【獣医師監修】愛犬の多飲多尿が気になる?考えられる病気とは
愛犬が普段よりよく水を飲む、普段より尿量が多いなどの経験をしたことがありますか?確かに、暑い日や、その日の体調によっては飲水量が増えることはあるかもしれません。
しかし、それが何日も続く、その他の体調異常などが見られた場合は、何らかの疾患が隠れている可能性があります。
今回は、犬の多飲多尿について獣医師が詳しく解説していきます。
多飲多尿を甘く見ないで!
いつもより飲水量が多かったり、尿量が多かったりする場合、少し様子を見ようかなと考えることが多いでしょう。しかし、場合によっては深刻な疾患を抱えていることがあります。
考えられる代表的な疾患は以下の通りです。
内分泌疾患
- 尿崩症
- 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
- 糖尿病
- 上皮小体機能亢進症
内臓疾患
- 腎疾患
- 子宮蓄膿症
- 高カルシウム血症
- 心因性多飲
それぞれどんな病気なのか、詳しくみていきましょう。
多飲多尿で考えられる内分泌疾患
多飲多尿が起こる原因として一般的なのは、内分泌疾患です。
内分泌とは、種々のホルモンが関与する体内の維持機構のことです。まずは、犬で度々見られる内分泌疾患を紹介します。
尿崩症
【症状】
著しい多尿と多飲、夜尿症、失禁。場合によっては意識混濁、運動失調、視力障害などが起こることもある。
【原因】
視床下部や下垂体の障害によるバソプレシンというホルモンの分泌障害、あるいは腎障害や遺伝性によるバソプレシン受容体の異常による。バソプレシンは腎臓での水の再吸収を促進するはたらきがあるため、バソプレシン不足になると必要以上に水分が尿として排泄されてしまう。
【備考】
一日の飲水量の把握、複数回の尿検査、水制限試験など複数の検査を用いて診断を行う。
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
【症状】
多飲多尿、食欲亢進、皮膚症状(薄い皮膚、脱毛、色素沈着、皮下出血など)、腹部膨満など。
【原因】
下垂体依存性(80〜85%)と副腎腫瘍性(15〜20%)に分類される。前者は脳下垂体の腫瘍(多くは良性)に、後者は副腎皮質の腫瘍に起因する。
【備考】
下垂体腫瘍の場合、神経症状(徘徊、夜鳴き、壁に頭部を押し付ける動作)が見られることがある。
糖尿病
【症状】
初期には多飲多尿、多食、体重減少。進行してケトアシドーシスを併発すると元気消失、食欲不振、嘔吐、下痢、脱水など。
【原因】
インスリンの不足や欠乏によって高血糖が生じ、様々な代謝異常を引き起こす。膵島萎縮(原因不明)、副腎皮質機能亢進症、発情関連糖尿病、膵炎などが原因として挙げられる。
【備考】
長期の高血糖が持続すると白内障を併発する。
上皮小体機能亢進症
【症状】
食欲不振、元気消失、多飲多尿、嘔吐、便秘、脱水、膀胱結石、顔面過骨症(上顎や下顎で異常な骨の肥厚が起こる)など。
【原因】
上皮小体から分泌されるパラソルモンというホルモンは、骨を分解して生体内のカルシウム濃度を調整している。上皮小体腺腫などによって上皮小体の機能が活発になると高カルシウム血症が引き起こされ、様々な症状を呈する。
【備考】
腎障害によってカルシウムが尿から大量に失われることが続くと、血中のカルシウム濃度を維持するために上皮小体が活性化される。これを「腎性二次性上皮小体機能亢進症」と呼ぶ。
多飲多尿で考えられる他の内臓疾患
内分泌疾患以外にも、多飲多尿が現れる場合があります。具体的には、腎臓の異常などが挙げられますが、意外にも腫瘍疾患でも多飲多尿が見られることがあります。
もし、愛犬に多飲多尿が見られた際には、全身をしっかり検査することが必要かもしれません。
腎疾患
【症状】
多飲多尿、食欲低下、脱水。進行すると消化器症状(嘔吐、下痢、便秘など)、尿毒症、高血圧、代謝性アシドーシス、貧血なども見られる。
【原因】
腎臓の糸球体の異常、腎臓の炎症、尿路閉塞などが原因となる。
【備考】
腎機能は正常時の約1/3にまで減少しないと症状を現さない。
子宮蓄膿症
【症状】
元気消失、食欲不振、嘔吐、多飲多尿、腹部膨満など。外陰部からの持続した膿性滲出物を認めることもある。
【原因】
子宮内膜の嚢胞性増殖および細菌感染(主に大腸菌)による炎症により、子宮腔内に膿性液が貯留する。発情出血開始後1〜2か月の黄体退行期に発症する。
【備考】
外陰部からの排膿が認められない閉鎖性では症状が重篤になりやすい。
高カルシウム血症
【症状】
軽度の高カルシウム血症では無症状。重度となると神経症状(過敏、興奮、震え)、食欲不振、嘔吐、多飲多尿などが見られる。他に原疾患による症状が加わる。
【原因】
上皮小体機能亢進症、悪性腫瘍(リンパ腫、肛門嚢腺癌、多発性骨髄腫など)、ビタミンD中毒、副腎皮質機能低下症など。
【備考】
慢性の高カルシウム血症は腎臓への切開沈着を引き起こし、腎不全の原因となる。
心因性多飲
【症状】
多飲と、それに伴う多尿、低比重尿。
【原因】
原因は不明だが、ストレスに起因していると考えられる。
【備考】
ストレスによる問題行動が出現していることも多い。診断は基本的に他の多飲多尿を呈する疾患の除外によって行う。
まとめ
毎日の飲水量や尿量は、日常的に気にしていないと異常に気付くのが遅れてしまいます。
動物病院での問診でも、これらの項目を聞くことが多いため、愛犬の健康状態は常日頃からチェックしておきましょう。
スコティッシュフォールドってどんな猫?特徴やかかりやすい病気とは
スコティッシュフォールドは前方に折れ曲がった小さな耳が特徴的な猫で、日本でもとても人気の高い猫種です。
おっとりとした性格で飼いやすい猫種とされていますが、実はスコティッシュフォールド特有の好発疾患があり、飼うときには少し注意が必要です。
今回はスコティッシュフォールドについて詳しく紹介します。飼おうか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
スコティッシュフォールドの歴史
「Scottish(スコットランドの)fold(折りたたむ)」という名前の通り、スコットランドが原産の猫で、1960年代に耳の折れた猫をベースに交配を繰り返して生まれた猫種です。
スコティッシュフォールドは、進化の過程で折れ耳を獲得したのではなく、突然変異で生まれた折れ耳の猫を人為的に交配したものであるため、必ずしも折れ耳の遺伝子が発現するとは限りません。
立ち耳のスコティッシュフォールドを、「スコティッシュストレート」と呼ぶこともあるようです。
スコティッシュフォールドの特徴
性格
個体差はありますが、スコティッシュフォールドは、おだやかでのんびりとした性格をしている子が多い猫種です。
人見知りはあまりせず、見知らぬ人にもなつき甘えるほどの人懐っこさも特徴です。子供がいる家庭や、他のペットを飼っている家庭でも飼いやすい猫種でしょう。
ボディタイプ
ボディタイプは「セミコビータイプ」で、丸みを帯びた小柄な胴体や頭部、短い首、先の丸い短い尻尾や手足などの特徴があります。
被毛の特徴
スコティッシュフォールドには、短毛種と長毛種が存在します。一般的には短毛種が多く、長毛種のスコティッシュフォールドは人為的な交配により生み出されたものです。
被毛の色は、レッド、ブルー、ブラックなど様々で、ソリッド(単色)、タビー(縞模様)、キャリコ(三毛)など、柄のバリエーションも豊富です。
肥満に注意!
スコティッシュフォールドは比較的運動量が少なく、おとなしい猫だと言われています。そのため、運動不足や食べ過ぎにより肥満になりやすいのも特徴です。
毎日の遊びで適度に運動をさせたり、適切な食事管理を行うことを心がけましょう。
スコティッシュフォールドのお手入れ
ブラッシング
短毛種の場合は、抜け替わりの時期やシャンプーのタイミングなどを目安にブラッシングを行えば十分でしょう。
長毛種の場合、毛づくろいをした際に飲み込んだ毛が胃や腸で毛玉になる「毛球症」という病気にかかりやすいので、最低でも週に2〜3回、できれば1日に2回ブラッシングをしてあげるのが望ましいです。
耳掃除
折れ耳という特徴を持つスコティッシュフォールドは、耳の中に湿気がたまりやすく「外耳炎」などの疾患にかかりやすいです。
耳の中は定期的にチェックし、湿らせたコットンで優しく拭き取ってあげます。綿棒などで耳の奥までガシガシと掃除してしまうと傷ついてしまうので、表面だけをそっと拭き取りましょう。
スコティッシュフォールドが気をつけたい病気
スコティッシュフォールドは遺伝的な多様性が低く、それに起因する遺伝性の疾患を発症する確率がとても高いことで知られています。
特に以下で紹介する病気には注意が必要です。少しでもおかしいと思ったらすぐに動物病院にかかるようにしましょう。
関節疾患
スコティッシュフォールドは、遺伝的に関節疾患を発症しやすい猫種です。
特に、「骨軟骨異形成症」には要注意。指の骨などの骨格変形が特徴で、痛みが出ると足を引きずるような行動を示します。
また、両後肢を前に投げ出して座る「スコ座り」という特徴的な座り方は、関節にかかる負担を軽減するための姿勢で、関節疾患や肥満の子によく見られます。SNSではかわいいと話題の「#スコ座り」ですが、放置せずにすぐに病院に連れて行きましょう。
内臓疾患
「多発性嚢胞腎」や「肥大型心筋症」など、腎臓や心臓の病気にもかかりやすいため、尿の量の異常、嘔吐や下痢、食欲不振、元気消失などの症状には日頃から注意しましょう。
外耳炎
外耳炎は、外耳(鼓膜より外側)に細菌や真菌などの微生物が異常増殖する疾患で、垂れ耳の猫がかかりやすいとされます。特に、耳が硬い子は要注意です。
先ほど「お手入れ」の章でもお伝えした通り、定期的に優しく耳のお掃除をすることが重要です。
まとめ
今回紹介したスコティッシュフォールドは、生まれてから歴史が浅い純血種です。前述したように、遺伝性の疾患にとてもかかりやすいため、普段からチェックを欠かさず、定期的に健康診断も行いましょう。
猫も犬も、純血種は遺伝性疾患にかかりやすいとされています。そのため、あらかじめこれらの遺伝的疾患の可能性や、どういった病気であるかの予備知識を持っておくことが重要です。
スコティッシュフォールドを飼おうか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。