猫と暮らすと癒されて健康になる?!飼い主さんのメリットを紹介

猫を飼っていると「癒される」と多くの飼い主さんが思っているのではないでしょうか。猫の柔らかく温かい体に触れているだけで、心が落ち着きますよね。

実際に、猫が人間の健康や心にもたらすさまざまなメリットについて研究が進んでいます。今回は人が猫と暮らすメリットについての研究を紹介、解説します。

猫といると癒されて幸福感が高まる

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大きなメリットは「猫に癒される」ことでしょう。猫を撫でるなどの触れ合いによって「オキシトシン」というホルモンが放出されると考えられています。そのため、気持ちが落ち着いたり不安が軽くなったりすることが期待できるのです。

オキシトシンは、分娩時に子宮を収縮させたり母乳の分泌を促したりする働きがあることで知られていました。さらに人と人の触れ合いや愛着、社会活動に深く関係するホルモンでもあり、ストレスの緩和や不安の軽減にも関与しています。

2015年には、「人と人」だけでなく「人と犬」との間でもオキシトシン分泌されることが報告されています。この報告により、信頼関係にある人と犬ではアイコンタクトが増え、双方にオキシトシンが分泌されることが判明しました。

猫の場合も、撫でて触れることでオキシトシンが分泌されると考えられています。ただし、飼い主側の一方的で強引な触れ合いでは、効果はないかもしれません。猫も人もリラックスしていることが重要でしょう。

子どもたちの心を癒す猫

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猫は子どもの情操教育や命の教育、コミュニケーションにも良いといわれています。

たとえば、不登校や引きこもりの心配がある子どもにとっても猫は大きな存在です。
実際に不登校の子どもたちを受け入れている長野県動物愛護センター「ハローアニマル子どもサポート」では、猫をはじめとする動物の存在が子どもたちの心理状態の改善や自我の安定に役立つと報告しています。

「子どもサポート」にいる動物は、長野県内の保健福祉事務所から引き継いだ犬や猫、センターが飼育するウサギやモルモット、ヤギなどです。特に、勝手で自由気ままな行動をする猫が、緊張している子どもたちをなごませる存在になっています。

同センターの所長は、

「同じ空間にただいるだけでいいのだ」
(引用:松澤 淑美 【医学系】動物が人を癒すメカニズム~人と動物の絆~ バイオフィードバック研究 2021 年 48 巻 2 号 p. 67-71

と述べています。
犬のようにアイコンタクトやお手などは必要ないので、無理に仲良くなろうと思わなくてもいいところがポイントのようです。

コミュニケーションをとる猫

しかし、「ミケ」という猫だけは、自分から子どもにコミュニケーションを取っていると報告しています。数多くの施設見学者のなかから、ひきこもりなど支援の対象になる子どもを見分けて真っ先にすり寄って甘えるとか。「ミケ」に甘えられた子どもたちは「また来たい」と話すそうです。

「ミケ」は瀕死の状態で保護された猫。その猫が、ひきこもりの子に一歩踏み出す勇気を与えるというのも不思議なものを感じます。もちろん同センターでは、犬も子どもたちを元気にする大切な存在です。

高齢者の孤独感が消失して情緒が安定する

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高齢者の方にとっても、猫は元気を与えてくれます。一般社団法人ペットフード協会によると65歳以上の高齢者へのアンケート結果では、犬や猫を飼っているグループの方が飼っていないグループに比べて「通院回数が少ない」「孤独感やストレスを抱えていない」という回答が多くありました。

「情緒が安定するようになった」という回答は、犬を飼っている高齢者の40%に対し猫を飼っている高齢者は49%と大きく上回っています。

高齢の方にとっても、猫は孤独感やストレスを解消するコンパニオンアニマルといえるでしょう。一人暮らしの高齢者の方が猫を飼うことは、大きなメリットがあると考えられます。しかし、高齢の方の突然の入院などトラブル発生時の課題が残ります。

飼い主さん自身が、ペットシッターなどあらかじめトラブル発生時に来てくれる人を探しておくなど準備も必要です。近所の人や友人知人など、周囲の声掛けなども欠かせません。

猫を飼うと健康上のメリットが期待できる

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猫の飼育が、人の健康にもメリットをもたらすといわれています。ここでは2つの研究結果をご紹介します。

猫を飼うと血圧が下がる

「高血圧症の治療を受けているニューヨークの株式仲買人が、猫や犬を飼ったところ血圧が安定した」というニューヨーク州立大学による研究結果が、1999年アメリカ心臓協会の年次大会で発表されました。

この実験に参加したのは、喫煙歴がなく高血圧の症状(140/90/ml以上)がある男性24人、女性24人の株式仲買人です。彼らは過去5年間一人暮らしをしており、ストレスにさらされる仕事を行っています。ペットは飼育していません。無作為で薬のみの治療を行うグループと、猫や犬を飼うグループに分けそれぞれ半年間過ごしました。

半年後、ストレスがかかる暗算やスピーチなどのテストを行いました。犬や猫を飼っていないグループは薬物治療で血圧が下がっていたものの、テストによって血圧が上昇しました。

一方、犬や猫を飼っていたグループでもテストによって血圧は上昇しました。しかし、犬や猫を飼っていないグループに比べて、上昇した値は半分程度だったのです。

仕事では、緊張するシーンが多くストレスもたまりやすかったでしょう。犬や猫と暮らすことで緊張感がほぐれた結果、血圧も上がりにくくなったとも考えられます。

心疾患や脳卒中による死亡リスクが減る

アメリカで、「猫の飼育によって心臓発作の死亡リスクが約30%低下する」という研究報告が2009年に発表されました。

猫を飼っている人や猫を飼っていた人、犬を飼っている人、飼っていない人など4,435人を20年間追跡したところ、「猫を飼っていない人に比べ猫を飼っている、あるいは飼っていた人は心筋梗塞などで死亡するリスクが低い」という結果が得られました。

興味深いのは、ペットを飼ったことのない人よりも、かつて猫を飼ったことがある人のほうが死亡リスクは低いという結果です。猫の存在はそれだけ人にとって大きなものなのでしょう。

猫との暮らしで癒されるとストレスが減る、不安が少なくなるといったメリットが心臓病など深刻な病気を減らすのかもしれません。

猫の動画を見るだけでも癒される?

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興味深いことに、猫の動画を見るだけでも気持ちが前向きになり、エネルギーが高まるという研究報告があります。これは2015年インディアナ大学の研究者が約7,000人を対象に調査したものです。参加者らは、猫の動画を見たあと「不安やいら立ち、悲しみなどが少なくなった」「エネルギッシュで前向きになった」など報告しています。

「やるべきことを先延ばしにした罪悪感よりも猫の動画を見た喜びの方が大きい」などの意見もありました。仕事中に動画を見ても、猫の動画ならそれほど罪悪感がないのかもしれません。ちなみに参加者のうち約36%が猫好きで、60%が猫と犬どちらも好きということでした。

住宅事情などで猫を飼えない人も、猫の動画を見ることで元気になれそうです。

猫への依存し過ぎに注意しよう!

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猫との暮らしには、これまで見てきたようにさまざまなメリットがあります。一方で、猫への依存し過ぎにも注意が必要です。常に猫が心配で短時間の外出しかできなくなるなど、自分自身の生活がままならない状態になる恐れもあります。

いつでもべったり一緒だと、猫も飼い主さんに依存するようになりがちです。そうなると、ちょっとした留守番でも大きなストレスになり「鳴き続ける」「粗相をする」などの行動を起こすかもしれません。

ペットに依存しやすい人は、対人関係のトラブルを持ちやすく幸福感が低めという報告もあります。

猫は自分に癒しをくれるだけでなく、「家族など人々とのコミュニケーションにも役立つ」と言われていますので、人間関係を円滑にすることにも目を向けることで依存するリスクは減ります。もともと猫は単独行動をする動物です。猫からもらうたくさんのメリットに感謝しつつ、ほどよく距離感を保って生活するといいですね。

【最新研究】長時間離れ離れになった犬は飼い主との再会で涙を流す?

人は感動したときやうれしいことがあったときなどに、うれし涙を流すこともあるでしょう。家族や友人と久しぶりに再会し、涙を流した経験がある方もいるかもしれません。

人間では当たり前のように感じる「うれし涙を流す」という行為ですが、このたび発表された研究により、犬も飼い主と長時間離れ離れになったあとに再会すると、涙を流す可能性があることがわかりました。

「犬が涙を流すとはどういうこと?」と疑問に思う方も多いかもしれません。この記事では、「犬が飼い主と再会した際の犬の変化」を調査した論文の内容を簡単にお伝えします。

涙の役割とは

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涙は上まぶたの裏側にある涙腺から分泌され、まばたきをすることで目の表面に広がります。

涙には以下の役割があります。

  • 目の乾燥を防ぐ
  • 目に酸素や栄養を供給する
  • 感染を防ぐ
  • 目の表面の傷を治す
  • 目の表面をなめらかにする

涙の分泌量は「オキシトシン」というホルモンに関係しています。オキシトシンは「幸せホルモン」や「愛情ホルモン」とも呼ばれており、人同士や動物とのスキンシップによって分泌が増えることもわかっています。

実験と結果①飼い主と長時間における分離後の涙液量の差

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Increase of tear volume in dogs after reunion with owners is mediated by oxytocinより

飼い主と一緒にいるときと、5時間以上離れてから再会したときの犬の涙液量を調査した結果、再会した時の方が涙の分泌量が平均15.9%増加したことがわかりました。

また、飼い主以外でも同様の実験を行ったところ、再会後の涙液量に変化がないことから、犬は飼い主と特別な絆を築いていることがわかります。

実験と結果②オキシトシン分泌量と涙液量の関係

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オキシトシンが涙液量に関係があることを調べるため、オキシトシンを犬に点眼しました。すると、オキシトシンの点眼前に比べて涙液量が増加することがわかりました。

これにより、飼い主との分離後に再会することで、オキシトシンの分泌量が増加し、涙液量が増加した可能性が考えられます。

実験と結果③イヌが目を潤ませることによる人間への作用

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犬が目を潤ませることで、人にどのような作用があるのかを調査した実験です。人工の涙を点眼する前のイヌと点眼したあとのイヌを撮影し、その写真を人間が見るとどのような印象を受けるのか比較を行いました。

その結果、涙を点眼して目を潤ませた写真の方が、人は良い印象を受けることがわかりました。

考察

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今回の実験により、

  • 飼い主との分離再会後に涙液量が増加した
  • オキシトシンを点眼した犬は涙液量が増加したことから、オキシトシンが涙液量に関連がある

ことがわかりました。つまり、犬は飼い主との再会によりオキシトシンが分泌され、涙液量が増加したことが示唆されたということです。

また、人は目を潤ませた犬に対して良い印象を受けることから、犬が人に選ばれるようになるというある意味の「生き残り戦略」を取っているのではないかと考えられます。

かつて、ウルウルした目のチワワが出ているCMをきっかけにチワワの人気が爆発的に上がりました。このチワワが人気になったのも、潤んだ目によって守ってあげたいという人間の本能に訴えるものだったのかもしれませんね。

長時間のお留守番が多い場合は見直しを

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再会の際に犬が涙を流しているという実感がない方もいると思いますが、お出かけから帰ってきた時に、愛犬が玄関で熱烈に帰宅を歓迎してくれるということもあるでしょう。

今回の実験により、飼い主と5時間離れただけでも、目を潤ませるほどの情動の変化があったことがわかりました。人にとって「たった5時間」であっても、飼い主とのコミュニケーションが大好きな犬にとっては「5時間も放置された」と考えているかもしれません。

もちろん、犬によっては人との密なコミュニケーションを好まない子もいますが、愛犬の様子をよく観察しながらストレスのない環境を整えてあげてください。

まとめ

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これまでの研究により、動物は目を保護したり痛みのために涙を流すことはわかっていましたが、犬は飼い主との再会によって涙を流すことがわかりました。人にとって大したことのない時間であっても、犬にとっては長時間飼い主と会えずに寂しい思いをしているのかもしれません。

もし、仕事などで長時間家を空けざるをえないという場合は、一緒にいられるときにたくさん甘えさせてあげてくださいね。そして、可能であれば寂しい思いをさせない工夫をしてあげてください。

【最新研究】猫は日常生活の中で同居猫の名前を覚えている

猫の飼い主の皆さんは、猫が自身や同居猫の名前を理解していると感じたことはありますか?また、猫はそれらの名前をしっかり聞き分けているのでしょうか。

この度、京都大学や麻布大学などの研究チームは、猫が一緒に住んでいる他の猫やヒトの名前を理解しているのかについて研究結果を発表しました。

この記事では、その研究についてわかりやすく解説していきます。

実験概要

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この研究では、猫が同居する猫やヒトの家族の名前を認識しているかについて調査されました。

ヒトの場合、ある言葉を聞くと、そのもの、もしくはそれに近いものを想像します。一方で、ヒト以外の動物でもこのような反応がある程度見られることがわかっています。

今回は、心理学で用いられる「期待違反法」という手法を用い、名前を呼んだ後にモニターに呼んだ名前の猫やヒトの写真もしくは、異なる猫やヒトの写真を表示し、モニターを注視する時間によって、猫が同居猫やヒトの家族を認識しているかについて調べます。

期待違反法
期待とは異なることが起きると、その事象を長く見るという性質を利用し、動物や乳児が何を期待しているのかを調べる心理学的手法。

実験1 猫は同居猫の顔と名前を認識しているか

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方法

今回の実験に参加した猫のうち、29匹(オス:17匹、メス:12匹)は猫カフェで飼育されており、ヒトや猫同士が自由に触れ合うことができます。19匹(オス:11匹、メス:8匹)は、家庭で飼育されており少なくとも2匹の他の猫と一緒に暮らしています。

猫をモニターの前に座らせ、同居する猫の名前を呼ぶ声を再生したあと、その名前の猫・もしくは違う猫を表示します。

もし、猫が同居している猫の名前と顔を一致させているのであれば、期待違反法により呼ばれた名前と違う猫が表示された場合に、モニターを注視する時間が増えることが予想されます。

結果

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https://www.nature.com/articles/s41598-022-10261-5より

上のグラフでは、赤いバーが名前と写真が一致した場合、青いバーが一致していない場合を表します。また、左のボックスは猫カフェの猫、右のボックスは家庭で飼育されている猫をそれぞれ表しています。

猫カフェの猫たちは、モニターを注視する時間にほとんど差がなく、猫の名前と顔を理解できていないと考えられます。

一方で、家庭で飼育されている猫では、モニターを注視している時間に有意な差があり、名前が異なる猫の写真が表示されたときの方が見る時間が長いことが示されています。この結果から、猫が同居猫の名前と顔を理解していることがわかりました。

実験2 猫は同居家族の顔と名前を認識しているか

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方法

2人以上のヒトの家族が住む26匹(オス:15匹、メス:11匹)の飼い猫を対象とし、そのうちの13匹は2人家族、7匹は3人家族、4匹は4人家族、2匹は5人家族の家で暮らしています。

実験1と同様の方法で、ヒトの名前を呼び、顔写真をモニターに表示し、猫がモニターを見る時間を調査しました。

結果

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https://www.nature.com/articles/s41598-022-10261-5より

上の図では、縦軸に注視した時間、横軸に猫が飼育されている家庭の家族の人数を表し、赤い点は呼ばれた名前と表示された写真が一致した場合、青い点は一致しなかった場合を表しています。

名前と家族の顔写真が一致する場合と一致しない場合で、モニターを注視する時間に有意な差はありませんでした。

しかし、同居する家族の数が多いほど、一致しないときの写真を見る時間が長くなりました。これにより、同居する家族の数が影響することがわかります。

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https://www.nature.com/articles/s41598-022-10261-5より

さらに、上の表は、猫と家族が一緒に暮らした時間でグループ化したものです。short(中央値より短い)よりもlong(中央値より長い)の方が、名前と画像が一致したときにはモニターを見る時間が短く、一致しなかった時にモニターを見る時間が長くなっていることがわかります。

これにより、一緒に暮らした時間が長い方が、名前を認識できる可能性がより高いと考えられます。

考察

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家庭で飼育されている猫は、同居猫の名前を呼ばれるとその名前の猫の顔を期待しており、同居する他の猫の名前を認識していることがわかりました。

また、同居家族が多く、飼育期間が長いほど、ヒトの家族の名前も一致している可能性が高いことがわかりました。同居する家族が多くなると、必然的に家族間で名前を呼び合う頻度が高くなり、飼育期間が長くなれば名前を聞く機会が増えます。

これにより、猫はヒトとの生活の中で名前を聞き分け、その名前の人物が反応するのを観察し、名前と顔の関連を学習している可能性が示唆されました。

まとめ


今回の実験と結果について、「知ってた」「そんな感じはしてた」と思った方も多いかもしれません。しかし、研究があまり進んでいない猫について、他の猫の名前を認識しているかを科学的に証明した、とても意義のある研究です。

もし、愛猫に自分の名前を覚えてもらいたかったら、同居家族にたくさん名前を呼んでもらえる環境の方が良いでしょう。また、飼い主が猫の名前をたくさん呼ぶことで、猫も猫自身の名前を覚えるようになるかもしれません。

名前を呼んだりスキンシップをとったりして、これまで以上に愛猫との絆を深めてくださいね。

【最新研究】猫の寿命が30年に!?注目の研究をわかりやすく解説

猫は腎臓病にかかりやすいことが知られており、死亡原因の上位を占めています。食事や生活週間などを気をつけていても腎臓病にかかってしまうことも多く、今のところ治療法はありません。

しかし、もし猫の腎臓病が「治せる病気」になれば、猫の寿命が30歳になるのも夢ではないと言われています。

本記事では、猫の寿命が30年になるとされる最新の研究についてわかりやすく解説していきます。

猫の腎臓病

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7歳以上の70%の猫が患っているという報告もある腎臓病。腎組織は一度破壊されると回復することはなく、進行を遅らせることはできても、治療する方法はまだありません。

腎臓病の原因は、塩分の過剰摂取だけでなく、タンパク質の過剰摂取や排泄の我慢、ストレスなども考えられます。猫の飼い主の多くは、これらの原因を取り除き、健康的に生きられるよう気をつけています。

しかし、腎臓の60%以上が壊れるか、機能が低下しないと症状が現れないため、気付いたときにはすでに進行してしまっています。腎臓病を早期に発見するためには、定期的な血液検査や尿検査が大切です。

宮崎徹教授のプロフィール

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現在東京大学大学院の研究センターに籍を置いている宮崎教授は、もともと臨床医で、救急科や内科で研修を行っていました。しかし、医学が進歩したのにも関わらず、「治らない病気」が存在する現状を何とか打開したいと考えたため、研究分野へとシフトしました。

その後、自己免疫疾患の研究を行い、人間の血液中に含まれる「AIM」というタンパク質を発見しました。AIMを中心としたさまざまな病気について研究を続けている際に、獣医師との出会いからAIMと猫の腎臓病の関連に気付いたそうです。

AIMと猫の関連

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AIMは「Apoptosis Inhibitor of Macrophage」という言葉の略で、「マクロファージを死ににくくする、元気にする」という意味があります。

マクロファージとは
マクロファージは白血球の一種で、全身の組織に広く分布しています。
体内に病原菌やウイルスなどの異物が侵入すると、マクロファージが食べて消化・殺菌することで感染を防いでいます。さらに、異物の情報をT細胞に伝え、より強力な免疫を獲得します。

病気の多くは、体内に本来存在しない物質がたまることが原因です。例えば腎臓病であれば、腎臓に死んだ細胞などのゴミがたまり、腎臓が壊れて機能が低下します。

AIMはゴミがたまっていることをマクロファージなどに知らせる働きがあり、情報を受け取ったマクロファージや他の細胞がゴミを除去するという仕組みがあります。AIMの働きが関与しているとされるのが、肥満や肝がん、そして腎臓病です。

猫のAIMは正常に機能していない

AIMはIgMというタンパク質に付着しています。本来は体内に異物が侵入するとAIMがIgMから離れて機能しますが、猫の場合はIgMとの結びつきが強固で離れられず、AIMがあるにも関わらず、欠損しているのと同じ状態であるといえます。

予防と治療が可能に

機能するAIMを猫の体内に注入することで、腎臓病を予防するだけでなく、腎機能が低下した猫にも効果があると見込んでいます

副作用は見つかっていませんが、抗体ができると効きにくくなる可能性も考えられ、今後も研究が進められます。

現在の研究段階と今後の展望

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宮崎教授は、(株)レミアというベンチャー企業を設立し、治療薬を開発しました。

すでに治験が行われおり、腎臓病の猫にAIMを投与すると腎臓の数値が改善していくことが確認されています。今後は薬事申請に必要な臨床試験を行い、2022年までの実用化を目指しています。

猫以外にも…

薬が実用化されればネコ科の動物だけでなく、犬にも効果があると考えられます。犬の飼い主さんもぜひ希望を持ちましょう!

人間の医療でも研究が進んでおり、人間の腎臓病に対応できる薬も開発中です。さらに、アルツハイマー型の認知症への応用も可能と考えられています。

実際に寿命が30年になるかは不明

宮崎教授の研究が進み治療薬が開発されれば、腎臓病で亡くなる猫が減少し、確実に寿命は伸びると考えられます。

しかし、加齢による体の衰えは止められませんので、今後は癌や心臓病などの他の病気で亡くなる猫が多くなるかもしれません。「猫の寿命が倍に」「猫が30年生きられるようになる」という言葉が一人歩きしていますが、必ずしもそうではないことを念頭に入れておきましょう。

それでも、腎臓病で苦しむ猫が少しでも減るのであれば、猫を飼っている飼い主さんにとっては夢のある研究であることは間違いないでしょう。

研究への寄付が急増

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猫の飼い主にとって救世主とも言えるこの研究ですが、新型コロナウイルスの影響で経済的な打撃を受けたことから、現在はプロジェクトがストップしている状態です。

しかし、ウェブニュースに取り上げられたことをきっかけに、一気に注目が集まり寄付が増加しました。多くは猫の飼育経験がある人で、「うちの子は間に合わないけど、今後のために頑張ってください!」というコメントもたくさん寄せられています。

研究に協力したいと思った方は、以下のページから寄付ができます。1,000円程度の小額から寄付可能で、クレジットカードやインターネットバンキングで支払いができます。

東京大学基金
https://payment.utf.u-tokyo.ac.jp/tokyo/entry.php
寄付目的で「支援プロジェクトを指定する」を選択後、支援プロジェクトの一覧から「宮崎徹教授の猫の腎臓病治療薬研究」を選択してください。

また、この研究についてわかりやすく説明した宮崎教授の本も出版されたばかりです。こちらも、興味があればぜひ手にとってみてください。

まとめ

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生きているものには必ず死が訪れます。これに抗うことはできません。しかし、愛猫の苦痛が軽減され、少しでも長生きしてくれるのであれば、飼い主として幸せなことでしょう。

多くの飼い主を悩ませてきた猫の腎臓病が「予防できる病気」や「治療できる病気」になるのは目前です。ぜひ、今後の宮崎教授の研究に注目していきましょう!