犬に自由を与える義務と犬が自分の空間を持つ権利について考える
私は、東京都八王子市でペットホテル、ペットシッター、ドッグトレーニングのサービスを提供している「犬と人の学び場ポケット(以下、ポケットと言います)」を運営しています。ポケットではペットホテルの運営を行っているので、オーナー様からお話を伺う機会がたくさんあります。
愛犬の生活環境をお聞きすると、「愛犬はお部屋の中、あるいはおうちの中を自由に行き来して過ごしています」とおっしゃる方が最近になって非常に多くなりました。ひと昔前は「犬は外で飼うもの」と言われていたことを考えると、飼育環境が大きく変化してきていることがわかります。
しかし、飼育環境が変わっていくにつれて新たな問題も出てきています。今回は犬に自由を与える義務と部屋を持つことの権利について考えていきましょう。
犬の飼育環境の変化
今と昔では、犬の飼育環境はずいぶん変わってきました。どのように変わり、どのような問題が顕在化してきたのか見ていきましょう。
犬の屋外飼育は向かない?
規模の大小には諸説ありますが、もともと犬は群れをつくって過ごす動物だったと言われています。この事実を踏まえると、外でポツンと一頭だけを鎖につないで飼育するという昔の飼育スタイルはあまり適していないことがわかるでしょう。
犬は外で飼うものだとされていた頃、犬はご飯の残りを与えれば、家を守る番犬として働いてくれる都合のよいパートナーとして扱われていました。これは、人と犬が共生し始めた起源にも近い関係性だと思われます。
外で飼うことで、犬の独立心が育つこと、室内への汚れや抜け毛の飛散を防げることは飼い主にとって大きなメリットかもしれません。しかし、住宅街などで屋外飼育をした場合には、ほえ声や抜け毛の飛散、鎖の金属音などが近隣トラブルを招いてしまう可能性があります。
室内飼いで顕在化してきている問題
それでは、家の中で飼うようにすれば、あとは自由で良いのかというと、そういうわけでもありません。
ネオテニー(幼形成熟)な犬たちの中には自我があまり強く出ず、人にとって飼いやすい子もいます。しかし、それは一部の例外で、ほとんどの犬は家自体を縄張りと捉えるようになり、そこで起きる「気に入らないこと」を排除しようとするでしょう。
例えば、チャイムが鳴るとほえる。人のソファー、ベッドなどを占領し、自分の場所だと言わんばかりにオシッコでにおい付けをする。窓から往来する人や車を追い払うかのように興奮してほえながら走り回るなどが代表的な例です。
自由すぎることの弊害
こういった犬の問題行動が起こるきっかけは、自由すぎることが要因のひとつであると考えられます。広すぎる縄張りを与えることは、家そのものを守らせることになり、犬にとってストレスになりかねません。
また、同じ屋根の下で生活をすることで、お互いの気持ちを理解しやすく絆は深まりますが、過度に溺愛してしまうと分離不安という問題を招きます。自由の度合い、愛情の度合いを適切なものにするために、飼い犬にはパーソナルスペースを用意してあげる必要があります。
犬が安心して過ごせる環境とは
自由に家の中を過ごさせてあげる上で忘れてはいけないのは、飼い犬だけのパーソナルスペースとなるハウスを必ず用意してあげるということです。自分だけのパーソナルスペース、落ち着けるハウスを持つことは犬にとって当然の権利と言えます。
サークル型のハウス
室内犬のハウスとして一般的なものは、柵に囲まれたような形のサークルと呼ばれるものでしょう。
このタイプのハウスは多種多様で、屋根があるものや、トイレスペースと寝床を離して設置する広いものなどがあります。
バリケン型のハウス
もうひとつ考えられるのは、バリケンと呼ばれる形状のものです。これは犬を飛行機で空輸する場合にも使われます。バリケンは商品名のため、このようなタイプのハウスのことをクレートと呼んだり、キャリーと呼ぶこともあります。
出入口は1カ所でまわりには小さな柵状の窓があり、中は暗くなるようにできています。
おすすめはどっち?
おすすめしたいのは、後者のバリケンタイプです。薄暗く視界が広すぎないので、飼い犬にとって落ち着ける空間となるでしょう。広すぎないのでトイレのしつけもしやすいです。また、車で移動するときや万一の災害のときにも役立ちます。
ちなみに、車の中で愛犬をフリーにしていると場合によっては道路交通法違反ですのでご注意ください。車で移動する場合は、愛犬の安全面も考慮して必ずハウスに入れるべきです。ハウスの中でおとなしくできるように、普段からトレーニングしておきましょう。
もし、バリケンの扉を閉めることに抵抗があれば、開けたまま使用してもかまいません。いざという時に閉められれば問題ありません。今、サークル型のハウスを使っているという方でも、万一のときのために飼い犬がバリケンに入れるように練習しておくことをおすすめします。
むすびに
室内犬は、人の生活環境になじむことを余儀なくされています。異なる種である人間と犬が同じ環境で生活していくためには、人が犬に歩み寄る必要があります。飼い主は愛犬の気持ちを考えて、暮らしやすい環境を整えてあげましょう。
世界的に、犬に自由を与えるのは飼い主の義務になりつつあります。しかし、自由なら何でも良いというわけではないと思っています。また、人間がパーソナルスペースを持つのと同じように、犬にもパーソナルスペースを持つ権利があると思います。
お気に入りのハウスに住んでいる犬は、何らかの事情で動物病院やペットホテルなどに預けられる場面でも、落ち着くよりどころがあるため、ストレスが軽減されます。これも持ち運びができ、どの施設でも設置してもらいやすいバリケンをおすすめする理由のひとつです。
愛犬とドライブの時は、どのケージがおすすめ?比較してみた。
愛犬とドライブをするときは、どんな状態で車に乗せていますか?飼い主さんによって様々かもしれません。
「ドライブによく行くし、ケージを買おう!」と思っても、たくさん種類があってどれを使えばいいのか分からない!という方も多いのではないでしょうか。キャリー、クレート、ケージ、ドライブベッドなどなど種類が豊富すぎですよね。
今回は、それぞれの特徴をまとめ、愛犬と車でお出かけするときにおすすめのケージをご紹介します!
犬を膝の上で抱っこは違反!
おすすめのケージをご紹介する前に、犬とのドライブのルールを確認しておきましょう。おすすめのケージを探している方の中には、現在ケージに入れずそのまま車に乗せていたり、抱っこしているという方もいるかもしれません。
実は、道路交通法で、犬を膝の上に乗せたまま車を運転することは禁じられています。
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(乗車又は積載の方法) 道路交通法第55条第2項
車両の運転者は,運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げ,後写鏡の効用を失わせ,車両の安定を害し,又は外部から当該車両の方向指示器,車両の番号標,制動灯,尾灯若しくは後部反射器を確認することができないこととなるような乗車をさせ,又は積載して車両を運転してはならない。
過去には、実際に捕まって罰則を受けた運転手さんもいます。
わんちゃんを助士席で抱っこするという行為は、法律違反というだけでなく、安全面から考えても危険です。車が急ブレーキをかけた際、飛び出してしまって怪我をするケースも少なくありません。
安全にドライブを楽しむためにも、犬用のケージなどに入れて車に載せるのが基本になります。ここからは、「どのケージがおすすめなのか」について見ていきましょう!
ドライブでおすすめのケージは?
車に犬を乗せるときに使うケージには、たくさんの種類があります。「おすすめ」と言ってもそれぞれにメリット・デメリットがありますので、特徴をみていきましょう。
クレート(バリケンネル)
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わんちゃんをドライブに連れて行くときの定番と言ったら、「クレート(バリケンネル)」ではないでしょうか。省略してバリケンとも呼ばれます。おすすめポイントは何と言っても、軽さと丈夫さ。
また、犬にとっての落ち着く要素である「狭さ」「暗さ」を提供してくれます。プラスチック製なので、掃除がしやすいという点もおすすめポイントです。
ケージ
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お家で使っているけケージをそのまま車内に持ち込む方法もあります。
大型犬の場合は、ケージを使う方も少なくないのではないでしょうか。小型犬などの軽いわんちゃんですと、ケージが動いて転倒してしまう恐れがあるのであまりおすすめできません。
ドライブベッド
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ドライブベッドは、その名の通り、車でドライブをする際に犬が乗るベッドのことです。おすすめポイントは、助士席などに固定をすることができることです。「愛犬が見えない状態は怖い!」という方には、囲いもなく設置できるドライブベッドがおすすめです。
また、取り外して自宅や外出先で普段用ベッドとしても使うことができます。
しかし、注意点もあります。もし飼い主さんのわんちゃんが、「車の揺れからくる酔い」や「落ち着かない」という理由から車嫌いだとしたら、ドライブベッドはあまりおすすめできません。
デメリットとして、「クレートのような、犬にとっての落ち着く空間ではない」「振動を受けやすい」などがあげられるからです。
ドライブボックス
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ドライブボックスとは、犬の体を固定することのできる、丈夫な箱のようなものです。ドライブベッド同様、クレートのような囲いがないため、ドライブ中にわんちゃんの様子が見たいという方におすすめです。
車が急ブレーキをかけて座席から落ちてしまったしないような固定する仕組みがあるため、ドライブベッドよりは安全性が高いと言えます。
シートベルトに固定し、 ドライブボックス自体が動かないようにすることができます。わんちゃんのハーネスや首輪と繋ぐことのできる、飛び出しを防ぐリードも付属しているため、安全に固定することができます。
ドライブボックスの中では、座席に置くだけの簡易的なものもありますが、安全面を考えて固定ができるものを選ぶと良いでしょう。犬の座席転落事故は大変危険ですので、しっかり固定してあげましょう。
使用しない場合には、折りたたんでコンパクトに収納することもできます。
ぴったりのケージを選んで快適なドライブを
せっかく買うのですから、しっかりと吟味して選びたいですよね!
愛犬とのドライブのために、ぜひ愛犬のことを第一に考えてケージやクレートを選んであげてください。そのわんちゃんの特性(車に酔うのか、落ち着く条件はなんなのか等)や、安全面を考慮して購入することをおすすめします。
「愛犬に車を好きになってほしい!ドライブにもっと行きたい!」という方にはこちらもどうぞ。