改めて知る!長い歴史を持つ「ほじょ犬」、盲導犬のお仕事

街中でも、盲導犬を見かけることは珍しいことではなくなりましたね。盲導犬のお仕事は、他の補助犬に比べると、ユーザーにも一般の人にも広く認知されています。

しかし、「目の不自由な人の手助けをしているのは知っているけど、実際の細かいお仕事内容はよく知らないかも…」という方が多いのではないでしょうか?

皆さんに知ってもらいたい補助犬のお仕事シリーズ最後は、盲導犬のお仕事を紹介したいと思います。

盲導犬のお仕事

白毛のレトリーバ-
現在、日本でユーザーとともに生活している盲導犬は全国で941頭ほどです。他の補助犬の聴導犬や介助犬と異なり、盲導犬はユーザーの外出時でのお仕事がメインです。

盲導犬のお仕事は、皆さんもよくご存知の通り、目の不自由な人が安全に歩行できるようお手伝いをすることです。

盲導犬がユーザーに教えるポイントは主に3つあります。

  • 曲がり角や交差点
  • 段差のあるところ
  • 障害物

盲導犬は、基本的には道路の端に沿って一定の速度でまっすぐ歩き、ユーザーを誘導します。

ユーザーは、ハーネスから伝わってきた盲導犬の動きなどで状況を判断しながら、盲導犬に指示を出しつつ歩きます。

よくある誤解:信号の判断はできる?

赤信号
犬は人間よりも色覚が少ないため、横断歩道の信号が青か赤などの判断はできません。

盲導犬は立ち止まって、「交差点があるよ」ということだけ教え、渡るか渡らないかはユーザー自身が周囲の車や人の流れを読んで判断します。

もし交差点で白杖を持つ人や盲導犬を連れた人がいたら、「青ですよ」など積極的に教えてあげると良いかもしれません。

盲導犬の歴史

海を見つめる犬と人

    1916年 ドイツで盲導犬の育成開始
    1939年 ドイツから日本に盲導犬がやってくる
    1957年 日本で盲導犬第一号が誕生
    1992年 2002年 日本で「身体障害者補助犬法」が施行

盲導犬は、補助犬の中ではもっとも長い歴史を持っています。

盲導犬と呼ばれるようになる以前にも、紀元前1世紀のイタリアのポンペイに犬を連れた目の不自由な人の壁画が描かれていたり、17世紀の書籍に犬の首輪に細長い棒をつけて訓練する様子が書かれたりしています。

組織的な盲導犬育成が始まったのは、1916年、第一次世界大戦後のドイツです。

軍用犬を育成していたハインリッヒ・スターリン博士が、失明した軍人のために犬を訓練して誘導させることができないか?と考え、盲導犬訓練学校を設立しました。

日本では、1957年にようやく国産の盲導犬が誕生しました。

適性のある犬

揃って左を向く二匹の犬
盲導犬に向いているとされる犬種は、以下の3種類です。

  • ラブラドール・レトリーバー
  • ゴールデン・レトリーバー
  • ゴールデン・レトリーバーのミックス犬(F1)

なぜレトリーバー種?

レトリーバー種は、もともと人間と一緒に狩りをするパートナーでもあったため、人間といるのが好きな犬種です。

そして人を誘導するのに適した体格、垂れ耳と優しい目つきなどが、周囲の人へ威圧感を与えないということから選ばれるようになりました。

以前はジャーマン・シェパードが主流だったようですが、人によってはその精悍な顔つきに威圧感を抱くなどの理由から、レトリーバー種に切り替わっていきました。

盲導犬とそのユーザーに出会ったら

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  • 目印はハーネス(胴輪)
  • 注意をそらしたり、食べ物をあげたりしない

盲導犬は、必ずハーネスをしています。ハーネスはユーザーと盲導犬を繋ぐ大切な命綱で、盲導犬にとっては「お仕事道具」でもあります。

他の補助犬と同じで、お仕事中の盲導犬の気をそらすような行動をしてはいけません。

気をつけること

  • 盲導犬をさわったり、大きな声や口笛で呼んだりしない
  • 食べ物やお水をあげたりしない
  • 静かに見守る
  • もし盲導犬ユーザーが道に迷っていたりしたら、ユーザー本人に積極的に「何かお手伝いしましょうか?」など声かけをする
  • 盲導犬は信号の判断はできないため、横断歩道では「赤ですよ」「青ですよ」などをユーザーに知らせる

まとめ

上目遣いで見上げる犬
他の補助犬と比べて、歴史も長く実働頭数も多い盲導犬ですが、一頭の育成に手間や時間かからないというわけではありません。

もともとの認知度が低い聴導犬や介助犬と違って、認知度が高いが故に、需要と供給が釣り合わないという状況も起きてきているそうです。

また補助犬ユーザーは、身体障害者補助犬法により補助犬同伴での飲食店や施設等を利用する権利が保障されているにも関わらず、店舗側の無理解などにより拒否される事例はなくなっていません。

ユーザーが安心して社会の中で生活を送るために、周囲の人たちの理解は欠かせないものです。盲導犬ユーザーと出会ったら、このことを思い出していただければ幸いです。そして、私たちがこういった事実を知ることで、少しでもほじょ犬ユーザーが住みやすい世の中になることを願ってやみません。

オレンジのベストを着た「ほじょ犬」!聴導犬のお仕事って?

皆さんは聴導犬ってご存知ですか?

耳が不自由な人の自立や社会参加を助けるために訓練された犬のことです。聴導犬はまだ歴史が浅く、認知度の低さから、なかなかユーザーの数が増えていません

今記事では、皆さんに知ってもらいたい聴導犬についてのことや、「もし聴導犬とそのユーザーに出会ったらどんな対応をすればいいのか」などをまとめてみました。

聴導犬のお仕事

お手をする犬
聴導犬は、聴覚障がい者(ユーザー)に必要な音を教え、音源へ誘導するよう訓練されています。

日常生活で、私たちはさまざまな「音」を利用して生活しています。それが、もし聴こえないことを想像して見てください。

朝に予定通りの時間に起きることさえ、難しいかもしれません。

聴導犬は、耳の聴こえない人に必要な音を知らせることで、安心して生活を送る手助けをしているのです

災害時には、安否確認のドアノックなどを知らせて逃げ遅れるのを防いでくれます。

音の例

  • チャイムの音
  • お湯の沸いたやかんの音
  • 目覚まし時計
  • 赤ちゃんの泣き声
  • 後ろからの自転車のベル
  • 車のクラクション など

聴導犬の歴史

夕焼けの中の犬と人

    1976年 アメリカで第1号の聴導犬が育成
    1981年 日本で育成開始
    1982年 イギリスで育成開始
    2002年 日本で「身体障害者補助犬法」が施行

最初に始まったアメリカでは1991年までに、19の団体で約3000頭が育成され(実働数とは異なる)、その後は推計でおよそ4000頭が育成されているのではないかと言われています。

日本より一年遅れのイギリスでも、700頭は育成されているようです。

なぜ日本は少ないのか

日本補助犬協会によると、現在日本で実際にユーザーと共に生活している聴導犬はたったの74頭しかいません。

地域によっても偏りがあり、都道府県によっては0頭ということもあります。

この聴導犬の頭数の少なさは、対象ユーザーへの認知度や受容度の低さが問題としてあげられます。

また、1981年当初、日本において聴導犬は高い値段で売られていました。その頃から「聴導犬は高い」というイメージが定着してしまっていると考えられます。

もしかすると、現在のユーザー対象の人の中でも、「高いから買えない」といった認識があるのではないでしょうか。

また、聴導犬は、訓練する人も少ないですが、それ以前にユーザー対象の人の認知や希望が少ないために、なかなか増えないのかもしれません

どんな犬が適している?

人に頭をなでられる犬
たとえば、目の不自由な人を補助する盲導犬では血統が重視されますが、聴導犬の場合は以下のような適性があれば血統は重視されません。

「音を仲間に知らせる」ことは犬の本能でもあるため、犬種に制約がないという理由があるそうです。

  • ストレスに強い
  • 人懐こいこと
  • 仕事が好き
  • 体が健康なこと
  • 音に過敏に反応しないこと など

適性さえあればもともとユーザーが飼っていた愛犬を訓練して聴導犬にしたり、保健所などから保護した犬を候補犬に選ぶことができるのが、他の使役犬と大きく異なるところです。

日本では住宅の広さなどの事情から、小型犬が選ばれることが多いようです。

聴導犬とそのユーザーに出会ったら

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  • 目印はオレンジ色のベスト!
  • 聴導犬は、外出時は「お仕事中」です

聴導犬は、オレンジのベストを着てユーザーに連れられているときが「お仕事中」の印です

そのお仕事は、ユーザーの安全に直接関わる大事なお仕事。

聴導犬には、ユーザーの許可なく触ったり、勝手に餌などを食べさせてはいけません。「可愛いから」「頑張っているから」といった理由であっても、遠慮しましょう。

気をつけること

  • 聴導犬には、ユーザーの許可なく触らない。
  • 聴導犬ユーザーに話しかける際には、軽く合図をして、正面から話しかける(後ろや横から呼ばれてもわからない)
  • 必ず、顔や表情や口元がよく見えるようにする。
  • 同時に複数の人が話さないようにする。
  • 放送などがあった場合、内容を手話や筆談などで伝える。
  • 会議や行事などでは、聴導犬の管理はユーザーができるので、場所だけ手話通訳や要約筆記、目で見てわかる配慮をする。
  • 道路を歩く時は聞こえる人が車道側を歩く。(後方の車の音が聞こえないので危険)
  • 話しかけたり、餌をあげるのはNG。

まとめ

犬と向かい合う女性
普段あまり接する機会のない「聴導犬」。74頭でもまだまだ少ないとはいえ、徐々にその数を増やしています。

そのうち、盲導犬のように街で見かけることは珍しくなくなるかもしれませんね。そんなとき、「聴導犬」であることにすぐ気付ければ、何かお手伝いできることも増えるかもしれません。

また、聴導犬のお仕事を必要とする方にまで、その仕事ぶりが広く伝わっていくことを願っています