保護活動の救いとなるか?!改正動物愛護法における数値規制とは
2019年に「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」が改正され、2022年までに段階的に施行されています。
この改正の特徴の一つとして、動物の飼育に関して初めて「数値規制」が導入されました。
今回は、数値規制を導入した行政側の狙いと、それによって影響を受ける動物保護団体の活動の問題点を解説していきます。
なぜ数値規制を導入したのか
以前までの動物愛護管理法には、適切な飼育の条件となる「飼育頭数」、「従業員数」、「飼育スペースの広さ」などに具体的な規定がありませんでした。
そのため、自治体が不適切な飼育現場を指導するための法的な根拠がなく、悪質な業者に指導することが出来なかったり、業者自身も不適切な飼育環境だという認識がなかったりという問題がありました。
適切な飼育環境を数値で表すことによって、基準を守っていない場合は指導することができ、速やかに改善しなかったり、改善の意思がなかったりする事業者に対しては、最終的に動物取扱業の取り消しも可能になります。
具体的な数値制限とは
2019年の改正動物愛護管理法では、「繁殖年齢や回数」、「飼育環境の温度や湿度」、「臭気の基準」など様々な数値規制が導入されましたが、特に注目したいポイントは「飼育スペース」と「従業員数」です。
飼育スペース
身動きが取れないような狭いゲージに動物を入れっぱなしにし、運動も出来ないような劣悪な環境で飼育するペット関連業者も存在します。
数値による規制が出来ることによって、違反行為が具体的で明確になりました。
■運動スペース一体型飼養等(平飼い等)を行う際のケージ等の基準のイメージ
(画像:環境省「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針~守るべき基準のポイント~」より)
従業員数
一人の従業員が世話をする頭数の制限を設けることによって、一人で何十頭、何百頭の動物を抱え、十分な世話をされず放置されるような環境を減らしていく効果が期待できます。
■従業員一人当たりが飼養又は保管をする頭数の上限
犬の場合 | 22年 | 23年 | 24年 | 25年 |
---|---|---|---|---|
ブリーダーなど(繁殖用) | 25 | 20 | 15 | |
ペットショップなど(販売用) | 30 | 25 | 20 | |
動物保護団体など(非営利)※ | 30 | 25 | 20 |
猫の場合 | 22年 | 23年 | 24年 | 25年 |
---|---|---|---|---|
ブリーダーなど(繁殖用) | 35 | 30 | 25 | |
ペットショップなど(販売用) | 40 | 35 | 30 | |
動物保護団体など(非営利)※ | 40 | 35 | 30 |
※動物保護団体などの第二種動物取扱業では、法律の施行後にブリーダー等の第一種動物取扱業から譲渡される動物が増加する可能性が考えられるため、完全施行時期を1年遅らせることになっています。
詳しい飼育基準の数値制限等はこちらをご覧ください
動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針~守るべき基準のポイント~/環境省
厳しい状況におかれたペット業界
先に述べたような動物愛護管理法の数値規制導入にあたって、ペット関連の業界団体や一部の繁殖業者からは、「廃業に追い込まれる業者も出る」と強い反発がありました。
実際に数値制限の導入後に繁殖犬・猫を減らすブリーダーは増えていると言われており、全国のブリーダーに対して実施されたアンケートによると約30%のブリーダーが廃業も視野に入れているとされています。
その結果、一部では13万頭以上の犬や猫に保護が必要になり、殺処分が増えると主張する意見もあります。しかし、そういった行き場のない動物たちの受け皿となる動物保護団体も数値規制の対象となるのです。
保護団体のキャパシティと葛藤
ブリーダーの廃業が進み、手放された動物たちが保護団体へ引き渡されたとしても、保護頭数が法律の数値規制以上に増えてしまった場合、保護団体はスタッフの増員や飼育スペースの拡張を迫られます。
もちろん、それには莫大な資金が必要になり、多くの保護団体の頭を悩ませる問題となっています。
また、動物保護活動をされている方の多くが、1頭でも多くの動物を救いたいと考えています。そうした方々の「保護したいが数値規制のために断らざるをえない」という苦しみは、金銭面だけでなく精神的な負担も強いています。
しかし、保護団体への数値規制で保護が出来なくなる動物が増える一方で、保護団体と称する劣悪な環境の施設を減らすことも可能になるでしょう。
「保護する動物の数」と「保護後の飼育の質」のバランスが非常に難しい問題となっています。
最後に
日本のペット業界の問題として、ペット産業の「大量生産、大量廃棄」が指摘されています。数値規制により悪質なブリーダーが減り、大量生産がなくなれば、大量廃棄つまりは殺処分や遺棄の減少が期待出来るかもしれません。
しかし、それに至るまでの過程で保護団体にかかる負担や、懸念されている殺処分の増加は避けて通れない問題です。
残念ながら、多くのペットたちが幸せに暮らせる環境になるには、まだまだ解決すべき問題が山積しています。まずは多くの人が現状を知り、少しずつでも改善していくことを願います。
ちゃんと知ってる?豆柴やティーカッププードルが抱える問題
小さい犬として知られる豆柴やティーカッププードル。とてもかわいく一見すると魅力的な犬種に見えますが、購入を検討する場合は注意しなければいけないことがあります。
お迎えしてから「知らなかった」「こんなはずじゃなかった」とならないように、各犬種がどのような問題を抱えているのかしっかり理解した上でお迎えすることが大切です。
この記事では、豆柴やティーカッププードルと呼ばれる犬について解説します。
豆柴とは
普通の柴犬よりも小型サイズのものを「豆柴」と呼ぶことがあります。柴犬が10〜13kgなのに対し、豆柴は4〜6kgほどとされており、抱っこをすると腕の中にすっぽり収まるサイズです。
日本犬保存会やジャパンケネルクラブでは豆柴という犬種を認めておらず、血統書には「柴犬」と表記されます。一方で、2008年に日本社会福祉愛犬協会(KCジャパン)が世界で初めて豆柴を犬種として認めました。
豆柴よりもさらに小さい犬も
柴犬よりも小さいサイズの犬を豆柴と呼ぶとお伝えしましたが、豆柴よりもさらに小さい極小豆柴や、極小豆柴よりも小さい小豆柴(あずきしば)と呼ばれる犬もいます。
ティーカッププードルとは
プードルは、スタンダード、ミディアム、ミニュチュア、トイの4種類が認められており、ティーカッププードルはトイプードルよりもさらに小さい犬です。ティーカップに入ってしまうくらい小さいことが名前の由来です。
豆柴と同様、正式な品種として認められていないため血統書にはトイプードルと記載されますが、一般的には体高25cm未満、体重2kg未満のトイプードルをティーカッププードルとするようです。
ティーカッププードルよりさらに小さい個体はマイクロティーカッププードルと呼ばれ、こちらも一部の愛好家の間で人気を誇っています。
なぜ人気なのか
豆柴やティーカッププードルは多くの団体で犬種として認められていないにもかかわらず、ブリーダーによっては100万円以上もすることがあるほど人気の犬です。
では、一体豆柴やティーカッププードルにはどのような魅力があるのでしょうか?
小さくてかわいい
これらの犬を最初に見た時に「小さくてかわいい」という印象を多くの人が受けるでしょう。実際、人は小さな動物に惹かれる傾向があるため、これらの反応は決して間違ってはいません。
SNSにもたくさんの写真がアップされており、かわいい犬の姿を見ることができます。
小さくて飼育スペースが小さくて済む
土地の高い都心部では、大型犬を飼うほどのスペースの確保が難しく、基本的には小型犬、それもより小さい方が望ましいと考える人が多い傾向にあります。マンションなどでは「大型犬はNGだけど小型犬なら良い」というところも少なくありません。
また、体が小さいと運動量も少なく済むため、共働きの家でも飼いやすそうと考える人もいるかもしれません。
どのような問題がある?
豆柴とティーカッププードルの特徴や魅力についてお伝えしてきましたが、実は決して目を逸らしてはいけない多くの問題を抱えています。
これらを知らずに飼ってしまうと、健康面の不安や後悔が生じてしまうこともあるかもしれません。もし、飼うことを検討しているならば、まずはその犬の背景についてしっかり理解し、起こり得るリスクがあっても一生愛情を注ぎ続けられるかどうかを考えることが大切です。
※以下の内容は、すべてのブリーダーが当てはまるわけではありません。
1. 成長すると大きくなる可能性がある
豆柴やティーカッププードルは、基本的には体が小さい個体同士を掛け合わせて誕生させています。
もちろん小さく生まれてくる子もいますが、成長するに従って通常の柴犬やトイプードルに近い大きさになってしまう場合があります。どのくらいの大きさになるかわからないため、成長したら思ったより大きくなってしまったということもあるでしょう。
家のスペースの都合で豆柴やティーカッププードルなどの小型犬しか飼えない場合、不都合が生じてしまうかもしれません。もしこれらの犬を飼うのであれば、予想よりも大きくなってしまう可能性があることを念頭に入れておかなければいけません。
2. 大きさを保つために食事量が十分与えられない可能性がある
栄養が足りなければ、その犬の小ささは保たれるかもしれません。実際、ブリーダーから指示された食事量が極端に少なく、大きくならないように指示されることも少なくないようです。
しかし、栄養が足りなければ、それはただの見かけだけが小さな栄養失調の犬です。サイズを保つために行っていることであっても、それは動物虐待にあたる場合があります。
3. 未熟な状態で生ませることもある
体が大きくならないようにと、本来ならまだ生まれてこない子を帝王切開によって強制的に生ませる悪いブリーダーもいるようです。
未熟な状態で生まれても健康に育つ子ももちろんいますが、病気になりやすくなってしまう子もいます。そうすると、治療費の負担も増えてしまい、予想よりも出費が多くなることも考えられます。
最後に
犬を屋内で飼う人が増え、小型犬が人気になるのは理解できますし、屋内で大型犬を飼うのは厳しいでしょう。しかし、大きさばかりに目がいって、その犬の幸せは考えられているのでしょうか。
これらの犬がスタンダードであると認められないのはそれなりの理由があります。もちろん、すべてのブリーダーが悪質であるというわけではありません。しかし、人気があればあるほど悲しい思いをする犬が増える可能性は高いのが現実。
「見た目がかわいいから」「SNSで映えるから」という理由で飼うのではなく、その犬を本当にご自身が幸せにでき、一生過ごすことができるかどうかを一番に考えるべきです。そして、飼うことを検討しているなら、もしイメージと違う状況になってもしっかり責任を持って最期の時まで愛情を注ぎ続けられるかをよく考えてみてください。
犬・猫はどこからペットショップに来て、どこへ行くのか
ペットショップのショーウインドウに並んでいる犬や猫、どこからどのようにして来ているのか、知っていますか?
こんなにたくさんの種類をどこから集めているのか、どんな風に育てられていたのか、流通しなかった子たちはどうなるのか、気になったことはあるけれど知らないままになっている方は多いのではないでしょうか。
今回の記事では、ペットの流通経路とそれらの間に潜む社会問題について詳しく追っていきます。
犬や猫はブリーダーの元で産まれる
ペットショップなどを通じて購入される犬・猫たちは全て、ブリーダーの元で生産されています。単にブリーダーといっても、その形態はさまざま。
副業として少数の犬猫を飼育繁殖している「ホビーブリーダー」、ドッグショー・キャットショーのために少ない品種のみを繁殖する「ショーブリーダー」、ペットショップ経営に加えて繁殖も行っている「ペットショップ兼ブリーダー」、数十頭以上・複数品種の犬猫を飼育繁殖している「専業ブリーダー」などが存在します。
その中でも形態として多いのは、ペットショップ兼ブリーダーと専業ブリーダーです。
ペットショップ兼ブリーダー
これまで、ペットショップの個人店の多くは、「ペットショップ兼ブリーダー」の形態をとり、複数のホビーブリーダーと連携して繁殖を行っていました。
しかし近年、動物愛護管理法の規制強化によりホビーブリーダーの廃業が進んだこと、大手ペットショップチェーンの台頭により、個人店では自店舗での販売をやめて、オークションに出すことが多くなったようです。
また、最近では大手ペットショップチェーンが直営の繁殖場を持つことも少なくありません。
専業ブリーダー
専業ブリーダーは、40〜100頭以上の母犬猫から繁殖させて、ペットオークションやペットショップに出品しています。
規模が大きく、扱う品種も頭数も多いため、 狭いケージに閉じ込められ、十分な運動をさせられなかったり、 排泄物の処理が不十分になったりしやすいと言われています。
もちろん、全ての専業ブリーダーがそういう経営をしているわけではありませんが、劣悪な環境で運営されているところは「パピーミル(子犬工場)」と呼ばれ、深刻な社会問題となっています。
ペットオークションを通じペットショップへ
多くのペットショップは、ペットオークションを通じて犬・猫を仕入れています。
ペットオークションでは、全国のブリーダーが持ち込んだ犬・猫の赤子が一匹一匹、競りにかけられていきます。
2017年度の環境省のデータでは、日本全体で26の業者が確認されています。
免疫力が十分でない生後7〜8週齢の子犬・子猫を売買するという構造上、ただでさえ感染症が蔓延しやすい状況にあるにも関わらず、管理体制が甘いオークション会場が多いようです。
悪質ブリーダーでも簡単に持ち込めてしまうため病気や健康問題を持った子が紛れ込むことが多く、感染症にかかっている子がいても健康チェックがずさんなために発見されにくく、飼い主の手に渡ってから発覚したという事例もあります。
ブリーダーからそのままペットショップへ
ブリーダーとペットショップが直接契約を結び、繁殖された犬・猫を直接卸すという取引形態も存在します。
問題を恐れるペットショップ側が良質なブリーダーを選ぶためか、この形態ではあまり大きな問題が起きていません。大手のペットショップチェーンでは、契約ブリーダーのために医療サポートや、相談サービスなどを提供しているところもあります。
直接ネット販売
自前で販売サイトを設けて、ネットを通じて販売しているというブリーダーもいます。しかし、全ての手続きをネット上で済ませてしまえるという訳ではありません。動物愛護管理法で規制されているため、実際には販売業者の事業所まで出向き、ブリーダーから説明を受けた上で買う必要があります。
ペットショップを通じずに直接購入という形になるため、購入者自身で、繁殖環境、健康状態、病気の有無などを確認しなければいけません。
動物愛護管理法でペットのネットオークションや通信販売が規制される前はトラブルが多発していましたが、改正後は大幅に減っているようです。
流通から外れると…?
ブリーダーのもとで繁殖された子犬・子猫の全てが飼い主を見つけられる訳ではありません。ペットショップで売れ残ったり、ペットオークションで値をつけられなかったり、悪質な環境下で病気にかかって売り物にならなくなってしまうケースもあります。
動物愛護センターへ
平成25年に動物愛護管理法が改正される前までは、飼い主の見つからなかった犬・猫は動物愛護センターに引き取られるケースが少なくありませんでした。犬が収容された場合、行政は、三日程度と非常に短い期間で、その犬を処分できるようになります。
改正以降は、ペットショップや繁殖業者などからの犬猫の引き取り要請を、各自治体が断れるようになりました(第35条)。平成24年度に16万2千頭であった犬猫の殺処分数が、平成30年には3万8千頭にまで減っているように、改正の効果は非常に大きかったようです。
しかし、改正動物愛護管理法は完全とは程遠く、ペット産業の大量生産・大量消費というビジネスの形態は温存されたままです。
遺棄
流通できない犬や猫の引き受け先が減った結果、全国で業者による犬の大量遺棄事件が急増しました。
なかでも有名なのは、2014年に栃木県で、河川敷と山中に計70匹の犬の死骸が遺棄された事件です。犬を遺棄した元ペットショップ店員は、ブリーダーから100万円と70匹の犬を受け取ったものの、引き取り手が見つからず、右往左往している間に全て死なせてしまったといいます。
ペットを大量に繁殖してビジネスを成り立たせていたブリーダーや、売れ残った犬を動物愛護センターで処分してもらっていたペットショップオーナーが、行き場を失った結果だと言えます。
引き取り屋へ
そんな情勢に乗って、現在、売れない犬・猫を飼育費と引き換えに引き取る「引き取り屋」というビジネスが活発になっています。料金は数千円〜数万円だとされていますが、当然その程度のお金ではまともに犬・猫を飼育できません。
業者の多くは、積み上げた狭いケージに犬・猫を閉じ込め、餌もほとんど与えず、病気も治療せず、すぐに死なせてしまうため、事実上の殺処分と言えます。見方によっては、安楽死よりも酷い殺処分と言えるかもしれません。
最後に
子供の頃の私は、ペットショップで展示されている子犬や子猫は、「ミニカーと同じようにどこかの工場で作られてるんだ」と思っていました。幼さゆえの早合点でしたが、こうして見てみると、あながち間違っていたとも言えません。ペットショップで扱われているほとんどの犬や猫は、おもちゃと同じように、工場で生産されていると言っても過言ではありません。
近年、ペットの家族化が進み、ペットに対する価値観が大きな変化を遂げています。世界に目を向けると、ペットショップでの生体販売を禁止している国も多くあります。今こそ広い視野をもって、私たち消費者もペット産業のあり方を考えてみてはいかがでしょうか?消費行動を変容することにより、ペット産業自体を徐々に変えていくことは可能なのではないでしょうか。
ペットをオークションにかけるペット業界の裏側。信頼できる入手先は
近年、ペットの虐待を防ぐ法律が厳罰化したり、ペットの殺処分をなくす活動が活発化したりと、ペットの権利が重要視されるようになってきました。
ペットを飼ってからのペットの権利については理解が広まって来ていますが、そもそも、ペットショップで販売されているペットはどこから来ているかご存知ですか?
実は、ペットショップで売られているペットの多くが「ペットオークション」から来ています。今回は、ペット業界の現状について考えます。
「オークション」にかけられるペットたち
ブリーダーの元で繁殖されたペットは、直接飼い主の手に渡ったり、ペットショップに渡ったりすることもありますが、その大半はペットオークションにかけられています(2008年の流通量をもとに環境省による推計値)。
流通量が多いため、ペットショップの多くもその仕入れ先をペットオークションに依存しているのが現在の日本の実情です。
生後間もなくオークションにかけられるペット
2019年に改正された動物愛護法では、犬猫の販売を生後8週齢以降と定めました(俗に8週齢規制と言います)。
これは、生後8週齢までは親や兄弟の元で過ごさせることにより、犬猫の免疫力を高めるとともに、犬や猫の社会化を促進するためです。
改正法成立により、一般の人への販売は生後8週齢以降となりましたが、もし、それよりも早い段階でペットオークションに出されているのであれば、本末転倒です。
2020年3月現在、8週齢規制はまだ施行されていないため、施行後のペットオークションに出されるペットたちの年齢が気になるところです。私たち飼い主もこれをきちんと知り、監視をする必要があるでしょう。
ペットの「競り落とし」
ペットオークションでは、需要に合わせてペットの価格が決まります。
その仕組みは魚や野菜の「競り」とほとんど同じで、ペットの価格は数十秒から数分で決まるといいます。ペットオークションの様子からは、ペットをまさに「商品」として扱っている実態が伺えます。
ペットの繁殖業者「パピーミル」の実態
ペットオークション自体は違法でも何でもありません。後述する環境省が定める動物取扱業に「競りあっせん業」として定義されています。
ペットオークションにペットを「出品」するのは、ペットを繁殖するブリーダーの人たちです。問題は、ここに一部の悪質なブリーダーが含まれてしまっていることです。
もちろん、愛情を込めて1匹1匹を大切に育て、むやみに繁殖をさせないブリーダーも存在します。しかし、そうではない一部の悪質なブリーダーによって、たくさんの悲しい命がやり取りされています。
子犬工場「パピーミル」
最近よく目にしたり、耳にすることが多いキーワードが「パピーミル」という言葉ではないでしょうか。保護活動や悪徳ブリーダーの話題が知られることにより、世間にも認知されるようになった言葉です。
パピーミルとは、犬を「商品」と見なし、お金儲けをするために、むやみやたらと繁殖をさせて大量に出荷する繁殖業者のことを言います。
母親は「子供を産む道具」
パピー見るでは、母親たちは「子犬、子猫を産む道具」として扱われ、何度も子供を産まされ、そして、生後間もなく子供から引き離されます。
さらに悪徳な業者だと、子供を産めなくなった母親を処分してしまうところもあるようです。
劣悪な環境で育てられるペットたち
お金儲けのための大量生産を意識した悪徳なパピーミルには、きちんと清掃をしなかったり、ペットたちに十分なスペースを与えなかったりと、ペットたちを劣悪な環境で育てているところがあります。
なぜ、そんなことができるのか理解に苦しむでしょう。しかし、彼らにとっては犬や猫は「商品」であり、私たちが知る可愛らしい生き物ではなく、単なる「モノ」なのです。
繁殖には知識が必要
犬や猫の繁殖(ブリーディング)は、遺伝学の延長であり、非常に専門的な分野です。競馬をやる方はよくご存知なのではないでしょうか。
遺伝の影響を無視して、むやみな繁殖を行うことは、犬や猫が遺伝的に持っている病気や疾患のリスクを高めることにもなります。犬種や猫種によって特定の病気や疾患リスクが異なることは既に一般の飼い主の方にも知られているところですが、それは遺伝によるところが大きいのです。
スウェーデンでは、趣味レベルの小規模なブリーダーは例外ですが、繁殖を行うには資格が必要です。これは、繁殖がいかに専門的で難しいものであるかを物語っています。
どこからペットを買ったらいいのか?
ここまで、日本のペット業界におけるペットの流通の現実をお伝えしました。
では、これからペットを飼おうと思っている人は、どこからペットを購入したら良いのでしょうか。
ペットショップか、ブリーダーか
既にお伝えした通り、ペットショップの多くがペットオークションからペットを入手していますが、全てのペットショップがそうだというわけではありません。ペットショップの中には、信頼できるブリーダーから直接入手しているところもあります。
また、飼い主への直接販売を行なっているブリーダーもいます。ただ、悪質な業者が単に売れ残った犬や猫をネットを通して販売をしているケースもあり、ほとんど見分けはつかないでしょう。
ペットショップだからどこも悪い、ブリーダーだからどこも安心、ということはなく、どちらで買うにせよ信頼できるところを選ぶことが重要です。
信頼できるペットショップの選び方
信頼できるペットショップかどうかは、以下のようなポイントに注意して見極めましょう。
動物取扱業登録証はあるか確認しよう
動物を販売するペットショップは、「第一種動物取扱業」のひとつで、自治体等の登録を受けなければなりません。
行政に認可されているペットショップには、第一種動物取扱業の登録証が、登録番号とともに発行されています。ペットショップを訪れた際、登録番号を含む「動物取扱業登録証」が存在するかどうか確認しましょう。
これは最低限チェックする項目であり、これの掲示がなく販売されている場合は、違法業者ということになります。
ペットの入手先を確認しよう
ペットショップであれば店員さんに、ペットをどこから入手したのかを聞いてみるのも良いでしょう。
もし、よくわからない回答だったり、答えられなかったりしたら注意が必要です。単に、ブリーダーから入手したと言われたら、どこのブリーダーなのかを確認し、一度家に帰って信頼できるブリーダーかどうかを確かめましょう。
最近では、ペットショップにあるケージに出生地(ブリーダー名や所在地、生年月日)の表示があるところもあります。
飼育環境を確認しよう
ケージの掃除は行き届いているか、1匹あたりのケージが狭すぎないかなど、飼育環境を確かめることでペットをどれだけ大切にしているかが伺えます。
悪徳なペットショップだと、体が大きくなって売れ残るのを防ぐため、あえてペットの成長を遅らせるために食事制限をしているところもあるようです。ペットがやせ細っていないか、年齢に対して体が極端に小さくないかなどを確認しましょう。
逆にそういった子を救う気持ちで敢えて購入するという選択肢も考えられますが、それはそれでそのペットショップに利益をもたらすことになるため、私たちは頭を悩ませてしまいます。中長期的には、そのようなペットショップからは絶対に買わないという選択を取るのがベストだと思います。
ペットショップにやってきた時期を確認しよう
前述した通り、法改正により、既にペットショップでのお客への販売を生後8週齢以降としているところはたくさんあります。
8週齢規制が施行後、ペットショップに来る時期が8週齢より早い場合は、この法律自体があまり意味のないものになってしまうため、よく確認すべきです。
なぜなら8週齢規制の本来の目的は、生後8週齢までは母親や兄弟の元で過ごさせることだからです。客への販売時期が変わっても、ペットショップに来る時期が変わらなければ、単にペットショップで過ごす時間が長くなるだけなのです。
信頼できるブリーダーの選び方
実際に行って確かめよう
ネット販売を行なっているブリーダーもいますが、先ほども申した通り、ネット上ではどのブリーダーが良いブリーダーで、どのブリーダーがそうではないのかは判断がとても難しいでしょう。ここは少し大変でも、実際に飼育の様子を見学に行ってから購入することをおすすめします。
実際に、ブリーダーの元を訪れれば、母犬や子犬、母猫や子猫の生活環境がよくわかります。それだけでも、悪質な業者かそうでないかはわかるでしょう。
また、犬種や猫種にもよりますが、以下のような質問を投げかけても良いでしょう。
- 母親はどのくらいの頻度で繁殖を行なっているのか
- 父親と母親の性格はどうだったのか
- 遺伝的な配慮はしたか、どんなことに気をつけたのか
- どんな考えやポリシーを持って繁殖しているのか
ここまで色々と掘り下げて質問すると、少し煙たがられるかもしれませんが、愛情と情熱を持ったブリーダーであれば、きちんと話をしてくれるでしょう。
保護犬や保護猫という選択肢
詳細は別の記事に譲りますが、ペットを「買う」のではなく、ペットを譲り受けるという選択肢もあります。
東京都内の話ですが、一部のエリアや一部のコミュニティでは、徐々に保護犬を飼っているということが、「格好良いこと」とされるようになってきました。
保護犬や保護猫だからこそ難しい面もありますが、保護犬や保護猫を迎えるという選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょうか?
まとめ
ペットショップで販売されているペットの中には、どのようなブリーダーに繁殖されたのかよくわからないペットオークションで仕入れられたペットがたくさんいます。
胸が痛むのは、例えそのような悪質なブリーダーに繁殖されたペットであっても、そのペットには何の罪もないこと。しかし、そのペットを救うために購入してしまうと、悪質なブリーダーに利益をもたらすことになるという矛盾も出てきます。
法改正などで、少しずつペットの権利に関心が高まっていますが、私たちはこのような矛盾にも目を向けるべきです。
そして、買い手である私たちがペット販売の知識を持ち、絶対に悪質なブリーダーからは買わないようにすることが、日本の悲惨なペット業界を変えるひとつのステップになるでしょう。
日本のペットショップは少し特殊?動物の福祉の観点から考えてみる
皆さんが「新たに、犬や猫をおうちに迎えよう」と思った時、一番最初に向かう先はどこでしょうか。
多くの方が「ペットショップ」をイメージしたかもしれませんね。
「ペットショップから」が多いけど…?
2016年にペット総研から発表された「ペットのお迎え」アンケートによると、犬猫合わせてペットショップから迎えたという回答が4割ほどになりました。
ペットショップから犬猫を迎えるケースが、現在は一般的なようです。
日本でペットショップと言えば、ショーケースで展示販売されることが一般的でしょう。
しかし、動物愛護先進国と言われる欧米では、そのような形で販売することは動物の福祉(アニマル・ウェルフェア)の観点からあまり推奨されていないのです。
ペットショップや生体販売の状況を比較することによって、「欧米諸国の動物の福祉に対する意識」と、「日本の意識」の違いに迫ってみました。
犬猫が生まれて、ペットショップに販売されるまで
ペットオークションの存在
これは一つの例ですが、日本において、犬や猫が、親犬や親猫から生まれてからペットショップで販売されるまで、どのようなルートを辿るのかを追いかけてみましょう。
まず、繁殖業者やブリーダーさんがいて、繁殖された犬猫がペットオークションへ持ち込まれます。そして、ペットショップはそのオークションに行き、犬猫を買い付けて自分のお店で販売します。
最終的には、ペットショップで販売されている犬猫を、消費者が買います。
繁殖業者やペットショップにとって、ペットオークションにさえ行けば売れる/買えるという、便利なシステムになっています。ここで留意しておきたいのは、動物のことを考えて成り立ったシステムではない、ということですね。
もちろん、全てのペットショップが当てはまるわけではありませんので、このようなことが起きうる状況である、という程度に受け取って頂ければと思います。
オークションで売り買いされることの問題点
ペットオークションからペットショップで販売されることは何が問題になってくるのでしょうか?
ペットショップの生体販売では、子猫や子犬が主に販売されています。それは、ペットショップへ犬や猫を買い求めにくる消費者のニーズが、若ければ若いほど良いという意見が大半であるからです。
しかし、もしオークションで売れ残ってしまった場合は、どうなるでしょうか。
価値が下がり、買い手がつかなかった犬猫は、どこかで飼い犬や飼い猫として育てられる機会を逃し続けることになるかもしれません。
「若ければ若いほど良い」という価値観で犬猫を売買することは、道徳的な問題だけでなく、犬猫にとっての自由を制限することになりかねません。動物の福祉の観点から考えても疑問が残ります。
動物の福祉(アニマル・ウェルフェア)って?
日本にはすでに「動物愛護」という考え方があります。動物愛護管理法における「愛護」の意味は以下の通りに定義されています。
実体的な行為 :動物に対する虐待防止、適正な取扱い、適正な管理などを行うこと。動物の習性等に配慮しつつ、愛情や優しさをもって取り扱うことを含む。
生命尊重などの理念:動物や動物の命を大切にする気風や思想のこと。
対して、動物の福祉(アニマル・ウェルフェア)とは、イギリスの家畜福祉協議会(FAWC)が提唱した「5つの自由」を基本とする考え方です。
国際的な動物福祉の標準として各国の法令にも反映されています。
5つの自由
①飢えと渇きからの自由
②肉体的苦痛と不快感からの自由
③傷害や疾病からの自由
④おそれと不安からの自由
⑤基本的な行動様式に従う自由
動物の福祉の視点は、人間から見た動物ではなく、動物自身がどう感じるか、という科学的な研究を根拠にする側面が強いのです。
この考えに照らして見た場合、繁殖業者・ブリーダー→ペットオークション→ペットショップというシステムのなかで、犬猫の自由を抑制することが起こりうるのではないか、ということを考えてみることが必要かもしれません。
欧米諸国の生体販売に対する意識
動物保護・福祉の意識の高まりから、生体販売する場合は展示販売をしない、などの配慮が考えられています。生体販売が完全に禁止されているわけではないようです。
欧米ではなぜこのような意識が進んでいるのでしょうか。
例えばイギリスでは、ペットを購入したい人は、売られているのを買うのではなく、ペットショップやブリーダーさんに予約して産まれてくるのを待つという方法があります。
予約制にすることで、繁殖による犬の負担を減らすことができるのです。
アメリカでも、ブリーダーさんから直接購入したり、仲介業者を通してブリーダーさんから購入する、というように、「産まれてきた個体を見て選ぶ」のではなく「良いブリーダーさんかどうか」を重視して選ぶという方向へシフトしているようです。
生体販売が全て良くないということではない
主に日本のペットオークションやペットショップの販売などについて追いかけてみましたが、生体販売が全ていけないという、主張をしたい訳ではありません。
しかし本来、子どもを産む行為は、動物にとって完全にコントロールできることではありません。
この犬種のメスの子犬が欲しいと思った時、ペットショップで探せばすぐに手に入る、言い換えればお金さえ払えば、いつでも誰でも好きな動物を買うことができてしまう、今の状況が少し不自然なのかもしれません。
豊かな社会になったからこそ、「欲しいものがすぐ手に入る」という大量生産・大量消費のルートに、動物の命まで預けてしまっていいのだろうか?ということを考える必要があるのではないでしょうか。
まとめ
ペットショップの中にも、もちろん動物の福祉をきちんと考えているブリーダーさんに育てられた犬猫を販売しているところもあるということは、前提として話を進めてきました。
ペットショップから購入する場合、並べられたなかで「かわいい!この猫(犬)にしよう」というような出会いもあります。
しかし、「どんな親から生まれたのだろう?」「どんな人たちに、どんな環境で育てられたのだろう?」「元々どんな国で生まれた種なんだろう?」ということを、一旦立ち止まって考えてみるのも良いかもしれません。
特に、犬の場合は、ブリーダーさんが遺伝学をきちんと学んでいるかどうかで、その後の病気の発症率などに差が出ると言われています。「犬猫をお迎えしたいと思った時、自分ならどんな選び方をするのか?」ということを、一度考えてみませんか?
ペットの8週齢規制知ってる?飼う時に注意すべきこととは?
動物愛護法で定められているペットの8週齢規制をご存知ですか?
人間と同様、子犬や子猫にとっても、母親の存在はとても重要です。健康な身体、健全な精神を養うためにも、すぐに親元から引き離さないことが良いというのは、直感的にも理解しやすいのではないでしょうか。
8週齢規制とは?
子犬や子猫を56日間(8週間)は親元で過ごさせるようにすることが、法律により定められているのです。
しかしながら、ブリーダーやペットショップへの配慮のためか、「法施行後3年間は45日、その後法律に定める日までの間は49日と読み替えて適用する。」という、本来の目的から逸れてしまう条項も記載されています。
そのため、実際には8週よりも短くても売り買いされているというのが、現状です。なぜなら、この時期が一番可愛く、売れる時期だからです。
このルール、きちんと遵守することは、ペット先進国である欧米では当たり前のことなのですが、日本は事業者も消費者もまだまだ遅れていますね。
なぜ8週齢なのか?
生まれたばかりの幼い頃に、親や兄弟とコミュニケーションを取ることは、その後の成長に大きな影響を与えると言われています。
牛などの家畜でも当てはまることですが、母親に飲ませてもらう母乳には、病原菌から身体を守ってくれる免疫力を強化する効果があると言われています。
すぐに親元から引き離すよりも、母親から直接母乳を与えてもらい、幼い頃を過ごすことで、その後の健康状態に良い影響が出るのです。
また、兄弟と一緒に過ごすことで、群れの中での過ごし方を学びます。
噛む力の抑制方法を学んだり、他の犬とのふれあい方、過ごし方を学んでいくため、1匹だけではなく、仲間と過ごすということはとても重要なことなのです。
ある学者によると、8週間でも短いとも言われているくらいですので、これは最低条件であると言えます。
社会化のためにも必須
「社会化」という言葉を聞いたことはありますか?ざっと整理すると、以下の内容になります。
- 社会化に適した期間は生後1か月〜4か月
- 社会化することで、人間の生活環境に慣らすことができる
- 犬にも人にもストレスがかからなくなる
この社会化に適した期間が、実は8週齢規制と重複していることに気づくのではないでしょうか。
生まれてから暫くは、親兄弟と過ごし、他の犬と一緒に生活することで、犬社会のルールを身に着けていきます。
この期間を過ぎてから、人間の元に引き取られていき、そこで人間社会のルールを学んでいきます。
このようにすることで、その後の人との共生がより良いものになっていくのです。
吠えない犬、噛まない犬になることで、人にも嫌がられること無く、そして犬自身もストレスを感じない幸せな日々を送れるようになるのです。
社会化については、以下の記事でも取り上げていますので、興味のある方はご覧ください。
飼い主(消費者)が気をつける
ペットショップやブリーダーを訪れた際は、この8週齢規制について、訪ねてみても良いかもしれません。
ほとんど守られていないと言われている8週齢規制ですが、一部のこれを遵守する良いブリーダーさんがいることも事実です。
私たち飼い主がこういった知識を身につけ、そして気をつけることで、今までないがしろにされていた法律も、規制を強化するためのきっかけになるのではないでしょうか。
また、Change.orgでは、8週齢規制に賛同する方の署名を集めています。
もし、ご興味がある方、規制の強化に賛同される方は、是非署名をしてみてください!
犬種によって性格が決まっている理由は○○だった!犬種別の特徴とは。
犬種によって性格が変わるとよく言いますよね。「ゴールデンレトリバーは大人しくていい子!待ても上手です!」とかよく見かけますよね。でもよくよく考えたら「なんで犬種で性格が変わるんだろう」って思いませんか?不思議ですよね。実はこれには深い理由があったんです。
犬種で性格が違う理由とは
近年私たちがよく目にする犬のほとんどは、日本生まれの犬ではありません。日本犬と違いヨーロッパでは、使うことを目的として犬をブリーディング(交配)してきました。長所を伸ばすべくブリードをしてきたのです。そのため、たくさんの犬種があり、それぞれに特徴があるのです。
また、性格は遺伝します。もちろん、個体が持つ性格もありますが、遺伝するものもあります。例えば、ゴールデンレトリバーには「落ち着いていること」が求められ、その性格を伸ばすように交配されてきました。そうやって配合された場合、何も教えていないのに自然と「待て」ができるような子もいることがあります。
特徴を理解する
遺伝によって特徴があるということを理解した上で、犬と接することは大切です。そうすることによって、犬が「なぜその行動をとるのか」がわかるようになります。
例えば、レトリバーは物を拾ってくるのがお仕事でした。そのお仕事を全うすべく配合されてきたので、レトリバーに「物を持ってくるな!」という方が難しいんです。だから、レトリバーが飼い主の元に何か持ってきても怒らないであげてください。それは私たち人間が伸ばしてきた長所なのですから。もし、本当に物を持って来て欲しくないのであれば、物を咥えられない環境を私たちが用意してあげるしかないのです。
犬を理解するには、その犬種の歴史を知ることが大事になります。下記は、特徴がわかりやすいように、JKCの犬種グループ分けとは別でまとめています。
レトリバー
日本では介助犬や家庭犬のイメージが強いですが、本来は「Retriever」というその名の如く、「Retrieve(取得)」してくることを目的としてブリーディングされた犬種です。つまり、人間が撃ち落とした鳥獣などを拾ってくるのがお仕事でした。ものを咥え、運んでくることを得意とします。ガンドッグでもお馴染みの犬種です。
- フラットコーテッド・レトリバー
- ゴールデン・レトリバー
- ラブラドール・レトリバー
スパニエル
走り回りながら大声で鳴き立て、鳥を追い立てる役割を担っている犬種です。何かチョロチョロしていると、それを追い回してしまうのはもう特性なんです。運動量も多いのでたくさん遊んであげないとストレスが溜まってしまいます。
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・スプリンガー
ハーディング
ハーディングとは牧畜犬のことを言います。羊や牛などといった家畜を移動させる能力に優れています。その方法は様々で、家畜にそっと近づいて睨みをきかせたり、または吠えたり軽く噛み付いたりしながら家畜を移動させていきます。自分より体格が大きいものにも怯まない一方、この子たちは甘噛することが多いかもしれません。ものを追いかけたくなるのは性格なので許してください。
- ボーダーコリー
- シェットランドシープランド
- コーギー
ポインター・セッター
「ポインティング(指し示す)」を行い、獲物の位置を人間に知らせることを得意とします。人間の命令を受けて草むらに飛びこみ、獲物を飛び立たせることで、主人の射撃を助けます。そのため、鳥に執着することも多く、鳥を求めてどこかへ行ってしまうこともあるかもしれません…。
セッターも鳥などの獲物を見つけると構える姿勢をとります(命名はこの”セット”するところからきています)。複数の獲物を睨みつけることで怯ませて、その場に留まらせるような行動が得意です。ポインターと同様、鳥に執着することが多いので、飼い主の皆さんは注意してください。
- ジャーマン・ポインター
- イングリッシュ・ポインター
- アイリッシュ・セッター
- イングリッシュ・セッター
テリア
テリア種は、フォックス・テリアやラット・テリア等、狩りそのものをさせるために品種改良されてきました。そのため、キツネやネズミ等の小動物を見つけてきて、殺すことを得意とします。そのため、小さなチョロチョロ動くようなおもちゃは大好きな一方、すぐに壊してしまうかもしれません。時には食べてしまうこともあるので、間違って飲み込まないように特に注意が必要です。口を動かすのが好きな犬たちです。
- ジャックラッセルテリア
- エアデールテリア
- ウエスティテリア
ガーディング
その名の通り、守る(ガード)するためにブリーディングされました。家畜を外敵から守るお仕事をしていたのです。彼らはオオカミ等の野生動物から家畜を守るために被毛が不思議な形状をしており、一風変わった容姿をしています。それも、外敵から身体を守るために必要だったのだと言われています。
- コモンドール
- グレート・ピレニーズ
サイトハウンド
視力にとても優れており、獲物を捉えたら、走りながら追いかけます。そのため、走るのがとても早いのが特徴です。イタグレは足の速い犬として有名ですよね。この子たちは走ることに夢中になってしまうと、人の指示が入りにくいこともあります。
- ウィペット
- イタグレ
- ボルゾイ
- サルーキ
セントハウンド
ハウンドには、嗅覚を伸ばしたセントハウンドもいます。匂いで獲物を追跡するお仕事をしていました。匂いに敏感なため、エサがとにかく大好きです。
- ビーグル
- バセットハウンド
歴史を知ることでもっと愛犬のことがわかる!
「歴史なんて知る必要ないでしょ」と思う方もいるかもしれませんが、愛犬の行動や性格を理解するためには、とても重要です。愛犬のことをもっと知るべく、少し勉強して見るのも良いかもしれません。
ペットショップ?里親?それぞれのメリット・デメリットを紹介
皆さんは、「犬を迎え入れる先」といったらどこを思い浮かべますか?ここでは3つの選択肢をあげたいと思います。皆さんの選択肢が広がること、そしてベストな選択ができることが一番だと思います。それぞれの特徴を見ていきましょう。
1、ペットショップ
日本で一番メジャーなのは、恐らくペットショップでしょう。近年ではだいぶ知られてきましたが、ショップで犬が買えるというのは、国際的には珍しいことです。ペットショップの良さは、何と言ってもその身近さ。家族で気軽に寄れる場所ですし、雰囲気も良いため行くだけでワクワクとした気持ちになれます。
メリット
- 身近なため、寄りやすい
- スタッフの人に相談できる
- 必要なものも一緒に買うことができる
- 行くだけで楽しい、ワクワクする
デメリット
- 悪徳ペットショップもある
- あまりにも子犬のうちから販売していたりする(幼犬のうちは、親や兄弟といることが望ましい)
- オークション(競り市)で安値で買ってきた犬を売っていたりする(幼犬の時にたらい回しにされることが過大なストレスとなり、病弱な子になってしまうことがある。)
- 悪徳ブリーダーから仕入れていたりする
2、ブリーダー
自分の望む犬を迎えられるだけでなく、実際に親犬に会えたり、その犬が育てられてきた環境を見ることができます。(これを理由もなく断るようなブリーダーには注意です。)愛犬家に育てられたブリーダーから直接引き取ることは、犬にとっても負荷が少ないと言われています。
メリット
- 決まった犬種を迎い入れられる
- プロに相談することができる
- 親犬や育った環境を見学させてもらえる
デメリット
- パピーミルと呼ばれる、悪徳ブリーダー(酷い環境下で育てる、お金儲けが最優先)もいるので注意が必要
3、里親になる
以前よりもこの選択肢を選ぶ人が増えてきたように思います。里親になる方法も様々あります。
- ネットで「里親募集」をしている子を探す (ペットのおうち など)
- 譲渡会に行く (イベント情報 など)
- シェルター(保護施設)に行く (渋谷にあるシェルター、NPO法人Tier Heim KOKUA など)
- 保護犬カフェに行く (日本初の保護犬カフェ、HOGOKEN CAFE)
- 動物愛護センター、保健所に行く (東京の動物愛護センター)
飼い主さんの環境や気持ちの面もありますが、ぜひ選択肢の1つとして考えていただきたいです。譲渡会や里親募集のサイトなどにネガティブなイメージを持っている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。是非一度のぞいて見てください。
メリット
- 命が救える、社会貢献にもなる
- トライアル期間があるところもある
- スタッフさんが相談に乗ってくれたりする
デメリット
- 譲渡条件が厳しい場合がある(再び悲しい思いをさせないために、里親になる条件がやや厳しい)
- まだ愛してもらったことのない子もいたりする(譲渡会の場合は予め人間に慣らしてくれている場合が多いです)
ベストパートナーが見つかりますように
私自身、3匹の犬と関わってきましたが、いずれも里親になることで犬を迎え入れてきました(拾い犬、里親募集のサイト→譲渡会の流れ)。それは、我が家のポリシーとして「どこから迎え入れても大差はないのだから、どうせなら命を救える選択をしよう」というものがあるからです。全員良い子で、本当に愛し愛されていました。また、元々の飼い主さんからお手紙をいただいたりもしました。
もちろん、ペットショップやブリーダーから受け入れることがよくないわけではありません。また飼い主さんそれぞれの思いや、環境もあると思います。里親になるという選択肢があるということも知った上で、どの選択肢が自分たちにとってベストなのかを一度考えてみてください。きっと、その考えの先に、あなたを待っている子がいるはずです。
また、悪いペットショップ・悪いブリーダーがいるかもしれないということも知っておいてください。そういったことを飼い主側である私たちが知って入れば、自ずと数は減ってくるはずです。
みなさんが、素敵なベストパートナーと出会えますように。