【獣医師監修】ミヌエットの好発疾患と病気予防のポイント
ミヌエットは、ペルシャとマンチカンを掛け合わせて生まれた新しい猫種です。フワフワの毛と、可愛らしい姿が魅力で、徐々に人気が出てきており、動物病院でも見る機会が増えています。
そんなミヌエットですが、遺伝的に発生しやすい病気がいくつか存在します。
今回は、ミヌエットの好発疾患について獣医師が詳しく解説します。
ミヌエットの基本情報
歴史
短足でないマンチカンは捨てられてしまうことが多かったのですが、1996年に短足愛好家のブリーダーが短足猫の固定を試みたのが始まりです。最初にペルシャとマンチカンを交配させ、その後、ヒマラヤンなどの長毛種を掛け合わせて、現在のような姿になりました。
当初は、短足という特徴からフランスの英雄にちなみ「ナポレオン」と呼ばれていましたが、2015年に「ミヌエット」と改称されました。
身体的特徴
がっしりとした身体と、マンチカン由来の短い足が特徴ですが、マンチカンと同様に足の長いミヌエットも存在します。
ペルシャのようなふわふわとしたダブルコートの被毛を持ち、ホワイト、ブラック、シルバー、ブルー、クリームなどさまざまな毛色が認められています。
性格
ペルシャ由来の甘えん坊な性格と、マンチカン由来の好奇心が強く活発な性格を兼ね備えています。
社交的で警戒心が少ないため、飼い主以外の人にもすぐに懐きます。しかし、あまりしつこくすると嫌がるので注意しましょう。
ミヌエットの好発疾患
ミヌエットの誕生背景にはペルシャおよびマンチカンの存在があります。よって好発疾患には、これら2種類の猫種に共通するものが挙げられます。
遺伝によって発生しやすいものもあるので、愛猫の両親に病気が起きていないかはしっかりと確認しておきましょう。
多発性嚢胞腎
【症状】
元気消失、食欲不振、多飲多尿、嘔吐、流涎、下痢、脱水、口内炎、発作、貧血など。
【原因】
遺伝的に腎臓に多数の嚢胞が形成され、腎不全を呈する。
【備考】
若齢でも腎不全の症状が見られる場合、検診などで腎臓に嚢胞が見られる場合は経過を注意深く観察する。
肥大型心筋症
【症状】
運動不耐性(疲れやすくなる)、胸水貯留や腹水貯留、肺水腫に伴う呼吸困難、呼吸速迫、元気消失、食欲低下、嘔吐など。
【原因】
心筋(心臓の筋肉)が厚くなり、心臓が膨らみにくくなる。これによって血液が渋滞し、循環不全を呈する。
【備考】
血栓塞栓症を併発することが多く、四肢の麻痺などを引き起こす。肥大型心筋症と診断された後は血栓の形成予防も同時に行っていく。
流涙症
【症状】
涙液量増加による涙焼け。
【原因】
先天的な鼻涙管の閉塞、結膜炎などの炎症による涙道閉鎖などによって、涙腺で産生された涙が鼻に抜けていかないことによる。
【備考】
涙焼けで被毛が黒っぽくなるだけでなく、皮膚炎も起こることがある。
角膜炎
【症状】
疼痛、角膜浮腫(角膜が白っぽくなる)など。結膜炎を併発している場合には結膜充血や結膜浮腫なども見られる。
【原因】
機械的刺激やヘルペスウイルスの感染。
【備考】
ミヌエットは活発な性格の子が多く、家具などに眼をぶつけることで角膜に傷が付くことも多い。
甲状腺機能亢進症
【症状】
多食、体重減少、多飲多尿、活動の亢進、攻撃性の亢進、嘔吐、下痢など。
【原因】
甲状腺の過形成により、甲状腺から分泌されるホルモンが過剰になることによる。
【備考】
高齢の猫では最も一般的な内分泌疾患と言われている。
ミヌエットの健康管理
愛猫が最も多くの時間を過ごすのが自宅です。家の環境や生活習慣を少し見直すだけで、愛猫の病気に早く気づくことができるかもしれません。
これら好発疾患の早期発見や予防の観点から、ミヌエットとの生活でどんなことに注意すべきかを紹介します。
1. こまめなブラッシング
長毛のミヌエットは、毛玉形成および毛球症の予防のために定期的にブラッシングをしてあげましょう。
皮膚に毛玉ができてしまうと、そこが引っ張られ、痛みや炎症が引き起こされます。毛玉を梳かす際にはスリッカーを用いますが、スリッカーの硬い毛先が直接皮膚に当たると傷がつき、そこから感染などが起こることがありますので注意しましょう。
また、定期的にムダな毛や抜け毛を取り除いてあげることによって、グルーミング(毛づくろい)の際に口から入る毛が少なくなります。抜け毛の処理の際には柔らかいブラシを使いましょう。
手袋タイプのブラシもあるので、スキンシップのついでに抜け毛処理をしてあげてもいいかもしれません。
2. 運動できる環境
毎日の適度な運動がなければ、愛猫は簡単に肥満体型になってしまうでしょう。
もともと活発な性格の猫種でもあり、運動ができない環境は猫にとってストレスです。
時間を作って一緒に遊ぶ、一人でも体を動かせるようにキャットタワーなどを設置するなどの工夫が必要です。その際、ミヌエットは手足が短いため、高さのあるキャットタワーは逆に体に負担をかける場合があるので注意しましょう。
3. 尿の状態をチェック
尿には腎泌尿器系の疾患や内分泌疾患などの徴候が現れることが多いため、愛猫の健康状態を知る手段として、毎日の尿の状態を確認することが重要です。
尿量、色、できれば排尿回数なども把握しておくといいでしょう。
もしかしたらトイレの種類(猫砂、新聞紙など)によっては尿の状態が確認しにくいかもしれませんが、トイレの種類を変えると、その子の性格によっては排尿をしなくなることもあります。
愛猫が快適に排泄できるトイレの状態で、尿を確認しましょう。
4. 眼の状態もしっかり確認
ミヌエットは、眼疾患も比較的多い猫種です。毎日顔を見る時に、眼に異常がないかも確認しておきましょう。
眼に関する観察のチェックポイントは以下のようなものがあります。
- 涙が多くないか
- 充血がないか
- 左右で眼の開き方に差がないか
- 目ヤニが多くないか
まとめ
ミヌエットは近年に出てきた新しい猫種のため、飼い方や病気などの情報は他の猫種に比べると少ないかもしれません。
今回ご紹介したポイントに注意して飼育し、わからないことがあれば、気軽に動物病院までご相談ください。
【獣医師監修】手足が短いマンチカンの好発疾患と予防法
マンチカンは猫の中でも短足が特徴の猫種です。 それゆえに走り回る姿などがかわいらしく、日本でも人気を誇っています。 ペットショップなどで見かけることも多いでしょう。
マンチカンという猫種を飼う上で、特に気をつけたい病気があるのをご存知でしょうか。 今回はマンチカンの好発疾患についてまとめました。現在、マンチカンを飼っている人や、飼おうと思っている人はぜひ参考にしてください。
マンチカンの名前の由来と歴史
「マンチカン」には「小さい子供」や「小人」という意味があり、『オズの魔法使い』に登場する、短い足で小柄な体つきが特徴の種族の名前に由来するそうです。
もともと、短足の猫は突然変異種として古くから確認されていましたが、1983年にアメリカのルイジアナ州で短足の猫が発見されたことをきっかけに、遺伝子検査などの研究が進められました。
その後、ブリーダーにより繁殖が行われました。交配を肯定する人と、遺伝子疾患を心配する人の間で論争が巻き起こりましたが、足の短い猫がさまざまな場所で見つかり、近親交配のリスクが低下したことから、1995年にアメリカでマンチカンが新種として認定されました。
マンチカンの好発疾患
マンチカンには、遺伝的な背景や解剖学的特徴から発生しやすい疾患がいくつかあります。
特にアメリカンショートヘアやスコティッシュフォールドが掛け合わさっている子は、これらの猫種に特徴的な遺伝性疾患が見られるかもしれません。
どんな病気があり、どんなサインを発するのかを知ることで、病気の早期発見・早期治療に繋がります。 病気について理解を深め、異変に気付いたら、すぐに動物病院を受診しましょう。
多発性嚢胞腎
【症状】
・多飲多尿
・尿色が薄い
・嘔吐
・食欲不振などの腎不全症状
【原因】
遺伝的な要素が大きい。
【備考】
腎臓に多数の嚢胞が形成され、腎機能不全を引き起こす。両親の既往歴の確認は重要で、本疾患に罹患した猫は繁殖させるべきではない。
肥大型心筋症
【症状】
・呼吸速迫
・呼吸困難
・開口呼吸
・嘔吐
・突然ニャーニャー鳴く
・後肢麻痺
・後肢冷感
【原因】
アメリカンショートヘアの血筋では遺伝性に伝播することが知られている。
【備考】
肥大型心筋症では心臓内で血栓が形成されやすくなる。形成された血栓が大腿動脈に閉塞し、動脈塞栓症を引き起こすことが多い。
骨軟骨異形成症
【症状】
骨の成長が不十分で身体が大きくなりにくい。
【原因】
マンチカンの短足は常染色体優性遺伝の軟骨異形成による。見た目を追求するあまり、病気になりやすくなることもある。
【備考】
人間では「小人症」とも呼ばれる。軟骨異形成によって変形性関節症が発症しやすくなる。
変形性関節症
【症状】
・四肢の痛み
・跛行(歩くときに足を引きずる)
【原因】
関節に存在する軟骨が骨になり、動かすときに痛みを生じる。
【備考】
スコティッシュフォールドの血筋は要注意。定期的に関節(特に肘関節)のレントゲンでチェックしていく。
毛球症
【症状】
・嘔吐
・便秘
・食欲不振
・腹痛などの消化器症状
【原因】
グルーミングによって口から摂取された被毛が、腸に閉塞することによる。
【備考】
長毛の子は定期的なブラッシングで余分な被毛を除去してあげる必要がある。毛玉をコントロールするフードやサプリメントを利用する方法も。
椎間板ヘルニア
【症状】
・首から腰への痛みや違和感
・ふらつき
・歩行困難
・排尿障害(尿失禁や排尿困難)
【原因】
背骨の間にある椎間板が脊髄を圧迫し、刺激することによる。
【備考】
普段の生活から歩き方や排尿の様子を観察し、異常があればすぐに動物病院へ。
マンチカンの飼育環境
ご紹介した疾患はマンチカンだからといって必ずかかるものではなく、
普段の生活習慣を意識することで、発症のリスクを低減させることが可能です。
では、どんなことに注意すべきなのか、4つのポイントを順番に見ていきましょう。
1.太らせないための食事管理
短い手足のマンチカンは、常に膝や肘などの関節への負担が大きくなります。 そのため、体重が増加するとさらに関節への負担が増し、関節炎などのリスクが高まります。
運動量を増やすことで体重の維持を目指すのではなく、食事管理をしっかり行い、関節軟骨に優しい生活を心がけましょう。
2.適度な運動
摂取するカロリーを制限することによって体重の増加は抑えられますが、全く運動しないのではストレスが溜まってしまいます。
激しく運動をさせる必要はありませんが、キャットタワーを設置するなど、日常的に体を動かせる環境を用意してあげるといいでしょう。
3.交配に注意
マンチカンは、手足が短くなるように品種改良された猫種です。
ある形質(見た目)同士の掛け合わせは、死産のリスクを高めることが知られていますが、短足の遺伝子もその一つです。 つまり、短足の親同士の交配では、死産リスクが高いということです。
よって短足のマンチカンでは、短足マンチカン×長足マンチカン、あるいは短足マンチカン×雑種猫で交配をさせる必要があります。 マンチカンの多頭飼いをしている方は注意しましょう。 また、短足のマンチカンが産まれてくる割合は2〜3割程度と言われています。
4.被毛のお手入れ
中には毛の長いマンチカンもいます。長毛の子は、被毛のお手入れをしないと簡単に毛玉が形成され、皮膚病に繋がる恐れがあります。 また、グルーミング(毛づくろい)によって大量の毛を口にすることで、毛球症のリスクも上がります。
病気のリスクを減らし、美しい被毛を維持するために、定期的にブラッシングをしてあげましょう。
まとめ
マンチカンは見た目にも非常にかわいらしい猫種であることは間違いありません。しかし、その一方でかかりやすい病気も多く、一緒に暮らす上では覚悟しなければならないことも少なくありません。
大切な家族の一員として病気に関する知識をしっかり身につけ、たくさんの愛情を注いであげてください。