猫は○○の生まれ変わり?!猫に関する日本のことわざ・慣用句15選

猫は人間にとって最も身近な動物の一つですが、日本には「猫」に関することわざや慣用句が100個以上存在することをご存じでしょうか。

今回は、そんな猫に関することわざや慣用句を、難易度を分けて15個紹介していきます。ことわざや慣用句を知ることで、日本人が猫とどのような関わりを持ってきたのか、わかるかもしれません。

猫は小心者?!「初級編」

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まずは、普段の会話でもよく使うような簡単な言葉の「初級編」から見ていきましょう。

①猫の手も借りたい

意味:非常に忙しく手不足で、どんな手伝いでもほしいことのたとえ。

かつて猫はあまり役に立たない動物と思われていたため、ネズミを捕る以外は役に立たない猫でも、手伝って欲しいほど忙しい状況を表した言葉です。

類義語は「犬の手も人の手にしたい」など。

②猫糞(ネコババ)をする

意味:悪事を隠して素知らぬ顔をすること。拾い物などをして、それを届けたり返したりしないで、自分のものとしてしまうこと。

猫はフンをした後に砂や土をかけて隠してしまう様子から、物事を隠蔽することを表した言葉です。

類義語は「猫糞を決め込む」「猫が糞を踏む」など。

③猫の額

意味:土地や場所の面積の狭いことのたとえ。

猫は顔に対して目や耳の割合が大きく、額が狭いことに由来しています。

類義語は「尺寸の地(せきすんのち)」など。

④猫に小判

意味:高価なものや貴重なものを与えても、価値のわからない人には何の意味もないことのたとえ。

猫に小判を与えても、その価値が分からないので何の反応もありません。また、猫にとって小判は何の意味もなく、何の役にも立たないことに由来しています。

類義語は「豚に真珠」「犬に小判」「犬に論語」「馬の耳に念仏」など。

⑤借りてきた猫

意味:ふだんとは違って、大変おとなしくしている様子。

ネズミ駆除のため天敵である猫を借りてくるが、警戒心の強い猫は慣れない場所に連れてこられたことで縮こまり、全然役に立たなかったということに由来しています。

類義語は「猫を被る」「内弁慶に外地蔵」など。

猫は薄情者?!「中級編」

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ここからは、普段の会話で使う機会は少ないかもしれませんが、知っている方が多いと思われる「中級編」です。

①猫に木天蓼(マタタビ)

意味:大好物のたとえ。また、何か物を与えたときに効果が著しいことのたとえ。

猫はマタタビが大好物であることに由来しています。「猫に木天蓼お女郎に小判」「猫に木天蓼泣く子に乳房」と続くことわざもあります。

類義語は「牛の子に味噌」「泣く子に乳」など。

②猫の首に鈴をつける

意味:いざ実行しようとすると非常に危険で、誰も進んではやろうとしないこと。よいアイデアでも、実行する人がいないような難しいことのたとえ。

猫に仲間を捕られるネズミたちが集まって相談し、「猫の首に鈴をつければ近くにいることがすぐにわかる」という良案を思いつきましたが、実行できるネズミがいなかったという「イソップ物語」の寓話が語源となっています。

類義語は「言うは行うより易し」「言うは易く行うは難し」「机上の空論」など。

③猫も杓子も

意味:なにもかも。だれもかれも。

語源については、①「神主も僧侶も」を意味する「禰子(ねこ)も釈氏(しゃくし)も」が変化したものとする滝沢馬琴の説、②「女も子どもも」を意味する「女子(めこ)も弱子(じゃくし)も」とする落語が由来の説、③杓子は主婦をさすもので、家内総出の意とする説など、諸説あります。

類義語は「老若男女」「揃いも揃って」など。

④猫に鰹節

意味:好物をそばに置いて油断ができないこと。あやまちが起こりやすい状況であることのたとえ。また、危険であることのたとえ。

猫の好物の鰹節かつおぶしを目の前に置いたら、いつ食べられてしまうかわからないので、安心できないことから由来しています。

類義語は「猫に乾鮭」「犬に肴の番」「狐に小豆飯」「盗人に鍵を預ける」など。

⑤猫は三年の恩を三日で忘れる

意味:猫は三年飼われた恩をたった三日で忘れる。猫はつれない動物であるというたとえ。

反対に「犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ」ということわざもあります。猫は薄情だと考えられがちですが、「犬猫も三日飼えば恩を忘れず」ということわざもあるため、全ての猫が薄情というわけではないのでしょう。

猫の前世は何?「上級編」

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いよいよ、一般的にはあまり知られていない「上級編」です。

①猫が顔を洗うと雨が降る

意味:猫が顔を洗うと、その後雨が降ることが多い。

猫のヒゲは敏感なので、風や湿度の変化を素早く感じ取ります。雨が降る前は湿度が高くなるため、湿気や天気が変わることへの不安を取り除くために、ネコは顔を洗うそうです。この場合の「顔を洗う」は猫が前足を舐めて、その前足で顔をこすることを意味します。

②猫を追うより魚を除けよ

意味:問題が生じた時はその場しのぎの方法で対処するのではなく、根本的な原因を取り除くべきであるということ。

猫を魚の前から追い払っても戻ってきて再び狙うため、猫を追い払うよりも魚を見えない場所に隠す方が問題は解決するといったことが由来となっています。

③秋の雨が降れば猫の顔が三尺になる

意味:秋は晴れた日より雨の日の方が暖かいので、寒がりな猫は顔を長くして喜ぶということ。

三尺は約90cmです。90cmも顔が伸びた猫というのは現実的ではありませんが、寒さが続く中での暖かい日の喜びを大げさに表しています

類義語は「冬の雨が三日降れば猫の顔が三尺伸びる」など。

④猫に九生有り

意味:なかなか死なず、しぶとい様子。

猫は9回生まれ変わると言われ、それだけ執念深いということを意味する西洋のことわざに由来しています。また「猫を殺せば七代祟る」ということわざもあり、猫を殺すと子孫七代にわたって祟ることを意味し、こちらも猫の執念深さを表しています。

⑤猫は長者の生まれ変わり

意味:猫の前世は長者(お金持ち)だということ。

猫がのんびり寝てばかりいるように見えることから、前世は何不自由なく暮らしていた長者だと言われるようになりました。

まとめ

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今回ご紹介した、ことわざや慣用句だけを見ても、猫は呑気なようで執念深く、ビビリでありながらネズミからは恐れられ、寒さに弱く敏感な動物だと人間が捉えていることがわかります。多面的な魅力を持っているのが、猫という動物なのでしょう。

他にも猫に関することわざや慣用句はたくさん存在しますので、気になった方はご自身で調べてみて下さいね。

吠える犬は○○しない!犬に関する世界のことわざ・慣用句

ことわざや慣用句には、その国や言語の文化が強く反映されています。同じ意味でも、使われる単語が異なることがあり、外国語のことわざなどは非常に興味深く感じられます。

また、外国の犬の歴史や文化は日本と異なるため、ことわざなどに登場する犬の扱いから、その国が犬をどのように見ているのか、理解ができるかもしれません。

今回は、犬が登場する外国語のことわざや慣用句を紹介いたします。

英語のことわざ

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犬と人との関わりが深いイギリスや犬の飼育頭数が世界一のアメリカ。そんな英語圏の犬に関することわざや慣用句を見ていきましょう。

①Let sleeping dogs lie.

和訳:寝ている犬は、寝かせておけ

意味は「余計なことをしてトラブルを起こすものではない」ということです。眠っている犬を起こすと、犬が怒ったり、吠えたりするかもしれないので、わざわざ起こす必要はありません。日本語では「寝た子を起こすな」と近い意味になります。

②Two dogs fight for a bone and the third runs away with it.

和訳:2頭の犬が1本の骨をめぐって戦っていると、第3の犬がそれを持ち逃げする

日本語でも「漁夫の利」という言葉があり、他人の争いごとに乗じて、何の苦もなく利益を得ることを表します。

③You can’t teach an old dog new tricks.

和訳:老犬に新しい技を教えることはできない

意味は「人が年をとってから新しいことを学ぶのが難しい」ことを表します。日本語にも「老い木は曲がらぬ」や「矯めるなら若木のうち」ということわざがあり、直すべきところは柔軟性のある若いうちに直さないと、年をとってからでは直らないという意味になります。

④Barking dogs seldom bite.

和訳:吠える犬はめったに噛まない

意味は「人を脅したり、むやみに威張ったりする者は、大して実力を持っておらず、たいていは何もできないこと」を表します。日本語にも「弱い犬ほどよく吠える」、「吠える犬は噛みつかぬ」など、似たようなことわざがあります。

⑤Bite the hands that feeds one.

和訳:食べ物を与えてくれる人の手を咬む

意味は「世話になった者が恩返しをせずに害を加えること」を表しています。日本語では「飼い犬に手を噛まれる」、「恩を仇で返す」などが当てはまります。

⑥Better be the head of a dog than the tail of a lion.

和訳:ライオンの尻尾になるより、犬の頭になった方がよい

意味は「大きな集団の末端にいるよりも、小さな集団でもリーダーである方が良い」ということを表しています。日本語にも「鶏口(けいこう)となるも牛後(ぎゅうご)となるなかれ」という言葉があり、動物は違いますが、同じ意味になります。

フランス語のことわざ

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日本でも人気のある犬種のプードルやフレンチ・ブルドッグの原産国であるフランス。そんなフランスのことわざや慣用句で犬はどのように表現されているのでしょうか。

①Tel chien, tel maître.

和訳:この犬にして、この主人あり

“chien”は犬を表します。日本語にも「犬は飼い主に似る」、「この親にして、この子あり」などの言葉があり、非常に類似しています。

②S’entendre comme chien et chat

和訳:犬と猫のような仲

“chat”は猫を意味し、「仲の悪いもののたとえ」として使われます。日本語でいうところの「犬猿の仲」です。犬と猫が仲良く同居しているご家庭では、違和感があるかもしれませんね。

③Arriver comme un chien dans un jeu de quilles

和訳:ボーリングの最中に犬のようにやって来る

これは「間の悪い時にやって来る」という意味の言葉です。”jeu de quilles”は「ボーリング」を意味し、ボーリングをやっている時にボールを追いかけたがる犬が現れて、レーンの上を走り回りゲームを邪魔するという表現になります。

④Comme Saint-Roch et son chien

和訳:聖ロクスと彼の犬のように

意味は「切り離せない2人」を表します。「聖ロクス」は14世紀頃ペスト患者の看護に尽力したカトリック教会の聖人です。彼を描いた絵にはパンを加えた犬も一緒に描かれています。その犬が怪我をしたロクスに毎日パンを運び、傷を治したという伝説があり、いつも一緒にいるイメージから、この表現が使われています。

⑤Chien qui aboie ne mord pas.

和訳:吠える犬は噛まない

英語や日本語にも同じような表現がありましたが、こちらも意味は似ていて「何も実行せずに大きな口を叩く人のこと」を表します。

「吠える犬は噛まない」という言葉は多くの言語で使われており、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語などでも使われています。

中国語のことわざ

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欧米とアジアでは犬との付き合い方の歴史が大きく異なります。アジアの大国である中国では、どのような言葉に犬が使われているのでしょうか。

①狗嘴吐不出象牙

和訳:犬の口から象牙は出てこない

中国語で犬は「狗」と書きます。このことわざは、「ろくでもない人が、立派なことを言えるはずがない」という意味を表します。

②狐朋狗友

和訳:キツネやイヌの友人

意味は「酒食遊楽にふける、品行の悪い友達や悪友」を表します。

③狗尾続貂(くびぞくちょう)

和訳:犬のしっぽが貂(テン)に続く

意味は「劣った者が優れた者のあとに続くこと」または「つまらない者が、権力で次々と高官になること」を表します。

「狗尾」は犬の尾、「貂」はイタチ科の動物であるテンのことで、かつての中国の高官は冠にテンの尾を付けて飾っていました。しかし、皇帝が一族の多くを高官に任命したため、テンの尾が足りなくなり、犬の尾で代用するようになったという話から、このことわざが生まれました。

まとめ

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「吠える犬は噛まない」という言葉が多くの言語で、同じような意味で使われていることは、非常に興味深い結果です。

犬は人間との関係が非常に長く深い動物であるため、多くの国でことわざや慣用句に登場します。

今回紹介できたのはごく一部ですので、興味がある方はぜひご自身でも調べてみてください。