【獣医師監修】ラグドールの好発疾患と健康管理のポイント
ラグドールはモフモフの毛が特徴的な、ぬいぐるみのような猫種です。実際に、「ラグ・ドール(rag doll)」は英語で「ぬいぐるみ」という意味があります。
日本でも飼育している方が多い猫種ですが、いくつか発生しやすい病気が存在するのをご存知でしょうか?
今回の記事では、ラグドールの好発疾患や、日常生活での飼い方のポイントについて獣医師が詳しく解説します。
ラグドールの基本情報
歴史
ラグドールは、1960年代、アメリカ・カリフォルニア州に住んでいたブリーダーの手によって誕生しました。ペルシャやバーマン、バーミーズなどとの交配によって生まれた子猫が基礎だと考えられています。
ラグドール(ragdoll)という名前は、英語で「(布製の)ぬいぐるみ」を意味し、「大人しく抱かれる姿が、まるでぬいぐるみのようだ」として、この名前がつけられました。
身体的特徴
被毛の各部分にある「ポイント」と呼ばれるまだら模様が特徴です。
大きめの頭に、ややつり上がった青い瞳、低めの鼻が真ん中についた丸顔をしており、被毛の長さはミディアムロングです。
体格は大きめでがっしりとしていて、中には体重が10kgを超える場合もありますが、オスで約7〜9kg、メスで約5〜7kgが平均とされます。
性格
おおらかでおっとりとしており、知らない人にもよく懐きます。鳴き声は小さく、成猫になるとあまり激しい運動をしなくなる子も多いようです。
ただし、帰巣本能が強いため、譲渡や引っ越しの際には脱走やストレスに注意しましょう。
ラグドールの好発疾患
まずは、ラグドールに発生しやすい遺伝的疾患や、身体的特徴からかかりやすい病気をいくつか紹介します。
聞きなれない疾患もいくつかあると思いますが、どんな病気があって、どんな症状が現れるのか、しっかりと理解しましょう。
肥大型心筋症
【症状】
運動不耐性(疲れやすい)、胸水や腹水貯留、呼吸困難、食欲不振、嘔吐など。
【原因】
心臓の筋肉が肥厚することで心臓が膨らみにくくなり、循環障害を呈する。
【備考】
左心房に血栓が形成されやすく、それが大動脈に詰まり大動脈塞栓症を引き起こすことがある。塞栓を起こしやすいのは腹大動脈遠位端(太ももの付け根)や腎動脈で、それぞれ四肢の麻痺や尿産生停止が認められる。
進行性網膜萎縮
【症状】
昼盲や夜盲、徐々に進行する視覚障害、失明。
【原因】
網膜に存在する光を感じる細胞が変性することによる。この変性は遺伝的に起こる。
【備考】
猫の視覚機能を正確に評価することは難しいが、物を目で追いにくくなった、家具によくぶつかるようになったなどの症状が現れたら要注意。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
【症状】
貧血、運動不耐性(疲れやすい)、頻脈など。
【原因】
酵素であるピルビン酸キナーゼの遺伝的欠損によって溶血性貧血が起こる。常染色体劣性遺伝によって伝達されるので、両親に本疾患の素因があるかどうかは要チェック。
【備考】
健康診断では赤血球数やヘマトクリット値などの貧血を評価する項目に注意する。
ムコ多糖症
【症状】
顔面骨の形成異常、関節の運動機能障害、後肢麻痺、角膜混濁など。
【原因】
ムコ多糖を分解する酵素の欠損によって全身臓器(骨、軟骨、角膜、心臓など)にムコ多糖が蓄積し、症状が現れる。
【備考】
検査会社によっては遺伝子検査が可能。
毛球症
【症状】
嘔吐、便秘、腸閉塞など。
【原因】
グルーミング(毛づくろい)の際に口から入った被毛が消化管に詰まる。
【備考】
毛玉を溶解するフードやサプリメント用いて予防することもできる。上手に毛玉を吐けない子は利用も検討。
ラグドールの健康管理
ラグドールの好発疾患には、先天的な遺伝子異常に基づくものもあります。遺伝疾患の予防は難しいかもしれませんが、発見を早く行い、迅速に対応することが肝心です。
また、毛球症などについては、日々の生活環境を見直すことで発生を少なくできるかもしれません。
ラグドールと一緒に生活する上でどんなことに注意すべきか、見ていきましょう。
1. 定期的なブラッシング
猫はキレイ好きな動物なので、ある程度は自身で毛づくろい(グルーミング)をして被毛や皮膚を清潔に保っています。
しかし、加齢とともにグルーミングの頻度は減ってきますし、ラグドールは元々毛が長いので毛が絡まって毛玉ができやすい猫種です。
毛玉を放置すると皮膚が引っ張られ、そこに炎症が起きます。
また、グルーミングによって口から被毛が体内に入り、消化管に毛玉が詰まることもあります。
長毛のラグドールには、定期的なブラッシングを心がけましょう。
2. 尿の状態を毎日チェック
尿の状態を日頃から観察することで、病気の早期発見に繋がります。
腎泌尿器系の疾患はラグドールに限らず、猫で非常に多い疾患です。
健康な状態の尿量や尿の色を把握しておくことで、異常にいち早く気づきましょう。
3. 季節に合わせた温度管理
長毛のラグドールは、夏の暑さには弱い猫種です。
猫は犬のようにパンティング(口でハーハーしながら行う体温調節)もしませんので、熱中症には十分に注意しなければなりません。
夏場はクーラーを適切に使い、涼しい環境を作りましょう。27度前後を目安に、人間が快適だと感じる温度で大丈夫です。
ちなみに猫が安静時に口呼吸をしていたら、心臓病や呼吸器疾患の疑いがあるため動物病院を受診してください。
4. 定期的に健康診断を受けよう
外見では判断しにくい病気もたくさんあります。
血液検査や画像検査など、定期的に健康診断を受けることをおすすめします。
7歳までの若い時期は年に1回、7歳以上のシニアは半年に1回くらいを目安に受けておくと安心です。
猫にとっての半年は人間の年齢で換算すると2年程になりますので、決して短い期間ではありません。
病気は早期に発見し、適切な治療を受けることが望まれます。ぜひ健康診断は検討してみてください。
まとめ
本記事では、ラグドールの好発疾患と、日常生活でできる健康管理をご紹介しました。
病気になってしまったときに十分な対応ができるような環境が大切です。
愛猫との生活がより良いものとなるように願っています。
甘えん坊な猫、ぬいぐるみのような猫と言えば?人気なラグドールの特徴
ラグドールは「ぬいぐるみ」という意味を持つ名前です。その名の通り、人懐こく、抱っこされるのをとても好む猫です。
大きな体にふわふわとした長毛が魅力的で、甘えん坊な性格をしたかわいい猫、ラグドール。「飼ってみたい!」、「なでてみたい!」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか?
ラグドールは、猫の人気ランキングで、いつも上位に入っているとても人気のある猫です。今回は、そんなラグドールの特徴について、お伝えしたいと思います。
ラグドールの特徴
ラグドールは、被毛の各部分にポイントと呼ばれるまだら模様のある毛色の猫です。ミディアムロングの毛、大きめの頭、ややつり上がった青い瞳、低めの鼻が真ん中についた丸顔が特徴です。
体形はロング&サブスタンシャルタイプで、大きめのがっしりした体格。中型の猫に分類されるということもあって、成猫になったときの体重は重く、オスの平均は7〜9キログラムほど、メスの平均は5〜7キログラムほどです。中には10キロを超える大きな子もいるようです。
ラグドールの性格
ラグドールは、飼い主に限らず、見知らぬ人にも抱っこをおねだりするなど、非常におおらかで人懐こい性格。非常に落ち着いていて、鳴き声も小さく、成猫になるとあまり激しい運動には興味を示さなくなります。
物怖じせずにおっとりとしている性格の子が多いようですが、帰巣本能が強く、譲渡や引っ越しの際には注意が必要かもしれません。万一、昔の家を求めて外に逃げ出してしまったりしたら…。環境の変化には、特に気をつけましょう。
気をつけたいラグドールの病気
遺伝性疾患は比較的少ないとされているラグドールですが、ペルシャ猫の血を引いているために、肥大型心筋症にかかってしまうことがあるようです。
肥大型心筋症とは、心臓の周りの筋肉が太く大きくなっていく疾患で、心臓の動きが鈍くなり、全身を巡る血液が滞るようになります。症状が進むと心不全などの病気で突然死してしまうことも。
年をとることでかかりやすくなる病気で、運動やスキンシップを取らなくなるようになり、徐々に食欲も落ちてくるようです。このような症状が見られたら、早めに病院を受診するようにしましょう。また、長毛種の猫なので、皮膚炎や毛球症にも気をつけるようにしましょう。
ラグドールの飼い方
病気を避けて、健康に長生きしてもらうためには、飼い主がきちんと気をつけてあげる必要があります。
ラグドールの毛のお手入れ
長毛種のラグドールは、毛が絡まりやすく、またグルーミングで飲み込む量が増えれば毛球症になってしまうかもしれません。一日一回は必ずブラッシングしてあげるようにしましょう。
また、月に一度はシャンプーをするようにしましょう。もともと、猫は水を嫌いますので、大人になってからでは余計に怖がってしまうことが多いでしょう。子猫の頃から慣れさせておくことがポイントと言えます。
ラグドールの健康維持
長毛の猫にとって、冬の寒さはいくらか耐えることができますが、湿気が多く、温度も高い夏は苦手です。温度管理、湿度管理をしっかりし、家に置いて出かけるときもクーラーを切らないようにしましょう。
どんな動物でも言えることですが、食事は栄養価が高く、バランスの良いものを与えるようにしましょう。子猫から成猫になるまでの3年間ほどはがっしりとした体を作るためにある程度の量を必要としますが、成猫になってからはあまり運動をしない傾向にあるため、肥満にならないように体重や体形を見ながら、量を調整していきます。
おすすめのラグドールのYouTubeチャンネル
ラグドールの飼育や生態に興味がある方は、YouTubeでチェックしてみると良いでしょう。こちらでは、ラグドールが出演している動画を投稿しているおすすめのYouTubeチャンネルを紹介します。
ラグレオ
ラグドールのレオくんの日常の様子を撮った動画を投稿しています。ほのぼのとした日常の様子に触れることができるおすすめの動画です。
https://www.youtube.com/channel/UC9sRtMc-FuxHA1cORobSSxg
パルリズ Cat*Studio
パルはマンチカンの茶白の短足猫な男の子。リズはラグドールのお顔の中心が黒い女の子。二匹の面白おかしい、思わずほっこりしてしまうような日常の様子を見ることができます!飼育の参考にもなるかもしれません。
https://www.youtube.com/channel/UCK4a1HaugtjTmMtRhdBh1ww
最後に
猫の人気ランキングでは毎年トップ10に入っており、非常に人気のある猫、ラグドール。
人懐こく、甘えん坊で、抱っこされたがりという甘々な性格にひかれる方も多いのではないでしょうか。賃貸マンションでも比較的飼いやすい猫だと言えます。初めての猫に、ラグドールを選んでみてはいかがでしょうか?
マンションやアパートに住んでいる方必見!オススメの飼いやすい猫種5選
マンションやアパートにお住まいで「猫を飼いたい!」と思っても、初めての方は、何をどうしたら良いのかと、不安が多いのではないでしょうか。
鳴き声や走り回る音が迷惑にならないか不安になったり、一人暮らしのために留守が多く、それが猫のストレスになってしまわないか、などなど…。
この記事では、マンションやアパートでも比較的飼いやすい猫を5種類をご紹介します。
1.ペルシャ猫
身体的特徴
ペルシャ猫はふさふさとした長毛と低い鼻が特徴的な猫です。
どんな性格?
とても穏やかで落ち着いており、人との距離を上手に取ることができます。静かに、ゆったりとくつろぐことが好きで、興奮することは滅多にないと言われています。
飼いやすい理由
留守番を寂しがったりすることがあまりない点や、大きな声で鳴いたりすることも少ないという点、運動量が少ないことなどから、一人暮らしでアパート住まいの方でも、比較的無理なく飼うことができます。
注意したい点
長毛種の中でも被毛の厚い猫なので、毎日のブラッシングは欠かさないようにしましょう。
2.シンガプーラ
身体的特徴
大きめの耳とアーモンド型のアイラインの強い目が特徴的で、シンガプーラは現存する純血種の中で最も小さいとされている猫です。
どんな性格?
ものすごく甘えん坊で人懐っこく、それでいて好奇心がとても強い猫です。そのため、飼い主の行動に興味津々な様子で手を出してきたり、作業の邪魔をして構って欲しいアピールをしてきたりすることが度々あることでしょう。
飼いやすい理由
遊ぶのは大好きですが、体格が小さいため、狭い賃貸でも比較的飼いやすいと言えます。
また、とても賢いためしつけのために手間取るようなことも、あまりありません。
あまり鳴くこともなく、鳴いても体の大きさに比例した、か細い声なので隣室の迷惑になることはあまり考えられません。
注意したい点
これはどの猫にも言えることですが、事故防止のために、洗濯機やトイレの蓋はきちんと閉めるようにしましょう。また、運動量をしっかりと確保するために、毎日満足するまで遊んであげましょう。
3.ロシアンブルー
身体的特徴
青みがかった銀色の被毛、スレンダーな体型、少し微笑んでいるような口元が特徴的な猫です。
また、瞳の色も特徴的で、子猫の頃はキトンブルーと言われる青色をしているのですが、大人になるにつれて徐々に緑を帯びた色に変化していきます。
どんな性格?
ロシアンブルーは飼い主に非常に忠実で、献身的に接する様から犬のような性格だとよく形容されます。
また、とてもおとなしい性格なため、鳴き声を上げることは滅多になく、「ボイスレスキャット」とも呼ばれています。
飼いやすい理由
滅多に鳴くことが無いので、お隣さんへの配慮が必要ないことや、独立心が強くきちんと一人でお留守番できること、忠実で献身的なことから飼いやすい猫だと言えるでしょう。
注意したい点
運動量が多い活発な猫なので、頑丈なキャットタワーと十分な空間を用意してあげましょう。
また、ロシアンブルーについては以下の記事でより詳しく紹介しています。
4.ラグドール
身体的特徴
ラグドールは顔や手足に特徴的な模様が入るクリーム色の毛色の、ミディアムロングの被毛を持つ猫です。
大きめの頭にややつり上がった青い瞳、綺麗な三角形をした耳が特徴的な猫で、隠れた人気を持ちます。
どんな性格?
ラグドールは「ぬいぐるみ」を意味する言葉ですが、その名の通り、人に抱っこされるのを好みます。
落ち着いた性格で大きな声を上げて鳴くこともほとんどなく、激しい遊びにはあまり関心を示しません。
飼いやすい理由
静かに落ち着いて過ごすことを好む猫なので、家の中を走り回って散らかしたりすることもほとんどありません。
いたずら好きというわけでもないので、安心して生活できますし、高いところを好むというわけでもないのでモノを隠したりする必要もあまりありません。
注意したい点
とてもおとなしい猫とは言っても、子猫のうちは普通の猫らしく活発に運動します。健康な身体を作るためにもこの時期の栄養管理はしっかりするようにしましょう。
また、ラグドールの被毛はセミロングとはいえ厚く豊かです。毎日欠かさずブラッシングしてあげましょう。
5.シャルトリュー
身体的特徴
シャルトリューは肩幅が広くがっしりとした体格をしていながら、手足や首は短めで細い四肢を持っています。
頭は丸く鼻先に向けて細くなっており、上にあがった口の端から微笑んでいるように見えるのので「微笑みの猫」と呼ばれています。
どんな性格?
穏やかな性格で、静かに人のそばに寄り添うのを好みます。
賢いのでしつけがしやすいと言われています。洞察力もあるので飼い主が忙しそうにしている時や、料理中などの近づいて欲しくない時は、距離を置いてじっと様子を伺っていることもあるようです。
また、甘えるのも好きですが、嫉妬深くもなく、多頭飼いするのにも向いていると言われています。
飼いやすい理由
非常におとなしいことや、賢いことから飼いやすい猫であるとされています。
注意したい点
成猫になっても遊び好きのため、しっかりとした作りのキャットタワーを用意してあげましょう。
また、被毛は短いですが密集しているため、週に何度かはブラッシングしてあげるようにしましょう。
最後に
マンションやアパートで暮らしている方は、猫の鳴き声やドタバタする音が隣に響いていないかがとても気になってしまいますよね。
賃貸で猫を飼いたい方は「猫飼いさん必見!賃貸マンションを借りる時に気をつけること5選」や「【ペット可でも注意】賃貸マンションで猫を飼うなら、フローリング対策を。」などの記事も参考になるかもしれません。
猫をこれから飼おうと考えている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。