【獣医師監修】アメリカン・コッカー・スパニエルの好発疾患と予防法

アメリカン・コッカー・スパニエルは、垂れ耳と大きな目が特徴で、ぬいぐるみのような容姿がかわいらしい中型犬です。優しい性格の子も多く、獣医師の筆者も好きな犬種の1つです。

そんなアメリカン・コッカー・スパニエルですが、いくつかかかりやすい疾患があることをご存知でしょうか。

今回は、アメリカン・コッカー・スパニエルに特徴的な疾患と、日常生活で飼い主さんが注意したいことを、獣医師が詳しく解説します。

アメリカン・コッカー・スパニエルの基本情報

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歴史

アメリカン・コッカー・スパニエルの歴史は、スペイン系の猟犬種であるスパニエルが、14世紀頃にイギリスに持ち込まれたことが始まりと言われています。スパニエル系の犬はヨーロッパの広範囲で飼育されていたため、どこの国が原産かははっきりとわかっていません。

19世紀にイギリスからアメリカへと海を渡り、そこで短頭や長い耳に改良され、現在のアメリカン・コッカー・スパニエルの姿になったと考えられています。

「コッカー(cocker)」とは英語で「ヤマシギ」という鳥を意味し、イギリスでスパニエルがヤマシギ狩りの手伝いをしていたため、「コッカー・スパニエル」と呼ばれるようになりました。

身体的特徴

アメリカン・コッカー・スパニエルは猟犬にルーツを持つので、筋肉質な体型をしています。イングリッシュ・コッカーと比べて、頭頂部が平たく、マズルは短めで、被毛が厚いのが特徴です。
体高は約36cm~38cm体重は約11kg~13kgです。

被毛の色は、ブラック単色、ブラック&タン、クリーム単色、ダークレッドブラウン単色、ホワイトを含む2色以上のパーティ・カラーなど、様々です。

性格

性格は明るく、人によく懐きます
警戒心が弱くおおらかなので番犬には向きませんが、好奇心旺盛で遊び好きなため、子供や知らない人ともすぐに仲良くなれるでしょう。

アメリカン・コッカー・スパニエルの好発疾患

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アメリカン・コッカー・スパニエルでは耳や眼、首周りなどの上半身の疾患が比較的多く発生します。
まずは、どんな病気にかかりやすいのかをしっかりと理解しましょう。

外耳炎

【症状】
過剰な耳垢。細菌や酵母の二次感染が起こると痒み、発赤、腫れ、悪臭など。
【原因】
特発性脂漏症により、微生物増殖を伴わない過剰な角化異常が認められる。
【備考】
甲状腺機能低下症によっても、過剰な耳垢を伴う外耳炎が見られることがある。

拡張型心筋症

【症状】
運動不耐性(疲れやすくなる)、呼吸困難(肺水腫や胸水貯留による)、腹水貯留など。
【原因】
本犬種においては遺伝の関与が疑われている。他にもタウリンやL-カルニチンなどの栄養素の欠乏なども関与すると考えられている。
【備考】
心筋の収縮力低下と顕著な心腔拡大が特徴的な心疾患。発症年齢は幼若~老齢期と様々で、症状は徐々に悪化する場合もあれば急激に発現する場合もある。

甲状腺機能低下症

【症状】
元気消失、肥満、脱毛、徐脈、運動失調、食欲低下、便秘など。
【原因】
甲状腺ホルモンの産生低下や分泌減少による。
【備考】
甲状腺ホルモンの分泌には甲状腺だけでなく、視床や視床下部も関与している。これらのどこに異常があっても甲状腺機能低下症は発生する。

乾性角結膜炎

【症状】
角膜の光沢欠如、結膜浮腫、軽度の第三眼瞼突出、眼脂(粘液性~膿性)、眼瞼痙攣、角膜潰瘍など。
【原因】
免疫介在性(涙腺炎、瞬膜腺炎)、先天性、神経性(創傷、頭部打撲)、犬種依存性など。アメリカン・コッカー・スパニエルでは犬種依存性が認められている。
【備考】
眼表面の水分が減少し表在性角膜炎と結膜炎を呈する。

緑内障

【症状】
疼痛、角膜浮腫、散瞳、視覚消失など。
【原因】
眼房水の排出路である隅角の発生異常により、眼の中に眼房水が溜まり、眼圧が上昇することによる。他にも、白内障や糖尿病に続発するタイプの緑内障もある。
【備考】
水晶体脱臼、白内障、眼内出血、網膜萎縮などを続発することもある。

特発性てんかん

【症状】
発作、痙攣、意識障害、視覚障害、感覚異常など。
【原因】
検査しても、脳内外に異常が見られない。
【備考】
特発性てんかんは犬で最も一般的に見られるてんかんである。発作が30分以上続くか、休みなしに発作が連続することを重積と言い、放置すると脳損傷に繋がるのですぐに動物病院を受診する必要がある。

椎間板ヘルニア

【症状】
疼痛、歩様失調、四肢の不全麻痺、排尿制御失調など。
【原因】
徐々に進行する椎間板の線維性変性などにより椎間板が背側に突出し、脊髄を圧迫する。
【備考】
比較的高齢で発生する。深部痛覚消失(肉球の間の骨を強くつねっても嫌がらない)から48時間以内に手術を行わないと、手術後も脊髄機能が回復する可能性は低い。

アメリカン・コッカー・スパニエルの飼育環境

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好発疾患を理解した上で、日常生活でどのようなことに気をつけるのかを知っておきましょう。
病気の予防や早期発見に役立ててください。

1. 耳のケアをしっかり行う

アメリカン・コッカー・スパニエルで圧倒的に多いのは、耳の疾患です。特に外耳炎と、そこから波及する中耳炎、内耳炎は非常によく見かけます。

これらの疾患は、悪化すると耳道摘出や鼓室胞切除といった大手術を行う必要があります。
垂れ耳であること、耳の毛が長いことなど、耳道環境が悪化しやすい犬種ですので、定期的な耳掃除が病気予防のカギです。

また、動物病院によっては「オトスコープ」という耳の内視鏡ができる所もあります。麻酔は必要ないので、このような検査も定期的に行うといいかもしれません。

2. 眼の健康もチェック

耳のチェックと同時に、眼の状態も把握しておきましょう。
眼のチェックは、次のような点に気をつけましょう。

  • 目ヤニが多くないか
  • 目が赤くないか
  • 瞬きがちゃんとできているか
  • まぶたが痙攣していないか
  • 目がしっかり開いているか

3. 爪切りや足裏の毛の処置を定期的に

アメリカン・コッカー・スパニエルは定期的に足裏や足周りの毛を整えないと、すぐにモジャモジャになってしまいます。
見た目が悪いだけではなく、踏ん張りが効かなくなって腰に負担がかかってしまいます

爪や毛などの伸びた部分は定期的に処置してあげましょう。

まとめ

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アメリカン・コッカー・スパニエルの飼い主さんは、犬種特有の好発疾患を理解した上で、病気の予防や早期発見に努めましょう。

特別なことをする必要はなく、日常生活の中で健康観察やお手入れを継続してあげてください。

【獣医師監修】ビーグルの好発疾患と飼育時に注意したいポイント

ビーグルは活発で人懐っこい、非常にフレンドリーな犬種です。「スヌーピー」のモデルとなっていることでも有名ですよね。

元気いっぱいのビーグルですが、それゆえに体調が悪そうだと不安になります。そのため、ビーグルがかかりやすい病気について理解しておき、異変をすぐに察知できるようになることが大切です。

この記事では、ビーグルの好発疾患について、獣医師が詳しく解説していきます。

ビーグルの基本情報

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歴史

ビーグルの祖先は、もともとは「嗅覚ハウンド」に分類される犬種で、古代ギリシャ時代には優れた嗅覚を使ってウサギ狩りの手伝いをしていました。

その後、ヨーロッパ中で広まり、イギリスを中心に品種改良が進んで現在のビーグルの形に至りました。

身体的特徴

体の大きさはオス・メスともに、体高33~40cm、体重7~14kg程度で、筋肉質でがっしりとした体格をしています。

被色は、白色、褐色、黒色の3色が組み合わさった「ハウンドカラー」または「トライカラー」が一般的です。被毛は短めですが、しっかりと密集して生えています。

性格

ビーグルはもともと群れで狩りをしていたため、社会性や協調性があってフレンドリーな性格が特徴です。
人にも懐きやすく、子供や他の犬とも良い友達になれるでしょう。逆に、ひとりで過ごすのは苦手なので、仕事などで家を空ける時間が長い場合には向かないかもしれません。

探究心が強くて少し頑固な面もあるので、子犬の頃からしっかりとしつけをしておくことが重要です。

ビーグルの好発疾患

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ビーグルは軟骨に関わる疾患、皮膚疾患、腫瘍疾患が多い犬種です。これは遺伝的な要因も関与しています。
聞き慣れない病気もあるかもしれませんが、順番に見ていきましょう。

甲状腺癌

【症状】
頸部の腫瘤として触知される。甲状腺機能低下症(元気消失、脱毛、運動失調、便秘、肥満など)や甲状腺機能亢進症(多食、体重減少、嘔吐、下痢多飲多尿、脱毛など)の症状が見られることもある。
【原因】
ビーグルは他の犬種と比較して甲状腺腫瘍の発生が多い。
【備考】
犬の甲状腺腫瘍の90%以上は悪性で、60%が両側性である。また30%ほどで転移が認められる。

気管虚脱

【症状】
ガチョウの鳴き声と表現される「ガーガー」という咳。重度になると失神、呼吸困難、発熱、運動不耐性(疲れやすい)など。
【原因】
通常は丸い気管が潰れ、そこを空気が通ることで特徴的な咳が出る。軟骨を形成するコンドロイチンなどの減少やカルシウム結合の減少などにより軟骨の固さが維持できないことによる。
【備考】
6歳以上の肥満犬にも多く見られる。

椎間板ヘルニア

【症状】
疼痛、歩様失調、四肢の不全麻痺など。
【原因】
椎間板髄核の線維様変性が進行し、若い年齢で比較的急性に発症する。
【備考】
診断にはCTやMRI検査が必要となり、これらは全身麻酔が必須となる。

特発性てんかん

【症状】
発作、痙攣、意識障害、視覚障害、感覚異常など。
【原因】
異常(脳腫瘍や外傷など)が見られない。
【備考】
特発性てんかんは犬で最も一般的に見られるてんかんである。発作が30分以上続くか、休みなしに発作が連続することを重積といい、すぐに適切な処置を行わないと脳損傷に繋がる。

ピルビン酸キナーゼ欠損症

【症状】
貧血、運動不耐性(疲れやすい)、頻脈など。
【原因】
ピルビン酸キナーゼという酵素の遺伝的欠損により、溶血性貧血が起こる。
【備考】
年齢とともに骨髄線維症に進行することもある。

壊死性脈管炎

【症状】
発熱、頸部痛、不全麻痺、発作、失明など。
【原因】
免疫介在性疾患と考えられているが、先天性の要因も示唆されている。
【備考】
若齢犬に発症し、ステロイド反応性髄膜炎のより重篤な病態と言われている。

ビーグルの飼育環境と健康チェック

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これら好発疾患を踏まえて、普段の生活でどんなことに注意すべきなのかを解説します。
特に、病気の早期発見を重視した内容ですので、ぜひチェックしてみてください。

1. 首の痛みを見逃さない

頚部の椎間板ヘルニアにおける臨床徴候の一つに、首の痛みがあります。
しかし、犬は首の痛みを言葉にして訴えることはできません。首に違和感がある時には、以下のような徴候が見られます。

  • 動きたがらない
  • 抱っこした時にキャンと鳴く
  • 首を持ち上げない(上を見ない)

ちなみに、犬にも肩こりはあります。首を動かさなくなることで肩に力が入り、上半身の血流が悪くなります。すると、肩関節の可動域が狭くなり、余計に血流が悪くなるという悪循環に陥ります。

首が痛いだけと侮ってはいけません。

2. 首輪よりもハーネスを使用する

首に負担をかけないためにも、最近では首輪よりもハーネス(胴輪)を使用する方が増えています。

ビーグルは、気管や椎間板の疾患が発生しやすい軟骨異栄養犬種に分類されるため、普段から首周りには注意しておきましょう。

3. 肥満に注意

ビーグルは脂肪が付きやすい犬種です。
過度な体重や脂肪は、関節への負担や内蔵の圧迫、さらに糖尿病などの誘発といった悪影響があります。食事管理や適度な運動によって体重をキープしましょう。

適切な体型は、上から見て腰にクビレが少しある、肋骨が軽く触れるくらいと言われています。

4. 歯茎の色をチェック

貧血や黄疸は、粘膜の色を確認することでわかることがあります。歯茎の色を見るのが一番わかりやすいでしょう。

健康な時の歯茎の色を把握しておき、色が薄くなっていないか、色がおかしくないかをチェックします。特に、何となく元気がない時、食欲がない時は歯茎を見てみることを忘れないようにしましょう。

5. 高齢になったら定期的な健康診断を

人間と同じように、犬も高齢になるにつれて病気が現れることが多くなります。
血液検査、レントゲン検査、超音波検査など、体全体をくまなくチェックしていきます。7歳以上では半年に一度の健康診断をしましょう。

まとめ

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愛犬との生活は楽しいものですが、それも健康があってこそです。

病気を早くに発見することが、健康への最短距離です。何か不安なことがあれば、お気軽に動物病院までご相談ください。

犬が自分で排泄できなくなったらどうする?排泄介助の方法を解説!

老化や病気などが原因で、犬でも排泄の介助が必要になることがあります。

しかし、排泄の介助といっても、具体的にどのようなことをすればいいのか知らない飼い主さんも多いのではないでしょうか?

今回の記事では、犬の排泄介助について、方法や注意点をご紹介します。

排泄介助が必要な理由

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1. 老化で足腰が弱くなった

排泄機能は失われていなくても、足腰の筋肉が衰えて排尿の姿勢が取れなくなってしまった場合には、排泄介助が必要になります。
トイレに連れて行ったり、排泄の姿勢をとる補助をして、最終的には自分で排泄をさせます。

2. ヘルニア等による下半身麻痺

高齢犬に限らず、重度の椎間板ヘルニアなどになると、下半身が麻痺して排泄機能が失われてしまいます

筆者の犬も、9歳で椎間板ヘルニアになった際、自分で立てないだけでなく、支えてあげてもおしっこができなくなってしまったことがあります。これは、下半身の神経が完全に麻痺していたことが原因でした。

幸い、鍼灸治療をしたことですぐに排尿障害は改善しましたが、排尿障害は自分で排尿できないのは犬にとっても飼い主にとっても大きなストレスになると感じました。

3. 神経や脳の病気で立てなくなった

神経や脳の病気でも、排泄の姿勢を取れなくなったり、神経が麻痺して自分で排泄ができなくなってしまうことがあります。

4. 老化で前立腺が大きくなった

老犬になり、前立腺が大きくなると、排泄がしづらくなることがあります。
この場合は、排泄ができないわけではないので、補助してあげることで自分で出せるようになります。

自分で排泄ができる場合

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排泄機能が失われたわけではなく、トイレまで歩けない、排泄の姿勢が取れないといった場合には、飼い主さんが補助をしてあげるだけで自分で排泄ができます。

トイレに連れて行く

家の中でトイレをする場合は、定期的にトイレに連れて行ってあげましょう。
「歩けるけど、トイレに行くまでの段差がまたげない」という場合は、トイレまでの障害物を無くしたり、トイレシーツだけを平面に敷くようにすることで、自分でトイレにたどり着くことができるかもしれません。

外に連れて行く

散歩中にしかトイレをしてこなかった犬は、あまり歩けなくても外に連れ出してあげることで排泄できるかもしれません。

ただし、毎回外に連れて行くのは飼い主さんにとっても犬にとっても負担なので、できるだけ家の中でも排泄ができるようトレーニングをしておくことをおすすめします。

排泄の姿勢を補助する

自分の足でうまく立てない場合は、腰のあたりを支えて、排泄の姿勢を取らせてあげることが重要です。

筆者の犬の場合、排尿障害が改善した後も、しばらくは自分の足で立っておしっこの姿勢を取ることができなかったため、腰を支えてあげることで排尿を促していました。

便の場合は肛門を刺激する

便の場合、手や綿棒で肛門を外側から刺激してあげると、腸が動いて便が肛門の方に出てきます
なかなか自分で排便をしようとしない犬でも、刺激を与えることで自力で出せる可能性があるので試してみてください。

自分で排泄ができない場合①圧迫排尿

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自分で排尿ができない場合には、「圧迫排尿」や「カテーテル」などで人工的に排尿させます。
まずは「圧迫排尿」についてみてみましょう。

オスの方が難しい?

圧迫排尿は、オスよりもメスの方が時間がかからずにすぐに排尿できます

オスの場合は尿道が長くてねじれているため、なかなか尿が出てこないことがあるかもしれません。
オスの圧迫排尿のコツは、膀胱を押す際におへその方へ持ち上げながら圧迫することです。そうすることで、捻じれた尿道が真っすぐになり、比較的スムーズに排尿できます。

圧迫排尿の注意点

①膀胱内と尿道にある尿を出し切る

膀胱に尿が残っていると、体中に細菌が増殖して病気の原因になります。
圧迫排尿の際は、尿をできるだけ出し切るようにしてください。

②膀胱を強く圧迫しない

膀胱が過度に膨らんでいたり、膀胱を強く圧迫しすぎると、膀胱が破裂する恐れがあります。膀胱の破裂は腹膜炎を引き起こし、最悪の場合死に至ることもあるので注意が必要です。

③必ず獣医師に習ってから行う

圧迫排尿のやり方はネットにも出ていますが、実際に動物病院でやり方を教えてもらい、練習をしてからの方が安全です。
うまくできない場合は、無理に頑張って圧迫しすぎると危険なため、自分でできるようになるまで動物病院に通って教えてもらった方が良いでしょう。

自分で排泄ができない場合②カテーテル

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カテーテルを尿道に通し、注射器のようなもので尿を吸い取る方法もあります。
筆者の犬の場合は、圧迫排尿でうまく尿を出すことができなかったので、病院でカテーテルをもらって排尿をしていました。

カテーテルの注意点

①トイレシーツの上で行う

圧迫排尿に比べて、カテーテルによる排尿はおしっこが周りに飛び散りにくいです。それでも、カテーテルを抜いた時などに飛び散ってしまうことがあるので、必ずトイレシーツを敷いてから行うようにしましょう。

②カテーテルは消毒してから使う

カテーテルは、毎回消毒をした上で、麻酔のジェルを塗って尿道に入れます
使用後は、綺麗に洗って干せば2回ほど使用できますが、くれぐれも衛生管理には気をつけてください。

③なるべく2人がかりで行う

慣れてしまえば1人でもできるかもしれませんが、できれば2人で行った方が良いです。
犬も慣れないうちはカテーテルを怖いと感じてしまうので、1人が体勢を支えて犬の気をそらしながら、もう1人が集中して排尿を行うようにすると良いでしょう。

まとめ

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自分で排泄がスムーズにできないのは、犬にとっても飼い主さんにとってもストレスがかかることです。

排泄機能が失われていないうちは、トイレに連れて行ったり、排泄の姿勢を取らせるなどのサポートで排泄ができます。

一方で、下半身の麻痺などで、特に排尿機能が失われることも珍しくありません。その場合は、獣医師の指示に従い、圧迫排尿やカテーテルによる排尿のやり方を覚える必要があります。

【獣医師監修】腰への負担に要注意!ウェルシュ・コーギーの好発疾患

コーギーは元々牧羊犬として活躍していましたが、現在ではイギリス王室でも飼われている犬種として有名です。

一方で、かかりやすい病気も複数あり、動物病院に通っている子も少なくありません。

今回はウェルシュ・コーギーのかかりやすい病気とおすすめの飼育環境について、獣医師が解説していきます。

ウェルシュ・コーギーの基本情報

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歴史

コーギーには、ペンブロークとカーディガンの2種類がおり、それぞれ異なった歴史を持ちます。なお、日本で多く飼われているのはペンブローク種です。

ペンブローク

ペンブロークは、1107年にフランドル(ベルギーからフランス北部にまたがる地域)の織工がウェールズに移住した際に一緒にやってきたとされています。ウェールズのペンブロークシャーで牧畜犬として飼われ、スピッツなどと交配して改良されて現在の姿になりました。

カーディガン

カーディガンは、紀元前1200年頃に生まれたと伝えられています。中央アジアからヨーロッパに導入されてイギリスにやってきて、牧畜犬として活躍していました。

有能な犬であったことから、1925年頃まではその存在が隠されていましたが、イギリス国王が飼育したことをきっかけに、世間に知られるようになりました。

身体的特徴

ウェルシュ・コーギーは、胴長短足が特徴で、体はがっしりとした筋肉質です。被毛はダブルコートです。

カーディガン種の方が少し大柄で、毛色のバリエーションが豊富です。

性格

好奇心が旺盛で、遊ぶのが大好きです。勇敢で自己主張が強いことから「性格が悪い」と言われることもありますが、物覚えも良く、飼い主に忠実であるため、しっかりしつければ良いパートナーになれるでしょう。

ウェルシュ・コーギーの好発疾患

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コーギーには、犬種に特異的に発生しやすい疾患がいくつかあります。聞き慣れないものもあるかもしれませんが、どれも気をつけたい疾患です。

大切なのは、どんな症状が出るのか、その徴候を見逃さないことです。コーギーの好発疾患を理解し、日々の健康観察に活かしてください。

椎間板ヘルニア

【症状】
腰~背中の痛み、歩様異常、後肢の麻痺、排尿障害など。
【原因】
椎間板物質の突出により、脊髄が圧迫されることによる。
【備考】
分類の中で最も重いグレードⅤでは、深部痛覚消失後から48時間以内に手術を行わないと脊髄機能が回復する可能性は低い。異常が見られたらすぐに動物病院へ。

変性性脊髄障害

【症状】
徐々に進行する後肢の麻痺に始まり、前肢、首へと進行していく。跛行(足を引きずる)、歩様異常、尿失禁、呼吸困難など。
【原因】
はっきりとした原因は不明。遺伝的な素因があるとも言われている。
【備考】
麻痺はあるが痛みはないので、後肢麻痺だけでは元気や食欲に異常は見られない。足をこすって歩くようになったら、傷を作らないように足先を保護する必要がある。

糖尿病

【症状】
多飲多尿、削痩、肥満、被毛の変化、各種感染症(皮膚感染症、膀胱炎、外耳炎、子宮蓄膿症など)、白内障、嘔吐、下痢、便秘など多岐にわたる。
【原因】
インスリンの分泌低下。加齢、肥満、環境の影響によってインスリンの作用が不足することによる。
【備考】
副腎皮質機能亢進症、ステロイドの投与、発情周期関連などがその他の糖尿病に関連する。糖尿病は糖代謝に異常を示す代謝性疾患であり、異常なケトン体が蓄積する。ケトン体が多くなるとアシドーシスや昏睡が起こる。

フォンウィルブランド病(vWD)

【症状】
出血が止まりにくい。
【原因】
フォンウィルブランド因子(vWF)は血小板の接着に関与し、この因子に異常が見られると出血時間の延長が見られる。
【備考】
乳歯の生え変わりに血が止まらない、手術時に血が止まらないなどによって発見されることがある。

上皮基底膜ジストロフィ(無痛性角膜潰瘍、持続性角膜びらん)

【症状】
眼瞼痙攣、流涙、角膜びらんなど
【原因】
角膜の基底膜細胞が機能的あるいは形態的に変化することによる。
【備考】
潰瘍を伴うこともある。ジストロフィは「組織の縮退、形態異常」の意味。

ウェルシュ・コーギーの飼育環境


コーギーで気をつけたいのが、骨関節疾患脊髄障害です。これらは遺伝的に発生しやすいものですが、生活環境を見直すことで発生率を下げることもできます。

既に実施している方も多いと思いますが、今一度確認し、問題点はぜひ改善してみてください。

滑りにくい床に

コーギーは軟骨異栄養犬種といい、生まれつき軟骨が弱い犬種であるため、腰部椎間板ヘルニアが発生しやすいです。

椎間板ヘルニアの予防のためには、腰に負担をかけないことがもっとも重要です。

日常生活を送る家の床が滑りやすいと愛犬のブレーキが効きにくくなり、体に変な力が入ってしまいます。フローリングなどの床の家は、カーペットを敷くなどの対策をとってみてください。

段差にも注意

腰に負荷がかかるタイミングとして、段差の昇り降りも挙げられます。ソファや椅子などに飛び乗る、あるいは飛び降りた際に椎間板ヘルニアを発症することも珍しくありません。

骨折を始めとする他の骨関節疾患を予防する意味も込めて、家の中の段差を極力無くす工夫をしてみましょう。
人間にとっては小さな段差も、足の短いコーギーにとっては大きく思えることもあるので、注意深く点検しましょう。

抱っこは横抱きで

犬の基本姿勢は、背骨が地面に対して並行となっています。よって、抱っこをする時も横抱きにすることが推奨されます。

縦の抱っこ(頭が上、お尻が下になっている抱っこ)は背骨に負担がかかるため、やめた方がいいでしょう。

同様に、手を持って二本足で歩かせる行為も腰への負担となるおそれがあり、椎間板ヘルニアを誘発する可能性があるのでやめた方がいいでしょう。

糖尿病への配慮

コーギーの好発疾患の一つに糖尿病があります。糖尿病は生活習慣やその子の体質、他の病気の有無など様々な要因がリスク因子となります。

特にコーギーでは、肥満が糖尿病のリスク因子として重要です。食事管理や適度な運動によって太りにくい体づくりを目指しましょう。

また、肥満は骨関節に過度な負荷をかけるため、スリムな体型維持は椎間板ヘルニアの予防にも繋がります。

まとめ

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今回は、コーギーに多い病気を中心に解説しました。普段の生活の中で、危険はないか改めて確認してみてください。

話は変わりますが、コーギーのおしりは写真集にもなっていますよね。ご存知でしたか?

コーギーと一緒に暮らしている方は、おしりも愛でつつ、愛犬の健康も守ってあげてください。

【体験談】犬の椎間板ヘルニア。手術をやめて鍼灸治療に切り替えた話

今年の冬、筆者が飼っている10歳のダックスフンドが、椎間板ヘルニアになってしまいました。
初めは「すぐに手術」と言われ、大きな動物病院を紹介してもらったのですが、色々なことを検討する中で、手術をやめて「鍼灸治療」に切り替えました

今回の記事では、発症をしてからの経過や、治療方法を切り替えた経緯、実際に鍼灸治療を行った結果など、筆者の実体験をご紹介します。進行が進んでしまった椎間板ヘルニアの治療は手術だけではないことを、犬の飼い主のみなさんに知っていただければ幸いです。

発症〜椎間板ヘルニアと診断されるまで

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発症日

朝からぐったりし、元気がない。排便の回数が少なく、排便の態勢をとってもなかなか出せないことから、初めは便秘を疑う。
今考えると、この時排便ができなかったのは、後ろ足が痛くて踏ん張ることができなかったためだと考えられる。

発症後1日目

歩いたときに後ろ足がもたつく様子が見られるようになり、だんだんと両足を引きずり出し、夕方には完全に歩けなくなる。椎間板ヘルニアを確信するも、かかりつけの動物病院が休業日だったため、受診は明朝に見送る。

2日目

午前、病院にて椎間板ヘルニア・ステージ3と診断。
進行が早く、進行性脊髄軟化症を発症してしまうと危険なため、早く手術をした方が良いと言われる。2日後に大きな動物病院での手術前検査を予約してもらう。

下半身の麻痺により排尿障害があったので、動物病院でカテーテルを使って出してもらう。足の皮膚をつねっても、全く反応を示さず、すぐにステージ4に進行。排便は自分でできて食欲はあるものの、嘔吐してしまい、ぐったりした様子。

手術をやめ、鍼灸治療に切り替える

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獣医師さんに「すぐに手術した方がいい」と言われたものの、10歳のシニア犬ということもあり、遠くの病院まで慣れない電車で通い、全身麻酔で手術を受けさせることには少し抵抗がありました。

手術前検査を翌日に控える中で色々と調べるうちに、「鍼灸治療」という方法に出会います。たまたま家の近くに、鍼灸治療をやっている動物病院があったので、夕方に急いで行ってみました。

情報量も少なく、手術をやめて治療を切り替えることには非常に迷いがありました。しかし、鍼灸医の先生には「椎間板ヘルニアにかかって、鍼で歩けるようにならなかった犬はいない」と言われたため、その言葉に賭けてみることに。

3日目

鍼灸治療に切り替えることを決意し、翌日の手術前検査はキャンセルした。
早速、夜7時ごろに鍼灸治療をしてもらう。するとなんと、夜中の2時頃、トイレにて自力でおしっこを出せるようになった。

感覚麻痺、排尿障害が徐々に回復

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おしっこが自分で出せないというのは、犬にとってもストレスですし、飼い主としても非常に心配なので、2度の鍼灸治療で排尿障害が早期に回復したことは非常によかったと思います。

4〜5日目

立つことはできないが、この日も座ったままなら少しずつ自分でおしっこを出せる。ただし、量が少ないため、自宅で1日1回カテーテルで排尿。

6日目

何度か足を引きずりながら自分で少し移動してしまう。感覚を取り戻しつつあるのだろうが、「絶対安静」と言われているので、動かないよう常に見張っていることに。

7日目

2度目の鍼灸治療へ。おしっこを大量に出せるようになり、カテーテルは全く必要なくなった。

週1ペースで鍼灸治療を続ける

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その後は約1ヶ月ほど、週に1回のペースで鍼灸治療をしに動物病院に通いました。

少しずつ下半身の感覚を取り戻してきて、歩きたい気持ちになって来るようでしたが、1ヶ月間は「絶対安静」と言われ、なるべくベッドから一歩も出さないようにします。

「バギーに乗せて外に連れて行くくらいは大丈夫かな?」と思いましたが、それもNGでした。とにかく動かさないこと。これが大切です。

犬のストレス解消のために・・・

犬にとっては、感覚が戻ってきているのに歩けない、歩いてはいけないことで、ストレスが溜まってくる。
とは言え、おもちゃで遊んであげることもできないので、おやつを入れたコングを手で持って、体が動かないように注意しながら与えたりした。

リハビリ開始!

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鍼灸治療を始めてから1ヶ月が経つと、獣医師さんからは「そろそろリハビリを始めましょう」と言われました。
絶対安静の期間は本当に動けませんが、リハビリが始まると、本人が歩きたいだけ歩かせて良いことに。

通院の間隔が開き、自宅でお灸も

回復して来ると、週1回だった通院のペースは、2週間、1ヶ月に1回に短縮。
代わりに、自宅で簡単なお灸ができるようレクチャーしてもらう(上画像)。

少しずつお散歩もできるように

お散歩は、アスファルトの上などは抱っこやバギーで通るが、ウッドチップが敷き詰めてある柔らかめの道では、少しずつゆっくりと歩かせて行く。

おやつを使って足を跨がせるリハビリ

しっかりと後ろ足を使って歩く練習をするため、おやつを使って飼い主の足を跨がせるリハビリも開始。完全に後ろ足まで跨ぎきってから、おやつを少しずつ与える。

治療開始から約2ヶ月、走れるように!

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鍼灸治療を開始してから2ヶ月が経つと、若干もたつきながらも、走り回れるまでに回復しました。
感覚麻痺になるまで進行していた椎間板ヘルニアが鍼灸だけでここまで回復するとは、正直信じがたい気持ちでしたが、犬も非常に嬉しそうに動き回っており、散歩も以前と同じようにできるようになったのです。

その後

椎間板ヘルニアを発症をしてから7ヶ月が経ちましたが、その後も月に1度の通院を続けており、再び歩けなくなるようなことは今のところ一度もありません
はしゃぎすぎて足を滑らせてしまった時に、若干足がもたつく様子がみられましたが、通院の間隔を一時的に短くしてもらうと、またすぐにちゃんと歩けるようになりました。

実際に経験して感じた鍼灸治療の特徴

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1. 犬の体への負担が小さい

特に高齢犬や持病のある犬の場合、手術そのものが難しいことも多いため、手術を諦めてしまう飼い主さんも少なくありません
その点、切らずに治療でき、麻酔の必要がない鍼灸治療は、犬の体への負担が小さいのが最大の特徴です。

2. 一度にかかる費用が安い

椎間板ヘルニアの手術をした場合、重症度にもよりますが、検査費用や入院費用も含めて30万円以上かかることも珍しくありません。

一方の鍼灸治療は、こちらも場合によりますが、筆者の犬では、1回目の治療が初診料含めて1万円以内におさまりました。
ただし、手術に比べて鍼灸治療の場合は、一度ですぐに治るわけではありません。走れるようになるまでの約2ヶ月の間に7〜8回程度通院し、飲み薬代や家で使うお灸代なども含め、なんだかんだで10万円程度かかったと思います。

3. 通い続けることで、予防になる

椎間板ヘルニアは、手術をしても再発する可能性があります。
鍼灸治療でももちろん再発の可能性はありますが、月1回程度の通院を続けることで、再発の予防効果があります。

月1回の通院と、漢方薬を飲み続けることにより、確かに出費はかさみますし、時間もとられます。しかし、手術をした場合でもサプリメントを飲み続ける犬は多いですし、再発してまた手術をすることを考えれば、長期的に見ても鍼灸治療のメリットはあると言えるでしょう。

まとめ

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今回は、椎間板ヘルニアの手術をやめて鍼灸治療に切り替え、走れるまでに回復した筆者の犬の実体験をご紹介しました。

もちろん、手術にも鍼灸治療にも、それぞれにメリットとデメリットがあり、どちらの方が優れているとは言えません

しかし、ペットの鍼灸治療についてはまだあまり認知されておらず、まして下半身が一度麻痺した犬が、鍼灸治療だけで走れるようになるなど、知らなければ思ってもみないことでしょう。

今回の記事を通して、ペットにおける椎間板ヘルニアの治療方法のひとつとして、鍼灸治療があることを知っていただき、治療の選択肢を広げていただければ幸いです。

【獣医師監修】手足が短いマンチカンの好発疾患と予防法

マンチカンは猫の中でも短足が特徴の猫種です。
それゆえに走り回る姿などがかわいらしく、日本でも人気を誇っています。
ペットショップなどで見かけることも多いでしょう。

マンチカンという猫種を飼う上で、特に気をつけたい病気があるのをご存知でしょうか。
今回はマンチカンの好発疾患についてまとめました。現在、マンチカンを飼っている人や、飼おうと思っている人はぜひ参考にしてください。

マンチカンの名前の由来と歴史

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「マンチカン」には「小さい子供」「小人」という意味があり、『オズの魔法使い』に登場する、短い足で小柄な体つきが特徴の種族の名前に由来するそうです。

もともと、短足の猫は突然変異種として古くから確認されていましたが、1983年にアメリカのルイジアナ州で短足の猫が発見されたことをきっかけに、遺伝子検査などの研究が進められました。

その後、ブリーダーにより繁殖が行われました。交配を肯定する人と、遺伝子疾患を心配する人の間で論争が巻き起こりましたが、足の短い猫がさまざまな場所で見つかり、近親交配のリスクが低下したことから、1995年にアメリカでマンチカンが新種として認定されました。

マンチカンの好発疾患


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マンチカンには、遺伝的な背景や解剖学的特徴から発生しやすい疾患がいくつかあります。
特にアメリカンショートヘアやスコティッシュフォールドが掛け合わさっている子は、これらの猫種に特徴的な遺伝性疾患が見られるかもしれません。


どんな病気があり、どんなサインを発するのかを知ることで、病気の早期発見・早期治療に繋がります。
病気について理解を深め、異変に気付いたら、すぐに動物病院を受診しましょう。

多発性嚢胞腎


【症状】
・多飲多尿
・尿色が薄い
・嘔吐
・食欲不振などの腎不全症状

【原因】
遺伝的な要素が大きい
【備考】
腎臓に多数の嚢胞が形成され、腎機能不全を引き起こす。両親の既往歴の確認は重要で、本疾患に罹患した猫は繁殖させるべきではない。



肥大型心筋症


【症状】
・呼吸速迫
・呼吸困難
・開口呼吸
・嘔吐
・突然ニャーニャー鳴く
・後肢麻痺
・後肢冷感

【原因】
アメリカンショートヘアの血筋では遺伝性に伝播することが知られている。

【備考】
肥大型心筋症では心臓内で血栓が形成されやすくなる。形成された血栓が大腿動脈に閉塞し、動脈塞栓症を引き起こすことが多い。

骨軟骨異形成症

【症状】
骨の成長が不十分で身体が大きくなりにくい。
【原因】
マンチカンの短足は常染色体優性遺伝の軟骨異形成による。見た目を追求するあまり、病気になりやすくなることもある
【備考】
人間では「小人症」とも呼ばれる。軟骨異形成によって変形性関節症が発症しやすくなる。

変形性関節症


【症状】
・四肢の痛み
・跛行(歩くときに足を引きずる)
【原因】
関節に存在する軟骨が骨になり、動かすときに痛みを生じる。
【備考】
スコティッシュフォールドの血筋は要注意。定期的に関節(特に肘関節)のレントゲンでチェックしていく。

毛球症

【症状】
・嘔吐
・便秘
・食欲不振
・腹痛などの消化器症状
【原因】
グルーミングによって口から摂取された被毛が、腸に閉塞することによる。
【備考】
長毛の子は定期的なブラッシングで余分な被毛を除去してあげる必要がある。毛玉をコントロールするフードやサプリメントを利用する方法も。

椎間板ヘルニア


【症状】
・首から腰への痛みや違和感
・ふらつき
・歩行困難
・排尿障害(尿失禁や排尿困難)

【原因】
背骨の間にある椎間板が脊髄を圧迫し、刺激することによる。
【備考】
普段の生活から歩き方や排尿の様子を観察し、異常があればすぐに動物病院へ。


マンチカンの飼育環境

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ご紹介した疾患はマンチカンだからといって必ずかかるものではなく、
普段の生活習慣を意識することで、発症のリスクを低減させることが可能です。


では、どんなことに注意すべきなのか、4つのポイントを順番に見ていきましょう。



1.太らせないための食事管理


短い手足のマンチカンは、常に膝や肘などの関節への負担が大きくなります。
そのため、体重が増加するとさらに関節への負担が増し、関節炎などのリスクが高まります。


運動量を増やすことで体重の維持を目指すのではなく、食事管理をしっかり行い、関節軟骨に優しい生活を心がけましょう。

2.適度な運動


摂取するカロリーを制限することによって体重の増加は抑えられますが、全く運動しないのではストレスが溜まってしまいます。


激しく運動をさせる必要はありませんが、キャットタワーを設置するなど、日常的に体を動かせる環境を用意してあげるといいでしょう。



3.交配に注意


マンチカンは、手足が短くなるように品種改良された猫種です。


ある形質(見た目)同士の掛け合わせは、死産のリスクを高めることが知られていますが、短足の遺伝子もその一つです。
つまり、短足の親同士の交配では、死産リスクが高いということです。


よって短足のマンチカンでは、短足マンチカン×長足マンチカン、あるいは短足マンチカン×雑種猫で交配をさせる必要があります。
マンチカンの多頭飼いをしている方は注意しましょう。
また、短足のマンチカンが産まれてくる割合は2〜3割程度と言われています。

4.被毛のお手入れ


中には毛の長いマンチカンもいます。長毛の子は、被毛のお手入れをしないと簡単に毛玉が形成され、皮膚病に繋がる恐れがあります。
また、グルーミング(毛づくろい)によって大量の毛を口にすることで、毛球症のリスクも上がります。




病気のリスクを減らし、美しい被毛を維持するために、定期的にブラッシングをしてあげましょう。

まとめ

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マンチカンは見た目にも非常にかわいらしい猫種であることは間違いありません。しかし、その一方でかかりやすい病気も多く、一緒に暮らす上では覚悟しなければならないことも少なくありません。

大切な家族の一員として病気に関する知識をしっかり身につけ、たくさんの愛情を注いであげてください。

【獣医師監修】フレンチブルドッグがかかりやすい病気と対策法

フレンチブルドッグは、愛嬌のある表情や元気な性格が特徴で、日本でも飼育頭数の多い犬種です。

フレンチブルドッグを始めとした「鼻ぺちゃ」の専門誌もあるなど、根強い人気を誇っています。

しかし、外見が特徴的なフレンチブルドッグは、遺伝疾患など、犬種ならではのかかりやすい病気が存在します。
今回は、フレンチブルドッグの好発疾患と、日常生活における注意点について、獣医師が解説します。

フレンチブルドッグの基本情報

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歴史

フレンチブルドッグは、その名の通りフランスが原産の犬種です。
その歴史には諸説ありますが、一説には、18世紀にイギリスのブルドッグがフランスでパグやテリアと交配されて生み出されたと言われています。

身体的特徴

フレンチブルドッグの身体は、頭が大きい、目が大きい、鼻が潰れている、顔にシワが多いなどの非常に多くの特徴を備えています。

また、ブルドッグの耳が下に垂れ下がっているのに対して、フレンチブルドッグの耳は「bat ear(コウモリ耳)」と呼ばれる通りピンと立っているのが大きな特徴です。

性格

フレンチブルドッグの性格は、社交的、活発、従順、温厚と言われています。
その上、吠えることもあまりないので、飼育しやすい犬種です。

フレンチブルドッグの好発疾患

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フレンチブルドッグは、身体の構造上、呼吸器や骨関節系、皮膚の疾患が多い傾向にあります。
特に呼吸に関する病気は、生活に支障が出ることもあるため、日頃から注意してあげたいところです。

鼻腔狭窄(びくうきょうさく)

【症状】
・呼吸時の大きな音
・呼吸しづらそうな様子
【原因】
多くは先天的に鼻の穴が小さく、その奥の鼻道が狭くなっていることが原因。
後天的な原因としては外傷などがある。
【備考】
短頭種ではいくつかの呼吸器異常が重なることが多く、「短頭種気道症候群」という名前が付けられている。

軟口蓋過長(なんこうがいかちょう)

【症状】
・いびき
・呼吸困難
・呼吸時の大きな音
【原因】
喉の奥にある軟口蓋が生まれつき長く、気道にかぶさっていることが原因。
【備考】
鼻腔狭窄と同様、「短頭種気道症候群」のひとつ。
あまりにも呼吸に支障があるようなら、避妊や去勢手術の際に軟口蓋を短くする手術をする。

椎間板ヘルニア

【症状】
・首の痛み、首を持ち上げない
・震え
・患部を触ると怒る
・足を引きずる、四肢の不全麻痺
【原因】
背骨と背骨の間にある椎間板が、脊髄を圧迫することによる。
【備考】
ミニチュアダックスフントのような腰部椎間板ヘルニアだけでなく、頸部や胸部の椎間板ヘルニアもよく見られる。
頭が大きいフレンチブルドッグは、首などに負担がかかりやすい。

熱中症

【症状】
・体温の上昇(40℃以上)
・呼吸速拍
・粘膜が赤くなる
・意識混濁、ショック症状
【原因】
室温の上昇、興奮、激しい運動、長時間のドライヤーなど。
【備考】
短頭種で最も注意すべき病態。
急激な冷却は血栓形成に繋がることもあるため、熱中症が疑われる際は首や内股などを保冷剤などで冷やしつつ、すぐに動物病院に駆け込むこと。

皮膚疾患

【症状】
・かゆみ
・脱毛
・患部の赤み、フケ、カサブタ
【原因】
皮膚のバリア機能低下による細菌や真菌の感染、アトピーなど。
【備考】
「膿皮症」(皮膚常在菌による)、「マラセチア性皮膚炎」(脂っぽく、ベタベタする)などが主な原因疾患となる。
全体的にムッチリした体型であるため、趾間(しかん;足の指の間)や顔のシワの環境が悪くなりがち。

角膜潰瘍

【症状】
・目やに
・目が痛くて開けられない
・角膜の混濁、結膜充血、結膜浮腫
【原因】
多くは外傷によって角膜が傷つくことによる。
【備考】
鼻が短く、眼が大きいフレンチブルドッグは草や家具で眼を傷つけやすい。

肥満細胞腫

【症状】
・体表のしこり
・嘔吐、下痢などの消化器症状
【原因】
肥満細胞という白血球の一種が腫瘍化することによる。
【備考】
皮膚の肥満細胞が脾臓などに転移することもある。

日常生活のポイント①熱中症を予防する

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フレンチブルドッグのような短頭種を飼う上で、最も重要なことは「熱中症を予防すること」です。短頭種は、鼻が長い犬種に比べて呼吸が下手なので、体温調節が苦手です。

熱中症を予防するため、日常生活では次のようなことに気をつけましょう。

室温と湿度の管理

特に日本のような高温多湿の夏は、短頭種にはとても辛いもの。夏の間は常にエアコンを稼働し、室温が25℃以下になるように調整してあげましょう。

また、室温が適切であっても湿度が高いと熱中症になる恐れがあります。湿度は40%〜60%になるようにし、外出時も湿度の高い時は注意してください。

外出の時間帯

散歩や動物病院への通院の時間帯も考える必要があります。
特に夏場は、なるべく涼しい時間帯を選びましょう。

夏場の外出時は準備万全に

外に出る時間帯を調節しても、確実に熱中症を防げるとは限りません。
予期せぬ緊張や興奮によって、短頭種の体温は簡単に上がってしまいます。

できることなら、タオルや手ぬぐいに凍った保冷剤を入れ、首に巻いてあげるといいです。
また、ヒンヤリする素材の服などを着せるのも良いかもしれません。

日常生活のポイント②皮膚病対策

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フレンチブルドッグは皮膚トラブルが起きやすい犬種です。

特に顔の周りはシワが多く通気性が悪いため、皮膚の環境が悪くなりがちです。
定期的にシワのお手入れをしてあげましょう。

シワのお手入れ方法
①濡れティッシュなどでシワの間を拭く。
②その後、うちわなどでシワの間を乾かしてあげる。

日常生活のポイント③こまめな健康チェック

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犬は言葉を話せませんが、皮膚の異常や眼の異常など、外見で分かる疾患も多くあります。
異常を見逃さないためにも、日頃の観察で正常な愛犬の状態を把握しておきましょう。

また、被毛が短いため、スキンシップをとりながら体表の腫瘤病変も見つけやすいでしょう。

そして、少しでも気になることがあれば早めに動物病院を受診することが大切です。

まとめ

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フレンチブルドッグは決して丈夫とは言えない犬種です。
特に、熱中症を防ぐために夏場は常に気をつけなければなりません。

短頭種という特徴をしっかりと理解し、愛犬との生活をより良いものにして頂ければと思います。

【獣医師監修】ヘルニア以外にも!ダックスフンドの好発疾患と予防法

ダックスフンドを飼っている方や、これから飼おうと思っている方は、ダックスフンドがかかりやすい病気をご存知ですか?

胴長犬種に多い「椎間板ヘルニア」の他にも、眼の病気や自己免疫疾患などがダックスフンドの好発疾患として知られています。

今回は、ダックスフンドの好発疾患の症状や、飼い主さんに日常生活で注意してほしいことを、獣医師が詳しくご紹介します。

ダックスフンドの歴史と特徴

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もともとはアナグマの狩猟犬

ダックスフンドはドイツが原産の犬種で、ドイツ語では「ダックスフント」と呼ばれます。
「ダックス」はドイツ語でアナグマ、「フント」は猟犬という意味を持ちます。

その名の通り、ダックスフンドは古くからアナグマ猟を手伝っていた犬で、短足胴長の体型を活かしてアナグマの巣穴にもぐり込み、アナグマを追い出す役割を担っていました。

3つのサイズがある

ダックスフンドには大きく3つのサイズがあり、大きい順に「スタンダード・ダックスフンド」「ミニチュア・ダックスフンド」「カニヘーン・ダックスフンド」と呼ばれています。

ダックスフンドの飼い方

ダックスフンドは体のサイズの割に活発で運動を好むため、毎日30~40分程度の散歩をさせてあげましょう。

また、もともと狩猟犬なのもあって声が大きいため、吠え癖がついてしまうとご近所に迷惑がかかってしまいます。
そんな時は、防音素材の壁紙を利用するなどの工夫をしましょう。

ダックスフンドの好発疾患

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椎間板ヘルニア

【症状】
・患部の痛み
・足を引きずる、歩き方がおかしい
・足の麻痺
・排尿障害
【原因】
遺伝性、慢性的な腰への負担、外傷など。
【備考】
背骨と背骨の間にある椎間板が突出し、脊髄を圧迫する疾患。
内科治療による緩和も可能な場合もあるが、根本的な治療は外科手術による。

進行性網膜萎縮

【症状】
・視力低下
・夜盲症(暗いところでの視力が低下)
・失明
【原因】
網膜に存在する光を感じる細胞の変性。遺伝的なものが多いとされる。
【備考】
早期の病態把握をし、病気と上手に付き合っていく必要がある。

白内障

【症状】
・水晶体の白濁
・視力低下
・失明
【原因】
糖尿病などの代謝性疾患、肥満、緑内障やぶどう膜炎からの続発など。
【備考】
放置すると緑内障やぶどう膜炎、網膜剥離などの眼疾患を続発する可能性がある。
早期に発見し、適切な処置を行う必要がある。

外耳炎

【症状】
・耳介の発赤
・耳の痒み
・耳の臭い
【原因】
耳道内環境の悪化による細菌や真菌の増殖。
【備考】
垂れ耳のダックスフンドは耳の通気性が悪く、耳内環境が悪化しやすい。

免疫介在性溶血性貧血

【症状】
・貧血
・可視粘膜(歯茎など)の蒼白
・黄疸
・尿の色が濃くなる
【原因】
遺伝性
【備考】
気付いた時にはかなり貧血が進行しているケースが多い。

日常生活でできる椎間板ヘルニアの対策

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床は滑らないように

腰への負担を軽減するために、まずは床の素材に注意しましょう。
フローリングなどの床材は滑りやすくブレーキが効きにくいため、足腰に負担がかかります。

小さな負担が積み重なって椎間板ヘルニアを発症することもありますので、床にはマットを敷くなどの対策が必要です。

段差をできるだけ小さく

ソファやベッドなどの高いところを上り下りするときにも、腰に負担がかかってしまいます。
なるべく段差を小さくするため、ソファやベッドには犬用の階段などをつけてあげましょう。

爪や足裏の毛は定期的にお手入れを

爪や足裏の毛が伸びていると、歩くときに滑り安くなってしまいます。
特にダックスフンドは足裏の毛が伸びやすいので、定期的にカットすることが大切です。

爪切りが苦手な子は、動物病院やトリミングサロンに相談してみましょう。

抱っこの仕方にも注意

みなさんは愛犬を抱っこするときに、どのような持ち方をしていますか?
頭を上に、お尻を下にした縦向きの抱っこは、実は腰に負担をかけてしまいます

愛犬が自然に立っている姿勢、つまり背骨と地面が水平になるように抱っこするのが正しい持ち方です。

正しい抱っこのしかた
①愛犬の横から抱っこする。正面からの抱っこはNG!
②片手をわきの下に入れ、肩を抱くように持つ。
③もう片方の手を両足の間から差し込み、手のひらで胸を支える。
④愛犬の体全体を自分の胸に付けるようにして、水平に持ち上げる。
⑤下ろす時は、愛犬の四肢が地面に同時に着くように水平に下ろしていく。

視力異常にいち早く気づくために

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たまに家具の配置を変えてみる

言葉の話せない動物の視力低下を見抜くのは簡単ではありません。
特に、家の中では家具の位置を覚えているため、視力が弱くても問題なく行動できてしまうのです。

そこで、たまにイスをいつもと違う位置に置いてみたり、ダンボールを床に置いてみたりと、部屋のレイアウトを変えてみましょう。
愛犬が障害物にぶつかってしまった場合、視力が低下している可能性があります

初めての場所に連れて行ってみよう

初めて連れて行く場所で、異常に動きたがらない様子が見られる場合、視力低下のサインかもしれません。
散歩の際にいつもと違うコースに連れて行くなどしてみましょう。

まとめ

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今回は、ダックスフンドがかかりやすい病気と、日常生活で気をつけてあげたいことを解説しました。

生き物にとって病気をすることは仕方のないことかもしれません。
病気を完全に防ぐことはできませんが、病気のリスクを抑えるために色々と工夫することはできます。

愛犬の犬種がかかりやすい病気をしっかりと理解し、日頃から対策を徹底してあげましょう。