犬の気持ちを読み解くボディランゲージとは?

人間同士のコミュニケーションは会話がメインですが、犬同士がコミュニケーションを取る時は、ボディランゲージと呼ばれる体の動きで喜怒哀楽を表現しています。

つまり、日頃の犬の動きをよく観察し、このボディランゲージを読み解く事ができれば、その時、犬がどのような事を考えているのか、私達人間も少しは理解できるようになるのです。今回はそんなボディランゲージの読み方を見ていきたいと思います。

なぜ、ボディランゲージか?

なにかに注目するパピー
犬はボディランゲージで会話する生き物と言われています。人間のように話をすることができないため、子犬の頃から、親兄弟とは全身の体の動きを使って会話をしています。

挨拶もそうですよね?犬同士がお互いに鼻を合わせて匂いを嗅ぎ合います。これは、匂いにより、お互いが知り合い同士なのか、または初めて合うのかを確認していると言われています。また、匂いにより相性を確認しているとも。相手の体の上に乗るマウンティングもそうです。犬同士の優位性を表しているため、マウンティングされる側(乗られる方)は、相手の方が優位であることを認めたくない場合は、それを拒否しようと必死に抵抗します。

このように、犬が取る行動の一つ一つは何かしらの意味を持っている事が多いため、これの意味を知ることができれば、日頃の生活の中で、少しは犬の気持ちが理解できるようになるのです。とは言え、犬のボディランゲージを正確に読み取るというのは、数多くの訓練を積んだドッグトレーナー等のプロフェッショナルでも、とても難しいことです。それは、挨拶のように、目に見える行動だけではなく、匂いや音等をヒントにしていることもあります。また、人間同士であっても、会話の中で誤解が生じることもあるくらい、他者とのコミュニケーションは難しいものです。ですから、人間ではない犬の気持ちを、私達人間が100%理解することは不可能に近いとも言えるでしょう。

それでも、犬は私達人間に、自分たちの感情を知ってもらおうとボディランゲージを使って、生活の中で様々な事を発信してくれています。これを私達飼い主が学ぶことで、誤解が少なくなれば、今よりも幸せなペットとの生活が待っていることは間違いありません。そこで、今回はボディランゲージの基礎編として、それを読み解くのに必要な、体の主要パーツ一つ一つの見方について、説明していきます。

観察する場所のポイント

口を真っ直ぐ閉じている犬
犬のボディランゲージを読み解く上で、最低限観察しておかなければならない体のパーツがあります。よく言われているため、ご存知の方も多いと思いますが、以下の4箇所です。これら一つ一つをよく見なければいけないのと同時に、全体が連動して動いて意味を成すことが多いため、その部分を凝視するのではなく、一度にこれらの動きがどうなっているかを観察する必要があります。

  • 尻尾

また、これらの体の動きは、周りの状況や時間が経つにつれて、どんどん変わっていきます。そのため、周りの環境も含めて、総合的に観察する必要があるのです。

主要な目の動きとしては、以下の行動が挙げられます。

  • 目をそらす
  • じっと見つめる
  • 白目を見せる(下から上を見上げるような)

目をそらす

「あなたに敵意はありません」と表現していたり、自分自身を落ち着かせるために取っていると考えることができます。

例えば、何か愛犬が悪い事をしたときに、愛犬の目をジッと見つめて「ダメでしょ!」と言って叱った後、愛犬が自分から目をそらす行動が見られると思います。それは、「もうわかりました、ごめんなさい」と反省している行動だと考えられます。

じっと見つめる

普段よりも目を大きく開け、何かをジッと見つめている時は、対象物を注目していると考えることができます。

例えば、おやつ。犬の目の前に、おやつを持っていくと、そのおやつをジッと見つめると思います。それは「このおやつはいつ食べて良いのだろう?」と対象物の動きを観察していると考えられます。逆に、遠くの人等を見ている場合は、「こいつは自分に対して何をしてくるのか?」と警戒して、ジッと観察していることもあります。

白目を見せる

不安や恐怖から、上目遣いをすることがあります。こちらの様子を不安な気持ちで伺っている場合は、このような表情をすることが多いです。

ただ、地面に伏せた状態で、寝転がりながら上目遣いをしてくることもあります。この時は甘えやリラックスからしていることもあります。後述するように、その犬の性格によってもこの表情がプラスの意味なのか、マイナスの意味なのか異なる場合があるので、トータルで考えるようにしましょう。

耳の主な動き方としては、以下の行動が挙げられます。ただ、たれ耳など犬種によっては、うまく読み取れない場合も多い部分です。

  • 耳を立てる
  • 耳を後に倒す
  • 耳を前に倒す

耳を立てる

人間でもそうですが、外の音をよく聞きたい時は、耳に手を当てたりしますよね?あれと同じで、対象を観察している時に見られる行動と考えることができます。

外の音をよく聞きたい時や、観察物の対象が何を言っているのか、どんな音を発しているのかを感じ取っています。例えば、先程説明した「目」の動きと組み合わせることで、ジッと対象物を見ながら耳を立てているのであれば、対象物をよく観察している時という読み取り方ができるでしょう。

耳を後に倒す

これだけでは正確に判断できない行動で、不安だったり、怖い時にこの行動を取ることもあれば、甘えている時にこの行動を取ることもあります。

筆者がドッグトレーナーとして初めて会う犬の場合、この行動を取られることあります。初対面の人が近づいて来るわけですから、いきなり甘えているとは考えにくいですよね?この場合は、不安から耳を後ろに倒していると考える事ができます。逆に、飼い主が褒めてあげている時にこの行動を取る場合、飼い主に甘えていると考えることができるでしょう。

耳を前に倒す

戦闘態勢の場合に取る事が多い行動です。喧嘩をしている時に見られます。ただ、倒れ具合が少しの場合は、よく注目して聞いているだけの場合もあります。耳を観察する場合は、倒れ具合も見るようにします。

口元(マズル)

口元の動きが、人間にも直感的にわかりやすい動きかもしれません。以下の行動が挙げられます。

  • 口元が緩んでいる
  • 口を真っ直ぐ閉じている
  • 歯をむき出している

口元が緩んでいる

人間でもそうかもしれません。リラックスしていたり、甘えたりしている場合は、このように緩い表情になっています

口を真っ直ぐ閉じている

対象物に興味がある場合と考えられます。先程説明した目や耳の動きと併せて読み取る事ができれば、わかりやすい行動かもしれません。

歯をむき出している

おそらく、これは誰もが怒っている時だとわかるでしょう。大抵の場合は、唸り声も併せて発しているため、近づかない方が良いと直感的にわかると思います。

よくあるのは、この時に尻尾を振っていることがありますが、喜んでいるわけではありません。歯を見せているのですから、喜んでいるのだと勘違いして手を出してはいけません。間違いなく噛まれることになるでしょう。

尻尾

尻尾の感情表現も有名な話ですので、ご存知のかたも多いことでしょう。代表的な行動としては、以下が挙げられます。

  • ブンブン振っている
  • 尻尾が立っている
  • 尻尾を股の下に巻き込んでいる

ブンブン振っている

とても喜んでいたり、興奮状態にある時に見られます。

尻尾を振っていても、必ずしも喜んでいるとは言えません。興奮状態にあるときも同様の行動を見せるため、口元の動きや目の動きなど、他の体のパーツと一緒に見る必要があります。

尻尾が立っている

何かに注目している時に見られる行動です。威嚇のように見えることもありますが、これ単体の動きではそう判断することはできません。

尻尾を股の下に巻き込んでいる

怖い時や怯えている時に見られる行動です。

特に、花火を怖がるような子は、花火の音がしている時にこの行動が見られます。雷も同様です。また、子供嫌いの犬が、子供が近づいてきた時にこのような行動を取ります。とても怯えていることの現れのため、なるべく回避してあげることが望ましいでしょう。

犬種や性格によっても

ジッと見つめるダルメシアン
体格の大きさもさることながら、数多くの犬種が存在するのが犬の最大の特徴です。見た目も様々ですし、生まれ持った役割も様々です。

そのため、シワの多い犬であれば、表情を読み取るのが難しいかもしれませんし、全身が多くの毛で覆われたような犬の場合は、体の動きもわかりにくいでしょう。さらに、生まれ持った役割によっては、興奮しやすい犬もいれば、臆病な犬もいます。

マニュアル通りの読み解き方では限界があるというのが正直なところ。そこで、ここで紹介しているような基本的な事を押さえた上で、皆さんが飼っている犬種の情報を調べたり、愛犬の性格をよく観察し、理解するということが、犬のボディランゲージを読み解く一番の近道だと考えます。せっかく、良い相棒がいるのですから、どんな事を考えているのかよく観察してみると新しい発見があるかもしれませんよ。

尻尾(しっぽ)を振るのは嬉しい時とは限らない?最新研究に見る犬の気持ち

犬が尻尾(しっぽ)を振っている時、あなたなら、どう思うでしょうか?

きっと、ほとんどの人は「犬は嬉しいんだ!自分が来て喜んでいるんだ!」と思うでしょう。でも、尻尾をフリフリしながら、同時に唸り声をあげることもあります。そんな時、「どうしたんだろう?」と思って、不用意に近づいては危険です。場合によっては咬まれてしまうこともあります。

今回は、尻尾を振る時の犬の感情について、最新研究の結果も踏まえながら見ていきたいと思います。

尻尾を振る時の感情って?

遠くを見つめる犬
さて、犬が尻尾を振る時はどんな気持ちでしょう?

ずばり、犬が尻尾を振る時は、興奮しているときです。興奮と一言に言っても、喜びの感情を表していることもあれば、怒りや警戒の感情を表していることもあります。これは真逆の感情ですが、人間から見ると同じようなボディランゲージであっても、微妙な動きの違いで感情を表しているので、私たちにはとてもわかりにくいのです。

  • 犬が尻尾を振るのは興奮している時
  • 喜びも警戒も尻尾を振って表現する

尻尾の振り幅でもわかる

犬と子供
犬が尻尾を振る時、ユラユラとゆっくり降っている時と、尻尾がどこかに飛んでいってしまいそうな勢いでブンブンと振り回している時があります。この尻尾の振り幅やその速度からも、犬の感情を読み取ることができます

ゆっくり振る時

尻尾をユラユラとゆったり振る様子は、リラックスしている時に多く見られます。犬の名前を呼ぶと、ユラユラと尻尾を振りながら近づいてくることはないでしょうか?こんな時は、「なに?どうしたの?」という感じで近づいてきているのでしょう。

また、逆に警戒している時にも尻尾をゆっくり振ります。じっと相手の様子を伺っていると言えます。そのような時は、何かあったときに、すぐに身動きが取れるように、身体の重心を落としていることがあります。このような時は、不用意に近づいていったり、物を取り上げたり、そういう行動は控えたほうが良いでしょう。

大きく振り回している時

大きく尻尾を振り回しているのは、興奮がMAXになっていて、とてもテンションが上がっている時に見られます。例えば、ずっと留守番をしていたところに、飼い主であるあなたが帰ってくると、はち切れんばかりに尻尾を振り回して、こちらへやってくるのではないでしょうか?もう、嬉しくて仕方がない様子です。

尻尾の振り幅で犬の興奮状態がわかるということは、大きく振り回している時は、悪い意味での興奮がMAXに達して攻撃行動へ移ろうとしている場合も同じです。

尻尾の動きだけでは見分けられない

このように、犬の尻尾を見ることで、興奮状態がどの程度なのかを見分けることはできますが、それだけでは嬉しくて興奮しているのか、怒りや警戒で興奮しているのかを見分けることはとても難しいのです。

  • 尻尾の振り幅でテンションの度合いがわかる
  • 嬉しい時も警戒している時もその度合いがわかる

尻尾振る方向で感情がわかる?

子犬と獣医師
イタリアの獣医師と研究者から成る研究チームは、2007年に犬は嬉しいときには尻尾を右方向によく振り、緊張しているときには左方向に尻尾を振るという研究結果を発表しました。
また、同じ研究チームが、2014年に他の犬の尻尾の振りの向きを認識し、犬はそれに反応するという研究結果も発表しています。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982207009499
(2007 A.Quaranta M.Siniscalchi G.Vallortigara)

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982213011433
(2013 M.Siniscalchi R.Lusito G.Vallortigara A.Quaranta)

どういうことか?

この実験は「飼い主」、「他人」、「猫」、「他の犬」の4パターンを見せて行われました。また、その時の犬の感情を知るために、心拍数を計測して行われており、それを見て警戒したり怯えたりする状態にあるのか、またはリラックスした状態にあるのかを判断する材料としています。

この実験の結果、飼い主の時は右に尻尾を振ることが多く心拍数は安定。逆に、他の犬を見せた場合は左に尻尾を振ることが多く、心拍数は高くなったそうです。つまり、右に尻尾を振っている時はリラックス状態であり、左に尻尾を振っている時は鼓動が早く、警戒しているということになります。

どうして?

犬が嬉しいと感じている時は、脳の左側が活性化して、右側に尻尾を振り、不安やストレスを感じたときは脳の右側が活性化し、左側に尻尾を振るそうです。これにより、脳の活性化領域と行動に関連性があるのではないかと研究チームは考えているようです。

最新研究まとめ

犬同士のコミュニケーションは、ボディランゲージで行われていると昔から言われてきました。この研究結果は、この昔からの言い伝えを証明するもので、尻尾の動きも犬同士が会話する手段として利用されていることがわかります。

確かに、唸り声も他の犬に伝播することが知られています。犬が威嚇する唸り声を録音し、それを他の犬に聞かせると怯えたりするのです。尻尾の動きもこれと同様で、犬同士は様々な手段を使って、犬同士のコミュニケーションを成立させているのですね。

とは言え、テンションMAXの状態では、犬は尻尾をブンブンと360度振り回したりするため、それが右に振られているのか左に振られているのか人間が見分けるのは難しい気もします(笑)

  • 右に尻尾を振る時は嬉しい時
  • 左に尻尾を振る時は悪い意味で興奮している時
  • 尻尾の動きは、犬同士がコミュニケーションを取る手段に使われている

目や口元の動きも合わせて観察

子犬の顔を観察
最近の研究により、尻尾の動きだけでも、ある程度は犬がどのような感情にあるのかを理解できるようになりました。しかし、相当な数の犬を見て、そして実際に触れ合わないと、これだけの情報から、犬の感情を自然と読み取ることができるようになるのは難しいのではないでしょうか。

そこで、オススメの方法は、目や口元の動きも合わせて観察する方法です。

別の記事で詳細をお伝えしたいと思いますが、犬は、嫌なことから逃げようとしている時や周囲の状況を警戒している時は、「白目」の部分を見せてきます。また、犬の口元の動きから、警戒していることを読み取ることもできます。警戒心がMAXの状態では、歯を見せて、「うー」と唸ります。

このように、尻尾の動きをつぶさに観察し、そして他の表情も合わせて読み取ることで、犬の気持ちを理解することは可能なのです。