【獣医師監修】風邪だけじゃない!猫のくしゃみや鼻汁で考えられる病気

くしゃみは動物にとって生理的に正常な反応で、健康な状態でも見られます。

しかし、くしゃみに鼻汁が伴ったり、明らかに普段よりも回数が多い場合には何か異常があると考えていいでしょう。多くは鼻の異常が考えられますが、外から見えない分、何が起こっているのか不安になる方も多いのではないでしょうか。

今回は猫のくしゃみ及び鼻汁で考えられる疾患について解説します。

くしゃみと逆くしゃみ

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くしゃみとよく似た言葉に「逆くしゃみ」というものがあります。これは鼻から空気を連続して吸い込む呼吸のことです。通常のくしゃみは空気を吐き出しますが、逆くしゃみはくしゃみを吸い込むように見えることから、そう呼ばれています。

くしゃみも逆くしゃみも、健康なときでも見られることがあり、通常はすぐに治まります。しかし、なかなか治まらないときや、何度も繰り返すときは要注意です。咳との鑑別が難しいこともあるため、動画を撮っておくと動物病院を受診したときに役立つことがあります。

鼻汁の性質

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鼻汁の色や性状(サラサラかネバネバかなど)を確認することで、治療法などが変わることがあります。具体的には、黄色い膿のような鼻汁のときには細菌感染が疑われるので抗菌薬を使うことになります。

鼻汁は性質によって以下のように分類されます。

漿液(しょうえき)性鼻汁

一般的に透明でサラサラの鼻汁を指します。

アレルギー性鼻炎、ウイルス性鼻炎の感染初期、循環血液量の過剰のいずれかが考えられ、基本的にこれらは両側性に発生します。

また、ウイルス性鼻炎では一週間以内に細菌感染を発症することが多いため、漿液性鼻汁から粘液性あるいは膿性鼻汁へと移行します。逆に、アレルギー性鼻炎では長期間漿液性鼻汁が続くことが多く、季節や環境によって症状にムラがあることが多いと言われています。

膿性鼻汁

最も一般的な原因は細菌性鼻炎ですが、通常はウイルス性、真菌性、寄生虫性の鼻炎、外傷、異物、腫瘍、歯牙疾患などから続発します。このうち両側性なのはウイルス性及びアレルギー性鼻炎で、他は片側性がほとんどです。

しかし、中には病状の進行とともに両側性に移行することもあります。

血様鼻汁

腫瘍、真菌性鼻炎、慢性経過の細菌性鼻炎、歯牙疾患、外傷、異物、出血性疾患が考えられます。

腫瘍が原因の場合には、経過とともに鼻梁部の腫脹などの顔面変形や眼球突出、神経症状などが見られるようになります。

くしゃみや鼻汁で考えられる疾患

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猫のくしゃみや鼻汁は、ただの風邪と考えてしまいがちですが、放置してはいけない疾患が隠れている可能性もあります。自己判断せず、獣医師に相談しましょう。

上部気道感染症

【症状】
くしゃみ、鼻汁、眼脂、発熱、口内炎、歯肉炎、食欲不振など。
【原因】
猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルス、猫クラミジア、マイコプラズマなどの単独あるいは混合感染。これらは感染猫の唾液、鼻汁、眼脂などの分泌物から他の猫へ伝播する。
【備考】
すでに猫免疫不全ウイルス(FIV)や猫白血病ウイルス(FeLV)に感染していると重症化しやすいと言われている。ウイルスが原因となるものでは、混合ワクチンによって感染リスクや症状の重篤化を抑えることができる。

副鼻腔炎

【症状】
くしゃみ、鼻汁(膿性)、食欲不振など。悪化すると蓄膿症となる。
【原因】
鼻炎の慢性化。鼻炎は感染(ウイルス、細菌、真菌など)、腫瘍、異物が原因となることが多い。これらから細菌の二次感染が生じ、鼻甲介粘膜の肥厚が起こり、前頭洞内や副鼻腔内が細菌の繁殖しやすい環境となる。
【備考】
鼻炎の段階での適切な治療によって副鼻腔炎への進行を止める必要がある。内科治療だけでの完治は困難と言われており、外科的に貯留した膿汁を排出する必要があるとされている。

鼻咽頭ポリープ

【症状】
咳、いびき、くしゃみ、鼻汁、努力性呼吸、嚥下困難など。
【原因】
鼻咽頭に発生するポリープ。同腹の子猫に発生することもあるため、遺伝性疾患として示唆されている。
【備考】
ポリープから二次的な細菌感染が中耳や内耳に及ぶと、縮瞳、眼瞼下垂、第三眼瞼腺脱出などを呈することもある。

鼻腔内腫瘍

【症状】
くしゃみ、鼻汁、鼻出血、顔面の変形など。
【原因】
リンパ腫、腺癌、扁平上皮癌がほとんどで、まれに線維肉腫や骨肉腫が認められる。鼻腔内腫瘍のほとんどは悪性と言われている。
【備考】
治療は放射線療法や化学療法が用いられる。通院頻度やコストなど獣医師としっかり話し合って最適な治療法を模索していく。

歯周病

【症状】
口臭、歯石、歯肉の赤みや腫れ、食欲不振、くしゃみ、鼻汁、流涎(よだれ)など。
【原因】
歯垢や歯石の中に存在する細菌によって歯肉に炎症が起こる。
【備考】
猫の口腔内はアルカリ性で、歯垢が歯石に変化するスピードが人間よりも速いと言われている。デンタルケアによる日常の予防が非常に重要。

鼻腔内異物

【症状】
急なくしゃみ、逆くしゃみ、鼻汁、鼻出血など。
【原因】
雑草、植物の種、食べ物などが鼻の中に侵入することによる。
【備考】
鼻腔内異物によるくしゃみは突然急激に起こるため、慢性的にくしゃみが続くようなら別の疾患を疑う。

まとめ

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普段から生理的に起こる徴候を見て、いつもと違うと判断するのは意外に難しいものです。異常を見つける目を、しっかりと養いたいですね。

何か気になることがあれば、まずは動物病院に相談しましょう。

【クイズ】今年も忘れず接種しましたか?狂犬病ワクチンクイズ

例年春に集団予防接種を行っている狂犬病ワクチン。今年は新型コロナウイルスの影響で集団接種を中止した自治体も多かったですが、忘れずに接種しましたか?もしかして、「一年くらいは打たなくても大丈夫」なんて思っていませんか?

本記事では、狂犬病についてクイズ形式で解説していきます。

それではさっそく、犬の狂犬病クイズにチャレンジしてみましょう!
Q.1 狂犬病について「誤っている」のはどれ?
正解です!
不正解です!
正解は「世界では毎年数百人が狂犬病に感染し亡くなっている」です。
現在でも毎年5万人以上が狂犬病に感染して死亡しており、そのほとんどはアジアとアフリアが占めています。

狂犬病は、犬だけでなく人間を含む全ての哺乳類に感染するウイルス性の人獣共通感染症です。一方で、予防接種はもちろん、感染動物に咬まれた後でも、発症前であればワクチンの投与が有効であることが知られています。

狂犬病ウイルスは唾液中に排出されるため、咬み傷からウイルスが体内に侵入することで直接感染します。
Q.2 犬の狂犬病の症状や治療について「誤っている」のはどれ?
正解です!
不正解です!
正解は「狂犬病に感染した可能性がある場合は生前検査が行われる」です。
狂犬病は発症したらほぼ確実に死亡する恐ろしい病気です。犬が発症した場合は、治療は行われず安楽死させられます。また、犬での生前検査は検出率が低く実用化されていないため、発症していなくてもウイルスを保有している可能性があれば、その犬自身が新たな感染源となってしまうことから安楽死させられます

狂犬病の症状としては恐水症や恐風症がよく知られます。他にも異常に興奮したり、攻撃的になったりし、末期には呼吸麻痺により死亡します。
Q.3 日本の狂犬病事情として「誤っている」のはどれ?
正解です!
不正解です!
正解は「室内飼いであればワクチン接種は不要」です。
室内飼いであっても、散歩などで他の哺乳類と接する機会は十分にあります。室内、屋外に関わらず、全ての犬で予防を徹底しましょう。

日本では1950年に狂犬病予防法で狂犬病ワクチンの接種が義務付けられてから、わずか7年で日本国内での感染がなくなりました(海外で感染し、日本で発症した例は除く)。ワクチン接種を怠ると、20万円以下の罰金の対象となり、飼い犬は捕獲・抑留されます。

なお、新型コロナウイルスの流行により多くの自治体での集団接種が中止されたことから、今年に限り12月31日までに予防注射を打てば法律に定めた期間内に接種したことになります
問正解/ 問中

今回はこちらの記事から問題を作成しました。 詳細が知りたい人はこちらも読んでみてください!
【獣医師監修】狂犬病のワクチン接種。今年は12月31日までに打とう。
【ニュース】14年ぶりの狂犬病。ワクチン接種が愛犬と日本を守る
結果発表
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【ニュース】14年ぶりの狂犬病。ワクチン接種が愛犬と日本を守る

犬の飼い主の皆さんにとっては聞き馴染みのある狂犬病。先日、14年ぶりに日本で、海外からの来日者が狂犬病を発症しました。残念ながら6月13日に亡くなられたと報じられています。 毎年通知が来るから何気なく予防接種をしているけど、日本では発症したという話も聞かないし、お金もかかるから予防接種しなくてもいいのでは?と思っている方はいませんか? しかし、全ての哺乳類に感染し、発症するとほぼ確実に死亡するこの恐ろしい病気を決して楽観視してはいけません。多くの国で感染が確認されている狂犬病がなぜ日本では発生しないのか、なぜワクチンを接種しなければいけないのかを改めて考えみましょう。

狂犬病とは

狂犬病 ワクチン 接種 狂犬病は、犬だけでなく人間を含む全ての哺乳類に感染し、発症すると有効な治療法がないため、ほぼ100%死亡するというウイルス性の人獣共通感染症です。一方で、予防接種や感染動物に咬まれた後でも、発症前であればワクチンの投与が有効であることが知られています。

感染経路

狂犬病は主に、狂犬病ウイルスに感染した動物に咬まれ、傷口からウイルスが体内に侵入することにより感染します。

潜伏期間

狂犬病は感染してから発症するまでの期間が一般に1ヶ月から3ヶ月、長い場合には感染してから1年から2年後に発症した事例もあります。なお、発症前に感染の有無を診断することは出来ません

症状

犬の場合

狂騒型では、極度に興奮し攻撃的な行動を示します。唾液の分泌が増加し、よだれを流すようになります。 麻痺型では、後半身から前半身に麻痺が拡がり、食物や水が飲み込めなくなります。

人の場合

初期症状は、発熱、頭痛、倦怠感、筋痛、疲労感、食欲不振、悪心・嘔吐、咽頭痛、空咳などの、風邪のようなものがみられます。 症状が進むと、強い不安感、精神錯乱、水を見ると首の筋肉がけいれんする恐水症、冷たい風を受けるとけいれんする恐風症、高熱、麻痺、運動失調、全身けいれんが起こります。その後、呼吸障害等の症状を示し、死亡します。
参考:厚生労働省 狂犬病に関するQ&Aについて https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/07.html

日本国内では海外からの帰国者・来日者が発症

狂犬病 ワクチン 接種 発症 1957年以降、日本で狂犬病の発症者が出たのは以下の4例のみです。それも全て海外で犬に咬まれた人が、適切な処置を行わなかったために日本で発症し、その後亡くなったケースです。

1970年

ネパールで野犬に咬まれた学生が、帰国後、狂犬病を発症し亡くなりました。

2006年11月(1例目)

フィリピンより帰国した60歳代の男性が狂犬病を発症しました。8月頃にフィリピン滞在中に犬に手を咬まれて感染したとみられます。 11月15日に風邪のような症状と右肩の痛みが現れ、19日に病院を受診、22日に狂犬病と判明、12月7日に亡くなりました。

2006年11月(2例目)

フィリピンより帰国した、1例目とはまた別の60歳代の男性が狂犬病を発症しました。8月末にフィリピン渡航中に犬に手を咬まれて感染したとみられます。 11月9日に風邪のような症状を呈したため病院を受診し、16日に狂犬病と判明、翌17日に亡くなりました。

2020年5月

フィリピンから来日した外国籍の男性が狂犬病を発症し、6月13日に亡くなりました。昨年9月頃にフィリピンで犬に足首を咬まれて感染したとみられます。
補足 臓器移植などの特別な場合を除き、人から人への感染は確認されていませんので、過度に恐れる必要はありません。

日本の狂犬病事情

狂犬病 ワクチン 接種 予防 日本は島国という地理的な環境や、衛生事情の向上、ワクチン接種の徹底により、狂犬病ウイルスの撲滅に成功しました。しかし、未だ世界中で狂犬病ウイルスが蔓延していることから、海外から日本に上陸する可能性は否定できません。

狂犬病予防法

1950年に狂犬病予防法が制定され、飼い犬の登録や予防注射を受けることが義務付けられました。 それまでは犬だけでなく多くの人間も狂犬病ウイルスに感染し、亡くなっていましたが、狂犬病予防法制定からわずか7年で、日本国内での感染がなくなりました(海外で感染し、日本で発症した例は除く)。

日本の予防接種率

厚生労働省では、都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数を毎年発表しています。平成25年度~30年度の全国の注射率は以下の通りです。
年度 登録頭数 予防接種頭数 注射率
平成25年度 6,747,201 4,899,484 72.6%
平成26年度 6,626,514 4,744,364 71.6%
平成27年度 6,526,897 4,688,240 71.8%
平成28年度 6,452,279 4,608,898 71.4%
平成29年度 6,326,082 4,518,837 71.4%
平成30年度 6,226,615 4,441,826 71.3%
犬の狂犬病予防接種率が70%以上あれば流行を防ぐことができるとされています。数字だけ見れば日本の接種率は70%を超えていますが、地域によっては50%程度のところもあり、登録されていない野犬のことを考慮するとかなりギリギリの数値です。
出典:都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等(平成25年度~平成30年度) https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/01.html

世界では狂犬病で大勢が亡くなっている

狂犬病 ワクチン 接種 海外 清浄国 日本で狂犬病ウイルスの撲滅に成功した一方で、海外では未だ狂犬病ウイルスが蔓延しています。 2018年の世界保健機関(WHO)の報告によると、世界では毎年5万9000人が狂犬病に感染して死亡しており、そのほとんどをアジアとアフリカが占めています。

日本は狂犬病清浄国

ある特定のウイルスが撲滅され、存在しないとされる国を「清浄国」といいます。実は、狂犬病の清浄国は日本を含め10カ国ほどと少なく、世界のほとんどの国で感染する可能性のある病気です。 また、2013年には、長らく清浄国とされていた台湾で野生のイタチアナグマの狂犬病が確認されており、決して「清浄国だから安全」というわけではありません。

海外旅行の際は十分注意して

「狂犬病清浄国」に暮らしていると、狂犬病への危機意識が低くなってしまいがちですが、ここまででお伝えしているとおり、狂犬病は世界中で感染の恐れがある病気です。 犬だけでなく、アライグマやコウモリなどの動物に噛まれたり引っかかれたりすると感染する可能性があります。特に、野生動物にはなるべく近づかないようにしましょう。 また、厚生労働省検疫所は、動物と直接接触する機会の多い人や、奥地・秘境など、すぐに医療機関にかかれないところに行く人に対し、狂犬病の予防接種を強く勧めています

犬の狂犬病ワクチン接種は飼い主の義務

狂犬病 ワクチン 接種 義務 日本でも犬の咬傷事故は毎年4000件以上発生しています。もし知らない間に狂犬病ウイルスが日本にやってきて、知らない間にワクチンを接種していない愛犬が狂犬病にかかり咬傷事故を起こしてしまったらどうでしょうか? 愛犬も咬まれた人もほぼ確実に死亡してしまいます。しかし、狂犬病ワクチンを接種してさえいれば、愛犬が狂犬病にかかることも、少なくとも咬んだ相手を狂犬病で死なせることはありません。 日本では感染しないから予防接種をしなくても大丈夫と考える方もいるかもしれません。しかし、それは今までの飼い主さんが責任を持って予防接種をしていたからです。日本を狂犬病のリスクから守るためにも、今後も狂犬病ワクチンを忘れずに接種しましょう