【獣医師監修】猫が水を飲まないのは病気?動物病院を受診すべき?

猫の飼い主さんであれば、日常生活の中で愛猫の食事量や尿量、排便回数などを気にしている方も多いでしょう。

しかし、猫が飲む水の量はいかがでしょうか?目には見えづらいこともあり、なかなか把握できていない飼い主さんもいることと思います。
もしも猫の飲水量が少ないのなら、猫の体に異変が起きている可能性があります。

今回の記事では、猫の飲水異常について、獣医師が詳しく解説していきます。

そもそも飲水異常とは

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飲水異常は、「水を飲めない」、あるいは「水を飲む量が少ない」状態のことを指します。

ややこしいですが、水をたくさん飲むようになる「多飲」とは区別しています。

猫が水を飲まなくなる理由

猫が水を飲まなくなる原因は主に口の中にあります。水を飲まない以外にも、食欲不振などの症状を伴うことが多いです。

飲水量の低下は脱水状態を引き起こし、循環する血液量が減少してしまいます。
これによって尿を産生する腎臓への負担が増大し、慢性腎不全のリスクが高まることになります。

猫の飲水異常で受診した際に聞かれること

動物病院内では緊張もあって、猫の飲水の様子を確認できないことがあります。
そのため、自宅での猫の様子が、飲水異常の原因を探る手掛かりとなります。

  • 飼育環境:食物の種類や形状(カリカリ、缶詰など)、飲水用容器の形状など
  • 元気、食欲の有無:飲水行動をするか
  • 嘔吐や下痢の有無:そのほかにも体調に異変はないか
  • 飲水量:どの程度、飲水量が減少したのか

猫の様子を動画撮影しておこう

猫が水を飲みにくそうにしている様子を動画で撮影しておくと、診断の役に立つかもしれません。
しかし、水飲み場でカメラを構えていては、猫も落ち着いて水を飲めません。

遠くから、さりげなく撮影しましょう。また、猫の手が届かないところからに定点カメラを設置しておくと便利です。

猫の飲水異常で考えられる疾患

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なぜ愛猫が水を飲まないのか、考えられる理由はいくつかあります。
もし健康上の問題があるとしたら、速やかに異常を取り除く必要があります。

衰弱

猫が弱ってしまって、水を飲もうにも動けない状態です。
衰弱する原因は様々ですが、猫が弱っていることが確認できた場合はすぐに動物病院を受診してください。

猫は、本能的に体調不良を隠そうとする動物です。気が付いた頃にはすでに衰弱していることもあります。

口内炎

猫が口を痛がり、飲食に支障を来たしている状態です。

猫では、猫カリシウイルスの感染慢性腎不全による粘膜の傷害、リンパ球形質細胞性口内炎がよく見られます。

抗菌薬や消炎鎮痛薬の投与によって改善されることもあれば、治療がなかなか効かないこともあります。

また、肥満傾向のある猫では、食欲不振が継続することで「肝リピドーシス」という病気を発症することもあるため、たかが口内炎と言って甘く見てはいけません。

歯肉炎

3歳以上の猫の80%以上が歯周病」というデータもあるように、今や歯周病は猫にとっても一般的な疾患になりつつあります。

大抵の場合、飲水障害が見られる前に固いものを食べづらそうにする様子が見られます。
ドライフードを常食としている猫は、歯周病を見つけやすいかもしれません。

破歯(はし)細胞性吸収病巣

猫では、歯肉縁の歯質に吸収が起こることが報告されています。
つまり、歯が溶けてしまっているのです。

1976年に初めて報告された疾患で、原因は不明ですが、猫の60%に発生していると言われています。
歯肉炎と同様に、口の痛みによって飲食が障害されます。

破折(はせつ)

ケンカや不慮の事故などによって、歯が折れてしまうことがあります。

先端が欠けている程度であれば無症状のことも多いですが、深く折れている場合は歯髄が露出し、痛みが生じます
ケンカでの破折はほとんどが犬歯であるため、外からでも発見することは難しくありません。

口腔内腫瘍

猫の口腔内腫瘍はほとんどが悪性で、扁平上皮癌と線維肉腫が多いとされています。
食欲不振、口臭、嚥下(えんげ)障害(物をうまく飲み込めない状態)が見られることが多いため、飲水障害以外の症状にも注意が必要です。

咽喉頭麻痺

のど(咽頭)から食道への食物の移送がうまく行えない状態を咽頭麻痺と言います。

原因は中枢神経系の異常や、神経筋接合部の異常などが考えられますが、ほとんどが先天性のものと言われています。
飲み込むことがスムーズでなくなるため、誤嚥性肺炎のリスクもあります。

眼疾患

白内障や網膜剥離などによって、視力の低下、あるいは失明が起こると飲水行動が減少します。

猫の視力の測定は非常に困難ですが、あまり動かなくなる、慣れている場所で家具にぶつかるなどの徴候が見られた際には要注意です。

猫の飲水で普段から気をつけたいこと

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飲水量の減少は、よほど注意していないと見逃してしまう徴候です。
普段から、猫の健康に関するデータは揃えておきましょう。

飲水量の把握は日頃から

置き水や多頭飼育の場合には、正確な飲水量の測定は困難というか不可能です。
しかし、最初に器に入れておく水の量を把握し、一日でどのくらい水が減ったのかを見ることはできます。

メモリがついている器などを選ぶとよいかもしれません。

飲水用の器を変えてみる

猫の中には、気に入らない器からは水を飲まない子もいます

また、成長などによって体の構造が変化すると、ずっと使用している器でも水が飲みにくくなることもあります。
病気の可能性も疑いつつ、猫の器を試しに変えてみるとよいでしょう。

まとめ

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腎不全のリスクを低下させるためにも、猫にはたくさん水を飲んで欲しいところです。

そのためにも、猫の飲水量の異常に一早く気付くことは大切です。
猫の飼い主さんは、愛猫の飲水状態を日頃から観察し、何か異常があれば早目に動物病院を受診しましょう。

【獣医師監修】実は怖い!猫の鼻汁や鼻血は危険な病気のサインかも

みなさんは、「鼻腔(びくう)異常」という言葉を聞いたことがありますか?

鼻腔異常とは、鼻汁や鼻出血など、鼻に関する異常のことです。
例えば、愛猫に鼻汁や鼻出血が見られた時、飼い主のみなさんはそれが重大な鼻疾患の可能性であることを見抜けるでしょうか。

今回は、猫の鼻腔異常について、獣医師が詳しく解説していきます。

そもそも「鼻腔異常」とは?

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鼻腔異常は、「形態異常」「機能異常」に分けられます。

  • 形態異常:炎症などによる鼻の変形。鼻梁(鼻筋)の変形、鼻平面の変形、鼻腔内の変形など。
  • 機能異常:嗅覚異常、鼻平面の乾燥、分泌物(鼻汁など)など。

鼻腔異常は早期発見が困難

鼻腔異常を早期に発見するのは難しいです。

例えば、鼻梁(びりょう、鼻筋)の変形は非常にゆっくり起こるために気付きにくいです。
また、鼻出血や鼻汁、くしゃみが出ていても、それが重い病気の兆候だとは認識しづらいかもしれません。

普段の様子をしっかりと確認し、少しでも鼻に異常があると感じたら、動物病院の受診を検討してみてください。

猫の鼻腔異常で受診した際、動物病院で聞かれること

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鼻腔異常の診断には、全身麻酔をしてCT検査をすることもあります。
そのため、猫になるべく負担をかけないためにも、問診による疾患の推定が重要です。

猫の鼻腔異常で受診する前に、次のようなポイントをチェックしておきましょう。

  • いつから:急性か慢性か
  • 飼育環境:同居猫の有無、外に出るか、周囲環境の変化など
  • ワクチン接種歴:猫ウイルス性上部気道炎の可能性
  • 既往歴:先天性口蓋裂、歯周病の有無など
  • 鼻汁の性状:色(透明、黄色など)、粘度(漿液性、粘調性など)
  • 鼻出血の有無

猫の鼻腔異常で考えられる疾患

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鼻汁などが見られる原因は、単純な鼻炎から腫瘍性疾患まで様々です。ひとつずつ見ていきましょう。

鼻炎

細菌やウイルスなどの微生物や、アレルギーによって、鼻腔内に炎症が起こっている状態です。
くしゃみも同時に見られ、細菌の二次感染が起こっている場合には鼻汁の色が青っぽくなります。

真菌感染症

アスペルギルスやクリプトコッカスといった、真菌(カビの仲間)の感染による鼻炎です。
猫での発生は比較的少ないとされていますが、感染した時の症状は激しく、鼻出血を伴うことも多くあります。

特に、猫免疫不全ウイルス(FIV)や猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫は、免疫力が低下しているため、真菌に感染しやすい傾向にあります。

鼻腔内腫瘍

鼻腔内に腫瘍が発生することで、鼻粘膜の炎症や腫瘍からの出血が見られます。
また、腫瘍が大きくなるにつれて顔の骨を溶かし、顔面の変形が見られることもあります。

鼻腔内腫瘍自体の発生率はそれほど高くありませんが、発生した時の悪性率は非常に高く、早期に発見することが重要です。
しかし、症状が鼻汁程度の軽い場合には、重篤さに気付くことが遅れることも多いです。

鼻腔内異物

植物の種などの異物が鼻の中に存在している状態です。
通常はくしゃみによって異物は排除されますが、鼻腔の隙間に入ったりするとなかなか出てこなくなります。

結果として、鼻粘膜が炎症を起こし、鼻汁が排出されるようになります。
抗菌薬や抗アレルギー薬の治療に反応しない鼻炎が認められた場合には、鼻腔内異物の存在を疑います。

猫ウイルス性上部気道炎

猫ヘルペスウイルスⅠ型猫カリシウイルスによる感染症です。
定期的なワクチン接種によって予防が可能ですが、免疫力の弱い子猫は感染しやすい傾向があります。

また、猫ヘルペスウイルスⅠ型は一度感染すると、体内に潜伏感染するため、成猫になってもストレスなどによって症状が現れることもあります。

主な症状は鼻汁と結膜炎、眼脂(目ヤニ)で、特に子猫はこれらの症状によって衰弱することもあります。

口蓋裂(こうがいれつ)

口蓋裂は、口腔内の上顎部分(硬口蓋)と鼻腔が繋がっている状態です。

生まれつき硬口蓋に穴が開いている場合もあれば、外傷によって後天的に口腔と鼻腔が繋がる場合もあります。

口蓋裂による鼻腔異常の特徴は、主に食事後に食べ物が鼻腔から出てくることです。
また、食べ物が気管を通って肺に入ることで誤嚥性肺炎を引き起こすこともあるため、注意が必要です。

歯肉炎

現在、3歳齢以上の猫における歯周病の罹患率は80%以上と言われています。

歯茎に炎症が起きている状態を「歯肉炎」と言いますが、歯肉炎が進行することで鼻腔にも炎症が波及し、鼻汁の症状が現れることがあります。
歯周病の予防には、歯磨きの習慣が非常に重要です。

猫の鼻腔異常で注意すること

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猫の鼻腔異常は早期発見が特に重要です。
人間にとって鼻汁や鼻出血はありふれた症状かもしれませんが、猫も同様とは限りません。症状や病態が進行する前に、治療を行うことが大切です。

異常を見極めるには日々の観察が重要

猫は、健康なときでも鼻が濡れています

それが鼻汁の増加によるものかどうかの判断は、日常の観察が物を言います。健康な時ほど、健康状態の把握をしてあげてください。

まとめ

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猫の鼻腔異常は、嘔吐などと比較しても症状として地味なことが多いです。しかし、だからと言って放置するのではなく、危機感を持てるかどうかが大切です。

愛猫の健康は、飼い主の皆さんが守っていきましょう。

【クイズ】犬の何%が患っている?歯周病とデンタルケアの重要性

人間の歯周病対策の必要性はよく知られていますが、今や犬にとっても歯周病は一般的でよく見られる疾患です。犬の歯周病はどんな疾患で、どのようなケアをすればいいのでしょうか。

本記事では、犬のデンタルケアについてクイズ形式で解説していきます。

それではさっそく、犬のデンタルケアクイズにチャレンジしてみましょう!
Q.1 犬の歯周病について「誤っている」のはどれ?
正解です!
不正解です!
正解は「犬は人間と比較して虫歯になりやすい」です。
犬は人間と比較して虫歯になりにくいと言われています。これは犬の唾液が弱アルカリ性であるためですが、一方でこのアルカリ性の唾液によって速いスピードで歯垢が歯石に変化してしまうという欠点もあります。

3歳以上の犬の約80%が歯周病を患っているというデータもあり、犬のデンタルケアは欠かせません。歯周病は歯垢や歯石中に存在する細菌が原因です。
Q.2 犬の歯周病の症状について「誤っている」のはどれ?
正解です!
不正解です!
正解は「歯周炎が進行すると歯肉炎になる」です。
犬の歯周病は、歯肉が腫れる歯肉炎と、歯を支えている歯周組織の炎症である歯周炎に分けられます。歯肉炎が進行すると歯周炎となり、歯が抜けたり顎の骨が折れたりします。

歯周病は、呼吸器や循環器などの全身の状態に影響を及ぼします。
口と鼻は解剖学的に近い位置にあるため、口腔内の炎症が鼻の中に波及することはよくあります。また、口腔内の細菌が血液を循環し、心臓や腎臓で繁殖することで心臓病や腎臓病を引き起こすこともあります。
Q.3 犬のデンタルケアの仕方として「誤っている」のはどれ?
正解です!
不正解です!
正解は「子犬のときは歯磨きは不要」です。
犬の健康を維持する上でデンタルケアは欠かせません。成犬になってからも歯磨きを嫌がらないように、子犬の頃から歯磨きに慣れさせておきましょう。

最初は口の周りを触る程度にし、少しずつ時間をかけて歯ブラシに慣れさせてあげてください。どうしても歯ブラシを嫌がるようであれば、指にガーゼを巻いて歯磨きペーストをつけて拭いてあげるだけでも立派なデンタルケアになります。

歯磨きガムでは、一部分の偏った部位の歯垢しか除去できません。あくまでもメインは歯ブラシで行い、補助やストレス解消として歯磨きガムを使用することをおすすめします。
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獣医師が教える子犬のしつけ②〜デンタルケアで口から健康づくり
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