【獣医師監修】詳しく解説!猫の寄生虫の種類と予防方法

猫が定期的に予防しなければならない疾患のひとつとして、寄生虫病があります。しかし、猫と寄生虫がイマイチ結びつかない方もいるでしょう。

寄生虫の中にはヒトにも感染するものがあり、寄生虫予防は猫の健康を守ると同時に人の健康を守ることにもつながります。

本記事では、猫における寄生虫の予防について詳しく解説していきます。

内部寄生虫の予防

猫にも存在する内部寄生虫の予防は絶対必要

まずは猫の体の中に寄生する寄生虫の予防についてです。

多くは下痢などの消化器症状を呈しますが、子猫の場合は重症化しやすくなります。
これらの寄生虫のなかには感染力が強いものも多く、他の猫から移されたり、逆に他の猫に移したりすることも少なくありません。

薬で予防できる内部寄生虫

猫に感染しやすいいくつかの寄生虫は、薬剤によって予防できます。

猫回虫(人獣共通感染症)

成猫では軽い消化器症状、子猫では重度の下痢や脱水を引き起こす寄生虫です。
糞便からの経口感染の他、母猫から乳汁を介して感染することもあります。

猫鉤虫(人獣共通感染症)

経口感染あるいは経皮感染によって小腸に寄生する寄生虫です。小腸壁に咬みつき、血便や貧血を引き起こします。

猫条虫(人獣共通感染症)

日本での生息数も少なくなく、猫や犬の小腸に寄生する寄生虫です。強く咬みつくため、腸壁穿孔の例も報告されています。

瓜実条虫(人獣共通感染症)

ノミによって媒介される寄生虫です。ほとんど無症状ですが、お尻を痒がることがあり、糞便中に蠢く片節が見られます。

多包条虫(人獣共通感染症)

エキノコックスとも呼ばれます。主にイヌ科の動物に寄生する寄生虫ですが、猫での寄生報告もあります。
ヒトにおいて非常に重要な感染症で、長い潜伏期の後、重度の肝障害を示します。

犬糸状虫

フィラリアとも呼ばれます。蚊によって媒介され、基本的には犬の心臓に寄生する寄生虫ですが、猫での寄生例も無視できません。
薬剤の投与によって犬糸状虫は感染の予防、他の内部寄生虫は駆虫ができます。つまり、犬糸状虫以外の内部寄生虫に対しては、定期的な投薬によって体内に侵入してきた寄生虫をリセットしているのです。
ヒトへの感染は稀ですが、可能性としてはあります。

本当は怖い猫のフィラリア症

ここで、「猫なのに犬糸状虫?」と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。

犬糸状虫は、蚊によって媒介されて犬の心臓に寄生する寄生虫として知られてきましたが、実は近年、猫への犬糸状虫の感染が報告され始めています。

猫のフィラリア症は、犬と比較して、より少数の寄生虫で肺に障害を与えます。地域差もなく、屋内・屋外問わず多くの感染が報告されています。

現在、有効な治療法は確立されていないので、薬でしっかり予防しましょう。

外部寄生虫の予防

猫の外部寄生虫は薬で予防しておきたい
次は、体の表面に寄生する寄生虫についてです。ノミやマダニ、ハジラミなどがこれに当たります。
刺咬によるかゆみの他にも、種々の感染症を媒介することもあるので、予防は重要です。

薬で予防できる外部寄生虫

使用する薬剤によって予防できる寄生虫の種類は異なります。現在使用している薬剤がどんな寄生虫を予防できるか、理解しているでしょうか?

ノミ

実際に動物病院での遭遇率は高い寄生虫です。重度の寄生によって貧血に陥る症例もあります。

マダニ

カサブタができている、と来院される方が多いです。
春先と秋に活動のピークがあり、草むらを探せば簡単に見つけることができる寄生虫です。

ミミヒゼンダニ

外耳道の皮膚表面に寄生し、激しいかゆみを引き起こします。子猫のひどい外耳炎で検出することが多い寄生虫です。

ハジラミ

皮膚の激しいかゆみを引き起こす寄生虫です。

「室内飼いだし、ノミ予防はしなくてもよい?」

ノミには、刺咬によるノミアレルギーの他にも、猫ひっかき病の病原菌を媒介するなどさまざまな害があります。ノミは繁殖力が非常に強い寄生虫で、たった10匹のノミ成虫が30日間で26万匹以上に増殖します

また繁殖に場所を選ばず、カーペットやソファのすき間でひっそりと繁殖しているかもしれません。偶発的にノミの卵を室内に持ち込んでしまったらと考えるとゾッとします。

完全屋内飼育だからといって安心ではありません。

マダニと重症熱性血小板減少症候群

マダニもまたノミと同様、刺咬によるアレルギーの他にさまざまな病気を媒介する寄生虫です。
近年話題になった重症熱性血小板減少症候群(SFTS)も、このマダニによって媒介されます。SFTSは人で死亡例も報告されている疾患で、猫にも同様の症状を示すと考えられています。

SFTSは西日本で多く報告されていますが、ウイルスを保有しているマダニは全国に分布していることがわかっています。マダニは公園などの草むらに生息しているので、いつ室内に入ってきてもおかしくありません。

寄生虫予防薬の種類

寄生虫予防薬の種類にはスポットタイプと投薬タイプの2種類がある

寄生虫の予防薬にはいくつか剤形があります。投薬頻度も月に1回のものから3ヵ月に1回のものまでさまざまです。
自宅の猫に合ったものを選んであげて、ストレスなく予防ができるといいですね。

簡単投与のスポットタイプ

スポットタイプは、首筋に液剤を垂らして投与します。

猫は投薬に苦労することが多く、無理に飲ませようとすると猫との関係が悪化してしまうかもしれません。フードに混ぜても、薬だけ残してしまう器用な芸当もできます。
スポットタイプなら投薬漏れもなく、確実な寄生虫の予防が可能です。

一方、液剤に含まれるアルコール成分によって脱毛や皮膚炎を起こす体質も猫もいるので注意が必要です。

投薬が苦でなければ錠剤タイプ

スポットタイプの薬剤が使用できない場合は錠剤タイプのものを選択して寄生虫を予防します。

猫の嗜好性を高めるためにビーフフレーバーにしたりなど、各製薬会社によって特色が異なります。現在はチュールという便利なものがあるので、投薬のストレスも軽減されるようになりました。

まとめ

猫の寄生虫を予防するための獣医師の見解

読んで頂いてわかる通り、寄生虫の中には猫に重篤な症状を呈するものがあります。定期的な予防は大変ですが、猫の健康を守るためにも確実に行ってほしいと思います。

本記事が、何となく行っていた寄生虫予防への意識が変わるきっかけにして頂けたら幸いです。

【獣医師監修】ヒトにも感染します!寄生虫から愛犬や家族を守ろう

犬からヒトに感染する可能性のある「人獣共通感染症」は様々ありますが、ウイルスよりもヒトに感染しやすいのが、寄生虫による感染症。
犬に寄生する寄生虫として、蚊を媒介するフィラリアはよく知られていますが、実は他にも予防しなければならない寄生虫はたくさんいます。

今回は、犬のお腹に寄生する「内部寄生虫」と、犬の皮膚に寄生する「外部寄生虫」の予防方法をご紹介します。大切な愛犬と、飼い主さんや家族の健康を守るために、しっかり寄生虫の予防をしましょう。

フィラリアの予防についてまとめた記事はこちらからご覧ください。
https://cheriee.jp/dogs/20376/

内部寄生虫とは

犬の内部寄生虫には人獣共通感染症も多い
内部寄生虫とは、いわゆる「お腹の寄生虫」のことです。ヒトに感染する人獣共通感染症にあたるものもあるため、服薬によりしっかり予防しましょう。

対象となるのは以下の寄生虫です。

回虫名 症状 人獣共通感染症
犬回虫 消化器症状の他、重篤化すると神経症状や肺炎を起こします。
犬小回虫 犬回虫よりやや小さく、消化器症状を呈します。
犬鉤虫 小腸粘膜に咬みつくため、消化管出血を起こします。
犬鞭虫 土壌中でかなり長い期間の感染能を有します。
多包条虫 犬やキツネでは無症状ですが、ヒトに感染すると長い潜伏期間の後、肝機能障害や神経症状呼吸器症状を呈して死亡します。
瓜実条虫 ノミによって媒介され、糞便中に片節が見られます。

内部寄生虫の予防方法

内部寄生虫の予防は通年で行うべき
飼い主さんの中には、「お腹の寄生虫の予防なんて今までしてこなかったけど大丈夫かな…?」と心配になった方もいるでしょう。
実は、お腹の寄生虫の駆除効果は、フィラリアのお薬の中に含まれていることがあります

お腹の寄生虫に関してもフィラリアと同様、1ヵ月に1回体内に侵入したものを駆虫する方式となるので、各製薬会社が工夫してくれているのです。

なお、服用している薬によっては全ての寄生虫を駆虫できるわけではありません。使用している薬がどんな寄生虫に対応しているのか把握しておくことも大切です。

フィラリア薬での予防の落とし穴は「冬の予防」

フィラリア薬は蚊がいる季節を中心に投与します。では、冬の期間、お腹の寄生虫の予防はどうなっているのでしょうか。

答えは「完全に無防備」です。

フィラリアと異なり、お腹の寄生虫にシーズンはありません。冬の間は別途、駆虫薬を投与する必要があります。または、フィラリア薬を通年投与します。

万が一、冬でも室内のプランターなどの水回りから蚊が発生したとしてもフィラリア薬を飲み続けていれば安心です。また、フィラリア薬投与前の血液検査が不要になるメリットもあります。

いずれにしても、冬も忘れずに寄生虫感染のケアをしましょう。

外部寄生虫とは

外部寄生虫は犬ではノミとマダニのことです
外部寄生虫とは、皮膚表面などに寄生する寄生虫のことで、犬においてはノミとマダニが重要です。これらの寄生虫は刺咬によるアレルギーの他に、様々な疾患を媒介します。

ヒトにも害を及ぼす寄生虫ですので、しっかりと予防しましょう。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

2013年、日本で初めて重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の患者が確認されました。
SFTSはウイルスを持ったマダニに刺されることで感染します。特効薬もなく、死者も出ていることからニュースでも取り上げられたことは記憶に新しいのではないでしょうか。

厚生労働省によると、現在も年に60〜90名の感染が確認されています
西日本での発生が中心ですが、ウイルスを保有するマダニが他の地域でも確認されていることから、いつどこで発生してもおかしくない疾患です。

犬でもヒトと同様の症状を呈することがわかっており、感染しないためにもマダニに対する予防は公衆衛生上でも非常に重要と言えます。

マダニ感染症について、詳しくはこちらの記事もご参照ください。

マダニ感染症患者数が過去最多を記録。ペットからの感染にも注意して

外部寄生虫の予防方法

外部寄生虫の予防は必ず医薬品を使うべき
フィラリアやお腹の寄生虫の予防薬が経口投与なのに対し、外部寄生虫の予防薬は2種類のタイプがあります。

経口タイプ

おやつのような感覚で投与が可能。

フィラリアやお腹の寄生虫の予防も兼ねているタイプもあり、基本となる全ての寄生虫予防が一度にできるメリットがあります。
投薬してすぐにシャンプーも可能です。

スポットタイプ

首筋に垂らす液体状の薬剤。

投与後に吐き出したりする心配がなく、確実な予防が可能です。
体質にとっては基剤のアルコールに反応して皮膚炎を起こすこと、シャンプーは24時間の間隔が必要となることに注意が必要です。

医薬品と医薬部外品

動物病院以外の場所でも、ノミ・マダニ予防の商品を見かけることがあります。

含まれている有効成分によって区分されていますが、有効性と持続性において顕著に差が出るというデータもあります。
獣医師の視点から言わせると、動物病院で処方される予防薬を使用した方がよいと考えます。

医薬品と医薬部外品の効果の違いについては、こちらのサイトもご覧ください。

フロントライン プラス 概要・特徴
https://n-d-f.com/frontline/

まとめ

寄生虫の予防は必ず行おう
ウイルス疾患よりもヒトに感染することが多いのが寄生虫疾患です。

愛犬の健康を守るため、そして家族の健康を守るためにも予防できるものはしっかりと予防していきましょう。
そして一生涯服用する薬だからこそ、どんなものを飲んでいるのか正確に把握しておきたいですね。