保護活動の救いとなるか?!改正動物愛護法における数値規制とは

2019年に「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」が改正され、2022年までに段階的に施行されています。

この改正の特徴の一つとして、動物の飼育に関して初めて「数値規制」が導入されました。

今回は、数値規制を導入した行政側の狙いと、それによって影響を受ける動物保護団体の活動の問題点を解説していきます。

なぜ数値規制を導入したのか

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以前までの動物愛護管理法には、適切な飼育の条件となる「飼育頭数」、「従業員数」、「飼育スペースの広さ」などに具体的な規定がありませんでした。

そのため、自治体が不適切な飼育現場を指導するための法的な根拠がなく、悪質な業者に指導することが出来なかったり、業者自身も不適切な飼育環境だという認識がなかったりという問題がありました。

適切な飼育環境を数値で表すことによって、基準を守っていない場合は指導することができ、速やかに改善しなかったり、改善の意思がなかったりする事業者に対しては、最終的に動物取扱業の取り消しも可能になります

具体的な数値制限とは

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2019年の改正動物愛護管理法では、「繁殖年齢や回数」、「飼育環境の温度や湿度」、「臭気の基準」など様々な数値規制が導入されましたが、特に注目したいポイントは「飼育スペース」と「従業員数」です。

飼育スペース

身動きが取れないような狭いゲージに動物を入れっぱなしにし、運動も出来ないような劣悪な環境で飼育するペット関連業者も存在します。
数値による規制が出来ることによって、違反行為が具体的で明確になりました。

■運動スペース一体型飼養等(平飼い等)を行う際のケージ等の基準のイメージ

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(画像:環境省「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針~守るべき基準のポイント~」より)

従業員数

一人の従業員が世話をする頭数の制限を設けることによって、一人で何十頭、何百頭の動物を抱え、十分な世話をされず放置されるような環境を減らしていく効果が期待できます。

■従業員一人当たりが飼養又は保管をする頭数の上限

犬の場合 22年 23年 24年 25年
ブリーダーなど(繁殖用) 25 20 15
ペットショップなど(販売用) 30 25 20
動物保護団体など(非営利)※ 30 25 20
猫の場合 22年 23年 24年 25年
ブリーダーなど(繁殖用) 35 30 25
ペットショップなど(販売用) 40 35 30
動物保護団体など(非営利)※ 40 35 30

※動物保護団体などの第二種動物取扱業では、法律の施行後にブリーダー等の第一種動物取扱業から譲渡される動物が増加する可能性が考えられるため、完全施行時期を1年遅らせることになっています。

詳しい飼育基準の数値制限等はこちらをご覧ください
動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針~守るべき基準のポイント~/環境省

厳しい状況におかれたペット業界

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先に述べたような動物愛護管理法の数値規制導入にあたって、ペット関連の業界団体や一部の繁殖業者からは、「廃業に追い込まれる業者も出る」と強い反発がありました。

実際に数値制限の導入後に繁殖犬・猫を減らすブリーダーは増えていると言われており、全国のブリーダーに対して実施されたアンケートによると約30%のブリーダーが廃業も視野に入れているとされています。

その結果、一部では13万頭以上の犬や猫に保護が必要になり、殺処分が増えると主張する意見もあります。しかし、そういった行き場のない動物たちの受け皿となる動物保護団体も数値規制の対象となるのです。

保護団体のキャパシティと葛藤

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ブリーダーの廃業が進み、手放された動物たちが保護団体へ引き渡されたとしても、保護頭数が法律の数値規制以上に増えてしまった場合、保護団体はスタッフの増員や飼育スペースの拡張を迫られます。

もちろん、それには莫大な資金が必要になり、多くの保護団体の頭を悩ませる問題となっています。
また、動物保護活動をされている方の多くが、1頭でも多くの動物を救いたいと考えています。そうした方々の「保護したいが数値規制のために断らざるをえない」という苦しみは、金銭面だけでなく精神的な負担も強いています

しかし、保護団体への数値規制で保護が出来なくなる動物が増える一方で、保護団体と称する劣悪な環境の施設を減らすことも可能になるでしょう

「保護する動物の数」と「保護後の飼育の質」のバランスが非常に難しい問題となっています。

最後に

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日本のペット業界の問題として、ペット産業の「大量生産、大量廃棄」が指摘されています。数値規制により悪質なブリーダーが減り、大量生産がなくなれば、大量廃棄つまりは殺処分や遺棄の減少が期待出来るかもしれません。

しかし、それに至るまでの過程で保護団体にかかる負担や、懸念されている殺処分の増加は避けて通れない問題です。

残念ながら、多くのペットたちが幸せに暮らせる環境になるには、まだまだ解決すべき問題が山積しています。まずは多くの人が現状を知り、少しずつでも改善していくことを願います。

知っておきたい。ペットブームと売れ残った動物たちの行く末

皆さんはペットショップで子犬や子猫が売られているのを見て、ただ「可愛い」と思えるでしょうか。

確かに動物好きな人にとっては、犬や猫はとても可愛い存在ですが、「可愛い」の裏側には残酷な真実があるのも事実です。

今回は、人間が作り出したペットブームと、それに翻弄され、悲惨な運命を辿る動物たちがいることを、ご紹介していきます。

シベリアンハスキーの悲劇

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「ペットブームが来る度に、危機感を覚える」と、ある動物保護団体関係者は言います。その理由はブームで飼育頭数が増えることにより、捨てられる動物も増えるためです。

1990年前後、人気漫画の影響でシベリアンハスキーブームが起こりました。しかし、シベリアンハスキーは元来ソリ犬で非常に体力があるため、かなりの運動量が必要です。また、あまりトレーニング向けの犬種ではないため、しつけが難しいとされています。

運動不足のストレスや不十分なしつけにより、問題行動を起こす犬が増えていったことは想像に難くありません。

犬種の特徴を知らずに飼った人が飼育放棄し、当時の保健所には数多くのシベリアンハスキーがいたとも言われています。

ペット産業が危惧する猫ブーム

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2010年代、猫が駅長をしている姿が話題になり、空前の猫ブームが起こりました。2017年以降は猫の飼育頭数が犬を上回っています。

しかし、一部のペット産業は飼育頭数が猫の方が上回ったことに危機感を覚えているそうです。なぜなら「猫は犬よりお金にならない」からだと言われています。

一般社団法人「日本ペットフード協会」の2020年の調査によると、犬の飼い主が1ヶ月にかける費用は平均で約13,843円。それに対して、猫の飼い主が1ヶ月にかける費用は平均で約8,460円となっています。(どちらも一頭だけで飼っている場合。医療費を含む。)

また、ペットの入手先も犬の場合は「ペットショップ」が1位で50.9%に対し、猫の場合は「野良猫を拾った」が1位。「ペットショップ」での購入は3位で16.0%になります。

このような点から、猫ブームはペット産業が潤わない構造になっています。

参考:
令和2年 全国犬猫飼育実態調査|全国犬猫飼育実態調査|一般社団法人ペットフード協会

高齢者をターゲットに情報発信

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お金になる犬ブームを復活させたい一部のペット産業は、高齢者に向けて「犬を飼うことで健康寿命が伸びる」という情報を定期的に発信しています。確かに、犬を飼うことが高齢者の心身の健康に与える影響は大きいでしょう。

しかし、飼い主の高齢化による犬の飼育放棄という問題も一緒に考えられているのでしょうか。ある動物保護活動家は、犬猫の保護理由として「飼い主が高齢化し、飼えなくなった」が圧倒的に多いと言います。

売れ残ったペットたちはどこへ

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環境省が動物取扱業者に対象に行ったアンケート調査によると、ペットの売れ残り率は犬が4%、猫が7.1%とされています。売れ残った犬・猫の引き取り先として多いのは「生産業者(ブリーダー等)に譲渡・販売」、「動物業者(小売業者等)に譲渡・販売」で、全体の5割を超えています。

しかし、これらはアンケートの結果であって、実態調査ではありません。また、行き場のない犬・猫たちが業者間で何度も転用・転売され、最終的な行き先が不透明になっているという問題もあります。

参考:
動物愛護管理基本指針の点検(第4回)について

「引取り屋」という闇のビジネス

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「引取り屋」とはペットショップやブリーダーなどから金銭を受け取って、売れ残った動物たちの飼育をしていく業者です。実態としては劣悪な環境で、病気になってもケアされることもなく、生涯を終えるまで狭いゲージの中で動物たちは過ごします

ペットショップのように犬猫を販売する場合は「第一種動物取扱業(販売)」、ペットホテルのように金銭をもらって預かる場合は「第一種動物取扱業(保管)」の登録が必要ですが、引取り屋のように「単に動物を譲り受けるだけ」であれば、登録は必要がなく、法律の網の目をかいくぐることができ、行政が介入しづらいのが現状です。

参考:
「僕みたいな商売必要でしょう」ケージに糞尿が堆積、緑内障で眼球が突出…売れ残った犬猫を回収する“引き取り屋”の言い分 | 文春オンライン

多発した犬の大量遺棄事件

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2012年9月5日に公布された改正動物愛護管理法(2013年9月施行)では、自治体が業者から犬猫の引き取りを求められても、「相当の事由」がなければ拒否できると明文化されました。

しかし、その後の2014年~15年には犬の大量遺棄事件が頻発しています。
業者の中には「自治体に引き取りを拒否されたら捨てればいい」と考える人間もいるようです。また、不要な犬は安楽死させたり、庭に埋めたりする業者もいるとのこと。事件になったケースは氷山の一角といえるでしょう。

参考:
小型犬遺棄、全国で220匹 繁殖適さず不要に | 日本経済新聞

最後に

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動物を愛する人にとって、今回は辛い内容の記事だったかもしれません。ただ、こういった現実に対して私達が出来ることは、まず「知ること」なのではないでしょうか。

近年、ペットショップ側も「老犬ホームで終生飼育する」、「売れ残った動物の里親探しをする」、「大きくなった犬に基本的なトレーニングをし、販売する」など、売れ残った動物のために対策を取っている会社もあります。

そういった会社が出てきた理由には、人々がペット産業を知り、問題点を指摘し、動物愛護の世論を作ってきたことが、大きく貢献しているのではないでしょうか

ブリーダー選びと健康管理に優れた日本のペットショップとその背景

犬や猫をペットショップで買おうと思ったとき、実際にペットショップを調べてみると、とても多くの店舗があることに驚くのではないでしょうか?

都市部に住んでいれば、近所に10件以上のペットショップがあるという方もいるでしょう。それほど日本には多くのペットショップが存在しています。

今回の記事では、ペットを販売するという世間の共感を得られにくい仕組みにおいても、「どんなブリーダーから仕入れているのか」、「店での健康管理はきちんとしているか」、「店舗ではどのようなことを行なっているか」、「飼い主へのサポートは十分か」等を考え、動物愛護の観点からも工夫をしているペットショップをご紹介します。

ペットショップが様々な取り組みを行う背景

ペットショップが様々な取り組みを行う背景

近年ではペットショップで犬や猫を販売することに違和感を持つ方々が増えてきています。犬や猫、小動物の「命」を金銭で、しかも容易に取引ができてしまうこと自体がおかしいという考え方です。

しかし、中にはそうした世論を受け止めて、少しでもペット産業の改善に向けて考え方をシフトさせようと努力している企業もあります。

今回取り上げたペットショップは、ペット産業において特に問題視されがちなペットオークションを介さずに、独自の基準を設けてブリーダーから受け入れているペットショップです。

ペットオークションの問題
日本ではペットショップに流通するペットの多くが、ペットオークションを経由していると言われています。ペットオークションで「競り」にかけられたペットは、ペットショップを経由して飼い主のもとに行くわけですが、このペットオークションという形態があることで、生産者の実態がわからなくなるという問題を抱えています。これにより、悪質なブリーダーであっても商売を行いやすい環境ができあがってしまっているのです。

ペットプラス(PetPlus)

大手ペットショップチェーンのPetPlus

ペットプラスは全国に100店舗以上を構えている大手ペットショップチェーンのひとつです。

ブリーダー

全国各地にいるブリーダーのもとへ専属の獣医師が定期的に巡回し、ヒヤリングや指導、ワクチン摂取、薬の処方などを行っています。

また、健康で元気な犬や猫を育成するために、独自の取引基準を設けてブリーダーから犬や猫を受け入れています。

健康管理

獣医師のいるウエルネスセンターにて厳しく健康を検査し、体調の整った犬や猫から順にお店へと移動させています。

また、店舗にも獣医師が定期的に巡回し、犬や猫の健康管理、予防管理を行っています。

店舗での取り組み

飼い主のもとへ行ってから慣れない音でストレスを感じないように、生活音に慣れるトレーニングを行なっています。

また、他の犬や猫、そして人とも触れ合うことのできるプレイルームにて、社会化トレーニングを行なっています。こうして社会化期に様々な経験を積ませることで、人を怖がったり、他の動物を威嚇するといった行動を減らすことができます。

先日の改正動物愛護法で注目されましたが、生後56日までは犬や猫の販売、展示を禁止された理由の1つはこの社会化期にありました。

ペットショップと社会化期の関係
社会化期は12週齢(生後84日)ごろまで続くため、改正動物愛護法が施行されても、ペットショップに流通してしまった犬や猫たちはこの重要な社会化期をペットショップのケージの中で過ごすことになります。この時期に、ケージの中ではなく、ケージの外で様々な経験を積むことができるのは、その犬や猫にとってはその後生きていくためには大きなメリットになります。

飼い主サポート

犬や猫の育て方から、食事、しつけ、お手入れのアドバイスを行ってくれます。また、ワクチン摂取やマイカルテ、健康の記録などが用意してあります。

また、アニコムペット保険の「すまいるべいびぃ」というプランに1ヶ月間無料で入ることができます。これは、ケガ・病気に対し、保険の対象となる診療費の100%を支払限度の範囲内で補償できるというプログラムです。
さらに、犬や猫の健康やしつけに関して24時間電話で相談できるサービス、「anicom24」も1ヶ月間無料でついてきます。

編集部注記
これらはペット保険会社による販促活動の一環と考えられるため、他のペットショップでも行っていることが多く、ペットプラスだけの特典とは言えません。

加えて、引き渡し後一年間の生命保証までついてきます。これは、店が原因の病気と、先天性障害で死亡した場合に、無償で新しい犬や猫を迎えられるという保証です。

ブリーディングと先天性障害の関係
改正動物愛護法が施行されるまで、ブリーダーは登録制でした。登録制の現状では、ブリーディングの知識がないブリーダーによる繁殖も可能なため、先天性の障害を持った犬や猫を産ませてしまう危険があり、日本では非常に深刻な問題です。改正動物愛護法により許可制になったことにより、悪質なブリーダーの排除が期待されています。

ペッツファースト(P’s First)

大手ペットショップチェーンのペッツファースト
ペッツファーストは全国に70店舗を構えるペットショップチェーンです。特に関東に集中的に展開しており、関東全体で41店舗、東京都には16店舗あります。

ブリーダー

ペッツファーストは、契約するブリーダーに対し、名前、登録番号、顔写真、飼育頭数などの情報を公開するよう求めています。

こうした取り組みは、悪質なブリーダーを排斥することと、ペットのトレーサビリティーの向上につながります。

健康管理

ペッツファーストはペットの健康管理を最優先事項とし、「HACCP」の手法を用いた子犬・子猫の健康管理体制を取り入れています。

HACCPとは、商品の生産工程においてあらかじめ危害を予測し、その危害を防止するための重要管理点を特定して、そのポイントを継続的にモニタリングする手法です。そのため、商品に不良があった場合には出荷を未然に防ぐことができます。

編集部注記
ペットを「商品」と言ってしまうのは、甚だ遺憾ではありますが、上記はHACCPという元々は食品などの生産管理で用いられる管理手法を説明しているため、このような表現になっています。

具体的には、混合ワクチンの摂取や、寄生虫の予防の他、ウイルス検査などにより、管理獣医師が徹底して感染症を予防する「ドクターズチェック」が行われています。

店舗での取り組み

ペッツファーストは店舗において保護犬の譲渡活動も行っており、その累計譲渡数は1000頭を超えています。

保護活動を行っているNPO法人から犬や猫を譲り受け、獣医師によるチェックとお手入れを経たあと店舗へ移動します。店舗において条件満たした人が譲渡を望めば、譲渡契約を結んで譲渡が執り行われます。

犬や猫を販売することで利益を上げるペットショップで、このような譲渡活動を行うことは非常に珍しいと言えます。

譲渡会を行う大手企業
動物愛護への関心の高まりもあり、家具・ホームセンターの島忠・HOME’Sは、定期的に動物の譲渡会を開催しています。他にも、京王百貨店なども譲渡会を行っています。

飼い主サポート

店舗から定期的に電話で連絡があり、健康状態や自宅での様子について確認しています。こうした活動により、犬や猫の病気を未然に防ぐほか、食事やしつけに関する改善も行うことができます。また、何か疑問点があった場合には、カスタマーサポートに無料で相談できます。

また、犬や猫を飼育するにあたって、ほっとサポートの会員制度を設けています。生命保障、先天性疾患保障、里親探し代行サービス、健康診断+お手入れ+ワクチンセット、フィラリア予防+避妊・去勢チケット、フードやサービスの割引サービスがついています。

まとめ

犬・猫をどこで買うか

ペットショップから犬や猫を迎えることに否定的な意見もあります。シェリー編集部でも、保護犬しか迎えないメンバーもいれば、ペットショップから犬や迎えたメンバーもおり、動物をどこから迎えるべきなのかは賛否が分かれるところです。

しかし、流通経路がどうであれ、この世に生を受け、一度我が家にやってきた命とは生涯をともにし、最後の最後まで幸せを願って寄り添っていくべきでしょう。

重要なことはその覚悟と、命を提供する側と共感ができるか?ということではないでしょうか。いくつかある選択肢の中のうち、ペットショップから命を迎えようとしている方がいたら、そのペットショップが行っている取り組みを調べてみましょう。

そこに、そのペットショップの生き物への考え方が色濃く反映されているはずです。

犬・猫はどこからペットショップに来て、どこへ行くのか

ペットショップのショーウインドウに並んでいる犬や猫、どこからどのようにして来ているのか、知っていますか?

こんなにたくさんの種類をどこから集めているのか、どんな風に育てられていたのか、流通しなかった子たちはどうなるのか、気になったことはあるけれど知らないままになっている方は多いのではないでしょうか。

今回の記事では、ペットの流通経路とそれらの間に潜む社会問題について詳しく追っていきます。

犬や猫はブリーダーの元で産まれる

ペットショップの犬と猫はブリーダーの元で産まれる
ペットショップなどを通じて購入される犬・猫たちは全て、ブリーダーの元で生産されています。単にブリーダーといっても、その形態はさまざま。

副業として少数の犬猫を飼育繁殖している「ホビーブリーダー」、ドッグショー・キャットショーのために少ない品種のみを繁殖する「ショーブリーダー」、ペットショップ経営に加えて繁殖も行っている「ペットショップ兼ブリーダー」、数十頭以上・複数品種の犬猫を飼育繁殖している「専業ブリーダー」などが存在します。

その中でも形態として多いのは、ペットショップ兼ブリーダーと専業ブリーダーです。

ペットショップ兼ブリーダー

これまで、ペットショップの個人店の多くは、「ペットショップ兼ブリーダー」の形態をとり、複数のホビーブリーダーと連携して繁殖を行っていました。

しかし近年、動物愛護管理法の規制強化によりホビーブリーダーの廃業が進んだこと、大手ペットショップチェーンの台頭により、個人店では自店舗での販売をやめて、オークションに出すことが多くなったようです。

また、最近では大手ペットショップチェーンが直営の繁殖場を持つことも少なくありません。

専業ブリーダー

専業ブリーダーは、40〜100頭以上の母犬猫から繁殖させて、ペットオークションやペットショップに出品しています。

規模が大きく、扱う品種も頭数も多いため、 狭いケージに閉じ込められ、十分な運動をさせられなかったり、 排泄物の処理が不十分になったりしやすいと言われています。

もちろん、全ての専業ブリーダーがそういう経営をしているわけではありませんが、劣悪な環境で運営されているところは「パピーミル(子犬工場)」と呼ばれ、深刻な社会問題となっています。

ペットオークションを通じペットショップへ

犬と猫を競りにかけるペットオークション
多くのペットショップは、ペットオークションを通じて犬・猫を仕入れています。
ペットオークションでは、全国のブリーダーが持ち込んだ犬・猫の赤子が一匹一匹、競りにかけられていきます。

2017年度の環境省のデータでは、日本全体で26の業者が確認されています。

免疫力が十分でない生後7〜8週齢の子犬・子猫を売買するという構造上、ただでさえ感染症が蔓延しやすい状況にあるにも関わらず、管理体制が甘いオークション会場が多いようです。

悪質ブリーダーでも簡単に持ち込めてしまうため病気や健康問題を持った子が紛れ込むことが多く、感染症にかかっている子がいても健康チェックがずさんなために発見されにくく、飼い主の手に渡ってから発覚したという事例もあります。

ブリーダーからそのままペットショップへ

ブリーダーからペットショップへ直接卸す

ブリーダーとペットショップが直接契約を結び、繁殖された犬・猫を直接卸すという取引形態も存在します。

問題を恐れるペットショップ側が良質なブリーダーを選ぶためか、この形態ではあまり大きな問題が起きていません。大手のペットショップチェーンでは、契約ブリーダーのために医療サポートや、相談サービスなどを提供しているところもあります。

直接ネット販売

ブリーダーが自らネット販売
自前で販売サイトを設けて、ネットを通じて販売しているというブリーダーもいます。しかし、全ての手続きをネット上で済ませてしまえるという訳ではありません。動物愛護管理法で規制されているため、実際には販売業者の事業所まで出向き、ブリーダーから説明を受けた上で買う必要があります。

ペットショップを通じずに直接購入という形になるため、購入者自身で、繁殖環境、健康状態、病気の有無などを確認しなければいけません。

動物愛護管理法でペットのネットオークションや通信販売が規制される前はトラブルが多発していましたが、改正後は大幅に減っているようです。

流通から外れると…?

動物愛護センターか遺棄か引き取り屋か
ブリーダーのもとで繁殖された子犬・子猫の全てが飼い主を見つけられる訳ではありません。ペットショップで売れ残ったり、ペットオークションで値をつけられなかったり、悪質な環境下で病気にかかって売り物にならなくなってしまうケースもあります。

動物愛護センターへ

平成25年に動物愛護管理法が改正される前までは、飼い主の見つからなかった犬・猫は動物愛護センターに引き取られるケースが少なくありませんでした。犬が収容された場合、行政は、三日程度と非常に短い期間で、その犬を処分できるようになります。

改正以降は、ペットショップや繁殖業者などからの犬猫の引き取り要請を、各自治体が断れるようになりました(第35条)。平成24年度に16万2千頭であった犬猫の殺処分数が、平成30年には3万8千頭にまで減っているように、改正の効果は非常に大きかったようです。

しかし、改正動物愛護管理法は完全とは程遠く、ペット産業の大量生産・大量消費というビジネスの形態は温存されたままです。

遺棄

流通できない犬や猫の引き受け先が減った結果、全国で業者による犬の大量遺棄事件が急増しました。

なかでも有名なのは、2014年に栃木県で、河川敷と山中に計70匹の犬の死骸が遺棄された事件です。犬を遺棄した元ペットショップ店員は、ブリーダーから100万円と70匹の犬を受け取ったものの、引き取り手が見つからず、右往左往している間に全て死なせてしまったといいます。

ペットを大量に繁殖してビジネスを成り立たせていたブリーダーや、売れ残った犬を動物愛護センターで処分してもらっていたペットショップオーナーが、行き場を失った結果だと言えます。

引き取り屋へ

そんな情勢に乗って、現在、売れない犬・猫を飼育費と引き換えに引き取る「引き取り屋」というビジネスが活発になっています。料金は数千円〜数万円だとされていますが、当然その程度のお金ではまともに犬・猫を飼育できません。

業者の多くは、積み上げた狭いケージに犬・猫を閉じ込め、餌もほとんど与えず、病気も治療せず、すぐに死なせてしまうため、事実上の殺処分と言えます。見方によっては、安楽死よりも酷い殺処分と言えるかもしれません。

最後に

ペット産業とペットの家族化
子供の頃の私は、ペットショップで展示されている子犬や子猫は、「ミニカーと同じようにどこかの工場で作られてるんだ」と思っていました。幼さゆえの早合点でしたが、こうして見てみると、あながち間違っていたとも言えません。ペットショップで扱われているほとんどの犬や猫は、おもちゃと同じように、工場で生産されていると言っても過言ではありません。

近年、ペットの家族化が進み、ペットに対する価値観が大きな変化を遂げています。世界に目を向けると、ペットショップでの生体販売を禁止している国も多くあります。今こそ広い視野をもって、私たち消費者もペット産業のあり方を考えてみてはいかがでしょうか?消費行動を変容することにより、ペット産業自体を徐々に変えていくことは可能なのではないでしょうか。

ペットをオークションにかけるペット業界の裏側。信頼できる入手先は

近年、ペットの虐待を防ぐ法律が厳罰化したり、ペットの殺処分をなくす活動が活発化したりと、ペットの権利が重要視されるようになってきました。

ペットを飼ってからのペットの権利については理解が広まって来ていますが、そもそも、ペットショップで販売されているペットはどこから来ているかご存知ですか?

実は、ペットショップで売られているペットの多くが「ペットオークション」から来ています。今回は、ペット業界の現状について考えます。

「オークション」にかけられるペットたち

半数のペットはブリーダーからペットオークションへ
ブリーダーの元で繁殖されたペットは、直接飼い主の手に渡ったり、ペットショップに渡ったりすることもありますが、その大半はペットオークションにかけられています(2008年の流通量をもとに環境省による推計値)。

流通量が多いため、ペットショップの多くもその仕入れ先をペットオークションに依存しているのが現在の日本の実情です。

生後間もなくオークションにかけられるペット

2019年に改正された動物愛護法では、犬猫の販売を生後8週齢以降と定めました(俗に8週齢規制と言います)。

これは、生後8週齢までは親や兄弟の元で過ごさせることにより、犬猫の免疫力を高めるとともに、犬や猫の社会化を促進するためです。

改正法成立により、一般の人への販売は生後8週齢以降となりましたが、もし、それよりも早い段階でペットオークションに出されているのであれば、本末転倒です。

2020年3月現在、8週齢規制はまだ施行されていないため、施行後のペットオークションに出されるペットたちの年齢が気になるところです。私たち飼い主もこれをきちんと知り、監視をする必要があるでしょう。

ペットの「競り落とし」

ペットオークションでは、需要に合わせてペットの価格が決まります。

その仕組みは魚や野菜の「競り」とほとんど同じで、ペットの価格は数十秒から数分で決まるといいます。ペットオークションの様子からは、ペットをまさに「商品」として扱っている実態が伺えます。

ペットの繁殖業者「パピーミル」の実態

パピーミルは子犬工場のことで悪質なペットの繁殖業者(ブリーダー)を指す言葉
ペットオークション自体は違法でも何でもありません。後述する環境省が定める動物取扱業に「競りあっせん業」として定義されています。

ペットオークションにペットを「出品」するのは、ペットを繁殖するブリーダーの人たちです。問題は、ここに一部の悪質なブリーダーが含まれてしまっていることです。

もちろん、愛情を込めて1匹1匹を大切に育て、むやみに繁殖をさせないブリーダーも存在します。しかし、そうではない一部の悪質なブリーダーによって、たくさんの悲しい命がやり取りされています。

子犬工場「パピーミル」

最近よく目にしたり、耳にすることが多いキーワードが「パピーミル」という言葉ではないでしょうか。保護活動や悪徳ブリーダーの話題が知られることにより、世間にも認知されるようになった言葉です。

パピーミルとは、犬を「商品」と見なし、お金儲けをするために、むやみやたらと繁殖をさせて大量に出荷する繁殖業者のことを言います。

母親は「子供を産む道具」

パピー見るでは、母親たちは「子犬、子猫を産む道具」として扱われ、何度も子供を産まされ、そして、生後間もなく子供から引き離されます。

さらに悪徳な業者だと、子供を産めなくなった母親を処分してしまうところもあるようです。

劣悪な環境で育てられるペットたち

お金儲けのための大量生産を意識した悪徳なパピーミルには、きちんと清掃をしなかったり、ペットたちに十分なスペースを与えなかったりと、ペットたちを劣悪な環境で育てているところがあります。

なぜ、そんなことができるのか理解に苦しむでしょう。しかし、彼らにとっては犬や猫は「商品」であり、私たちが知る可愛らしい生き物ではなく、単なる「モノ」なのです。

繁殖には知識が必要

犬や猫の繁殖(ブリーディング)は、遺伝学の延長であり、非常に専門的な分野です。競馬をやる方はよくご存知なのではないでしょうか。

遺伝の影響を無視して、むやみな繁殖を行うことは、犬や猫が遺伝的に持っている病気や疾患のリスクを高めることにもなります。犬種や猫種によって特定の病気や疾患リスクが異なることは既に一般の飼い主の方にも知られているところですが、それは遺伝によるところが大きいのです。

スウェーデンでは、趣味レベルの小規模なブリーダーは例外ですが、繁殖を行うには資格が必要です。これは、繁殖がいかに専門的で難しいものであるかを物語っています。

どこからペットを買ったらいいのか?

私たちはどこからペットを買ったらいいのだろうか
ここまで、日本のペット業界におけるペットの流通の現実をお伝えしました。

では、これからペットを飼おうと思っている人は、どこからペットを購入したら良いのでしょうか。

ペットショップか、ブリーダーか

既にお伝えした通り、ペットショップの多くがペットオークションからペットを入手していますが、全てのペットショップがそうだというわけではありません。ペットショップの中には、信頼できるブリーダーから直接入手しているところもあります。

また、飼い主への直接販売を行なっているブリーダーもいます。ただ、悪質な業者が単に売れ残った犬や猫をネットを通して販売をしているケースもあり、ほとんど見分けはつかないでしょう。

ペットショップだからどこも悪い、ブリーダーだからどこも安心、ということはなく、どちらで買うにせよ信頼できるところを選ぶことが重要です。

信頼できるペットショップの選び方

信頼できるペットショップの選び方
信頼できるペットショップかどうかは、以下のようなポイントに注意して見極めましょう。

動物取扱業登録証はあるか確認しよう

動物を販売するペットショップは、「第一種動物取扱業」のひとつで、自治体等の登録を受けなければなりません。

行政に認可されているペットショップには、第一種動物取扱業の登録証が、登録番号とともに発行されています。ペットショップを訪れた際、登録番号を含む「動物取扱業登録証」が存在するかどうか確認しましょう。

これは最低限チェックする項目であり、これの掲示がなく販売されている場合は、違法業者ということになります。

ペットの入手先を確認しよう

ペットショップであれば店員さんに、ペットをどこから入手したのかを聞いてみるのも良いでしょう。

もし、よくわからない回答だったり、答えられなかったりしたら注意が必要です。単に、ブリーダーから入手したと言われたら、どこのブリーダーなのかを確認し、一度家に帰って信頼できるブリーダーかどうかを確かめましょう。

最近では、ペットショップにあるケージに出生地(ブリーダー名や所在地、生年月日)の表示があるところもあります。

飼育環境を確認しよう

ケージの掃除は行き届いているか、1匹あたりのケージが狭すぎないかなど、飼育環境を確かめることでペットをどれだけ大切にしているかが伺えます。

悪徳なペットショップだと、体が大きくなって売れ残るのを防ぐため、あえてペットの成長を遅らせるために食事制限をしているところもあるようです。ペットがやせ細っていないか、年齢に対して体が極端に小さくないかなどを確認しましょう。

逆にそういった子を救う気持ちで敢えて購入するという選択肢も考えられますが、それはそれでそのペットショップに利益をもたらすことになるため、私たちは頭を悩ませてしまいます。中長期的には、そのようなペットショップからは絶対に買わないという選択を取るのがベストだと思います。

ペットショップにやってきた時期を確認しよう

前述した通り、法改正により、既にペットショップでのお客への販売を生後8週齢以降としているところはたくさんあります。

8週齢規制が施行後、ペットショップに来る時期が8週齢より早い場合は、この法律自体があまり意味のないものになってしまうため、よく確認すべきです。

なぜなら8週齢規制の本来の目的は、生後8週齢までは母親や兄弟の元で過ごさせることだからです。客への販売時期が変わっても、ペットショップに来る時期が変わらなければ、単にペットショップで過ごす時間が長くなるだけなのです。

信頼できるブリーダーの選び方

信頼できるブリーダーの選び方

実際に行って確かめよう

ネット販売を行なっているブリーダーもいますが、先ほども申した通り、ネット上ではどのブリーダーが良いブリーダーで、どのブリーダーがそうではないのかは判断がとても難しいでしょう。ここは少し大変でも、実際に飼育の様子を見学に行ってから購入することをおすすめします

実際に、ブリーダーの元を訪れれば、母犬や子犬、母猫や子猫の生活環境がよくわかります。それだけでも、悪質な業者かそうでないかはわかるでしょう。

また、犬種や猫種にもよりますが、以下のような質問を投げかけても良いでしょう。

  • 母親はどのくらいの頻度で繁殖を行なっているのか
  • 父親と母親の性格はどうだったのか
  • 遺伝的な配慮はしたか、どんなことに気をつけたのか
  • どんな考えやポリシーを持って繁殖しているのか

ここまで色々と掘り下げて質問すると、少し煙たがられるかもしれませんが、愛情と情熱を持ったブリーダーであれば、きちんと話をしてくれるでしょう。

保護犬や保護猫という選択肢

保護犬や保護猫を迎えるという選択肢も考えてみては

詳細は別の記事に譲りますが、ペットを「買う」のではなく、ペットを譲り受けるという選択肢もあります。

東京都内の話ですが、一部のエリアや一部のコミュニティでは、徐々に保護犬を飼っているということが、「格好良いこと」とされるようになってきました。

保護犬や保護猫だからこそ難しい面もありますが、保護犬や保護猫を迎えるという選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょうか?

まとめ

ペットショップ とブリーダーの現状
ペットショップで販売されているペットの中には、どのようなブリーダーに繁殖されたのかよくわからないペットオークションで仕入れられたペットがたくさんいます。

胸が痛むのは、例えそのような悪質なブリーダーに繁殖されたペットであっても、そのペットには何の罪もないこと。しかし、そのペットを救うために購入してしまうと、悪質なブリーダーに利益をもたらすことになるという矛盾も出てきます。

法改正などで、少しずつペットの権利に関心が高まっていますが、私たちはこのような矛盾にも目を向けるべきです。

そして、買い手である私たちがペット販売の知識を持ち、絶対に悪質なブリーダーからは買わないようにすることが、日本の悲惨なペット業界を変えるひとつのステップになるでしょう。

海外と日本:ペット事情・価値観の違いを独自調査!(2)見えてきたペットの価値観の違い

第1回では、日本と海外の、社会全体としてのペット事情にはどのような違いがあるのか、そして「ペットフレンドリー」の捉え方にはどのような違いがあるのかを、Cheriee編集部による独自調査の結果に基づいて考えました。

第1回の記事はコチラ→ 海外と日本:ペット事情・価値観の違いを独自調査!(1)ペットフレンドリーって何だろう?

第2回となる本記事では、日本人と外国人の、ペットに関するさまざまなことへの価値観の違いを細かく考えていきます。回答者は全員大学生で、日本人32人、外国人16名です。

なお、外国人といってもいろいろな国の方がいらっしゃいますから、単純に一般化できるものではありませんが、今回は「日本と世界を大まかに比較する」という意味で、このような括りを用いました。

どこからペットをもらいたい(買いたい)か?

人とネコ
ペットを飼い始めるには、どこかからペットを譲り受けなければなりません。ペットショップ、ブリーダー、保護施設、知人など、さまざまな選択肢がありますが、今回の調査から、日本人と外国人の間でこの選択肢に少し違いがあることがわかりました。回答は複数回答式で集計しました。

ペットの貰い先

日本人回答者の間では、ペットショップ(62.5%)が保護施設(59.4%)を若干上回ったのに対し、外国人回答者ではなんと100%の人が保護施設から引き取りたいと答え、ペットショップから飼いたい人の割合(31.3%)を大きく上回りました。また、外国人ではペットショップやブリーダーから買うよりも知人から譲り受けたいという人(50%)が多いことがわかりました。

第1回の記事内で「ペットフレンドリー」について考えたとき、「自分の国はシェルター(保護施設)の設備や制度が整っているからペットフレンドリーだ」という回答が、何人かの外国人(特にアメリカ、ドイツ)から寄せられたことをご紹介しました。保護施設の信頼性が高ければ、保護施設から引き取ろうという考えを持つ人が多くなるのかもしれません。

ここ数年で、日本でも保護施設や保護団体が増え、その活動内容が一般の方にも認知されるようになりましたが、それでもまだ一般的ではないと言えるのかもしれません。また、「日本のペットショップの多さに驚いた」という外国人が複数いたことから、国や地域によってはペットショップがそもそも少ない(ない)ことも、この数値に影響していると言えそうです。

ペットが大病になったら?

ぬいぐるみと雪

つづいて、ペットが大病になったとき、あなたならどうしますか?という質問をしました。
ペットが病気になったら

どちらのグループにおいても、「手術・投薬」を行うと回答した人がもっとも多くなりましたが、その割合は外国人(73.3%)が日本人(51.6%)よりも多くなりました。一方、日本人は自然に任せる人が約42%で、外国人の6.7%を大きく上回りました。「安楽死」という選択肢は日本人の間ではほとんど馴染みがないと予想していましたが、少数ではあるものの、6.5%の日本人回答者が安楽死を選ぶと回答しました。

もちろん、ペットの種類や年齢、病気の種類によっても選択肢は変わってくるでしょう。しかし、日本人よりも外国人の方が、ペットに対して積極的な治療を希望し、日本人は自然のままを受け入れる考えが多いことがわかります。この調査からははっきりしたことは言えませんが、飼い主が信仰する宗教の違いも関わっているのかもしれません。

ペットに服を着せることについて

ジーンズ
以前、アメリカの記事で、ペットに服を着せる文化を日本特有のものとして紹介する記事を読んだことがあり、実際にはどうなのかを調べるため「ペットに服を着せることについてどう思うか」という質問をしました。

結果、実際に日本の大学生と海外の大学生の価値観はそこまで変わらないことがわかりました。

かわいいから、家族だから、暑さ・寒さ対策などの理由から服を着せることにポジティブな人もいれば、ペットが不快なのではないかという心配や、そのまま(服を着ない状態)がベストだから、という理由から着せることに消極的な人もいます。これらの意見は日本人・外国人のどちらのグループにもまんべんなく見られ、出身国による違いも特に見られませんでした。

これは筆者の個人的な推測ですが、ペットに服を着せることに寛容的になってきた背景には、Instagramの発展があるのではないでしょうか。第一に、「インスタ映え」するペットの写真を撮るために、かわいい服やアクセサリーを身につけさせる人が増えているように思います。さらに、SNSで世界中のユーザーとつながれるようになったことで、おしゃれなペットの服が広く知られるようになり、結果として「自分のペットにも着せてみよう」という飼い主が増えたのかもしれません。

この辺りも、今後調査をしてみて、何かわかったらお伝えできればと思います。

ペットへの意識もグローバル化する?

地球儀

ペットをもらう(買う)先や、ペットが大病になった時の対応は、日本と世界で傾向に差があることがわかりました。

こうした違いは、何も個人の性格的な違いにのみ依存しているわけではないでしょう。むしろ、保護施設の環境整備であったり、ペットショップの広がり方、また、安楽死に対して馴染みがあるか否かなどの環境的な違いが関係していると考えます。ですから、環境が他の国に影響を受けて変化すれば、人々の価値観も自然と変化するのではないでしょうか?

また、第1回でご紹介した外国人、日本人、帰国子女のペットフレンドリーに対する考え方の違いからは、帰国子女が日本人と外国人の中間的な考え方を持っている傾向が見られました。このように、住んできた国の環境や経験によって人々の価値観は変わります。

今回の調査は、限られた人数・グループの調査にとどまってしまったので、一般化できるような結果とは言えないでしょう。しかし、少なくとも人々のバックグラウンドによって、ペットへの価値観に何らかの差があることは十分に考察ができる結果となりました。

グローバル化が進むこの時代、人々のペットに対する価値観にも、さらなる変化が訪れるかもしれませんね。

もう一度、第1回目の記事をご覧になりたい方は、こちらからご覧ください。

海外と日本:ペット事情・価値観の違いを独自調査!(1)ペットフレンドリーって何だろう?

日本のペットショップは少し特殊?動物の福祉の観点から考えてみる

皆さんが「新たに、犬や猫をおうちに迎えよう」と思った時、一番最初に向かう先はどこでしょうか。

多くの方が「ペットショップ」をイメージしたかもしれませんね。

「ペットショップから」が多いけど…?


2016年にペット総研から発表された「ペットのお迎え」アンケートによると、犬猫合わせてペットショップから迎えたという回答が4割ほどになりました

ペットショップから犬猫を迎えるケースが、現在は一般的なようです。

日本でペットショップと言えば、ショーケースで展示販売されることが一般的でしょう。

しかし、動物愛護先進国と言われる欧米では、そのような形で販売することは動物の福祉(アニマル・ウェルフェア)の観点からあまり推奨されていないのです。

ペットショップや生体販売の状況を比較することによって、「欧米諸国の動物の福祉に対する意識」と、「日本の意識」の違いに迫ってみました。

犬猫が生まれて、ペットショップに販売されるまで

人に抱かれる子犬

ペットオークションの存在

これは一つの例ですが、日本において、犬や猫が、親犬や親猫から生まれてからペットショップで販売されるまで、どのようなルートを辿るのかを追いかけてみましょう。

まず、繁殖業者やブリーダーさんがいて、繁殖された犬猫がペットオークションへ持ち込まれます。そして、ペットショップはそのオークションに行き、犬猫を買い付けて自分のお店で販売します。

最終的には、ペットショップで販売されている犬猫を、消費者が買います。

繁殖業者やペットショップにとって、ペットオークションにさえ行けば売れる/買えるという、便利なシステムになっています。ここで留意しておきたいのは、動物のことを考えて成り立ったシステムではない、ということですね。

もちろん、全てのペットショップが当てはまるわけではありませんので、このようなことが起きうる状況である、という程度に受け取って頂ければと思います。

オークションで売り買いされることの問題点

ペットオークションからペットショップで販売されることは何が問題になってくるのでしょうか?

ペットショップの生体販売では、子猫や子犬が主に販売されています。それは、ペットショップへ犬や猫を買い求めにくる消費者のニーズが、若ければ若いほど良いという意見が大半であるからです。

しかし、もしオークションで売れ残ってしまった場合は、どうなるでしょうか。

価値が下がり、買い手がつかなかった犬猫は、どこかで飼い犬や飼い猫として育てられる機会を逃し続けることになるかもしれません。

「若ければ若いほど良い」という価値観で犬猫を売買することは、道徳的な問題だけでなく、犬猫にとっての自由を制限することになりかねません。動物の福祉の観点から考えても疑問が残ります。

動物の福祉(アニマル・ウェルフェア)って?

黄色い落ち葉を加える子犬
日本にはすでに「動物愛護」という考え方があります。動物愛護管理法における「愛護」の意味は以下の通りに定義されています。

実体的な行為 :動物に対する虐待防止、適正な取扱い、適正な管理などを行うこと。動物の習性等に配慮しつつ、愛情や優しさをもって取り扱うことを含む。
生命尊重などの理念:動物や動物の命を大切にする気風や思想のこと。

対して、動物の福祉(アニマル・ウェルフェア)とは、イギリスの家畜福祉協議会(FAWC)が提唱した「5つの自由」を基本とする考え方です。

国際的な動物福祉の標準として各国の法令にも反映されています。

5つの自由
①飢えと渇きからの自由
②肉体的苦痛と不快感からの自由
③傷害や疾病からの自由
④おそれと不安からの自由
⑤基本的な行動様式に従う自由

動物の福祉の視点は、人間から見た動物ではなく、動物自身がどう感じるか、という科学的な研究を根拠にする側面が強いのです。

この考えに照らして見た場合、繁殖業者・ブリーダー→ペットオークション→ペットショップというシステムのなかで、犬猫の自由を抑制することが起こりうるのではないか、ということを考えてみることが必要かもしれません。

欧米諸国の生体販売に対する意識

親犬と子犬
動物保護・福祉の意識の高まりから、生体販売する場合は展示販売をしない、などの配慮が考えられています。生体販売が完全に禁止されているわけではないようです。

欧米ではなぜこのような意識が進んでいるのでしょうか。

例えばイギリスでは、ペットを購入したい人は、売られているのを買うのではなく、ペットショップやブリーダーさんに予約して産まれてくるのを待つという方法があります。

予約制にすることで、繁殖による犬の負担を減らすことができるのです。

アメリカでも、ブリーダーさんから直接購入したり、仲介業者を通してブリーダーさんから購入する、というように、「産まれてきた個体を見て選ぶ」のではなく「良いブリーダーさんかどうか」を重視して選ぶという方向へシフトしているようです。

生体販売が全て良くないということではない

リードに繋がれた犬
主に日本のペットオークションやペットショップの販売などについて追いかけてみましたが、生体販売が全ていけないという、主張をしたい訳ではありません。

しかし本来、子どもを産む行為は、動物にとって完全にコントロールできることではありません。

この犬種のメスの子犬が欲しいと思った時、ペットショップで探せばすぐに手に入る、言い換えればお金さえ払えば、いつでも誰でも好きな動物を買うことができてしまう、今の状況が少し不自然なのかもしれません。

豊かな社会になったからこそ、「欲しいものがすぐ手に入る」という大量生産・大量消費のルートに、動物の命まで預けてしまっていいのだろうか?ということを考える必要があるのではないでしょうか。

まとめ

抱きかかえられるハスキー子犬
ペットショップの中にも、もちろん動物の福祉をきちんと考えているブリーダーさんに育てられた犬猫を販売しているところもあるということは、前提として話を進めてきました。

ペットショップから購入する場合、並べられたなかで「かわいい!この猫(犬)にしよう」というような出会いもあります。

しかし、「どんな親から生まれたのだろう?」「どんな人たちに、どんな環境で育てられたのだろう?」「元々どんな国で生まれた種なんだろう?」ということを、一旦立ち止まって考えてみるのも良いかもしれません。

特に、犬の場合は、ブリーダーさんが遺伝学をきちんと学んでいるかどうかで、その後の病気の発症率などに差が出ると言われています。「犬猫をお迎えしたいと思った時、自分ならどんな選び方をするのか?」ということを、一度考えてみませんか?

ペットの8週齢規制知ってる?飼う時に注意すべきこととは?

動物愛護法で定められているペットの8週齢規制をご存知ですか?

人間と同様、子犬や子猫にとっても、母親の存在はとても重要です。健康な身体、健全な精神を養うためにも、すぐに親元から引き離さないことが良いというのは、直感的にも理解しやすいのではないでしょうか。

8週齢規制とは?

子猫の寝姿
2013年の動物愛護法の改定により定められた条項です。

子犬や子猫を56日間(8週間)は親元で過ごさせるようにすることが、法律により定められているのです。
しかしながら、ブリーダーやペットショップへの配慮のためか、「法施行後3年間は45日、その後法律に定める日までの間は49日と読み替えて適用する。」という、本来の目的から逸れてしまう条項も記載されています
そのため、実際には8週よりも短くても売り買いされているというのが、現状です。なぜなら、この時期が一番可愛く、売れる時期だからです。

このルール、きちんと遵守することは、ペット先進国である欧米では当たり前のことなのですが、日本は事業者も消費者もまだまだ遅れていますね。

なぜ8週齢なのか?

じゃれ合う犬たち
生まれたばかりの幼い頃に、親や兄弟とコミュニケーションを取ることは、その後の成長に大きな影響を与えると言われています。

牛などの家畜でも当てはまることですが、母親に飲ませてもらう母乳には、病原菌から身体を守ってくれる免疫力を強化する効果があると言われています。
すぐに親元から引き離すよりも、母親から直接母乳を与えてもらい、幼い頃を過ごすことで、その後の健康状態に良い影響が出るのです。

また、兄弟と一緒に過ごすことで、群れの中での過ごし方を学びます
噛む力の抑制方法を学んだり、他の犬とのふれあい方、過ごし方を学んでいくため、1匹だけではなく、仲間と過ごすということはとても重要なことなのです。

ある学者によると、8週間でも短いとも言われているくらいですので、これは最低条件であると言えます。

社会化のためにも必須

一緒に寝るおとなしい犬
「社会化」という言葉を聞いたことはありますか?ざっと整理すると、以下の内容になります。

  • 社会化に適した期間は生後1か月〜4か月
  • 社会化することで、人間の生活環境に慣らすことができる
  • 犬にも人にもストレスがかからなくなる

この社会化に適した期間が、実は8週齢規制と重複していることに気づくのではないでしょうか。

生まれてから暫くは、親兄弟と過ごし、他の犬と一緒に生活することで、犬社会のルールを身に着けていきます。
この期間を過ぎてから、人間の元に引き取られていき、そこで人間社会のルールを学んでいきます。

このようにすることで、その後の人との共生がより良いものになっていくのです。
吠えない犬、噛まない犬になることで、人にも嫌がられること無く、そして犬自身もストレスを感じない幸せな日々を送れるようになるのです。

社会化については、以下の記事でも取り上げていますので、興味のある方はご覧ください。

犬を飼って最初にしたいことは社会化教育

犬の性格は「ある3ヶ月」で決まる?パピーパーティが効果的な理由

飼い主(消費者)が気をつける

勉強する小さな飼い主
ペットショップやブリーダーを訪れた際は、この8週齢規制について、訪ねてみても良いかもしれません。
ほとんど守られていないと言われている8週齢規制ですが、一部のこれを遵守する良いブリーダーさんがいることも事実です。

私たち飼い主がこういった知識を身につけ、そして気をつけることで、今までないがしろにされていた法律も、規制を強化するためのきっかけになるのではないでしょうか。

また、Change.orgでは、8週齢規制に賛同する方の署名を集めています。
もし、ご興味がある方、規制の強化に賛同される方は、是非署名をしてみてください!