【獣医師監修】ペットの麻酔は安全?麻酔の種類やリスクを徹底解説!
避妊・去勢手術や歯科処置の際、ペットに全身麻酔を受けさせたことがあるかもしれません。
麻酔をかける前には十分な説明がなされるはずですが、それでも不安に思うこともあるでしょう。
本記事では、動物病院で用いられる麻酔のメリットとデメリットを、獣医師が詳しく解説します。
最後まで読んで頂き、少しでも麻酔をかける前の心の準備に繋げてほしいと思います。
ペットに麻酔を使うのはいつ?
麻酔は、治療・処置をする際の痛みを緩和したり、動物が暴れないようにするために行います。
手術だけでなく、内視鏡検査やCT、MRIなどの検査の際にも麻酔をします。
手術や検査の意味が理解できない動物は、警戒して暴れてしまいます。そのため、人間では無麻酔で行えるものであっても、動物には麻酔を使うことがあるのです。
ペットの麻酔の種類
一口に麻酔と言っても、その種類は様々です。
まずは、動物病院で使用される麻酔について説明します。
全身麻酔
人間の手術に用いられる麻酔と同様で、麻酔導入薬によって意識を無くし、吸入麻酔で維持します。
これら麻酔薬には鎮痛効果は少ないため、同時に鎮痛薬や鎮静薬を用いることで、麻酔薬の使用量は最小限に抑えます。
局所麻酔
皮膚の裂傷の縫合や、体幹などの局所の小さい腫瘍切除の際に用いられます。
体の一部分の感覚(特に痛み)を無くすことで処置を容易にし、意識ははっきりとしています。
局所麻酔には、主に次のような方法があります。
- 体表の何箇所かに注射をする方法
- 傷口に局所麻酔薬を垂らす方法
- 神経に局所麻酔薬を浸潤させて末端の感覚を丸ごと無くす方法
- 眼の処置をする際の点眼麻酔
鎮静処置
攻撃行動が強い場合や恐怖が強く出ている場合には、少し頭をボーっとさせる処置を行うことがあります。
しかし、出来ることなら薬剤は使用したくありません。
鎮静処置は必ず行うものではありませんが、動物の負担やストレスなどを考慮してメリットが大きいと判断された時には採用されます。
ペットの麻酔に使う薬はたくさんある
麻酔を行う際には、1種類の薬剤のみを用いるわけではありません。
複数の薬剤を組み合わせることによって、薬剤それぞれの長所を生かし、短所を補い合うことで安全な麻酔が可能になります。
ここでは、麻酔の際にどんな薬が用いられるのかをご紹介します。
- 鎮静薬
脳の興奮を抑制し、意識を朦朧とさせる。 - 鎮痛薬
手術や処置による痛みを軽減する。 - 静脈麻酔薬
静脈に直接注入することで速やかに全身麻酔状態が得られる。 - 吸入麻酔薬
気体を吸うことで麻酔状態を得る。通常は麻酔の維持に用いられるが、非常に興奮している状態の動物など、注射が困難な場合にはまず吸入麻酔薬を用いて興奮を鎮めるような用途も。 - 麻酔拮抗(きっこう)薬
投与により麻酔薬の効果を打ち消す。予期しないところで麻酔深度が深くなりすぎる、麻酔薬によって生体が危険な状態に陥るなどの不測の事態に対処するために用いられる。 - 緊急薬
心肺機能の亢進、血圧の確保など、生命に必要な機構を維持するために用いる。
麻酔を行う前には、予めこれら薬剤の投与量を体重から算出し、いざという時にすぐに対応出来るようにしています。
ペットの麻酔中の生命維持管理
麻酔、特に全身麻酔中は生命維持のために不可欠な循環と呼吸の機能が抑制されます。
そのため、麻酔中に生体の状態をモニターすることは必須です。
動物病院では、麻酔中は以下のような項目を随時確認しています。
- 心拍数
心臓がしっかり拍動しているか - 心電図
不整脈が起きていないか - 末梢血酸素飽和度
肺での酸素交換がうまくいっているか - 呼吸数
自発呼吸があるか - 呼気二酸化炭素濃度
肺でのガス交換がうまくいっているか - 血圧
心臓の拍出力が十分か、末梢組織まで血液が行き渡っているか - 体温
低体温の防止、あるいは悪性高熱があるか
ペットの麻酔のリスク
麻酔は薬剤を使う処置ですので、一定の割合で副反応が起こることが予想されます。
特に、全身麻酔で用いられるような麻酔薬は、心臓や肺の機能を低下させるものもあります。
動物病院では、動物の状態やこれまでの病歴などから麻酔のリスクを総合的に想定し、使用する麻酔薬の種類を変えるなどの対応をします。
麻酔のリスク評価の手法
麻酔のリスクは「ASA分類」という米国麻酔科学会の基準によって評価されます。
現在の全身状態を事前に正確に把握し、麻酔をかけることのメリットがリスクを上回るかを客観的に評価しています。
ASA | 動物の状態 | 具体例 |
---|---|---|
1 | 正常で健康 | 認識出来る疾患が無い |
2 | 軽度の疾患を有する | 膝蓋骨脱臼、骨折、老齢動物 |
3 | 重度の疾患を有する | 脱水、貧血、発熱 |
4 | 重度の疾患を有し、生命の危機にある | 重度の脱水、貧血、発熱、尿毒症など |
5 | 治療をしても24時間以内に死亡する可能性がある | 重度のショック状態など |
この他に、脂肪の付き方や体重、動物種(特に短頭種)によってリスクの評価は変化します。
ペットの麻酔関連死亡率
しっかりと事前準備をしていても、残念ながら麻酔による死亡事故は起こることがあります。
その確率は、比較的状態の良い動物(ASA1~2)で約0.01~0.1%、状態の悪い動物(ASA3~4)で約1.5%となります。
動物の状態にもよりますが、おおよそ1万頭に1頭〜100頭に1頭の割合です。
麻酔を使用する前には、獣医師からリスクの説明をしっかりと受け、納得した上で処置を行いましょう。
ペットの麻酔前の検査
麻酔による事故のリスクを最小限に抑えるため、麻酔を使用する前には入念な準備をします。
その一つが、現在の全身状態の正確な把握で、次のような検査によって評価します。
- 身体検査
正常時の心拍数の確認、心雑音や呼吸音の確認 - 血液検査
腎機能や肝機能の確認、貧血や脱水の確認、電解質バランスの確認 - 画像検査
肺や気管、心臓の異常がないか、腫瘍がある場合には他の臓器に転移がないかなどの確認 - 心電図
不整脈がないかの確認
まとめ
確かに麻酔は一定のリスクを伴い、100%安全とは言えません。しかし、麻酔は動物の健康を守る上でも必要なものです。
麻酔のリスクを恐れて必要な治療ができない方が、よっぽど危険な場合もあります。
獣医師たちはみんな、麻酔前の検査の徹底や、動物の状態に合わせて麻酔の種類を選ぶことで、麻酔のリスクを最大限抑えようとしています。麻酔を受ける前に獣医師からしっかりと説明を受け、ペットのためにも納得のいく形で処置を受けさせてあげましょう。
致死率100%?フェレットが接種すべきワクチンとかかりやすい病気
フェレットの飼い主の皆さんは、フェレットがかかりやすい感染症や病気についてきちんと把握していますか?
フェレットと安心して楽しい生活を送るには、病気の予防は必須です。また、病気に関する正しい知識を持つだけでも予防や早期発見につながります。
今回は、フェレットに打つべきワクチン、かかりやすい病気とその症状についてご紹介します。
予防するべき病気は?
フェレットがかかりやすい病気はいくつかありますが、あらかじめ予防しておくことで防げる病気もあります。日本においてフェレットは、ジステンパーとフィラリア症の予防を推奨されています。
ジステンパー
犬に感染しやすいことで知られる犬ジステンパーですが、実はフェレットにも感染します。
犬ジステンパーウイルスの感染により発症し、発熱や鼻水、咳などの症状がみられます。進行するにつれ、皮膚や中枢神経にも異常が現れ、フェレットが感染するとほぼ100%の確率で死に至るとされています。
予防には事前のワクチン接種が重要です。日本にはフェレット専用のジステンパーワクチンがなく、犬用の混合ワクチンを接種するのが一般的なため、獣医師とよく相談して接種しましょう。
フィラリア症
蚊を媒介にして感染する病気です。こちらも犬の病気ですが、まれにフェレットにも感染します。蚊に刺されることで10cm〜20cmほどの寄生虫が心臓に寄生し、呼吸困難や不整脈などの症状を引き起こします。
犬と比べて小柄で心臓が小さいフェレットにとっては、数匹の寄生虫でも重篤化してしまいます。また、犬に行うような寄生虫の摘出手術は、その心臓の小ささからも困難なため、フィラリアに感染させないことが重要です。
月に一回、飲み薬を与えるほか、レボリューションという液剤を首の後ろにたらすことで予防、駆除できます。また、薬によってはノミやダニにも有効なものもあるため、こちらも獣医師とよく相談しましょう。
フェレットがかかりやすい病気は?
ジステンパーやフィラリア症以外にも、フェレットがかかりやすい病気があります。発症のリスクは高齢になるにつれて上がるため、単純な老化なのか、病気なのかを適切に判断することが大切です。
インスリノーマ
インスリノーマは膵臓に腫瘍ができることでインスリン(血糖値を下げるホルモン)が過剰に分泌されてしまい、低血糖になる病気です。
症状としては、睡眠時間の増加や慢性的な体力減少などの比較的気付きにくいものから、よだれが垂れたり、足がふらついたりするなど視覚的にわかるものがあります。
副腎疾患
腎臓の近くにある副腎に異常が起きてしまうという病気です。フェレットという動物自体がこの病気にかかりやすく、副腎から分泌される性ホルモンの量が過剰になってしまうことで発症します。
発症すると高い確率で脱毛し、メスは外陰部の腫脹、オスは前立腺の肥大などの症状が見られます。
フェレットにワクチンは打つべき?
結論から言うと筆者はワクチンは打つべきと考えています。しかし、ワクチン接種の義務がなく、フェレット専用のワクチンがないことからも、副作用を心配する飼い主さんは少なくないでしょう。
そこで、予防をした場合のリターンとリスク、予防をしない場合のリターンとリスクについてそれぞれ考えてみましょう。
予防した場合
予防した場合のリターン
薬で予防すれば、ジステンパーやフィラリア、ダニ、ノミなどの感染や寄生をほぼ防ぐことができます。特に、感染すると死亡率がほぼ100%のジステンパーはワクチンを接種するだけでその危険から逃れられます。
飼い主さんとしても、これらの病気を気にすることなく安心して一緒に生活できることでしょう。
予防した場合のリスク
副作用の可能性は考えなければいけません。ほとんどの場合は問題ないとされていますが、場合によっては発熱や接種箇所の腫れ、まれにショック状態に陥ってしまうこともあります。
また、ワクチンの接種や投薬での予防は金銭的な負担もかかります。
予防しない場合
予防しない場合のリターン
副作用について考慮する必要はなく、金銭的な負担もありません。
予防しない場合のリスク
既に述べていますが、フェレットがジステンバーに感染するとほぼ100%死んでしまうというのが何よりも大きなリスクと言えるでしょう。室内飼いであっても蚊やノミ、ダニの侵入は避けられず、常に感染や寄生の脅威がつきまといます。
もちろん、散歩に連れて行ったり、他のフェレットと遊ばせたりすることも難しく、ワクチンを接種していないとペットホテルを利用できない場合もあります。
リターンとリスクを考える
これらのリターンとリスクをふまえると、予防しない場合のリスクはリターンに比べてかなり大きなものではないでしょうか。
飼い主さんがリターンとリスクをしっかり理解し、獣医師と相談した上で、愛するフェレットにとって何が一番良いのか判断してください。
まとめ
今回は、フェレットのかかりやすい病気と予防すべき病気、そしてワクチンを打つべきかどうかについてご紹介しました。
ワクチンなどの薬による予防は義務ではなく、飼い主さんの判断に委ねられています。そのため、どうすることが一番フェレットのためになるのか、どうすればフェレットと楽しく過ごせるかを考慮した上で判断しましょう。
また、ジステンパーやフィラリアといった予防すべき病気以外にもかかりやすい疾患があるため、大体の症例は覚えておき、少しでも様子がおかしいと思ったら動物病院に連れて行くことをお勧めします。
経験者が語る!野良猫を飼う前に知っておきたい4つのデメリット
野良猫を保護して飼おうと思っている方は、野良猫を飼う際のデメリットやリスクについて考えたことはありますか?
野良猫出身の猫との生活は、決して良いことばかりではないのが現実です。
例えば、野良猫が感染症や治らない病気を抱えている場合もあるでしょう。
悪い面もきちんと理解しておかないと、飼い始めてから大変大きなストレスを感じてしまい、最悪の場合、飼育放棄なんてことにもつながりかねません。
今回は、野良猫出身の猫を飼っている筆者の立場から、野良猫を飼うリスクやメリット・デメリットをご紹介します。これから野良猫を飼おうと思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
野良猫を飼うデメリット①病気・感染症の可能性
野良猫を飼い始める大きなリスクの1つに、「病気・感染症」が挙げられます。
野良猫は外の過酷な場所で生活をしているため、何らかの病気にかかっている可能性が高いです。
実際に、筆者が保護した野良猫は、元気そうに見えても「心因性脱毛症、瓜実条虫症、便秘、慢性的な結膜炎」にかかっていました。
ここでは、野良猫を飼い始める前に知っておきたい代表的な感染症や病気について詳しくご紹介します。
野良猫の代表的な感染症
猫の代表的な感染症として以下があります。
- 「猫後天性免疫不全症候群(猫エイズ)」:発症から数ヶ月ほどで亡くなる確率が高い病気で、猫エイズキャリアの猫に喧嘩で噛まれるなどして感染します。
- 「猫白血病ウイルス感染症(猫白血病)」:発症すると数ヶ月〜数年で命を落としてしまう病気で、唾液や糞尿からも感染するため、舐め合ったり、同じトイレを使うだけで感染します。
上記の感染症は人に移りませんが、猫同士で感染します。
どちらの病気も必ず発症する訳ではありませんが、発症してしまうと完治が難しく、数ヶ月〜数年で亡くなります。
人に移る病気を持っていることも
カビや寄生虫などが原因の病気は、野良猫から人にも感染する可能性があります。
- 皮膚糸状菌症:カビの一種が原因
- 疥癬(かいせん):ダニが原因
これらの病気は、感染すると猫も人もかゆみや脱毛などの症状が出ます。
動物病院での検査はいち早く済ませよう
「感染症を持っているかもしれない」という覚悟は、野良猫を迎え入れる前に必ず必要です。
特に先住猫を飼っている場合は、猫同士で感染する可能性があるので、お家に迎え入れる前に検査しましょう。感染症の有無は動物病院にて、5,000〜20,000円ほどで簡単に検査してもらえます。
筆者の場合、野良猫を保護した時、すでに先住猫がいたので、もし感染症だったら親戚の中で里親を探すなど、家族間で何度も話し合っていました。
野良猫を飼うデメリット②夜鳴きがひどいことがある
特に、野良猫を飼い始めてすぐの場合は環境の変化によるストレス、夜行性が抜けていないなど様々な理由で夜鳴きが激しい場合があります。
夜鳴きは数週間続くこともあり、筆者も2〜3週間ほど夜鳴きに悩まされました。毎日深夜0〜2時、早朝4〜5時に鳴いてしまうので、しばらく寝不足が続きました。
飼い主は野良猫を飼って夜鳴きすることを覚悟しなければいけません。
ご近所トラブルを防ぐために
野良猫の夜鳴きによって、ご近所に迷惑をかけてしまうことがあります。
特に壁の薄い部屋に住んでいる場合は、事前に近隣の方に野良猫を飼おうとしていること、夜鳴きをするかもしれないことを伝え、承諾を得ておくとよいでしょう。
野良猫を飼うデメリット③体臭や口臭がきついことがある
野良猫を保護したばかりの時は、臭いとの戦いになります。
綺麗好きの猫でも外で生活していると、どうしても体臭や口臭、便臭がきつくなります。
さらに、野良猫を保護したばかりだと警戒心が強いため、お風呂に入れられません。
体臭はシャンプーシートなどを使って臭いを減らすことができますが、口臭や便臭は体質改善から始まるので治るまでに時間がかかります。
筆者が野良猫を保護した時は、石油のような臭いと獣臭さが混ざったような臭いがしていて、シャンプーを数回しないと取れませんでした。
野良猫を飼うデメリット④保護した際に数万円かかる
「野良猫は連れてくるだけだからお金はかからない」と思うかもしれませんが、動物病院代などを含めると金銭的な負担は大きいです。
最初にかかる医療費だけで10,000〜25,000円ほど、飼うための初期設備・避妊去勢手術なども含めると50,000〜100,000円ほどかかる場合もあるでしょう。
他にも野良猫が何らか病気にかかっていて通院が必要な場合もあるので、野良猫を保護するためにはまとまったお金が必要になります。
野良猫を飼うメリット
ここまで、野良猫を飼うデメリットをお伝えしてきましたが、もちろん悪い事ばかりではありません。
野良猫を飼い始めて良かったと思えることを、筆者の経験を含めて3つご紹介します。
1.猫が幸せになる
野良猫が住む外の環境に比べると、室内はご飯もあって安全で寒くも暑くもないのでとても快適です。
「外の方が自由なんじゃないか?」という意見もありますが、実際に野良猫を飼い始めると室内の方が幸せだとわかる以下のような大きな変化がありました。
- 早食いしていたが、段々ゆっくりと噛んで食べるようになった
- ストレス性のハゲが治ってきた
- のびのびと寝るようになった
また、怪我をしたり感染症にかかったりしても治療できる可能性が高いため、野良猫よりも長生きできます。ぜひ一日でも長く猫を幸せにしてあげてください。
2.慣れると心を開いてべったり懐いてくれる
飼い始めた頃の野良猫の警戒心は強いですが、安心すると徐々に心を開いてくれます。わかりやすく変わる態度がうれしく、本当に愛おしいです。
個体差がありますが、筆者が保護した猫は飼い始めて2〜3ヶ月で距離が近くなり、半年経つ頃には何をしても怒らない良い子になっていきました。
猫の雰囲気が柔らかくなって、徐々に仲良くなれるところも、野良猫を飼うメリットです。
3.飼い主の生活が豊かになる
野良猫に限った話ではないかもしれませんが、猫が生活の中に溶け込むことで、今までよりもっと生活が豊かになります。
家に帰ると猫が「おかえり」と挨拶したり、寒い時期にはお布団の中に入ってくることもあり、少なくとも筆者は野良猫を迎え入れて本当によかったと日々感じています。
まとめ
今回は、野良猫を飼う前に知りたいデメリットとリスクを中心に筆者の経験談を踏まえてご紹介しました。
野良猫を飼う最大のリスクは病気です。猫は本能的に体の不調を隠すので元気そうに見えても病気を抱えていることがあります。
野良猫との生活はとても幸せですが、動物を保護することには責任がついてきます。
今後野良猫を飼おうと思っている方は、そのリスクや悪い面にもきちんと目を向けて、十分な覚悟を持った上で飼育を始めてください。
【獣医師監修】猫の避妊・去勢の4つのメリットと注意点
新しく猫を飼うとき、健康管理を考える上で重要なのが避妊と去勢についてです。これらは全身麻酔が必要な処置であり、猫の負担を考えるとなかなか踏み切れないという飼い主さんも多いでしょう。
猫における避妊と去勢のメリット及びデメリットを正しく理解することが、猫の健康を管理する第一歩です。本記事では猫の避妊と去勢について解説していきます。
メリット① 望まない妊娠を回避できる
屋外に猫(特にメス猫)を出す習慣がある、多頭飼育でオスとメスが混合しているなどの場合、予期しない形で子猫を授かってしまうことがあります。
飼えなくなったという理由で動物保護センターに引き取られる猫の数は、年々減少しているとはいえまだ少ないとは言えません。不幸な事態にならないように予め避妊・去勢をしておくことが重要です。
猫の繁殖能力
猫の発情期は日照時間によって決まり、日が長くなる2〜4月にやってきます。
一方で、猫は交尾排卵動物であり、交尾をすればほぼ確実に妊娠します。これは発情期に限らず、条件(栄養状態、人工光の状態、子育て中でないなど)が揃えば一年中妊娠できるということです。これがヒトや犬と大きく異なる点の一つです。
猫の殺処分数
2018年度には全国で10,523頭の成猫と20,234頭の子猫が殺処分されました。これらの数字は、予期せぬ妊娠及び望まない妊娠の数を少なからず反映しています。また、増えすぎた地域猫の数も含まれるでしょう。
さくら猫
自治体や公益財団法人どうぶつ基金により、地域猫の避妊や去勢の助成金の申請が行える場合があります。
街中で耳に切れ込みの入った猫を見かけたことはありませんか?これらの猫を「さくら猫」といい、右耳に切れ込みのある猫は去勢済みのオス、左耳に切れ込みのある猫は避妊済みのメスであることを表しています。
飼い猫や地域猫の避妊・去勢の助成金についてはこちらをご覧ください。
さくら猫についての詳細はこちらの記事もご覧ください。
メリット② 発情期のストレスを軽減できる
発情期には過度な興奮や、人や物に体を擦りつけるなどの行動の変化が見られます。
発情期に交尾ができないことは、それ自体がストレスになる場合もあります。繁殖を考えていないのであれば、このような無用なストレスの原因は無くしておくのがいいでしょう。
メリット③ 発情期の行動を変えられる
猫の発情期には、飼い主を悩ませる行動がいくつかあります。
発情に伴う問題行動は避妊・去勢により抑制できますが、個体差もありますので、問題行動が無くならない場合もあることは知っておくべきでしょう。
大きな声で鳴くことを改善
発情したメス猫はオスを呼ぶために独特な大きな声で鳴きます。オス猫もまた、他のオスにこっちに来ないよう大きな声で鳴きます。
猫は夜行性なので特に夜に鳴くことが多くなり、一晩中鳴いていることもあります。これは生理的な行動なので、手術をしない限り、叱ってもしつけても直ることはありません。
また、精神安定薬やマタタビを使用することもありますが、猫の健康を考えるとオススメしません。特にマタタビは過剰に与えると呼吸困難に陥ることがあるため注意しましょう。
不適切な排尿改善
マーキングのためにトイレ以外の場所で排尿することを減らせます。
特にオス猫は縄張主張のため、尿を後ろに撒き散らす「スプレー」と呼ばれる行動を取ります。ニオイもキツく、飼い主にとっては頭を悩ませる行動の一つですので、手術による改善が期待されます。
放浪癖の改善
外にいる他の猫につられて外出することが減ります。
オス猫の場合は攻撃性も減少することがあるので、外に出たとしてもケンカの回数を抑えられるでしょう。
メリット④ 生殖器系の病気の予防できる
猫の健康を考える上で、病気の予防は欠かせません。どんな病気を予防できるのか、見ていきましょう。
避妊によって予防できる病気
性ホルモンが影響しているとされている乳腺腫瘍の発生を抑制できます。
また、手術によって卵巣や子宮を摘出するため、メス特有の病気である卵巣疾患や子宮疾患の確実な予防が可能です。
去勢によって予防できる病気
精巣摘出によって、精巣腫瘍などの精巣疾患の予防が可能です。
また、性ホルモンによる前立腺疾患の発生率を下げることができます。
避妊/去勢手術の推奨時期は?
性成熟を迎えるのが、オスで生後約6〜10ヵ月、メスで生後約6〜12ヵ月とされています。よって手術はオスで生後6〜10ヵ月程度、メスで生後6〜8ヵ月程度が望ましいでしょう。
成長には個体差があるので、体重の増加具合などを見ながら、かかりつけの獣医師と相談しましょう。
避妊/去勢の手術について
手術は全身麻酔が必須です。健康な個体でしたら麻酔のリスクは少ないですが、それでも事故が起きる可能性があることは理解しておきましょう。
避妊手術に関しては、動物病院によっては腹腔鏡での手術が可能です。傷口が小さくなるメリットがあるので検討してみてはいかがでしょうか。また、マイクロチップを挿入するなら、麻酔をかけるこの機会に同時に行うことをオススメします。
マイクロチップに関する記事はこちらの記事をご覧ください。
避妊/去勢手術後の注意点
手術の後にはいくつか注意すべきことがあります。生活習慣の変更もあるので、手術前にしっかり確認しておきましょう。
肥満になりやすくなる
発情にかかるエネルギーが無くなり、代謝が落ちるために太りやすくなります。肥満は糖尿病を始めとする多くの疾患のリスク因子です。
また猫の場合、高い所に飛び上がれなくなるなど、運動量の低下によって肥満が助長されるといったループに陥る可能性があります。
手術をした後は、カロリーを抑えた避妊・去勢後用のフードに変更しましょう。
尿石症のリスクが上がる
腎臓や膀胱内で結石が形成され、泌尿器症状を呈するものを尿石症といいます。
特にオス猫では形成された結石が尿道に閉塞する可能性が高いです。さらに避妊・去勢によって内臓脂肪が付きやすい体質になっていると、脂肪で尿道が圧迫されて狭くなり、尿道閉塞のリスクがより高くなります。
避妊・去勢後用のフードには結石ができにくくなる成分が入っているため、肥満防止と同様にフードを変更しましょう。
まとめ
避妊・去勢手術にはメリットが多くありますが、一方で注意しなければならない点もあり、そう簡単に決められるものではありません。
手術をすることによる負担はもちろんありますが、手術をしないことでかかりやすくなる病気もあり、どちらを選択するかは最終的に飼い主が決めることになります。
しかし、野放図に猫が繁殖している今の状況には、問題を感じてほしいところではあります。もし、あなたの愛猫が妊娠・出産をしたとしたら、責任をもって新しく生まれた命の全てを守りきれますか?
愛する猫にとって何が最善なのか、家族とよく検討してみてください。
猫のお散歩って実際どうなの?やり方や効果などを紹介!
最近、猫を散歩させている姿を見る機会が以前よりも増えたように思います。
猫ちゃんが飼い主さんと一緒に歩く姿を見ると、「うちの猫とお散歩したい!」と思う方もいるのではないでしょうか。
そんな方々のために、今日は猫の散歩について詳しく紹介していこうと思います。「本当に犬と同じように猫を散歩させることができるの?」などの疑問が解決されること、間違いなしです。
おうちの猫ちゃんを散歩させてみたい!と思ったら、ぜひ参考にしてみてくださいね。
猫の散歩のメリット
ストレス解消
本来活発に運動している種類の猫や、おうちの猫が窓の外に興味を示していたりするときは、外の空気に触れさせてあげることがストレス発散になる場合があります。
猫も本来野生の生き物なので、外の風にあたったり、景色を眺めたり、お外で日向ぼっこをしたりすることが元々の暮らしに近いと言えます。
運動不足解消
少しぽっちゃり気味の猫や、運動不足の猫、本来多くの運動量を必要とする猫をずっと室内で飼っている場合は、猫にとって少し不健康的な生活となってしまっている可能性があります。
このような場合は、猫の健康のために試しに散歩させてみるのも良いかもしれません。
猫の散歩のデメリット
ノミやダニ、病気のリスク
猫を外に連れ出すことのリスクは、脱走や迷子だけではありません。
猫を外に連れ出すことにより、ノミやダニ、病気に感染するリスクが一気に高まってしまいます。
特にノミの感染率は高く、家と外を行き来する猫は、ノミの感染が100%であると言っても過言ではありません。
ノミやダニに感染し、かゆみなどの症状を訴える場合は、なるべく早めに動物病院に連れて行ってあげましょう。また、事前に獣医師に相談し、予防策を講じることも良いでしょう。
ストレスになることも
猫の散歩のメリットとして「ストレス解消になる」と書きましたが、飼い猫の性格によってはかえってストレスになることがあります。
警戒心の強い猫や繊細な猫、長い間ずっと室内で暮らしてきた猫は、外に連れ出すことが大きな負担となることがあります。これは、縄張り意識が強い半面、自分が守ることができる縄張りの範囲が狭いため、その範囲から外に出たくない性格を持っていることによります。
お散歩の準備
お外は生後3ヶ月を超えてから
生後三ヶ月以内の猫は外に散歩に出さないほうがいいでしょう。子猫の場合、生後しばらくは親にぴったりと寄り添って過ごします。
この期間の運動不足や室内飼いによるストレスは気にする必要はありません。また、幼い頃に外に出して病気をもらってしまうと、重体になってしまう危険性が高いです。
ワクチンと予防をしっかり
前述の通り、猫のお散歩には危険がいっぱいです。予防と準備は入念に行うようにしましょう。
猫の3種ワクチン(猫ヘルペスウィルス、猫カリスウィルス、猫パルボウィルス)に加え、ノミ、ダニ、フィラリアの予防もしっかり行いましょう。また、咬傷時に感染する猫白血病ウィルスのワクチンについても、かかりつけの動物病院で相談してください。
リードではなくハーネスを使用
猫のお散歩のために買うのは首に巻くリードではなく、腕を通すハーネスにしましょう。
猫の頭はとても小さいので、リードだときつく締めたと思っていても、するっと抜けてしまう場合があります。
また、安易に通販などで買ってしまうのではなく、ペット用品の専門店などに行って、スタッフと相談して実際に猫の体格と見比べながら選ぶことをオススメします。
デザインや色に関しても、うっかり手を離してしまったときにすぐに見つかるように、蛍光色等の派手なものが望ましいです。
外に慣れよう
まずはハーネスから
外に出る前に、まずハーネスに慣れてもらう必要があります。
食事の前に装着する習慣をつけて、つけた直後はおもちゃで遊ぶなどをして、なるべくハーネスの違和感を感じないようにすると慣れてもらいやすいです。
最初の一歩
まずは窓を開けて、外の空気に触れさせてあげるのが良いでしょう。嫌がるそぶりを見せなかったら、ベランダに連れ出してみたり、抱っこして外を歩いてみたりすることから始めます。
このとき、過度に怯えたり怖がったりするそぶりを見せたときは、すぐに諦めて室内に戻りましょう。
外に出よう!
近場でゆっくり
前述した通り、縄張り範囲の狭い猫は、外出すること自体がストレスになる可能性があります。最初のうちはむやみに遠出や長時間の散歩をしないようにします。
家の周り等、近場をウロウロしたりするぐらいがちょうど良いです。
また、いきなり人の多い公園などに連れて行くのはやめましょう。車や人、他の動物などのいない場所で慣れることから始めると良いです。
疲れたら即帰宅
猫が疲れた様子を見せたり、怯えた様子を見せたりしたときはすぐに帰るようにしましょう。
猫のストレス解消のためにお散歩させているのに、逆にストレスを溜めるようなことになってしまっては本末転倒です。
最後に
猫のお散歩に関しては獣医師の間でも賛否両論があるようです。
おうちの猫は外の環境に適しているかを判断し、入念に準備を行ったうえで様子を見つつお散歩させてあげるのがいいでしょう。
猫を室外飼いすることは危険がいっぱい!?
猫を飼っていれば、1度は「外に出してあげようかな・・・」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか。中には、昼間は外に出してあげて、夜はお家で室内飼いという方もいるかもしれません。
しかし、猫ちゃんを外に出すことには、大きな危険が伴うということを、ご存知でしょうか?ここでは、猫を室外に出すことのデメリット5つをまとめました。
飼い主さんの知らないところで・・・
1. 交通事故に関わっているかも。
自動車を運転したことのある方は思い当たる節があると思いますが、野良猫や放し飼いされている猫は、突然走行中の車の前を横切ります。本当に突然。
ですから、自動車に轢かれてしまう場合があることはもちろん、それを避けようとした自動車やバイクが事故を起こし、通行人までも巻き添えにしてしまうかもしれません。猫と人間、両方の命を脅かしてしまうのです。
また室内飼いと屋外飼いで、猫の寿命が2年も違うという結果が出ています。
(「一般社団法人 ペットフード協会」の平成28年(2016年)全国犬猫飼育実態調査 より引用)
- 室内飼いで平均15.81歳
- 屋外飼いで平均13.26歳
他の調査でも、「室内飼いで平均15歳、屋外飼いで平均7歳という、倍近くも寿命が違う」と言われていたりもします。
この数値は事故による死亡も含まれています。室内で飼った方が、2倍長く生きることができるのです。
2. 怪我・感染症の危険
猫を外に出すと、他の猫とのコミュニケーションが増えるため、喧嘩をして怪我をしてしまうことがあります。猫の怪我は皮膚の性質上、収縮してしまって発見が遅れることがあります。また、皮膚内部で化膿してしまうことも少なくないようです。
加えて、エイズなどの感染症にかかることもあります。猫のエイズは、咬まれるだけで猫同士の感染が起こってしまいます。
3. ノミ・ダニなどの危険
猫を外に出せば、泥などで汚れてしまうことはもちろん、ノミやダニなどをもらってくることもあります。もらってきたノミがカーペットで増殖してしまうこともあるかもしれません。
4. 野良猫と交配してしまうと大変
野良猫と交配することで、野良猫を増やしてしまったり、メス猫だと妊娠してしまうことがあります。発情期の妊娠率は90%を超えます。
動物愛護管理法の第37条では「犬及び猫の所有者の繁殖制限の責務」が定められていて、猫がみだりに繁殖して生活環境の被害が生じないようにしています。人間の手に負えないほど繁殖すると、周りの人々の生活環境の脅威となりうるのです。
5. 近所迷惑になってるかも。
猫に関する苦情では、特に次のようなものが挙げられます。
- 被毛を飛散
- 近所の庭や玄関で排泄行為
- 発情期の鳴き声
「最近、ご近所さんから冷たい目線を感じる…何でだろう…。」と思ったら、猫ちゃんが原因かもしれないですね。
でも狭いところにずっといるなんてかわいそう!
実は、そんなことないのです。
猫は縄張り意識の強い動物で、縄張りをパトロールできないことが何よりもストレス。一度外に出てしまうと、縄張り範囲が広がり、むしろストレスになってしまいます。家の中の小さなテリトリーで暮らし続けることは決して猫にとってストレスではありません。
猫が外を眺めることから考える、猫の縄張り意識についての記事もあります。併せてぜひ読んでみてください。
それでも屋外で飼うなら
避妊・去勢手術を行い、近所の人ともよく話し合うことをオススメします。また、首輪やマイクロチップなど身元がきちんとわかるようにしておくと安心ですね。
猫のためにも、私たちのためにも、室内で。
屋外で飼うことは室内で飼うより様々な面でのリスクが大きいので、室内で飼うことをオススメします。
猫ちゃんのために、室内で飼ってみてはいかがでしょうか?