台風が怖い!愛犬の恐怖心を和らげる方法と事前の対策とは
台風は毎年多くの被害をもたらすため、台風の予報が出るたびに不安を覚える方もいらっしゃるでしょう。犬にとっても台風は危険で、強烈な風雨や雷を怖がる犬も少なくありません。
そこで、この記事では犬が台風を怖がる時の対処法や、台風の前後で気をつけたいこと、事前にできる対策などをご紹介します。
なぜ犬は台風を怖がるのか
動物は自己防衛のため、生命に危険を及ぼす対象を回避する本能があります。人間も犬も、雷に打たれたり、強風で飛ばされてきた物によって、命を失う可能性があります。そのため、雷や風が怖いと感じるのは、多くの動物にとって自然な反応です。
特に犬の場合は優れた聴覚により、人間が気づかないような遠くの雷の音や、悪天候での聞き慣れない音に不安を感じることがあります。また、犬は社会性の高い動物であるため、飼い主や家族が台風の影響で不安を感じていると、それに影響されやすくなります。
台風予報が出たらすべきこと
天気予報でお住まいの地域に台風が接近しそうな場合は、次の対策を取りましょう。
外飼いの犬は室内へ
頑丈な犬舎で飼っている場合は別ですが、一般的に犬小屋と呼ばれる場所を寝床にしているような犬の場合は、台風の間だけでも室内で過ごさせることをおすすめします。いくら犬小屋があっても台風による激しい風雨を防ぐことは難しく、小屋の倒壊や浸水、強風で物が飛ばされてくるなど、多くの危険があります。
犬が台風を怖がっている時の行動
犬が台風を怖がっている場合は、次のような行動を取ります。
- 震える
- ハァハァと荒い呼吸をする
- 尻尾を足に巻き込む
- 飼い主の後ろをついてくる
- 飼い主に抱っこを要求する
- カーペットやトイレシーツを掘る
- ソファやベッドの下に隠れる
- 窓のない脱衣所や浴室などに避難する
適切な対策をとり、恐怖心を和らげてあげましょう。
犬が台風を怖がっている時の対処法
犬が台風を怖がっている様子を見せたら、次のような方法で不安を軽減させてあげましょう。なお、この対処法は花火を怖がる犬の場合にも応用できます。
1.窓とカーテンを閉める
犬が怖がる要因となる、光る稲妻、大きな雷鳴や風雨の音を、なるべく遮ってあげましょう。
2.テレビや音楽の音を流す
犬が雷や風の音を怖がっている場合は、それらが聞こえにくくなるような音を流して、気を紛らわせると効果的です。
3.タオルなどで包んでホールドする
犬には、ホールドされると気持ちが落ち着く習性があります。普段の抱っことは少々違い、タオルなどに包んで全体的に均等に、軽く圧力をかけるように抱くと落ち着くことがあります。
洋服を着慣れている子は、少しキツめの洋服を着せると同様の効果が得られる場合もあります。また、「サンダーシャツ」と呼ばれる、特に雷に対して恐怖を感じる犬に向けた商品もあり、犬によって反応は異なりますが、一定の効果はあるようです。
4.クレート慣れしている犬はクレートへ
怖がりの犬の中には、怖くてもクレートの中なら安心できる子もいます。ただし、不安な時は思考が安定しておらず、一旦クレートに入ってみたけれど、やはり飼い主の側がいいなどと犬が思い直すこともあるため、クレートの扉は開けっ放しにしておきましょう。
5.脱走しないように十分な注意を
台風の音や雷による恐怖で犬がパニックに陥ると、脱走してしまう可能性があります。パニック状態で外に逃げ出すと、捕まえることが難しくなりますので、屋外に繋がるドアの開閉には十分に注意しましょう。
台風が過ぎ去った後も注意したいこと
台風が過ぎ去った後、特に散歩の時には次のようなことに注意しましょう。
散乱した危険物
大きな台風の後は、風で様々な物が飛ばされ、散乱している場合があります。その中には、踏むとケガをするような危険な物も含まれている可能性がありますので、十分注意しましょう。
台風の後の水たまり
台風や洪水の後にできる「水たまり」は、人獣共通感染症の「レプトスピラ症」の感染源になりやすい場所です。レプトスピラ症はネズミなどの尿に汚染された水や土壌に接触することで、口や皮膚の小さな傷から感染します。
レプトスピラ症をワクチンで予防する方法もありますが、レプトスピラには多数の血清型があり、ワクチンで予防できるものは限られてしまいます。そのため、水たまりや台風により崩れた土壌、川などの感染リスクが高い場所には近づかないように注意しましょう。
事前の対策で台風に備えよう
事前に対策を取ることで、愛犬の恐怖心を少しでも減らしてあげましょう。
音に慣れさせるトレーニング
恐怖の対象となる音に対する犬の反応を徐々に減らしていく方法があります。動画サイトやCDなどで暴風や雷の音の音源を用意し、小さな音で再生し、徐々にボリュームを上げていきます。犬が怖がらない程度の大きさで、少しずつ音を大きくしていくのがポイントです。これは「系統的脱感作」と呼ばれるトレーニング方法です。
さらに、音がしている間におやつやおもちゃを与えることで、トレーニングの効果を高められます。これは、犬が怖い音(不快)を聞いている時に、おやつ(快)を与えることで、音に対する不快感を和らげる効果がある方法です。「拮抗条件付」と呼ばれるトレーニング方法です。
※音に慣れさせるトレーニングについては、こちらの記事もご覧ください
愛犬が怯えないために対策を。生活音や環境音の音源集9選
https://cheriee.jp/dogs/20273/
恐怖心が強い場合は獣医師に相談を
次のような行動を取るようであれば、恐怖に対する反応が強いと言えるでしょう。
- ヨダレを垂らす、泡をふく
- 聞き慣れた生活音にも過剰に反応する
- 破壊行動に出る
- 自傷行為をする
- 家族に対し、攻撃的になる
- 失禁する
このような行動が見られる場合、医学的な緩和ケアが必要になります。かかりつけの獣医師に相談しましょう。
まとめ
台風が来た時、幼少時の社会化や生まれながらの性質により平然としている犬もいますが、台風は犬にとって生命の危機を本能的に感じる対象ですので、怖がる犬も少なくないでしょう。
正しい対処法を講じることで、少しでも恐怖心を和らげてあげたいものです。愛犬のためにも事前のトレーニングや対処法を知ることは非常に大切ですね。
大雨・洪水後の犬の散歩に要注意!ヒトにも感染するレプトスピラ症とは
近年、異常気象によって、豪雨による被害が深刻化しています。
大雨による洪水被害や浸水被害も怖いですが、大雨・洪水の後に危険性が高まる、「レプトスピラ症」という感染症をご存知でしょうか。
レプトスピラ症は犬にもヒトにも感染し、最悪の場合、死に至ることもある怖い感染症です。
今回の記事では、そんなレプトスピラ症が大雨・洪水の後に危険性を増す理由や、主な症状、予防方法についてご紹介します。
レプトスピラ症の感染状況
レプトスピラ症とは、「レプトスピラ菌」という細菌によって感染する感染症です。犬だけでなく、ヒトにも感染する「人獣共通感染症(ズーノーシス)」として知られています。
全世界で感染が確認されていますが、とくに熱帯・亜熱帯地域に多い傾向にあります。
ヒトのレプトスピラ症の感染状況
日本では、1970年代前半までは年間で50人以上がレプトスピラ症によって死亡していましたが、近年は衛生環境の向上によって感染例は減少しています。
しかし、狂犬病のように感染例が全くなくなったわけではなく、2007年~2016年の間の国内感染例が258例と、毎年15~42例ほど報告されています。水辺でのレジャーや農作業、ネズミとの接触での感染が多く、沖縄県での感染例が半分以上を占めています。
参考資料
国立感染症研究所「レプトスピラ症 2007年1月~2016年4月」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/leptospirosis-m/leptospirosis-iasrtpc/6518-436t.html
犬のレプトスピラ症の感染状況
日本国内で報告されている犬のレプトスピラ症の発生状況は、平成30年で22頭、令和元年で26頭です。
ただ、診断が下りる前に死亡した例など、実際には報告数よりも感染頭数は多いのではないかと考えられます。
参考資料
農林水産省「監視伝染病発生年報」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/kansi_densen/attach/pdf/kansi_densen-165.pdf
大雨・洪水後は特に注意!
レプトスピラの感染経路
レプトスピラは、ネズミなどのげっ歯類が保菌していることが多く、尿から細菌が排出されると、土壌や水などの環境を汚染します。
保菌動物や汚染された土壌、水と接触した際に、体内に細菌が侵入することで感染します。
湿気の多い環境を好む細菌
レプトスピラは、湿気の多い環境を好みます。そのため、ネズミなどの尿で汚染された下水、池、水田、河川、泥などには注意が必要です。
また、暖かくて雨量の多い夏から初秋にかけての季節に感染が増える傾向にあります。
特に大雨や洪水の後は水や土壌が汚染されていることが多く、ネズミと接触する機会も増えるため、レプトスピラへの感染の危険性がより高くなります。
都会でも油断はできない!
都会に住んでいる方は、「身近に水田や池はないから自分には関係ない」と思うかもしれません。実際、ヒトの場合は、稲作や畜産業にかかわる人に感染例が多いのは事実です。
しかし、最近では都心でもネズミが増えており、特に水害が起こった後にレプトスピラ症が地域単位で流行する可能性があります。
犬の場合は、都会であっても散歩中に河川や側溝に近づいてしまうことがあるため、飼い主さんが注意してあげなければなりません。
レプトスピラ症の症状
レプトスピラに感染しても、すべての犬がレプトスピラ症を発症するわけではありません。
しかし、発症すると、特に肝臓や腎臓に症状が現れ、最悪の場合は数時間で死に至ることもある危険な感染症です。
レプトスピラ症の症状を、4つのレベルごとに簡単に見ていきましょう。
レベル1.慢性
多飲多尿、腹水など進行性の肝不全。
症状は緩やかで、長期間にわたり継続する。
レベル2. 亜急性
腎炎による急激な腎不全。進行は比較的緩やか。
急性の肝不全や腎不全、またはその両方が認められる。突然発症して早く進行し、死亡率は高い。
レベル3. 急性
嘔吐、脱水、脱力、呼吸困難、口腔内の粘膜の壊死など。
急性の肝不全や腎不全、またはその両方が認められる。突然発症して早く進行し、死亡率は高い。
レベル4. 甚急性
発熱、震え、脱力、口腔内の粘膜の出血。鼻出血、黒いタール便などが見られることも。
肝不全や腎不全が現れる前に、数時間から数日で死に至る。
レプトスピラ症の予防方法
ワクチン接種
混合ワクチンであれば、7種以上のものでレプトスピラが含まれています。「5種混合ワクチンしか打ってないけど、犬と一緒にキャンプに出かけたい」などというときには、レプトスピラ症のみ予防できるワクチンを追加接種しましょう。
ただし、レプトスピラには多くの血清型が存在していますが、ワクチンに含まれている血清以外は感染を防ぐことができません。
実際、2017年に大阪で犬のレプトスピラ症が集団発生したときには、死亡した9頭の犬のうち、6頭はレプトスピラワクチンを接種していました。
大雨・洪水後の散歩に注意!
大雨や洪水の後は、汚染された土壌や水に接触する危険性が多いので、散歩をする際には、なるべく水や泥が溜まっているところに近づかないようにしましょう。
また、特にレプトスピラ症が発生した地域では、公園やドッグランなどで他の犬と接触することも避けましょう。
まとめ
今回は、レプトスピラ症の感染経路や症状、予防方法をご紹介しました。
レプトスピラ症は、保菌動物の尿で汚染された水や泥を介して感染するため、大雨や洪水の後など、環境が汚染されやすい期間には特に注意が必要です。
ワクチンだけで完全に予防をすることはできないので、特に大雨の後に犬の散歩をする際は、なるべく汚い水や泥のあるところには近寄らせないようにしましょう。