卯年に考える!学校のうさぎ小屋はなぜ減ったのか
2023年の干支の「うさぎ」。特徴的な長い耳や柔らかい毛など、可愛らしいポイントがたくさんある動物です。近年うさぎを飼う人は急増していて、大手ペット保険会社のアニコム損保では、うさぎの契約件数が2015年度から2020年度で、約6.4倍に増加しています。
うさぎは鳴くことがなく、散歩の必要もないため、手がかからず飼いやすいと考えられていることが人気の理由の一つです。そして今年は卯年ということもあり、「うさぎブーム」も話題になっています。
一方で、かつてどこの学校にもあったうさぎ小屋は減少しています。うさぎを飼う人は増えたのに、なぜ学校のうさぎ小屋は減ってしまったのか。今回は、うさぎの学校飼育の問題点を掘り下げていきます。
学校で動物を飼育する意義とは
そもそも、なぜ学校で動物を飼う必要があるのでしょうか。文部科学省の小学校学習指導要領には学校飼育動物の意義について、次のように記載されています。
小学校学習指導要領 2章5節
動物を飼ったり植物を育てたりする活動を通して、それらの育つ場所、変化や成長の様子に関心をもって働きかけることができ、それらは生命をもっていることや成長していることに気付くとともに、生き物への親しみをもち、大切にしようとする。
動物との触れ合いは、子供の情操教育にとって非常に重要なことと言われています。全国の小学校で動物が飼育されているのは、動物との触れ合いを通し、子供たちに思いやりの心を育むことが目的です。
特に子供時代に動物が好きなのにもかかわらず、家庭の事情などでペットを飼えなかった人の中には、学校で飼育されている動物を世話した経験がとても貴重だったと語る人もいます。
さらに、永岡文部科学大臣も2022年12月20日の記者会見で、学校での動物飼育について、次のようにコメントしています。
「デジタル化が進展する時代であるからこそ実体験からの学びも重要だ。児童が生き物への親しみを持ち、命の貴さを実感するために、学校における継続的な動物飼育を行うことは、やはり意義がある。」
うさぎの学校飼育廃止のネット署名は2万人も
しかし、実際には文部科学省の方針とは逆行するように、学校におけるうさぎの飼育廃止を求めるネット署名には2万人を超える人が賛同し、注目が集まっています。
その理由として次のような点が、うさぎが学校での飼育に不向きだとされています。
不適切な飼育環境
学校のうさぎの飼育環境は適切ではない点が指摘されています。本来うさぎは温度管理が必要な動物で、湿気と強い風には極端に敏感なので、屋外飼育には向いていません。
また、毛玉症の予防のためにもこまめにブラッシングする必要がありますが、ほとんどの学校で行われていないと見られます。
子供への負担
うさぎや、うさぎのエサとなるイネ科の植物のアレルギーを持つ子供に配慮する必要があります。特に後者のアレルギーは多くいると言われています。
また、長期休みの間の飼育当番を負担に感じる子供や保護者もいるようです。
教師への負担
ただでさえ、教師の過酷な労働実態が問題となっている昨今です。その上、教師に飼育動物の管理や児童への指導まで求めるのは酷だと言えるでしょう。
また、学校によっては命の大切さやうさぎの飼い方を学ぶ授業がなく、ただ当番が回ってくるから世話をするだけというケースも少なくありません。新たな授業を増やすことは教師への負担になるため、せっかく動物がいても子供の学びにつながっていないのです。
学校での飼育の問題点とうさぎブームの関連性
学校でのうさぎの飼育廃止を求める人たちの中には、動物愛護の観点から、不適切な環境である学校での飼育はよくないという意見を持つ人が多くいます。
また、「よくない環境で動物を育てることは子供の学びにつながらない」、「学校のようないい加減な飼い方で良いんだと子供が学んでしまう」といった、子供の学びに悪影響になるのではないかという意見もあります。
「うさぎブーム」の面では、うさぎの飼育には手がかからないというイメージが仇となり、想定外の難しさからくる飼育放棄の件数も増加しています。
うさぎは繊細でストレスに弱い動物です。飼い主は常にうさぎの体調を気にかけてあげる必要があり、室内でも十分な運動をさせなければならず、時には爪切りやブラッシングも必要で、飼育は決して楽ではありません。
うさぎブームと学校での飼育を関連付けて言うならば、学校でうさぎの生態を学び、しっかりと世話をし、動物を飼う大変さを体感出来れば、ブームだからといって安易に飼おうとはしないのではないでしょうか。教育の場である学校での飼育で簡単に飼えるようなイメージをつけてしまうのは、かなり問題があると言えるでしょう。
どの動物にも言えることですが、干支だから、ブームだから、寂しいからといって安易に飼ってはいけません。事前に動物の飼い方をよく学ぶこと、適切な飼い方をすること、終生飼育をすることはとても重要です。
そういったことを学ぶのが情操教育の目的であるはずですが、真逆の結果を引き起こしているのではないかと思えてなりません。
まとめ
大阪府の例をあげると、うさぎやニワトリなどを飼育する小学校は15年前の79%から令和4年度の21%まで大きく減少しています。(大阪府教育委員会調査※大阪市、堺市を除く)
不適切な環境で飼育される動物が減ることは良いと考えることもできますが、先ほどご紹介したような、動物が好きでも飼うことが出来ない子供の学びの場が減ってしまうのは非常に残念です。
子供の情操教育のために何が出来るのか、そして学校の動物が幸せに暮らすためには何がベストなのか、改めて考える時機なのではないでしょうか。
中国のペット事情大公開! 一番人気なペットは?
日本の隣国であり、古代から深い関係にある中国ですが、皆さんは中国のペット事情をご存知でしょうか。
実は、中国でも古くから犬や猫が飼われており、現代でも生活の一部となっています。しかし、隣国とはいえ、そのペット事情は日本とはやや異なり、中国独自のものも見られます。
今回は、そんな中国におけるペット事情についてご紹介していきます。
中国におけるペットの飼育総数
中国において、犬や猫などのペットを飼育している人口は全体の約5%と言われています。14億人を抱える中国にとって、わずか5%とはいえ、その数は7000万人にも及びます。
さらに、一人当たり一頭以上飼育していると考えると、飼育総数は1億匹を超えるとも言われています。
中国の劇的な経済成長により、多くの人の生活にゆとりができ、ペットを家族の一員として迎え入れる人も増えてきました。そのため、中国国内におけるペット総数は今後もますます増えていくでしょう。
どんな人が飼う?
かつての中国では、ペットを飼うことは非常に贅沢なことであるとされ、毛沢東の時代は、ペットを飼うこと自体が禁止されていました。
時代の変化や経済成長に伴いペットを飼う人が増加している中国では、どのような人々がペットを飼い始めているのでしょうか。
若者の間で増加
特に若者の間で顕著に増加してきており、飼い主の約8割が20代から30代の若年層だと言われています。
この背景にも、経済成長が大きく関わっており、各々の生活に余裕が出てきたこと、職場でのストレスや出稼ぎによる孤独感を緩和することを目的に、ペットを飼い始める若年層の人々が増加してきているとされています。
高齢者の間でも
若者の飼い主が増加する前は、ペットは主に高齢者が飼っていました。一人っ子政策により、子どもが独り立ちした夫婦が寂しさを埋めるためにペットを飼い始めるという家庭が多かったためです。
現在でも、多くの高齢者がペットを家族の一員として迎え入れています。
中国では小型犬が人気
中国では、古くからペットを屋内で飼う文化が根付いています。そのため、家の中で飼いやすい小型犬、特に、チワワやポメラニアン、トイ・プードルが非常に人気です。
高層マンションが立ち並ぶ都心部では、決して大きい部屋ばかりではなく、遊ばせてあげる庭などもありません。また、家から一歩外に出れば、人や車が非常に多い街中であり、散歩にも適しているとは言い難い場所ばかりです。
そのため、広い部屋や十分な運動量が必要な大型犬よりも、小型犬が好まれる傾向にあります。このあたりの事情は日本の都心部と同様のようです。
ブームが招く生態系の破壊
かつてはペットを飼うこと自体が富裕層にのみ許されていた贅沢であり、ペットは家族ではなく、どちらかというと自分が所有しているモノという考えが一般的でした。
日本においても特定の犬種が人気になるペットブームが幾度もありましたが、中国でもそれは同様です。
流行の最先端を取り入れたい富裕層は、ペットの爆買いを行い、ブームが過ぎた犬種を飼育放棄して新しい犬を飼うということを繰り返していました。
チベタン・マスティフの事例
具体的な例として、チベタン・マスティフが記憶に新しいかもしれません。
チンギス・ハーンが戦争で使ったとしてよく知られている犬種で、2010年頃に中国で絶大なブームを迎えました。一頭8億円もの値段で売買されたこともあるようです。
しかし、ブームが過ぎ去ると、富裕層は次々にチベタン・マスティフを手放してしまい、新たな人気犬種へと目を向けてしまいました。
その結果、野生化したチベタン・マスティフが群れを作り、人間や絶滅危惧動物を襲い、生態系を破壊してしまうなど、現在でも深刻な社会問題になっています。
犬食文化から見る人と犬の関係の変化
また、中国では昔から犬の肉を食べる文化があり、年間約1000万〜2000万匹の犬が食されていると考えられています。
しかし、時代の変化とともに犬は「モノ」から「パートナーや家族」へと変化していき、今では中国国内でも犬食に反対する声が高まっています。
そのようなこともあり、2020年に中国農業農村省が公表した「食べていい動物リスト」では、初めて犬が外されました。
人間と犬との関係が変化したこと、海外からのバッシングも多いことから、国をあげて犬食を禁止する動きが見られています。
まとめ
今回は、隣国である中国におけるペット事情について、簡単にご紹介しました。
ブームを意識しすぎたためにおこるペットの爆買いや飼育放棄は、現在ではだいぶ減少してきています。動物愛護団体も発足し、ペットはモノではなく家族であるという考えが主流になってきた結果だといえるでしょう。
飼い主の多くを若者が占めるようになってきていたり、犬を屋内で飼う文化が元々あったことから小型犬が人気であったりする点は、日本とは少し違うペット事情と言ってもいいのかもしれません。
1億匹ものペットが飼われている中国は、ペット市場においても注目を集めています。犬食の禁止に向けた動き等、動物愛護団体のもと、変わりつつある中国のペット事情がどのようにより改善されていくか、注視していきたいですね。