犬・猫はどこからペットショップに来て、どこへ行くのか
ペットショップのショーウインドウに並んでいる犬や猫、どこからどのようにして来ているのか、知っていますか?
こんなにたくさんの種類をどこから集めているのか、どんな風に育てられていたのか、流通しなかった子たちはどうなるのか、気になったことはあるけれど知らないままになっている方は多いのではないでしょうか。
今回の記事では、ペットの流通経路とそれらの間に潜む社会問題について詳しく追っていきます。
犬や猫はブリーダーの元で産まれる
ペットショップなどを通じて購入される犬・猫たちは全て、ブリーダーの元で生産されています。単にブリーダーといっても、その形態はさまざま。
副業として少数の犬猫を飼育繁殖している「ホビーブリーダー」、ドッグショー・キャットショーのために少ない品種のみを繁殖する「ショーブリーダー」、ペットショップ経営に加えて繁殖も行っている「ペットショップ兼ブリーダー」、数十頭以上・複数品種の犬猫を飼育繁殖している「専業ブリーダー」などが存在します。
その中でも形態として多いのは、ペットショップ兼ブリーダーと専業ブリーダーです。
ペットショップ兼ブリーダー
これまで、ペットショップの個人店の多くは、「ペットショップ兼ブリーダー」の形態をとり、複数のホビーブリーダーと連携して繁殖を行っていました。
しかし近年、動物愛護管理法の規制強化によりホビーブリーダーの廃業が進んだこと、大手ペットショップチェーンの台頭により、個人店では自店舗での販売をやめて、オークションに出すことが多くなったようです。
また、最近では大手ペットショップチェーンが直営の繁殖場を持つことも少なくありません。
専業ブリーダー
専業ブリーダーは、40〜100頭以上の母犬猫から繁殖させて、ペットオークションやペットショップに出品しています。
規模が大きく、扱う品種も頭数も多いため、 狭いケージに閉じ込められ、十分な運動をさせられなかったり、 排泄物の処理が不十分になったりしやすいと言われています。
もちろん、全ての専業ブリーダーがそういう経営をしているわけではありませんが、劣悪な環境で運営されているところは「パピーミル(子犬工場)」と呼ばれ、深刻な社会問題となっています。
ペットオークションを通じペットショップへ
多くのペットショップは、ペットオークションを通じて犬・猫を仕入れています。
ペットオークションでは、全国のブリーダーが持ち込んだ犬・猫の赤子が一匹一匹、競りにかけられていきます。
2017年度の環境省のデータでは、日本全体で26の業者が確認されています。
免疫力が十分でない生後7〜8週齢の子犬・子猫を売買するという構造上、ただでさえ感染症が蔓延しやすい状況にあるにも関わらず、管理体制が甘いオークション会場が多いようです。
悪質ブリーダーでも簡単に持ち込めてしまうため病気や健康問題を持った子が紛れ込むことが多く、感染症にかかっている子がいても健康チェックがずさんなために発見されにくく、飼い主の手に渡ってから発覚したという事例もあります。
ブリーダーからそのままペットショップへ
ブリーダーとペットショップが直接契約を結び、繁殖された犬・猫を直接卸すという取引形態も存在します。
問題を恐れるペットショップ側が良質なブリーダーを選ぶためか、この形態ではあまり大きな問題が起きていません。大手のペットショップチェーンでは、契約ブリーダーのために医療サポートや、相談サービスなどを提供しているところもあります。
直接ネット販売
自前で販売サイトを設けて、ネットを通じて販売しているというブリーダーもいます。しかし、全ての手続きをネット上で済ませてしまえるという訳ではありません。動物愛護管理法で規制されているため、実際には販売業者の事業所まで出向き、ブリーダーから説明を受けた上で買う必要があります。
ペットショップを通じずに直接購入という形になるため、購入者自身で、繁殖環境、健康状態、病気の有無などを確認しなければいけません。
動物愛護管理法でペットのネットオークションや通信販売が規制される前はトラブルが多発していましたが、改正後は大幅に減っているようです。
流通から外れると…?
ブリーダーのもとで繁殖された子犬・子猫の全てが飼い主を見つけられる訳ではありません。ペットショップで売れ残ったり、ペットオークションで値をつけられなかったり、悪質な環境下で病気にかかって売り物にならなくなってしまうケースもあります。
動物愛護センターへ
平成25年に動物愛護管理法が改正される前までは、飼い主の見つからなかった犬・猫は動物愛護センターに引き取られるケースが少なくありませんでした。犬が収容された場合、行政は、三日程度と非常に短い期間で、その犬を処分できるようになります。
改正以降は、ペットショップや繁殖業者などからの犬猫の引き取り要請を、各自治体が断れるようになりました(第35条)。平成24年度に16万2千頭であった犬猫の殺処分数が、平成30年には3万8千頭にまで減っているように、改正の効果は非常に大きかったようです。
しかし、改正動物愛護管理法は完全とは程遠く、ペット産業の大量生産・大量消費というビジネスの形態は温存されたままです。
遺棄
流通できない犬や猫の引き受け先が減った結果、全国で業者による犬の大量遺棄事件が急増しました。
なかでも有名なのは、2014年に栃木県で、河川敷と山中に計70匹の犬の死骸が遺棄された事件です。犬を遺棄した元ペットショップ店員は、ブリーダーから100万円と70匹の犬を受け取ったものの、引き取り手が見つからず、右往左往している間に全て死なせてしまったといいます。
ペットを大量に繁殖してビジネスを成り立たせていたブリーダーや、売れ残った犬を動物愛護センターで処分してもらっていたペットショップオーナーが、行き場を失った結果だと言えます。
引き取り屋へ
そんな情勢に乗って、現在、売れない犬・猫を飼育費と引き換えに引き取る「引き取り屋」というビジネスが活発になっています。料金は数千円〜数万円だとされていますが、当然その程度のお金ではまともに犬・猫を飼育できません。
業者の多くは、積み上げた狭いケージに犬・猫を閉じ込め、餌もほとんど与えず、病気も治療せず、すぐに死なせてしまうため、事実上の殺処分と言えます。見方によっては、安楽死よりも酷い殺処分と言えるかもしれません。
最後に
子供の頃の私は、ペットショップで展示されている子犬や子猫は、「ミニカーと同じようにどこかの工場で作られてるんだ」と思っていました。幼さゆえの早合点でしたが、こうして見てみると、あながち間違っていたとも言えません。ペットショップで扱われているほとんどの犬や猫は、おもちゃと同じように、工場で生産されていると言っても過言ではありません。
近年、ペットの家族化が進み、ペットに対する価値観が大きな変化を遂げています。世界に目を向けると、ペットショップでの生体販売を禁止している国も多くあります。今こそ広い視野をもって、私たち消費者もペット産業のあり方を考えてみてはいかがでしょうか?消費行動を変容することにより、ペット産業自体を徐々に変えていくことは可能なのではないでしょうか。
ペットをオークションにかけるペット業界の裏側。信頼できる入手先は
近年、ペットの虐待を防ぐ法律が厳罰化したり、ペットの殺処分をなくす活動が活発化したりと、ペットの権利が重要視されるようになってきました。
ペットを飼ってからのペットの権利については理解が広まって来ていますが、そもそも、ペットショップで販売されているペットはどこから来ているかご存知ですか?
実は、ペットショップで売られているペットの多くが「ペットオークション」から来ています。今回は、ペット業界の現状について考えます。
「オークション」にかけられるペットたち
ブリーダーの元で繁殖されたペットは、直接飼い主の手に渡ったり、ペットショップに渡ったりすることもありますが、その大半はペットオークションにかけられています(2008年の流通量をもとに環境省による推計値)。
流通量が多いため、ペットショップの多くもその仕入れ先をペットオークションに依存しているのが現在の日本の実情です。
生後間もなくオークションにかけられるペット
2019年に改正された動物愛護法では、犬猫の販売を生後8週齢以降と定めました(俗に8週齢規制と言います)。
これは、生後8週齢までは親や兄弟の元で過ごさせることにより、犬猫の免疫力を高めるとともに、犬や猫の社会化を促進するためです。
改正法成立により、一般の人への販売は生後8週齢以降となりましたが、もし、それよりも早い段階でペットオークションに出されているのであれば、本末転倒です。
2020年3月現在、8週齢規制はまだ施行されていないため、施行後のペットオークションに出されるペットたちの年齢が気になるところです。私たち飼い主もこれをきちんと知り、監視をする必要があるでしょう。
ペットの「競り落とし」
ペットオークションでは、需要に合わせてペットの価格が決まります。
その仕組みは魚や野菜の「競り」とほとんど同じで、ペットの価格は数十秒から数分で決まるといいます。ペットオークションの様子からは、ペットをまさに「商品」として扱っている実態が伺えます。
ペットの繁殖業者「パピーミル」の実態
ペットオークション自体は違法でも何でもありません。後述する環境省が定める動物取扱業に「競りあっせん業」として定義されています。
ペットオークションにペットを「出品」するのは、ペットを繁殖するブリーダーの人たちです。問題は、ここに一部の悪質なブリーダーが含まれてしまっていることです。
もちろん、愛情を込めて1匹1匹を大切に育て、むやみに繁殖をさせないブリーダーも存在します。しかし、そうではない一部の悪質なブリーダーによって、たくさんの悲しい命がやり取りされています。
子犬工場「パピーミル」
最近よく目にしたり、耳にすることが多いキーワードが「パピーミル」という言葉ではないでしょうか。保護活動や悪徳ブリーダーの話題が知られることにより、世間にも認知されるようになった言葉です。
パピーミルとは、犬を「商品」と見なし、お金儲けをするために、むやみやたらと繁殖をさせて大量に出荷する繁殖業者のことを言います。
母親は「子供を産む道具」
パピー見るでは、母親たちは「子犬、子猫を産む道具」として扱われ、何度も子供を産まされ、そして、生後間もなく子供から引き離されます。
さらに悪徳な業者だと、子供を産めなくなった母親を処分してしまうところもあるようです。
劣悪な環境で育てられるペットたち
お金儲けのための大量生産を意識した悪徳なパピーミルには、きちんと清掃をしなかったり、ペットたちに十分なスペースを与えなかったりと、ペットたちを劣悪な環境で育てているところがあります。
なぜ、そんなことができるのか理解に苦しむでしょう。しかし、彼らにとっては犬や猫は「商品」であり、私たちが知る可愛らしい生き物ではなく、単なる「モノ」なのです。
繁殖には知識が必要
犬や猫の繁殖(ブリーディング)は、遺伝学の延長であり、非常に専門的な分野です。競馬をやる方はよくご存知なのではないでしょうか。
遺伝の影響を無視して、むやみな繁殖を行うことは、犬や猫が遺伝的に持っている病気や疾患のリスクを高めることにもなります。犬種や猫種によって特定の病気や疾患リスクが異なることは既に一般の飼い主の方にも知られているところですが、それは遺伝によるところが大きいのです。
スウェーデンでは、趣味レベルの小規模なブリーダーは例外ですが、繁殖を行うには資格が必要です。これは、繁殖がいかに専門的で難しいものであるかを物語っています。
どこからペットを買ったらいいのか?
ここまで、日本のペット業界におけるペットの流通の現実をお伝えしました。
では、これからペットを飼おうと思っている人は、どこからペットを購入したら良いのでしょうか。
ペットショップか、ブリーダーか
既にお伝えした通り、ペットショップの多くがペットオークションからペットを入手していますが、全てのペットショップがそうだというわけではありません。ペットショップの中には、信頼できるブリーダーから直接入手しているところもあります。
また、飼い主への直接販売を行なっているブリーダーもいます。ただ、悪質な業者が単に売れ残った犬や猫をネットを通して販売をしているケースもあり、ほとんど見分けはつかないでしょう。
ペットショップだからどこも悪い、ブリーダーだからどこも安心、ということはなく、どちらで買うにせよ信頼できるところを選ぶことが重要です。
信頼できるペットショップの選び方
信頼できるペットショップかどうかは、以下のようなポイントに注意して見極めましょう。
動物取扱業登録証はあるか確認しよう
動物を販売するペットショップは、「第一種動物取扱業」のひとつで、自治体等の登録を受けなければなりません。
行政に認可されているペットショップには、第一種動物取扱業の登録証が、登録番号とともに発行されています。ペットショップを訪れた際、登録番号を含む「動物取扱業登録証」が存在するかどうか確認しましょう。
これは最低限チェックする項目であり、これの掲示がなく販売されている場合は、違法業者ということになります。
ペットの入手先を確認しよう
ペットショップであれば店員さんに、ペットをどこから入手したのかを聞いてみるのも良いでしょう。
もし、よくわからない回答だったり、答えられなかったりしたら注意が必要です。単に、ブリーダーから入手したと言われたら、どこのブリーダーなのかを確認し、一度家に帰って信頼できるブリーダーかどうかを確かめましょう。
最近では、ペットショップにあるケージに出生地(ブリーダー名や所在地、生年月日)の表示があるところもあります。
飼育環境を確認しよう
ケージの掃除は行き届いているか、1匹あたりのケージが狭すぎないかなど、飼育環境を確かめることでペットをどれだけ大切にしているかが伺えます。
悪徳なペットショップだと、体が大きくなって売れ残るのを防ぐため、あえてペットの成長を遅らせるために食事制限をしているところもあるようです。ペットがやせ細っていないか、年齢に対して体が極端に小さくないかなどを確認しましょう。
逆にそういった子を救う気持ちで敢えて購入するという選択肢も考えられますが、それはそれでそのペットショップに利益をもたらすことになるため、私たちは頭を悩ませてしまいます。中長期的には、そのようなペットショップからは絶対に買わないという選択を取るのがベストだと思います。
ペットショップにやってきた時期を確認しよう
前述した通り、法改正により、既にペットショップでのお客への販売を生後8週齢以降としているところはたくさんあります。
8週齢規制が施行後、ペットショップに来る時期が8週齢より早い場合は、この法律自体があまり意味のないものになってしまうため、よく確認すべきです。
なぜなら8週齢規制の本来の目的は、生後8週齢までは母親や兄弟の元で過ごさせることだからです。客への販売時期が変わっても、ペットショップに来る時期が変わらなければ、単にペットショップで過ごす時間が長くなるだけなのです。
信頼できるブリーダーの選び方
実際に行って確かめよう
ネット販売を行なっているブリーダーもいますが、先ほども申した通り、ネット上ではどのブリーダーが良いブリーダーで、どのブリーダーがそうではないのかは判断がとても難しいでしょう。ここは少し大変でも、実際に飼育の様子を見学に行ってから購入することをおすすめします。
実際に、ブリーダーの元を訪れれば、母犬や子犬、母猫や子猫の生活環境がよくわかります。それだけでも、悪質な業者かそうでないかはわかるでしょう。
また、犬種や猫種にもよりますが、以下のような質問を投げかけても良いでしょう。
- 母親はどのくらいの頻度で繁殖を行なっているのか
- 父親と母親の性格はどうだったのか
- 遺伝的な配慮はしたか、どんなことに気をつけたのか
- どんな考えやポリシーを持って繁殖しているのか
ここまで色々と掘り下げて質問すると、少し煙たがられるかもしれませんが、愛情と情熱を持ったブリーダーであれば、きちんと話をしてくれるでしょう。
保護犬や保護猫という選択肢
詳細は別の記事に譲りますが、ペットを「買う」のではなく、ペットを譲り受けるという選択肢もあります。
東京都内の話ですが、一部のエリアや一部のコミュニティでは、徐々に保護犬を飼っているということが、「格好良いこと」とされるようになってきました。
保護犬や保護猫だからこそ難しい面もありますが、保護犬や保護猫を迎えるという選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょうか?
まとめ
ペットショップで販売されているペットの中には、どのようなブリーダーに繁殖されたのかよくわからないペットオークションで仕入れられたペットがたくさんいます。
胸が痛むのは、例えそのような悪質なブリーダーに繁殖されたペットであっても、そのペットには何の罪もないこと。しかし、そのペットを救うために購入してしまうと、悪質なブリーダーに利益をもたらすことになるという矛盾も出てきます。
法改正などで、少しずつペットの権利に関心が高まっていますが、私たちはこのような矛盾にも目を向けるべきです。
そして、買い手である私たちがペット販売の知識を持ち、絶対に悪質なブリーダーからは買わないようにすることが、日本の悲惨なペット業界を変えるひとつのステップになるでしょう。
日本のペットショップは少し特殊?動物の福祉の観点から考えてみる
皆さんが「新たに、犬や猫をおうちに迎えよう」と思った時、一番最初に向かう先はどこでしょうか。
多くの方が「ペットショップ」をイメージしたかもしれませんね。
「ペットショップから」が多いけど…?
2016年にペット総研から発表された「ペットのお迎え」アンケートによると、犬猫合わせてペットショップから迎えたという回答が4割ほどになりました。
ペットショップから犬猫を迎えるケースが、現在は一般的なようです。
日本でペットショップと言えば、ショーケースで展示販売されることが一般的でしょう。
しかし、動物愛護先進国と言われる欧米では、そのような形で販売することは動物の福祉(アニマル・ウェルフェア)の観点からあまり推奨されていないのです。
ペットショップや生体販売の状況を比較することによって、「欧米諸国の動物の福祉に対する意識」と、「日本の意識」の違いに迫ってみました。
犬猫が生まれて、ペットショップに販売されるまで
ペットオークションの存在
これは一つの例ですが、日本において、犬や猫が、親犬や親猫から生まれてからペットショップで販売されるまで、どのようなルートを辿るのかを追いかけてみましょう。
まず、繁殖業者やブリーダーさんがいて、繁殖された犬猫がペットオークションへ持ち込まれます。そして、ペットショップはそのオークションに行き、犬猫を買い付けて自分のお店で販売します。
最終的には、ペットショップで販売されている犬猫を、消費者が買います。
繁殖業者やペットショップにとって、ペットオークションにさえ行けば売れる/買えるという、便利なシステムになっています。ここで留意しておきたいのは、動物のことを考えて成り立ったシステムではない、ということですね。
もちろん、全てのペットショップが当てはまるわけではありませんので、このようなことが起きうる状況である、という程度に受け取って頂ければと思います。
オークションで売り買いされることの問題点
ペットオークションからペットショップで販売されることは何が問題になってくるのでしょうか?
ペットショップの生体販売では、子猫や子犬が主に販売されています。それは、ペットショップへ犬や猫を買い求めにくる消費者のニーズが、若ければ若いほど良いという意見が大半であるからです。
しかし、もしオークションで売れ残ってしまった場合は、どうなるでしょうか。
価値が下がり、買い手がつかなかった犬猫は、どこかで飼い犬や飼い猫として育てられる機会を逃し続けることになるかもしれません。
「若ければ若いほど良い」という価値観で犬猫を売買することは、道徳的な問題だけでなく、犬猫にとっての自由を制限することになりかねません。動物の福祉の観点から考えても疑問が残ります。
動物の福祉(アニマル・ウェルフェア)って?
日本にはすでに「動物愛護」という考え方があります。動物愛護管理法における「愛護」の意味は以下の通りに定義されています。
実体的な行為 :動物に対する虐待防止、適正な取扱い、適正な管理などを行うこと。動物の習性等に配慮しつつ、愛情や優しさをもって取り扱うことを含む。
生命尊重などの理念:動物や動物の命を大切にする気風や思想のこと。
対して、動物の福祉(アニマル・ウェルフェア)とは、イギリスの家畜福祉協議会(FAWC)が提唱した「5つの自由」を基本とする考え方です。
国際的な動物福祉の標準として各国の法令にも反映されています。
5つの自由
①飢えと渇きからの自由
②肉体的苦痛と不快感からの自由
③傷害や疾病からの自由
④おそれと不安からの自由
⑤基本的な行動様式に従う自由
動物の福祉の視点は、人間から見た動物ではなく、動物自身がどう感じるか、という科学的な研究を根拠にする側面が強いのです。
この考えに照らして見た場合、繁殖業者・ブリーダー→ペットオークション→ペットショップというシステムのなかで、犬猫の自由を抑制することが起こりうるのではないか、ということを考えてみることが必要かもしれません。
欧米諸国の生体販売に対する意識
動物保護・福祉の意識の高まりから、生体販売する場合は展示販売をしない、などの配慮が考えられています。生体販売が完全に禁止されているわけではないようです。
欧米ではなぜこのような意識が進んでいるのでしょうか。
例えばイギリスでは、ペットを購入したい人は、売られているのを買うのではなく、ペットショップやブリーダーさんに予約して産まれてくるのを待つという方法があります。
予約制にすることで、繁殖による犬の負担を減らすことができるのです。
アメリカでも、ブリーダーさんから直接購入したり、仲介業者を通してブリーダーさんから購入する、というように、「産まれてきた個体を見て選ぶ」のではなく「良いブリーダーさんかどうか」を重視して選ぶという方向へシフトしているようです。
生体販売が全て良くないということではない
主に日本のペットオークションやペットショップの販売などについて追いかけてみましたが、生体販売が全ていけないという、主張をしたい訳ではありません。
しかし本来、子どもを産む行為は、動物にとって完全にコントロールできることではありません。
この犬種のメスの子犬が欲しいと思った時、ペットショップで探せばすぐに手に入る、言い換えればお金さえ払えば、いつでも誰でも好きな動物を買うことができてしまう、今の状況が少し不自然なのかもしれません。
豊かな社会になったからこそ、「欲しいものがすぐ手に入る」という大量生産・大量消費のルートに、動物の命まで預けてしまっていいのだろうか?ということを考える必要があるのではないでしょうか。
まとめ
ペットショップの中にも、もちろん動物の福祉をきちんと考えているブリーダーさんに育てられた犬猫を販売しているところもあるということは、前提として話を進めてきました。
ペットショップから購入する場合、並べられたなかで「かわいい!この猫(犬)にしよう」というような出会いもあります。
しかし、「どんな親から生まれたのだろう?」「どんな人たちに、どんな環境で育てられたのだろう?」「元々どんな国で生まれた種なんだろう?」ということを、一旦立ち止まって考えてみるのも良いかもしれません。
特に、犬の場合は、ブリーダーさんが遺伝学をきちんと学んでいるかどうかで、その後の病気の発症率などに差が出ると言われています。「犬猫をお迎えしたいと思った時、自分ならどんな選び方をするのか?」ということを、一度考えてみませんか?