世界最古の猫「マヌルネコ」とは?イエネコとの違いを解説!

最近、SNSやテレビなどで話題になっている「マヌルネコ」という動物を知っていますか?見た目はイエネコそっくりで、とてもかわいらしい姿をしています。

あまりにかわいい姿なので「飼ってみたい!」と考える人もいるでしょう。しかし、マヌルネコを飼うことはできるのでしょうか?

この記事では、マヌルネコとはどんな動物なのか、イエネコとの違い、ペットにできるかについて解説していきます。

マヌルネコのプロフィール

マヌルネコは、モンゴルやチベットなどの岩山や高地に生息しているネコ科の動物で、モンゴル語で「小さな野生ネコ」という意味があります。

かつてはペルシャ猫の原種と考えられていましたが、イエネコに含まれるスナドリネコなどよりも以前に分岐したことがわかりました。1500万年前から生きていたとされ、「世界最古の猫」とも呼ばれています。

マヌルネコは夜行性で、ハタネズミ、ハツカネズミなどの小さなげっ歯類やナキウサギなどの小型哺乳類、鳥類などを捕食します。

マヌルネコの見た目の特徴

体長は45~60cm、体重は2.5~3.5kgで、イエネコより少し大きく、がっしりとした体型です。

被毛は黄色みを帯びた灰色で、背中後方、尻尾、顔の頬に縞模様が見られます。フサフサな毛が密集しているのもあり、全体的に丸く太っているように見えますが、顔つきは凛々しく、そのギャップも魅力的です。

イエネコとの違いは?


一見するとイエネコにそっくりなマヌルネコですが、明らかに違う点もいくつかあります。それぞれ見ていきましょう。

イエネコとの違い①瞳の形

決定的な違いは瞳の形です。イエネコは明るいところでは瞳が縦に細長く収縮しますが、マヌルネコの場合は丸いまま収縮します。

イエネコとの違い②耳の位置

イエネコと比べると耳が少し横にあります。これは、岩陰に隠れた時に耳が目立たず、敵や獲物に見つからないようになったとされています。

イエネコとの違い③体つき

マヌルネコの体は、イエネコよりもずんぐりとしており、四肢も太く丈夫です。
また、モンゴルやロシアなどの厳しい冬の寒さを乗り切るために、長く厚い被毛をもちます。

イエネコとの違い④鳴き声

甘えたようなかわいらしい「にゃーん」ではなく、マヌルネコは少しイカつい感じで鳴きます。

ペットにできるの?

結論からお伝えすると、マヌルネコはペットとして飼育することはできません

マヌルネコは国際自然保護連合(IUCN)によるレッドリストの「低懸念」に指定されています。2019年までは準絶滅危惧種に指定されていましたが、大規模な調査により約58,000頭が野生に生息していることがわかり、ランクが一つ下がりました。

しかし、これは調査が進んだことにより「思っていたよりは個体数がいた」だけで、絶滅の危険性がなくなったわけではありません。いまだに多くのマヌルネコが、生息地の開発が進んだことによりすみかを奪われたり、毛皮を目的とした狩猟が行われたりしています。

また、ワシントン条約付属書Ⅱに掲載されており、マヌルネコを国際取引を規制しないと絶滅の恐れがある種として指定し、輸出を制限しています。

日本の動物園で会える!


そんな希少な動物であるマヌルネコですが、2021年10月現在、日本の動物園7園で16頭が飼育されています。もしこの記事でマヌルネコに興味をもったら、ぜひ動物園へ見に行ってみてください。

  • 旭山動物園(北海道)
  • 那須どうぶつ王国(栃木県)
  • 埼玉県こども動物自然公園(埼玉県)
  • 上野動物園(東京都)
  • 東山動植物園(愛知県)
  • 王子動物園(兵庫県)
  • 神戸どうぶつ王国(兵庫県)

マヌルネコは、国内の動物園で繁殖が試みられており、近親交配を避けるために、ブリーディングローンが積極的に行われています。

ブリーディングローンとは
動物園や水族館同士が、繁殖のために飼育動物を無償で貸し借りすることをブリーディングローンといい、国内の動物園における種の維持を目的にしています。

海外から動物を連れてくる場合、希少な種はもちろん、数がたくさんいる動物も検疫上の規制金銭的な課題が多かったり、そもそも日本への移動を禁止されている種もいます。日本からいなくなってしまうと二度と国内では見られない動物も出てくることから、動物園同士がお互い協力しあって種を維持しています。

なお、先に述べたように、マヌルネコは免疫力が低く、子どもが生まれても感染症にかかってしまうと死亡してしまうケースも珍しいことではありません。出産しても、すべての子が無事に大人になれるわけではないため、飼育員さんも緊張感をもって慎重に接しているそうです。

『マヌルネコのうた』が人気

2021年の「国際マヌルネコの日(4月23日)」に合わせて、那須どうぶつ王国が『マヌルネコのうた』という曲をYouTubeにアップしました。リズミカルな曲調に合わせて、動画を交えながらマヌルネコについて紹介しています。

最近こそメディアへの露出も増え、じわじわとファンを増やしてきているマヌルネコですが、他の動物と比べると知名度はまだ低いのが現状です。まずは知名度を高め、マヌルネコの現状を知ってもらうことが大切だと考え、各動物園は積極的に普及活動をしています。

まとめ

猫,マヌルネコ,イエネコ,動物園,レッドリスト,ワシントン条約
マヌルネコは、私たちが普段近くで接しているイエネコによく似た姿形をしていますが、ペットとして飼うことはできません。私たちが飼いたいと願えば、お金儲けのために密漁や密輸が横行し、種の絶滅に繋がります。

この記事を読んでマヌルネコに興味を持ったら、ぜひ動物園に足を運び、マヌルネコのかわいさや野性味溢れる姿を見てみてください。猫を飼っている方はぜひ愛猫と比べてみても楽しいかもしれませんね。

国際取引が禁止されたコツメカワウソ。かわいいからと何でも飼うのは格好良くない!!

そのかわいらしい見た目からペットとして人気が高まっているカワウソ。このたび、ワシントン条約の締約国会議にて、コツメカワウソとビロードカワウソは国際取引を禁止する「附属書Ⅰ」に記載されることが決定されました。

カワウソの密輸問題、ワシントン条約・附属書とは何なのか、これまでと何がどのように変わるのかについてお伝えしたいと思います。

コツメカワウソの密輸問題


テレビ番組やSNSで話題となり一気に注目を集めたコツメカワウソ。しかし、日本でのコツメカワウソブームは、一部の国から「密輸を助長している」として非難を受けています。

2017年だけでも32匹のコツメカワウソがタイから日本に向けた密輸が発覚、押収されており、カワウソの運び屋として女子大生が逮捕された事件も記憶に新しいです。

参考:追跡!カワウソ密輸事件 黒幕は誰だ?(クローズアップ現代)

種の存続の危機

通常カワウソは親子で暮らしていますが、カワウソの子を捕獲する際、かまれたり引っかかれたりしないよう、まず親を殺してから安全にカワウソの子どもを確保するそうです。

もともとカワウソの生息地である水辺が開発により徐々に減少している上に、親は殺され、子どもは密輸されている現状から、種の存続が危ぶまれています。

劣悪な環境下での輸送

捕まえられたカワウソの子どもたちは、スーツケースに入れられ、温度も管理されない機内で数時間過ごして運ばれます。

過酷な環境で半数以上のカワウソは死んでしまうそうですが、それでもなお密輸が無くならないのは、日本でのカワウソの市場価格が高騰しており、十分な利益が出るからです。

ワシントン条約とは?


ワシントン条約とは、正式名称を「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引における条約」といい、国際取引によって生存を脅かされている野生動植物の保護を目的とする条約です。1973年にアメリカのワシントンで採択されたことからこう呼ばれています。

附属書とは

ワシントン条約では、国際取引の規制対象となる動植物を「附属書」に掲載し、レベルによって規制の内容が定められています。

附属書 規制の内容と代表種 掲載種数
附属書Ⅰ 商業目的の国際取引が禁止。
※絶滅のおそれがある生きもので、取引による影響を受けているもの
ジャイアントパンダやウミガメ、トラ、ゴリラ、ヨウム、センザンコウなど
およそ1,000種
附属書Ⅱ 商業目的の取引は可能。ただし、その取引が種にとって有害でないことを輸出国が証明し、許可することが条件。
※取引を制限しないと、将来絶滅の危険性が高くなるおそれがある生きもの
マホガニーやサメ類、ライオン、タツノオトシゴ、サボテン、ラン、ローズウッドなど
およそ34,600種
附属書Ⅲ 指定国の輸出許可書、指定国以外の場合は原産地証明書(指定国ではないことを証明)が必要。
※その動植物が生息する国が、保全のために国際的な協力を求めているもの
※附属書Ⅲのみ、締約国会議での採択は必要とされず、指定国が条約事務局に通知することで掲載が可能
セイウチ(カナダ)、宝石サンゴ(中国)など
およそ200種

出典:経済産業省ワシントン条約について(条約全文、付属書、締約国など)

今回の会議で引き上げ対象となったカワウソは以下の二種です。

  • ビロードカワウソ
  • コツメカワウソ

これまでは両者とも輸出国が許可すれば商業目的の取引が可能な「附属書Ⅱ」に掲載されていましたが、今回の会議で「附属書Ⅰ」に引き上げられました。

これから何が変わるの?


ワシントン条約で規制が強くなっても、あくまで国と国との間で行われる国際取引のみが対象です。そのため、国内に規制対象の動物が入ってきてしまった場合に取り締まる術がありません。

そこで関わってくるのが「種の保存法」と呼ばれる法律です。

種の保存法

1992年に環境省が「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)を制定しました。この法則では、日本国内でのワシントン条約の附属書Ⅰに掲載されている種の売買、移動、売買目的の展示を原則禁じています。

規制内容

種の保存法で規制されているのは以下の通りです。

(1)譲渡しなどの禁止
「あげる・売る・貸す/もらう・買う・借りる」などの取引のことで、有償・無償を問わず、原則として禁止されています。
(2)販売・頒布(はんぷ)を目的とした陳列・広告の禁止
店頭などでの販売や頒布目的の「陳列」も原則禁止です。実物を伴わない写真掲載については、新聞・雑誌・チラシなどの紙媒体やインターネットなどへの掲載も「広告」として規制対象に加えられています。
(3)捕獲などの禁止(国内希少野生動植物種のみ)
生きている個体の捕獲・採取・殺傷・損傷が原則禁止ですが、学術研究・繁殖・教育・個体の生息(生育)状況の調査目的に限り環境大臣の許可によって可能です。

つまり、すでに国内にいる個体やその子どもであっても売買や譲渡をする際に国への登録が必要となり、ペットとして流通することはなくなるでしょう。一方で、現在飼育していて所有者が変わらない場合は、特に手続きなどは不要です。

違反したらどうなるの?

種の保存法に違反した場合、以下の懲役もしくは罰金が科せられます。

個人の罰金 法人の罰金
違法な譲渡・捕獲・輸出入 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金 1億円以下の罰金
違法な広告・陳列 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金 2,000万円以下の罰金

出典:希少な野生生物を守る「種の保存法」(政府広報オンライン)

私たちにできること


ワシントン条約で規制されている動物は、カワウソに限らず年々増加しています。それは、私たち人間が関与したことにより個体数が脅かされ、多くの動物が絶滅の危機に瀕していることを意味します。

知能や技術を持った人間が率先して種の存続を考えなければいけない立場であるのに、「金儲け」のために安易に動物の命を奪うことが許されていいはずがありません。もしかしたら、私たちも知らないうちに犯罪の片棒を担いでしまっていることもあるかもしれません。そうならないためにも、最低限の法律の知識は押さえておく必要があります。

また、「かわいいから」と安易にペットを飼うのではなく、ルートの怪しい業者から購入しない、不審に思ったら公的な機関に問い合わせるなどして、意図せず犯罪に巻き込まれないよう注意しましょう。