【獣医師監修】腰への負担に要注意!ウェルシュ・コーギーの好発疾患

コーギーは元々牧羊犬として活躍していましたが、現在ではイギリス王室でも飼われている犬種として有名です。

一方で、かかりやすい病気も複数あり、動物病院に通っている子も少なくありません。

今回はウェルシュ・コーギーのかかりやすい病気とおすすめの飼育環境について、獣医師が解説していきます。

ウェルシュ・コーギーの基本情報

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歴史

コーギーには、ペンブロークとカーディガンの2種類がおり、それぞれ異なった歴史を持ちます。なお、日本で多く飼われているのはペンブローク種です。

ペンブローク

ペンブロークは、1107年にフランドル(ベルギーからフランス北部にまたがる地域)の織工がウェールズに移住した際に一緒にやってきたとされています。ウェールズのペンブロークシャーで牧畜犬として飼われ、スピッツなどと交配して改良されて現在の姿になりました。

カーディガン

カーディガンは、紀元前1200年頃に生まれたと伝えられています。中央アジアからヨーロッパに導入されてイギリスにやってきて、牧畜犬として活躍していました。

有能な犬であったことから、1925年頃まではその存在が隠されていましたが、イギリス国王が飼育したことをきっかけに、世間に知られるようになりました。

身体的特徴

ウェルシュ・コーギーは、胴長短足が特徴で、体はがっしりとした筋肉質です。被毛はダブルコートです。

カーディガン種の方が少し大柄で、毛色のバリエーションが豊富です。

性格

好奇心が旺盛で、遊ぶのが大好きです。勇敢で自己主張が強いことから「性格が悪い」と言われることもありますが、物覚えも良く、飼い主に忠実であるため、しっかりしつければ良いパートナーになれるでしょう。

ウェルシュ・コーギーの好発疾患

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コーギーには、犬種に特異的に発生しやすい疾患がいくつかあります。聞き慣れないものもあるかもしれませんが、どれも気をつけたい疾患です。

大切なのは、どんな症状が出るのか、その徴候を見逃さないことです。コーギーの好発疾患を理解し、日々の健康観察に活かしてください。

椎間板ヘルニア

【症状】
腰~背中の痛み、歩様異常、後肢の麻痺、排尿障害など。
【原因】
椎間板物質の突出により、脊髄が圧迫されることによる。
【備考】
分類の中で最も重いグレードⅤでは、深部痛覚消失後から48時間以内に手術を行わないと脊髄機能が回復する可能性は低い。異常が見られたらすぐに動物病院へ。

変性性脊髄障害

【症状】
徐々に進行する後肢の麻痺に始まり、前肢、首へと進行していく。跛行(足を引きずる)、歩様異常、尿失禁、呼吸困難など。
【原因】
はっきりとした原因は不明。遺伝的な素因があるとも言われている。
【備考】
麻痺はあるが痛みはないので、後肢麻痺だけでは元気や食欲に異常は見られない。足をこすって歩くようになったら、傷を作らないように足先を保護する必要がある。

糖尿病

【症状】
多飲多尿、削痩、肥満、被毛の変化、各種感染症(皮膚感染症、膀胱炎、外耳炎、子宮蓄膿症など)、白内障、嘔吐、下痢、便秘など多岐にわたる。
【原因】
インスリンの分泌低下。加齢、肥満、環境の影響によってインスリンの作用が不足することによる。
【備考】
副腎皮質機能亢進症、ステロイドの投与、発情周期関連などがその他の糖尿病に関連する。糖尿病は糖代謝に異常を示す代謝性疾患であり、異常なケトン体が蓄積する。ケトン体が多くなるとアシドーシスや昏睡が起こる。

フォンウィルブランド病(vWD)

【症状】
出血が止まりにくい。
【原因】
フォンウィルブランド因子(vWF)は血小板の接着に関与し、この因子に異常が見られると出血時間の延長が見られる。
【備考】
乳歯の生え変わりに血が止まらない、手術時に血が止まらないなどによって発見されることがある。

上皮基底膜ジストロフィ(無痛性角膜潰瘍、持続性角膜びらん)

【症状】
眼瞼痙攣、流涙、角膜びらんなど
【原因】
角膜の基底膜細胞が機能的あるいは形態的に変化することによる。
【備考】
潰瘍を伴うこともある。ジストロフィは「組織の縮退、形態異常」の意味。

ウェルシュ・コーギーの飼育環境


コーギーで気をつけたいのが、骨関節疾患脊髄障害です。これらは遺伝的に発生しやすいものですが、生活環境を見直すことで発生率を下げることもできます。

既に実施している方も多いと思いますが、今一度確認し、問題点はぜひ改善してみてください。

滑りにくい床に

コーギーは軟骨異栄養犬種といい、生まれつき軟骨が弱い犬種であるため、腰部椎間板ヘルニアが発生しやすいです。

椎間板ヘルニアの予防のためには、腰に負担をかけないことがもっとも重要です。

日常生活を送る家の床が滑りやすいと愛犬のブレーキが効きにくくなり、体に変な力が入ってしまいます。フローリングなどの床の家は、カーペットを敷くなどの対策をとってみてください。

段差にも注意

腰に負荷がかかるタイミングとして、段差の昇り降りも挙げられます。ソファや椅子などに飛び乗る、あるいは飛び降りた際に椎間板ヘルニアを発症することも珍しくありません。

骨折を始めとする他の骨関節疾患を予防する意味も込めて、家の中の段差を極力無くす工夫をしてみましょう。
人間にとっては小さな段差も、足の短いコーギーにとっては大きく思えることもあるので、注意深く点検しましょう。

抱っこは横抱きで

犬の基本姿勢は、背骨が地面に対して並行となっています。よって、抱っこをする時も横抱きにすることが推奨されます。

縦の抱っこ(頭が上、お尻が下になっている抱っこ)は背骨に負担がかかるため、やめた方がいいでしょう。

同様に、手を持って二本足で歩かせる行為も腰への負担となるおそれがあり、椎間板ヘルニアを誘発する可能性があるのでやめた方がいいでしょう。

糖尿病への配慮

コーギーの好発疾患の一つに糖尿病があります。糖尿病は生活習慣やその子の体質、他の病気の有無など様々な要因がリスク因子となります。

特にコーギーでは、肥満が糖尿病のリスク因子として重要です。食事管理や適度な運動によって太りにくい体づくりを目指しましょう。

また、肥満は骨関節に過度な負荷をかけるため、スリムな体型維持は椎間板ヘルニアの予防にも繋がります。

まとめ

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今回は、コーギーに多い病気を中心に解説しました。普段の生活の中で、危険はないか改めて確認してみてください。

話は変わりますが、コーギーのおしりは写真集にもなっていますよね。ご存知でしたか?

コーギーと一緒に暮らしている方は、おしりも愛でつつ、愛犬の健康も守ってあげてください。

【犬図鑑】ウェルシュ・コーギーの歴史や性格、飼い方のポイント

胴長短足でクリッとした目、大きな耳が魅力のウェルシュ・コーギーは、日本だけでなく世界で人気の犬種です。エリザベス女王が飼育していることでご存知の方も多いでしょう。

この記事では、ウェルシュ・コーギーの歴史や特徴、性格、飼い方のポイントについてご紹介します。これから飼おうと思っている方はもちろん、現在飼っている方もぜひ参考にしてみてください。

ウェルシュ・コーギーの歴史

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ウェルシュ・コーギーはイギリスのウェールズ地方原産の犬種で、ウェルシュは「ウェールズ地方の」、コーギーは「小さい犬」という意味があります。

ウェルシュ・コーギーには、歴史の古いカーディガンと、日本でよく見かけるペンブロークの2種類がおり、見た目はよく似ているものの、その起源はまったく異なります。

ウェルシュ・コーギー・カーディガン

カーディガンは紀元前1200年頃に生まれたと伝えられており、中央アジアのケルト民族により、ヨーロッパに導入されてイギリスにやってきました。

その後、イギリスのカーディガン地方で牧畜犬として活躍していましたが、有用な犬であることから世間に知られることを拒み、長い間知られていませんでした

1925年頃にその存在が徐々に表面化し、1933年にのちのイギリス国王となるジョージ6世が飼育したことをきっかけに、世間に知られるようになりました。

ウェルシュ・コーギー・ペンブローク

カーディガンと比べると新しい犬種ではありますが、1107年にフランドル(ベルギーからフランス北部にまたがる地域)の織工がウェールズに移住した際に一緒にやってきたとされています。

ウェールズのペンブロークシャーで牧畜犬として飼われ、スピッツなどと交配して改良されていきました。

その後、ヘンリー2世の時代にブリーダーによりさらに改良が進み、現在のペンブロークに近い形になりました。以来、イギリス王室で愛され続けています。

最初は同じ種と考えられていた

原産国も同じ、見た目もそっくりのこの2種のウェルシュ・コーギーは、同じ犬種だと考えられており、交配も行われていました。

しかし、体の特徴が異なり、同じ犬種として評価することが困難になったため、多くの国で別の品種として扱われるようになりました。

ウェルシュ・コーギーの身体的特徴

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ウェルシュ・コーギーは、胴長短足の見た目が特徴で、体はがっしりとした筋肉質をしています。被毛はダブルコートです。

ウェルシュ・コーギー・カーディガン

ガーディガンの体高は約30cmで、体重は11kg~17kg程度です。
毛色はさまざまで、白のみでなければ、基本的にどんな色でも認められています。

ウェルシュ・コーギー・ペンブローク

ペンブロークの体高は約25〜30cmで、体重は11kg~14kg程度と、カーディガンと比べると少し小柄です。
ペンブロークの毛色は、レッド、セーブル、フォーン、ブラック・アンド・タンで、白地はあってもなくても認められます。

ウェルシュ・コーギーの断尾

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ウェルシュ・コーギーは生後間もなく、人為的に断尾することでも知られています。

これは、牧畜犬として働いているときに家畜にしっぽを踏まれて、怪我をするのを防ぐためだったとされています。

また、かつてイギリスでは尻尾のついた犬に課税をしていたことがあり、節税の目的で多くの犬が断尾されました。現在ではこの制度は廃止され、2007年には動物愛護の観点から断尾を禁止する法律が導入されています。

なお、ジャパンケネルクラブの規定では尻尾は「断尾または5.1cm」と定められていますが、カーディガン種については尻尾の長さの決まりはないため、断尾していない子が多いようです。

ウェルシュ・コーギーの性格

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ウェルシュ・コーギーはよく「性格が悪い」と言われます。これはもともと、牧畜犬として牛などを相手にしていた名残りであり、勇敢で、自己主張の強さからそう思われるようになったようです。

また、好奇心が旺盛で、遊ぶのが大好きです。物覚えも良く、飼い主に忠実であるため、小さい頃からしつけをすることで、良いパートナーになれるでしょう。

ウェルシュ・コーギーの好発疾患

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ウェルシュ・コーギーを飼うなら、以下の疾患を把握しておきましょう。

  • 変性性脊髄症:後肢の麻痺に始まり、泌尿・排便機能の低下、呼吸障害などを引き起こし死に至る。
  • 椎間板ヘルニア:首や背中に激しい痛みがあり、進行すると下半身が完全に麻痺してしまう。
  • 股関節形成不全:歩きが足らない、腰を振るように歩く、座り方がおかしいなどの症状が見られる。
  • 尿管結石:腎臓から尿道の間に石ができ、激しい痛みを伴う。腎臓に石ができた場合は痛みを伴わず、腎不全になることも。

特に上3つは歩き方に異常が出ることが多いため、おかしいなと感じたらすぐに動物病院を受診しましょう。

ウェルシュ・コーギーを飼うときに気をつけたいポイント

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肥満に注意する

食欲旺盛で、食べ物に対する執着が強いため、太りやすい傾向があります。
肥満にならないよう、食事管理は徹底して行いましょう。

お散歩は毎日欠かさない

30分程度の散歩を毎日朝夕の2回しましょう。ウェルシュ・コーギーは遊ぶのが大好きなため、運動不足はストレスにも繋がります。

ボールを使ったスポーツもおすすめですが、腰に負担がかかるジャンプなどはさせないようにしましょう。

小さい頃からしつけをする

牧畜犬として働いていたときは、他の犬や動物を吠えて追い回したり、足を咬んで動物の動きをコントールしたりしていました。

その名残りで、吠え癖や噛み癖がある子もいます。トラブルや事故を防ぐためにも、小さいうちからしっかりしつけをしましょう

お手入れはこまめに

ウェルシュ・コーギーはダブルコートなので、こまめにブラッシングをし、換毛期は特に念入りにお手入れしましょう。

また、足が短いため、お腹が汚れてしまいがちです。お散歩のあとは、固く絞ったタオルなどで拭いて清潔にしてあげましょう。

腰に負担のかからない環境をつくる

胴長短足というウェルシュ・コーギーの特徴から、腰に負担がかかりやすいです。

段差は極力なくす滑りやすいフローリングにはカーペットを敷くなどして、負担のかかりにくい住環境を整えてあげてください。

まとめ

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ウェルシュ・コーギーにはカーディガンとペンブロークの2種類がおり、見た目はそっくりでもそれぞれ別の起源がありました。

かつては牧畜犬として働いていた名残りで、吠え癖や噛み癖が見られる子もいますので、小さい頃からしっかりしつけましょう。

また、腰に負担のかかりにくい住環境を整えてあげ、歩き方に少しでも異常があったらすぐ動物病院に連れて行ってあげてくださいね。