は少ないかもしれません。
日本では動物愛護法が改正されたり、ペットショップのあり方を問うニュースを見聞きすることも多くなってきました。しかし、日本はアニマルウェルフェア後進国と言われるほど、動物に対する考え方が古く、アニマルウェルフェアを実現するためには多くの取り組みが必要とされています。
今回は「アニマルウェルフェア」について説明し、アニマルウェルフェア先進国であるイギリスにおける取り組みをご紹介します。
アニマルウェルフェアとは
「アニマルウェルフェア」は「動物福祉」と訳されることもあり、「感受性を持つ生き物としての家畜に心を寄り添わせ、誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なく、行動要求が満たされた、健康的な生活ができる飼育方法をめざす」畜産のあり方です。
アニマルウェルフェアの歴史
アニマルウェルフェアという考え方は、1960年代にイギリスで生まれました。発端は、イギリスの家畜福祉の活動家ルース・ハリソンが工業的な畜産の虐待性を批判したことに始まります。そして、次第にこの考えが一般市民の注目を集め、広がりました。
これを受けてイギリス政府は「すべての家畜に、立つ、寝る、向きを変える、身繕いする、手足を伸ばす自由を」という基準を提唱しました。これが後のアニマルウェルフェアの基本原則となる「5つの自由」の元になっています。
5つの自由
この「5つの自由」は家畜を含む、ペットや実験動物など、あらゆる動物の動物福祉政策の基準であり、国際的な共通認識となっています。
- 空腹と渇きからの自由
- 不快からの自由
- 痛みや傷、病気からの自由
- 正常な行動を発現する自由
- 恐怖や苦悩からの自由
アニマルウェルフェアの先進国イギリスで進められる法整備
アニマルウェルフェア後進国と言われる日本とは逆に、アニマルウェルフェアへの意識が高いイギリスでは、アニマルウェルフェア関連の法整備が進んでいます。
イギリスで進むアニマルウェルフェアに関する法整備
アニマルウェルフェアに関する法律として、2006年に「アニマルウェルフェア法」が制定されました。同法では、家畜など人間の飼養下にある動物に限らず、野生動物を含めた全ての脊椎動物(人間を除く)を対象に、致傷行為などの各種禁止事項を定めています。
具体的には以下の内容が盛り込まれており、日本の動物愛護法よりもアニマルウェルフェアの実現に向けて、明確で踏み込んだものになっています。
- 闘牛や闘犬などの動物を戦わせる行為の禁止。
- 16歳以下と推定される人への動物の販売の禁止。
- ある動物に関して責任を有する者(一時的か永続的かは問わず)がその動物に適切な環境、食事などを与えていないと判断される場合、検査官(国または地方政府から任命され強い権限を付与されている)は期限を定めた改善の要求を通知できる。
- 検査官は人の飼養下の動物が苦痛を受けていると判断した場合、それらの動物の苦痛を軽減するために必要な措置を取ることができる。
さらに2019年には「アニマルウェルフェア法」が改正され、「警察犬など、業務中の動物への危害は自己防衛として認められない」といった内容も組み込まれています。
イギリスで進む家畜のアニマルウェルフェア
採卵養鶏場や養豚場などの家畜の飼育方法や飼育環境も率先して改善されています。
採卵養鶏場では「バタリーケージ」が禁止
「バタリーケージ」とは、B5サイズほどの鶏一羽分にも満たない非常に小さなケージに入れられ、そのケージを何段にも積み重ねた飼育方法です。
イギリスに限らず、EU、オーストラリア、アメリカの一部の州などでも禁止となっています。
養豚場では「妊娠ストール」が禁止
「妊娠ストール」とは、これから子どもを産む母豚を一頭ずつ飼育するための檻で、母豚が気づかずに子豚を踏み殺してしまわないように導入されています。しかし、この檻の中で母豚は方向転換すらできない状態です。
こちらもイギリスのみならず、スウェーデン、EU、アメリカの一部の州などでは禁止されています。また、オーストラリアの豚肉業界でも自主的に妊娠ストールを廃止しています。
民間でも行われるアニマルウェルフェア
イギリスを代表するスーパーマーケット、ウェイトローズでも積極的にアニマルウェルフェアの取り組みが行われています。
具体的には、自社ブランドのツナ缶に使用するマグロは、2009年より本来の漁獲対象とは異なる種を漁獲しにくく持続性が高い一本釣りで獲られたマグロのみを使用しています。
そして2013年には海のエコラベルとして知られる「海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)認証」を取得しました。この認証の審査は、18カ月間かけて行われる厳しいものであり、世界水産物持続可能性イニシアチブ(GSSI)で承認された唯一の国際的な水産物ラベリング制度であり、世界最高水準の認証制度といえます。
まとめ
「アニマルウェルフェア」という言葉だけではどんなものなのかよくわからないかもしれません。しかし、鶏卵や牛肉、豚肉などの消費者という立場から考えると、自分たちに密接した問題であるということがおわかりいただけたでしょうか。
本記事では先進国の現状を紹介しましたが、後半ではアニマルウェルフェアの後進国日本の現状を紹介します。日本のアニマルウェルフェアがどのような状況かもぜひ知っていただきたいと思います。
ペットだけじゃない!家畜の動物福祉に世界が大注目
犬や猫などのペットの動物福祉は日本でも関心が高まっていますが、今、欧米を中心に家畜の動物福祉も大きな注目を集めています。みなさんが普段口にしている食肉の裏には、どのような現実が隠されているのでしょうか。
世界に遅れをとっている日本は、何を考え直さなければならないのでしょうか。
今回は、家畜の動物福祉をテーマに世界と日本の今を考えましょう。
日本の畜産業の動物福祉は遅れてる?
国産のお肉と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。なんとなく、美味しく安全で清潔なイメージが浮かぶかもしれません。
では、家畜の動物福祉についてはどうでしょうか。
イメージが湧きにくいかもしれませんが、実は家畜の動物福祉に関して、日本は残念ながら「後進国」と言われています。
国際基準では・・・
OIE(世界動物保健機関)の陸生動物衛生規約(2004年に作成され、最新版は2019年版)では、基本原則として、次の5つの「自由」が掲げられました。
①飢えと渇きからの自由
②恐怖と苦痛からの自由
③寒暖の不快からの自由
④痛み、傷、病気からの自由
⑤正常な行動様式を発言する自由
OIEは、これらの家畜の「自由」を守るよう求めています。具体的には、動物が十分に動き回れる十分なスペースや清潔な環境を保つことや、動物が感じる痛みや恐怖を最小限にまで抑えた方法で飼育や屠殺を行うことが必要とされます。
日本政府はこの指針作りに携わりましたが、残念なことに、日本語訳は未だ正式には公表されていません。
欧米で進む畜産業の改善
主に欧米先進諸国では、家畜の動物福祉を推進する飼育方法や屠殺方法にシフトする動きが見られます。
例えば、鶏をケージにぎゅうぎゅう詰めにすることなく、自由に地べたを歩き、羽を広げられるように放し飼いをする「ケージフリー」方式をとることが、多くの企業、地域、さらには国レベルで宣言されています。
牛や豚などの他の家畜動物に関しても、OIEの指針に基づいて飼育・屠殺するよう、各国で法律の整備や監視の強化がなされています。
日本は動物福祉の後進国
各国で畜産業の動物福祉への取り組みが加速する中、日本は他国に遅れをとっています。
実際、OIEや、動物愛護団体の国際NGO「ワールド・アニマル・プロテクション(WAP)」などによる動物福祉の視点からみた日本の畜産業の評価は、「先進国と比較するとかなり低いレベルである」という結果が出ました。
OIEの勧告を受け、2019年6月に改正された改正動物愛護法では、畜産業者に対し地方自治体などが動物愛護法の視点から指導をすることが努力義務として盛り込まれましたが、改善のスピードはかなり緩やかなのが現状です。
動物福祉に一歩前進した企業たち
家畜の動物福祉に考慮した企業は、日本ではまだごく一部ですが、ここでは、アニマルライツセンターが公表した「アニマルウェルフェアアワード2020」に選ばれた企業をご紹介します。
イオン
プライベートブランドのケージフリー卵の販売を始め、今後、販売店舗を全国に増やしていく姿勢を示しました。
ラッシュジャパン
これまでもケージフリーの卵を選んでいましたが、2019年にはさらに、卵を全く使わない「エッグフリー」を宣言しました。他にも、動物実験を行わずに作られたもののみを販売する宣言もしています。
貞光食糧工業
日本で初めて、ガスで鶏の意識を失わせてから屠殺する「ガススタニング」という手法を導入しました。
ホライズンファームズ
日本で初めて、母豚をストールに閉じ込めない「ストールフリー宣言」を出しました。
日本では一般的に、母豚は一頭ずつ「ストール」に閉じ込められ、ほとんど身動きのできない状態で過ごさなければならず、その間強いストレス症状を示します。他国ではすでに規制がある国も多いですが、日本ではいまだにこの方法が主流です。
イケア
ホットドッグやミートボールなど、植物性たんぱく質を使った手に届きやすい価格の販売を増やしています。植物性ホットドッグ『ベジドッグ』は、COP24(気候変動枠組条約第24回締約国会議)でも提供されました。
世界で広がるヴィーガニズム
ヴィーガンとは?
ヴィーガンとは、宗教や体質以外にも、動物福祉、環境保全、健康維持など様々な理由から、動物性の食べ物(肉、魚、卵、牛乳、蜂蜜など)を一切食べず、植物性の食べ物(野菜、果物、穀物、豆類など)から栄養を摂る人たちのことを言います。
なぜ今、ヴィーガンか?
今、世界のヴィーガン人口が爆発的に拡大しています。
Instagramでも、「#vegan」のタグを付けた投稿は1億件近くに達し、ヴィーガンが大きな注目を浴びていることがわかります。
1.動物愛護
近年、ペットの動物福祉については欧米を中心に関心が高まっていましたが、今度は家畜についても動物福祉を見直す動きが広まっています。
中でも多くの人に食肉について考え直すきっかけとなったのが、畜産業の裏側を映し出したいくつかのドキュメンタリー映画です。
ほとんど動き回れないほど狭い飼育場で育てられ、生きたまま痛めつけられて泣き叫ぶ悲惨な動物の姿を見て大きなショックを受け、「少なくとも自分はこの動物虐待に加担したくない」と思った人たちも多いようです。
2.環境保全
畜産業開拓のための大規模な森林破壊や、家畜の排せつ物などを合わせると、畜産業が排出する温室効果ガスは、世界中の全ての交通手段(飛行機、車、船、列車など)が排出する量とほぼ同レベルであるのが現状です。
さらに、世界中の陸地の実に26%が家畜の放牧地に使われている上、農地の75〜80%が家畜が食べる飼料の生産にあてられており、仮に畜産業をなくしたとしたら、現在の世界の人口の3倍もの人々の食事を賄えるようになるとの研究もあります。
環境保全が世界中で緊急かつ重大なトピックとなっている今、特に環境保全に意識の高い欧米を中心に畜産業の見直しが進んでいます。
3.健康維持
ヴィーガンは不健康だと思う方もいるかもしれませんが、実はヴィーガンにはダイエットや腸内環境改善効果のほか、ガンや糖尿病、心臓病などの疾患のリスクが下がるという研究も次々と発表されています。
ただし、ヴィーガンとひとくちに言っても、豆や穀物を食べない偏った食事をしたり、砂糖などを多く含む加工食品を食べ過ぎれば、健康には当然被害が及びます。一方偏食が体に悪いのは肉食でももちろん同じで、「ヴィーガンだから不健康」という理解は早とちりでしょう。
あの有名人もヴィーガン
ヴィーガンの有名人として、シンガーソングライターのアリアナ・グランデやビリー・アイリッシュ、テニス選手のノバク・ジョコビッチのほか、タイタニックでヒロインを演じたケイト・ウィンスレットなどが知られています。
少し前までは、欧米においてもヴィーガンに対しては偏見が多かったようですが、有名人が次々にヴィーガンを宣言することで、ヴィーガンに関心を持つ人が増えたとも考えられます。
日本でも大人気のアリアナ・グランデは、記者に対し、「私、人間よりも動物の方が好きなの。冗談じゃないわ、本当よ。」と答えたそうです。そんな彼女は、日本の枝豆や豆腐、ひじきなどがお気に入りの食材だと明かしています。
まとめ
今回は、ペットから少し離れ、家畜の動物福祉について、世界と日本の今を考えました。
家畜動物の境遇の改善だけにとどまらず、環境保全や健康への関心の高まりも相まって、世界中でヴィーガン人口が増え続け、ベルリンでは15%がヴィーガン、他のEU諸国でも若者を中心に国民の約10%がヴィーガンという時代になっています。
アメリカでも、ここ数年でヴィーガン人口が6倍に増え、欧米のレストランではヴィーガンメニューが当たり前のように提供されるようになっています。
ペットの飼育に関しても遅れを取る日本ですが、家畜に関してもそれは同様です。食肉の裏側に目を背け続けてきた日本は、まだまだ畜産業について海外諸国の事例から学ぶべきことが多いのではないでしょうか。
あなたは大丈夫?知らない間に「ペットハラスメント」していませんか?
みなさんは「ペットハラスメント」という言葉を聞いたことはありますか?
「パワハラ」や「セクハラ」といった○○ハラスメントという言葉が広く認知されるようになりましたが、中にはあまり聞きなれない名前のハラスメントもあるかもしれません。
今回は、ペットを飼っている人に特に知ってもらいたい「ペットハラスメント」についてご紹介いたします。
ペットハラスメントとは
「ハラスメント」とは、いろいろな場面での「嫌がらせ、いじめ」のことです。
ペットハラスメントには大きく分類すると、以下の2種類があります。
- 他者へのペットを通してのハラスメント
- ペットに対してのハラスメント
一般的には前者を指す場合も多いようですが、後者も広義の意味でペットハラスメントに含まれると言われています。
他者へのペットハラスメント
ペットを飼っている人の中には、無意識のうちに「みんなペットを好きに違いない」という考えや、「うちの子なら大丈夫」という気持ちになってしまうことがあります。
しかしこの世の中には、どうしても動物が苦手な人や、過去にトラウマがあって見ることも触ることも辛い人など、さまざまな人がいます。ペットを通して、動物が苦手な人やそうでない人であっても周りの人にとって迷惑になるような行為はすべて「ペットハラスメント」に当たります。
例えば、あなたは以下のような行為をしていませんか?
「私は十分に気をつけているから大丈夫!」と思っていても、もう一度確認してみましょう。
他者へのペットハラスメント① 長すぎるリード、ノーリードで散歩
犬が怖いと感じる人は、散歩中の犬のリードが長すぎたり、ノーリードで歩いていたりすると、「自分に襲いかかってくるのではないか」と不安になります。
犬を自由に歩かせたい気持ちはわかりますが、リードを離すのはドッグランなど犬が自由に走り回っても良いところだけにし、散歩中はしっかりとリードをつけましょう。
他者へのペットハラスメント② トイレマナーを怠る
お散歩中、ペットの排泄物を持って帰らなかったり、おしっこをそのままにしておいては、他の人が嫌な気分になります。時にはご近所とトラブルになることも。
私はきちんと水で流しているから大丈夫だと思っていても、実はそれだけでは足りないケースもあります。そもそもペットに外で排泄させること自体、都市部ではNGとされるようになってきています。
犬の散歩中のトイレマナーについては、さまざまな意見があります。詳しくは以下の記事をご参照ください。
他者へのペットハラスメント③ 他者に向かって吠えさせる
ご近所さんとの問題にもなりやすいのが騒音トラブル。大きな音が苦手な人や、犬を飼ったことのない人は嫌な思いをしているかもしれません。
吠えは、なくすことが難しい面もありますが、しつけによって改善できる可能性も高いです。幼い頃からしつけを行い、それでも無駄吠えがなくならない場合にはしつけ教室に通ったり、ドッグトレーナーに相談するのも一つの手でしょう。
他者へのペットハラスメント④ 他者に飛びつかせる
特にペットが苦手な人にとっては、ペットに飛びつかれることはものすごく恐怖を感じます。ペットにしてみれば、はしゃいでいるだけかもしれませんが、相手の人は怖い思いをしているかもしれません。
愛犬の様子を注意深く見ながら、相手に飛びつかないように飼い主さんが制御しましょう。
他者へのペットハラスメント⑤ 野良犬・野良猫への餌付け
野良犬や野良猫に餌をあげることもハラスメントになります。糞尿による被害もありますが、そこヘまた多くの野良犬・猫が集まってきてしまったり、繁殖しすぎてしまうなど、徐々に地域の深刻な問題へと発展していく可能性があります。
かわいそうだという気持ちはわかりますが、野良犬や野良猫を発見したら、餌をあげるのではなく、まずは近くの愛護団体や獣医師に相談してみましょう。
ペットへのハラスメント
ペットへのハラスメントは、ペットに対して飼い主が行うべき責任を果たさず、ペットが不健康になったり、ストレスを受けたりすることをいいます。ペットへの暴力などもペットハラスメントに含みますが、無意識にやってしまっているかもしれないペットハラスメントもあります。
ペットへのハラスメント① ごはんをあげない/あげすぎる
ペットにごはんを与えなかったり、栄養バランスを考えずに偏った食事を与えたりと、ペットの健康管理を怠ることはハラスメントにあたります。
逆に、ペットがかわいいからといって食べ物をあげすぎても肥満の原因になるためよくありません。同様に、お饅頭やケーキをあげてみたり、味の付いたお菓子を与えることも危険です。
飼い主さんが責任を持って、ペットの健康管理をしてあげる必要があります。
ペットへのハラスメント② 運動、散歩を十分にさせない
ペットも、人間と同じように運動をしなければ不健康になってしまいます。ペットによって、またそれぞれの種類によっても、適切な運動量は異なります。
例えば、大型犬の散歩ですと、一般的には「1日2回、1回あたり30~60分ほど」の散歩が必要と言われています。
このように、必要な運動をさせてあげることができず、「忙しくて散歩に行く時間はないから」「部屋で自分で動いているから大丈夫でしょ」と、散歩に全く行かないでいることはハラスメントにあたります。
ペットへのハラスメント③ 留守番が長すぎる
毎日長時間留守番をさせられていると、ペットにストレスがたまったり、不安症になったりする恐れがあります。また、排泄物が放置されて不衛生な環境に置かれたり、ペットの異変に気づけなかったりと、さまざまな問題も起こり得ます。
どんなに元気でお利口なペットでも、お留守番は長くても10時間以内にしましょう。これも個体によって限界である時間は異なりますし、お留守番する環境や時間帯によっても変わってきます。
海外では、6時間以上のお留守番は動物虐待とされ、罰則規定が設けられている国もあるほどです。理想論としては、お留守番の時間は短ければ短いほど良いでしょう。
ペットへのハラスメント④ 嫌がることをしつこくする
蹴る、殴るなどの暴力行為は論外ですが、嫌がっているのに服を着せたり、長時間撮影をしたりと、ペットがストレスを感じることをするのも立派なペットハラスメントです。
ペットはおもちゃではありません。ペットの様子をよく観察して、ペットが嫌がることは極力しないようにしましょう。
ただし、犬種によっては服を着せること自体が良い場合もあります。そのような場合は、トレーニングを積むことで、服を着ること自体が徐々に好きになっていきます。当然ですが、これはここで言うペットハラスメントには当てはまりません。獣医療も同様です。
最後に
犬や猫が苦手な人ももちろんいますし、過去に辛い経験があってトラウマがある人もいるかもしれません。自分がペットを飼っていると忘れてしまいがちですが、「ペットに対してさまざまな想いを抱いている人がいる」ということは忘れてはならないでしょう。
また、ペットに対しても、無意識のうちにストレスをかけて「ハラスメント」をしてしまっているかもしれません。ペットの気持ちをよく考えて、ペットが嫌がることやストレスがたまること、健康を害することはしないように注意しましょう。