日本は意外なあの犬!世界の「国犬」とペット事情をご紹介

国歌や国旗のように法律で定められているものではありませんが、日本の国花は「桜」と「菊」、国鳥は「キジ」とされていることをご存じの方も多いのではないでしょうか。同じように、世界や日本には国犬(くにいぬ)が存在します。

今回は、日本と世界の国犬とその国のペット事情を紹介していきます。

動物福祉先進国の「イギリス」

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犬との関わりや歴史が深く、多くの犬種が生まれたイギリスは、世界で最も原産国犬を輩出している国です。

ヨーロッパは他の国・地域と比べて、アニマルウェルフェア(動物福祉)への意識が高いと言われていますが、中でもイギリスでは、アニマルウェルフェア関連の法整備が進んでおり、動物愛護団体の活動も活発で、アニマルウェルフェア先進国とされています。

国犬は「ブルドッグ」

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イギリス王室でも愛された「ウェルシュ・コーギー・ペンブローク」は、エリザベス女王が長年愛した犬種であり、「ロイヤルドッグ」とも呼ばれ、イギリスの代表的な犬種の一つです。

しかし、イギリスの国犬が「ブルドッグ」であることは、あまり知られていないかもしれません。ブルドッグは、「勇気」「不屈」「忍耐」の象徴として、イギリス海軍のマスコットにもなっています。

ペットを飼う人が多い「フランス」

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フランスは2020年に行われた世論調査によると、何らかの動物を飼っている家庭が50.5%にものぼり、「ペット大国」と呼ばれています。

2022年の時点では犬が約800万頭、猫が約1400万頭飼育されていて、猫の飼育頭数の方が多い国ではありますが、他のヨーロッパ諸国と同様に、犬との結びつきや歴史が深い国でもあります。

国犬は「プードル」

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世界的に人気が沸騰している「フレンチ・ブルドッグ」もフランス原産ですが、フランスの国犬は日本でも大人気の「プードル」です。美しく優雅な容姿がフランスのイメージとぴったり合うのではないでしょうか。

愛らしい見た目に反して元々は猟犬で、フランス語でプードルを表す「caniche(カニッシュ)」は「カモを獲る犬」という意味の言葉が由来となっています。

動物に関する法律が厳しい「スイス」

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スイスは世界で最も厳しい動物保護法を設けている国の一つで、憲法レベルで動物の尊厳を定めている動物福祉先進国です。

犬のしつけにも非常に熱心な国で、以前は法律で犬のしつけが義務化されていましたが、「義務化しなくても飼い主が自主的にドッグスクールに通う」という理由から撤廃された経緯があります。

国犬は「セント・バーナード」

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そんなスイスの国犬は「セント・バーナード」です。セント・バーナードはアルプス山中で遭難救助犬として活躍してきた歴史があります。

同じスイス原産の犬にはよく似た容姿の「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」がいます。どちらも大型犬ですが、性格は比較的穏やかで優しい傾向があります。

動物保護施設が充実している「ドイツ」

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ドイツは動物福祉先進国の一つで、「ティアハイム」と呼ばれる動物保護施設が国内に多数存在しており、犬の飼い主には「犬税」を課して飼い主の責任の自覚を持たせるなど、動物と真剣に向き合う姿勢が印象的です。

犬のしつけにも熱心で、「犬と子供はドイツ人に育てさせろ」という言葉があるほどです。

国犬は「グレート・デーン」

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ドイツというと警察犬などで活躍している「ジャーマン・シェパード・ドッグ」のイメージが強いかもしれませんが、国犬は超大型犬の「グレート・デーン」です。巨体ながら穏やかな性格で、「優しい巨人」とも称されています。

猫好きが多い国「ロシア」

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世界的に見るとペットを飼育している人の中では犬の飼育率がもっとも高くなりますが、ロシアでは犬を飼っている人は34.7%なのに対し、猫を飼っている人は61.3%を占めています。

ロシア人が猫好きな理由には、「戦時中に猫達がネズミを駆除し、伝染病からロシアの人々の命を守ったという歴史的背景から、猫が大切にされている」という説や「寒冷な気候のため犬の散歩に出るのが難しい」という説があります。

国犬は「ボルゾイ」

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ロシアの国犬は、ロシア帝国時代に王侯貴族が飼育する高級な犬であった「ボルゾイ」です。

視覚を頼りに狩りをする「サイトハウンド」と呼ばれる種類の狩猟犬で、走るスピードも非常に早く、時速50kmを超えることもあります。

ペットを飼う人が少ない「日本」

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東アジアは世界各国と比較すると、ペットの飼育率が低い地域です。その中でも韓国、香港、日本の3カ国は特に低いとされています。

日本ではペットを飼っていない人が71.7%を占め、飼育率が一番高い犬でも12.8%しか飼育されていません。その背景には、共働き世帯の増加や住宅事情が影響していると考えられています。

国犬は「狆(ちん)」

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日本原産の犬の中で飼育頭数が圧倒的に多いのが「柴犬」ですが、国犬は「」です。犬公方と呼ばれた徳川綱吉の頃には、江戸城内で飼われていました。

また、皇族や高級武士、資産家の商家などの富裕層に寵愛されていた歴史があります。

まとめ

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国犬とは、政府などによって公式に認められたものと、そうでない非公式なものがあり、どんな理由で国犬とされるようになったのか、具体的な情報は残っていない場合があります。日本の国犬とご紹介した「狆」も非公式かつ仮公認のもので、国犬は「秋田犬」とされることもあります。

また、国犬はその国を代表する犬が多いですが、必ずしも飼育頭数が多い犬種とは限りません。むしろ、歴史的な結びつきに関連する場合が多く、その国の文化や歴史を反映する意味合いがあることも興味深いところです。

世界の国犬を知り、その観点から国の歴史や文化を考えると、その国の新たな一面が見えてくるかもしれません。

明治時代には「うさぎ税」があった?!日本のペットの歴史を学ぼう

私たち人間と共に暮らす動物の存在は、時代とともに変化しています。かつては番犬や猟犬など、人間の生活の手助けをする役割を担っていましたが、現代ではペットとして多くの人々の心を癒やし、家族の一員として扱われるようになっています。

この記事では、江戸時代以降の日本におけるペットの歴史を辿っていきます。その時々の人気や扱われ方の変化を知り、日本におけるペットの歴史を学んでいきましょう。

ペットが庶民に広まった江戸時代

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江戸時代に入り、世の中が平和で安定してくると、上流階級のみで飼われていたペットが庶民にも広まりました。

庶民の間で金魚が人気に

金魚は室町時代の末期には日本に渡来し、「こがねうを」という名の高級品で一部の貴族の間で人気がありました。

庶民が金魚を飼うようになったのは江戸時代の中期頃からになります。藩士が副業として金魚の養殖を始めたことをきっかけに大量生産され、金魚が格安で手に入るようになり、庶民の間にも金魚ブームが到来しました。

寛延元年(1748年)には「金魚養玩草(きんぎょそだてぐさ)」という金魚の飼育の指南書も出版されています。

すでに終生飼育を訴えかける動きも

江戸時代の読本作家で絵師の暁鐘成(あかつきのかねなり)は犬の飼育書「犬狗養蓄傳(いぬくようちくでん)」の中で、世界に先駆け、次のように飼い主に終生飼育を訴えました

「狗(いぬ)は則ち人間の小児と心得べし。その養い方悪しくして狂犬病犬と成り、人を咬むがゆえに遠き山野に捨てること不憫ならずや」

つまり「犬は人間の子供と同じように思うこと。飼い方が悪いと狂犬病に罹り、咬むからといって遠くの山に捨てることはとても可哀想なことだ。」と主張しています。

西洋文化の影響を受けた明治時代

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明治時代になり、多くの西洋文化が日本に入ってきました。西洋化は建築から散髪、洋装まで多岐にわたり、人々の生活を大きく変貌させました。ペットも例外ではなく、人々の生活に影響を与えました。

人気が加熱し「うさぎ税」が課される

西洋文化の到来と共に、西洋のうさぎも人気に火が付きました。当初は華族や士族などの富裕層を中心に人気を博していましたが、新聞や風刺画などのメディアで盛んに取り上げられるようになり、庶民の間でも人気になります。

明治5年(1872年)には「うさぎ税」が導入され、当時の公務員の初任給が1ヶ月で8~9円の時代に、うさぎ1羽につき1円もの高額な税金が課されました

ペットの役割が大きく変化した昭和

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戦争や高度経済成長期など、人々の暮らしが大きく変化していった昭和の時代。この時代のうねりの中で、ペットたちの置かれる立場も大きく変化していきました。

「日本犬」が天然記念物に指定される

明治以降、欧米から洋犬が積極的に輸入されるようになり、日本犬の飼育は急激に減少します。山間の僻地以外では日本犬がほとんど見られなくなり、昭和初期には純血の日本犬はほとんど姿を消すことになりました。

この現状に危機感を抱いた斎藤弘吉は、日本犬の復興を呼びかけ、「日本犬保存会」が昭和3年(1928年)に創立します。

そして、秋田犬が昭和6年(1931年)7月に国の天然記念物に指定されたのを皮切りに、昭和6年~12年にかけて日本犬の6犬種(柴犬、秋田犬、甲斐犬、紀州犬、北海道犬、四国犬)が次々と天然記念物に指定されました。

犬は番犬、猫はネズミ捕りをしていた

1950~60年代は、まだ犬には番犬の役割が求められ、外飼いが主流でした。中でも「日本スピッツ」は、よく吠える習性や真っ白で可愛らしい見た目から人気があり、一時期は純血種として登録される犬種の4割が日本スピッツだったとされています。

一方で、猫はネズミ捕りに重宝され、屋内外を自由に行き来して暮らしていました
しかし、どちらも半分ペット、半分益獣のような扱いであり、食事についてもペットにとっての栄養バランスは考慮されておらず、人間の残り物を与えられていました。

たびたび起こる熱帯魚ブーム

熱帯魚の最初のブームは1960年代に起こりました。それ以前にも熱帯魚の愛好家はいましたが、熱帯魚の販売価格や維持費がかなり高額で、一部の富裕層の趣味であったようです。しかし、60年代に入ると、生体の販売価格が抑えられ、飼育用品の普及も相まって、最初の熱帯魚ブームが起こりました。

1980年代後半~90年代前半のバブル期には「グッピー」が人気を博し、2000年代にはアニメ映画の影響で「カクレクマノミ」が人気になりました。

住宅事情と小鳥ブーム

1950年代後半~70年代にかけて、小鳥ブームが起こり、多くの家庭で飼育されるようになりました。特に、「セキセイインコ」や「文鳥」などが人気であったようです。

この時代は、集合住宅や団地が増えてきたため、犬や猫のようなペットを飼うことが難しくなっていたことが背景にありました。また、インコや文鳥は手乗りができ、鳴き声が可愛らしく、飼育が容易であることから、多くの人々に愛されました。

犬の飼い方に変化が見える70年代

1968年~84年までの16年間は「マルチーズ」が登録犬種の第一位を独占していました。マルチーズに加え、「ポメラニアン」や「ヨークシャー・テリア」といった小型の室内犬が人気を博し、この3犬種を表した「マル・ポメ・ヨーキー」という言葉が出来たほどです。

この頃から犬の放し飼いが減少し、ペットフードや動物病院などのペットを飼う環境が整備されていきました

ペットから家族の一員になった平成・令和

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バブル景気、そしてバブル崩壊後の長期低迷期をたどった平成。疫病や物価高騰に苦難する令和。そんな時代の中、ペットの人気や暮らしにはどのような変化があったのでしょうか。

バブル時代には大型犬が人気に

バブル期以前の大型犬は、映画やアニメの影響で「ラフ・コリー」が根強い人気を博していました。
その後、バブル期の80年代後半~90年代半ばになると、「ラブラドール・レトリーバー」や「ゴールデン・レトリーバー」などの大型の洋犬が豊かさの象徴として飼われるようになりました。また、人気漫画の影響で「シベリアン・ハスキー」も大人気となりました。

根強いハムスター人気

昭和から平成へ移りゆく頃、漫画の影響でハムスターブームが起こりました。その後、2000年頃には、アニメの影響で子どもたちを中心に再びハムスターの人気が高まり、関連アイテムも多数販売されました。ケージのカスタマイズを楽しめることも人気の一つの要素だったようです。

近年は、一人暮らしでも飼えるペットとして注目を集め、再び静かに人気が再燃しつつあります。

今も続く小型犬の時代へ

90年代後半は、現在も続く小型犬人気の始まりでした。短い脚で独特の可愛らしさがある「ミニチュア・ダックスフンド」が人気を集め、2000年代に入るとCMの影響で「チワワ」人気が爆発しました。

これら2犬種に加え、「トイ・プードル」も非常に人気があり、2003年から20年近く、この3犬種が人気犬種ランキングのトップ3を独占しています(ジャパン・ケネル・クラブ「犬種別犬籍登録頭数」より)。

まとめ

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江戸時代より前の時代では、庶民は生きていくだけで精一杯の状況にあり、ペットを飼う余裕がなかったと思われます。江戸時代以降も、貧しい人たちはペットを飼えませんでした。
また、第二次世界大戦中は、ペットを国に供出しなければならなかった悲劇もありました。

現在、私たちがペットを愛し、家族の一員として一緒に暮らしていられるのは、平和で豊かな暮らしができている証拠だと言えます。このように考えると、ペットを通して恵まれた時代に生まれたことに感謝の気持ちが湧いてくるのではないでしょうか。

【犬図鑑】マルチに働く犬がいっぱい!ドイツ原産の犬たちをご紹介

ヨーロッパでは「犬と子供はドイツ人に育てさせろ」という言葉があるくらい、犬のしつけに熱心で、飼い主に厳しい義務が課せられているドイツ。犬に対する意識がたいへん高く、動物福祉先進国としても知られています。

また、ドイツ原産の犬種は、日本でもジャパン・ケネル・クラブ(JKC)に多く登録されており、イギリスに次ぐ第2位の登録数を誇っています。

今回は、そんなドイツ原産の犬種を紹介していきます。

ドイツ原産の強面の犬たち

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ドイツの犬といえば、屈強な肉体と精悍な顔立ちの凛々しい犬を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ジャーマン・シェパード・ドッグ

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ジャーマン・シェパードといえば、警察犬のイメージが強いかもしれませんが、元々は牧場で牛や羊などの護衛や誘導する仕事をしていました。その後、警備、荷物を引く、物を回収するなどマルチな活躍を見せ、第一次大戦以降は優秀な軍用犬として働きました。

この頃日本にも軍用犬として入ってきましたが、きちんとした訓練が必要であるため、日本における犬の訓練もこの頃から盛んになったという歴史があります。現代でも、警察犬、麻薬探知犬、災害救助犬、盲導犬など幅広く活躍しています。

グレート・デーン

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超大型犬のグレート・デーンは、世界で一番背の高い犬としてギネス世界記録で認定されており、ドイツの国犬でもある代表的な犬種です。猟犬、軍用犬、害獣駆除など、幅広い分野で活躍していました。

ドイツ以外で呼ばれる「グレート・デーン(Great Dane)」という名称は「大きな、デンマークの」という意味になりますが、この犬種の誕生にデンマーク人は全く関与していません。ドイツでは「ドイツの犬」を意味する「ドイチェン・ドッゲ(Deutsche Dogge)」と呼ばれています。

ドーベルマン

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ドーベルマンという名前は、この犬種を作り出したフリードリッヒ・ドーベルマン氏に由来しています。ドーベルマン氏は税務職員であり、常に現金を持ち歩く必要があったため、優秀な護衛犬が必要だと考え、この犬種を育てました

特徴的な尖った耳や短い尾は、生後間もなく行われる耳・尾の断尾・断耳によるものです。しかし、近年は動物愛護に対する関心の高まりから、特にヨーロッパで断尾・断耳を行わない習慣が広がっています。

ボクサー

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ボクサーは19世紀後半までは闘犬や猟犬として活躍していました。しかし、1835年にイギリスで闘犬が禁止された影響を受け闘犬は減少し、また、畜産の進歩によって狩猟も衰退していくと、ボクサーは軍用犬や警察犬として活躍するようになります。

ドイツ生まれの犬種ですが、アメリカでも人気が高く、第二次世界大戦ではアメリカ軍の軍用犬としても活躍しました。そして、終戦後は軍人たちによって家庭のペットとしても迎えられるようになりました。

ロットワイラー

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ロットワイラーは長らく畜産業者に飼育され、大きな荷車を引くことを主な仕事としていました。そのため「肉屋の犬(metzgerhund)」と呼ばれていた時期もあります。しかし、19世紀中頃になると、物流が鉄道やロバによる荷車引きに代わっていき、ロットワイラーの出番が減ったため、一時は絶滅の危機に瀕するほどでした。

20世紀以降は、ロットワイラーのスタミナと勇敢さが評価され、警察犬、軍用犬、山岳救助犬として世界中で活躍しています。

ドイツ原産の可愛らしい犬たち

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ドイツ原産の犬には、日本でも人気がある可愛らしい小型犬もいます。

ミニチュア・シュナウザー

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ミニチュア・シュナウザーを含む「シュナウザー」と呼ばれる犬種には、大型犬の「ジャイアント」、中型犬の「スタンダード」、小型犬の「ミニチュア」の3つの犬種がありますが、最も古いのはスタンダードシュナウザーで、他の2種はスタンダードを改良した犬種です。

ミニチュア・シュナウザーは戦後に日本に入ってきましたが、当時の日本ではトリミング技術が発達していなかったため、あまり普及しませんでした。その後2000年頃から急速に人気が高まり、現在のような人気犬種になりました。

ミニチュア・ピンシャー

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「ミニピン」の愛称で親しまれているミニチュア・ピンシャー。英語圏でも「min-pin」という略称で呼ばれることがあります。犬種名は、ドイツ語で「テリア」を意味する「ピンシャー」から来ており、テリアと同様にネズミ捕りや番犬として活躍しました。

外見がドーベルマンに似ているため、しばしばドーベルマンの小型版と誤解されますが、実際にはミニチュア・ピンシャーの方が歴史は長く、その起源は17世紀から18世紀頃にさかのぼるとされています。

ダックスフンド

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ダックスフンドの大きさは、大きい方から「スタンダード」、「ミニチュア」、「カニーンヘン」の3つのタイプがあります。また、被毛も「スムースヘアード」、「ワイアーヘアード」、「ロングヘアード」の3種類があります。日本で一番多く見られるのは、「ロングヘアードのミニチュア・ダックスフンド」です。

ダックスフンドは元々アナグマを狩る猟犬で、アナグマが住む狭い穴に入り込めるように、脚を短くする選択的な繁殖が行われた結果、現在のような体格になりました。

ポメラニアン

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ポメラニアンは、スピッツ系の大型犬が現在のドイツ東部からポーランド北部にまたがるポメラニア地方で小型化された犬種だと考えられています。小型化といっても、当時は10kg前後の中型犬だったそうです。

その後、愛犬家で知られたビクトリア女王がポメラニアンを本国に連れ帰り、自ら繁殖させた結果、5kg程度まで小型化されました。それ以前のポメラニアンは、ホワイトとブラックのみの毛色でしたが、この頃から今ではメジャーなレッドの毛色が存在するようになったそうです。

ドイツ原産の犬の特徴

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今回はご紹介しきれませんでしたが、ドイツ原産の犬種には優秀な鳥猟犬も多くいます。また、他国の犬種には、シベリアン・ハスキーがソリ犬、ボーダー・コリーが牧羊犬といったように、一つの仕事に特化した犬たちも多くいます。一方でドイツ原産の使役犬たちは、警察犬、護衛犬、軍用犬、猟犬など、様々な場面で人間を手助けしてきたことが特徴として挙げられます。

可愛らしい小型犬たちも元々は猟犬や番犬として活躍していたため、愛玩目的で飼われていた犬がほとんどいない、珍しい国と言えます。

最後に

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ドイツでは店舗や公共交通機関など、ほとんどの場所へ犬を連れて行けます。その背景には、ドイツ人の犬に対するしつけの意識の高さがあり、それゆえに周りの人々も犬を受け入れる文化が根付いています。

日本でも犬の飼い主たちが、きちんとしたしつけをしたり、周囲への配慮やマナーを徹底したりすることで、ドイツのように犬を飼いやすい環境になるかもしれません。

日々少しずつでも意識することで、ドイツのような犬を飼いやすい環境が、日本でも実現することを願います。

【犬図鑑】独特な外見と文化!中国、チベット原産の犬たちをご紹介

近代まで一般家庭で犬を飼うことが難しかった中国。犬の文化も独特で、西洋の犬種との交配をあまりしてこなかったため、見た目も個性的な犬たちが多く、強く印象に残ります。

今回は、そんな中国、チベット原産の犬たちやその歴史、文化などをご紹介していきます。

カッコ内は2022年におけるジャパン・ケネル・クラブ(JKC)の登録頭数と順位を表します。

中国原産の犬

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中国原産の犬種については歴史的な資料が乏しく、はっきりとわかっていないことが多いのですが、一見しただけでもとても独特な外見をしている犬が多いという特徴があります。
ここからは、そんな中国原産の犬種をご紹介していきます。

パグ(12位、5,274頭)

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日本でも人気のあるパグは、鼻ぺちゃでシワシワの顔、大きな瞳と愛嬌のある顔が特徴的です。チベットに紀元前からいたとされ、チベタン・スパニエルやペキニーズなどの交配によって小型化したと伝えられています。

その後、仏教を通じて中国に入り、パグを飼うことで「魔よけになる」として宮廷で大切に飼われていました。17世紀頃オランダに渡ったことでヨーロッパに広がり、貴族や上流階級の愛玩犬として大変な人気犬種になりました。

ペキニーズ(19位、3,132頭)

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首周りの豊かな被毛が特徴で、小型ですが、まるで獅子のような貫録のある堂々とした姿をしています。

「神聖な獅子犬」とされ、宮廷のみで飼育されており、庶民が飼うことは許されていませんでした。仮に、ペキニーズを盗もうとした人間がいた場合、死罪に処せられたと言われる程です。

西太后にも寵愛されており、彼女の葬儀の際には棺の先導役を「モータン」という名のペキニーズが担いました。

チャイニーズ・クレステッド・ドッグ(50位、177頭)

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チャイニーズ・クレステッド・ドッグには「ヘアレス」と「パウダー・パフ」の2種類のタイプがいます。ヘアレスは頭部と足の先、しっぽなど体の一部分にだけに毛が生えており、パウダー・パフは全身が毛で覆われています。

非常にユニークな犬種ですが、その歴史はよくわかっていません。アフリカ産の無毛の犬と似ていることから、その血を引いているのではないかとする説があります。

チャウ・チャウ(51位、161頭)

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紀元前から飼育されている、歴史のある土着犬のチャウ・チャウ。古くから猟犬、番犬、そり犬、荷車の牽引犬、牧畜犬、護衛犬など様々な仕事をこなし、犬肉食や毛皮のためにも使われてきました。

チャウ・チャウが西洋に広まったのは19世紀頃で、ロンドンの動物園では「中国の野生の犬」として展示されました。愛犬家で知られたヴィクトリア女王が迎えたことで、家庭犬としての改良が行われるようになりました。

シャー・ペイ(91位、25頭)

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チャウ・チャウと同様に独特な青黒い舌を持つシャー・ペイは、チャウ・チャウと同じ起源を持つと考えられています。
特徴的な深いシワは、闘犬として活動する際に、咬まれても深手を負わないように改良されたと言われています。

ちなみに、中国語の「シャー・ペイ(沙皮)」には、砂のような(ざらざらした)皮という意味があります。

チベット原産の犬

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チベット原産の犬種はチベット仏教と密接な関係があり、寺院でとても大切に飼われていた犬が多いという特徴があります。
ここからは、そんなチベット原産の犬たちをご紹介していきます。

シー・ズー(10位、7,686頭)

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日本でも人気のあるシー・ズーは、ラサ・アプソとペキニーズを交配して作られた犬種だと言われています。一部はヨーロッパに渡ったものの、ペキニーズと同様にほとんどが中国の宮廷で飼育され、「神聖な獅子犬」として大切にされていました。

1930年代に本格的にヨーロッパに渡ったシー・ズーですが、現地ではよく似た犬種のラサ・アプソと混同され「アプソ(Apsos)」として明確に区別されない時代もありました。

そこで、鼻ぺちゃで脚が短い犬を「シーズー」口も脚もやや長い犬を「ラサ・アプソ」と犬種として区別するように繁殖されて、現在のスタイルに至ったと言われています。

ラサ・アプソ(95位、19頭)

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ラサ・アプソの起源は、チベット仏教の寺院で飼育されていた犬だと考えられています。チベットでは「人が亡くなった後に魂が宿る犬」と言われており、僧侶たちによって長く庇護を受けてきました。そのため、数世紀に渡って高僧や貴族が独占し、門外不出の犬として扱われてきました

特別な犬として中国の宮廷へ雄犬が送られたことがあり、この犬がシー・ズーやペキニーズの祖先になったと考えられています。

チベタン・スパニエル(98位、17頭)

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チベットに古くからいた犬種で、数百年もの間チベット仏教の寺院で大切に飼育され、歴代のダライ・ラマにも寵愛されていました。犬種名に「スパニエル」と入っていますが、猟犬のスパニエルのような活動はしていません。そのため、英語圏では「ティビー(Tibbie)」の愛称で親しまれています。

チベタン・テリア(104位、14頭)

全身が長い被毛に覆われ、体高が40cm程度、体重が8~14㎏の中型犬です。

チベタン・テリアはチベット仏教の寺院で「幸福を招く守護犬」として神聖化され、厳重に管理されてきました。そのため、手放すと幸せも逃げると信じられており、売買されることがなく、幸福をもたらす贈り物として大切に扱われてきた歴史があります。海外に知られるようになったのは1920年頃で、ここ100年程のことです。

名前に「テリア」と付いていますが、テリア種とは血縁関係がなく、容姿がテリアに近かったためこう呼ばれています。

チベタン・マスティフ(2022年は登録0頭)

体重が64~82kgと超大型犬のチベタン・マスティフ。中でも被毛の長いタイプは「大獅子頭型」と呼ばれ、まるでライオンのような姿をしています。

ヒマラヤ山脈付近の遊牧民家畜を守ったり、軍用犬として活躍してきました。一説にはチベタン・マスティフが、すべてのマスティフ系犬種の基礎になったとも言われています。

近年では、中国人の富裕層のステータスシンボルとされ、8億円という衝撃の価格で落札されたこともありましたが、飼育が難しく、捨てられて野生化し深刻な問題になったり、一部地域では法律によって一般家庭での飼育が禁止されています。

政治の影響で絶滅しかけた犬種も

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1950年代に共産主義革命が起こると、「犬の飼育は非常に贅沢なこと」とみなされるようになり、多くの飼い犬が処分されてしまいました。

「シャー・ペイ」、「シー・ズー」、「チベタン・マスティフ」などは、絶滅寸前まで追い込まれましたが、それ以前に欧米に渡っていた犬たちを繁殖させることで、危機を脱したという歴史があります。

また、多くの犬の命と共に、歴史的な記録も処分されてしまい、中国やチベット原産の犬たちの起源や犬種の歴史の多くが謎に包まれています

宮廷や寺院で大切にされる

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「パグ」、「ペキニーズ」、「シー・ズー」は中国の宮廷で、「ラサ・アプソ」、「チベタン・スパニエル」、「チベタン・テリア」などはチベットの寺院で寵愛されてきた歴史があります。

そして、ただ可愛がられたというより、神聖な存在として大切に扱われていた点は、非常に独特な文化で興味深く感じられるのではないでしょうか。

また、宮廷や寺院のみで伝統的に飼育されていて、近代まで海外に出ていない犬種が多いのも特徴的です。

最後に

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非常に独特な外見の犬種や犬の文化を持つ中国。

昔から犬の肉を食べる文化もありましたが、現代では「犬はパートナーや家族」という意識や、動物保護団体の活躍など、犬との付き合い方も変化しつつあります

一般市民と犬との歴史が浅い国でもあるので、動物福祉の面でどう変わっていくのか、注目していきたい国の一つですね。

【犬図鑑】世界最大の犬大国!イギリス原産の犬たちをご紹介

犬の歴史が非常に長く奥深い国、イギリス。ジャパンケネルクラブ(以下JKC)には206の犬種が登録されていますが、その中でイギリス原産の犬は56種にものぼり、なんと全体の25%以上を占めています(2022年4月時点)。

今回は、そんなイギリス原産の犬たちと、その傾向を解説していきます。

日本で人気のイギリス原産の犬

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先述した通り、イギリス原産の犬はご紹介しきれないほど数多くいますので、ここからは日本で人気があるイギリス原産の犬たちをご紹介していきます。

カッコ内は2021年におけるジャパン・ケネル・クラブの登録頭数と順位を表します。

ウェルシュ・コーギー・ペンブローク(14位、4,654頭)

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「ロイヤルドッグ」と呼ばれエリザベス2世の愛犬としても知られる、イギリスを代表する犬種です。

ウェルシュは「ウェールズ地方の」、コーギーは「小さい犬」という意味があります。1934年にそれまで同一犬種とされてきた「ウエルシュ・コーギー・カーディガン」と別犬種として登録されるようになりました。

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル(19位、3,075頭)

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「キャバリア」とは騎士という意味で、「キング・チャールズ・スパニエル」という犬種を改良して作られました。

キング・チャールズ・スパニエルは、スパニエルと短頭種の犬を交配して作られましたが、呼吸器疾患などにかかりやすいことが問題視されました。そこで、鼻の長い初期のタイプに戻すための交配をさせ、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルが作られました。

ゴールデン・レトリーバー(11位、6,138頭)

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ゴールデン・レトリーバーの起源は、イギリスのスコットランドにあります。猟で撃ち落とされた鳥を咥えて運ぶ、鳥猟犬として活躍しました。
かつては、イエロー・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーと呼ばれていましたが、1920年にゴールデン・レトリーバーの名称に統一されました

シェットランド・シープドッグ(25位、2,508頭)

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「シェルティ」の愛称で親しまれているシェットランド・シープドッグ。
イギリス最北端にあるシェットランド諸島の大型の牧羊犬が、ボーダー・コリーの祖先やラフ・コリーなどとの交配を経て、徐々に小型化されていったと伝えられています。

ジャック・ラッセル・テリア(16位、3,473頭)

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ジョン・ラッセル牧師により、フォックス・テリアを改良して作られた犬種です。
その際、体高が高く、よりスクエアに近い体格のものが「パーソン・ラッセル・テリア」、体高が低くわずかに体長が長い体型の犬が「ジャック・ラッセル・テリア」に分けられました。

ビーグル(23位、2,862頭)

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ビーグルは「スヌーピー」のモデルになったことでも知られる犬種です。

古代ギリシャ時代から優れた嗅覚を使ってウサギ狩りに使われていた犬が祖先だといわれていますが、イギリスを中心に品種改良が進んで現在のビーグルのが作られたため、原産国はイギリスになります。日本では空港の探知犬としても活躍しています。

ブルドッグ(30位、925頭)

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イギリスの国犬であるブルドッグ。もともと闘犬としての古い歴史をもち、牛と戦う犬として人気を得ました。

しかし、動物虐待法の成立と共に競技が禁止されると、愛好家たちにより攻撃的な性格が取り除かれ、現在のような温和で穏やかなブルドッグになりました。

ボーダー・コリー(22位、2,994頭)

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ボーダー・コリーの「ボーダー」とは国境という意味で、イングランドとスコットランドの国境付近で活躍したことからこの名がつきました。

牧羊犬としての作業能力のみが重視されていたため、牧場以外の都市部や海外に知られる機会がなく、純血種と認定されたのは1987年と、比較的新しい犬種です。

ラブラドール・レトリーバー(13位、5,294頭)

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ラブラドール・レトリーバーの起源はカナダのニューファンドランド島だと言われています。漁師のアシストをする水中作業犬だった犬がイギリス貴族の目に留まり、イングランドで改良を重ねて、現在のラブラドール・レトリーバーが出来上がったとされています。

※ラブラドール・レトリーバーについては、カナダ原産とされることもありますが、今回はJKCの犬種情報に合わせてイギリス原産としています。

ヨークシャー・テリア(8位、9,690頭)

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「ヨーキー」の愛称で呼ばれ、美しい絹のような毛質から「動く宝石」とも称されるヨークシャー・テリア。

優雅な雰囲気とは裏腹に、19世紀の中頃はヨークシャー地方の工業地帯で、家屋に生息していたネズミを捕らえるために活躍してきました。その後は愛玩犬として、主に富裕層から愛されてきた歴史があります。

イギリス原産の犬の傾向

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前項でご紹介した犬たちは日本でもよく知られている犬種ですが、その他のイギリス原産の犬たちを調べてみると、また違った角度からイギリスの犬の傾向が見えてきます

1. テリアがすごく多い

「テリア」とはキツネ、ネズミ、アナグマなどの小動物を狩る犬です。端的に「農家の害獣駆除犬」などと言われることもあります。
JKCに登録されているテリア犬種は32種。そのうち原産国がイギリスの犬は23種です。これはテリアに分類される犬種の70%近くが、イギリス原産だと言えます。

イギリスでは都市部でも地方でも関係なく、どこでもテリアが見られるそうです。そして、誰もが毛並みの美しい「ヨークシャー・テリア」や、純白の被毛の「ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア」を連れているわけではなく、ボサボサの毛をした素朴なテリアやテリア系の雑種も良く見られるようです。

これは日本で例えると、柴犬や日本犬系の雑種が全国各地にいるのと同じ感覚なのかもしれません。

2. 牧羊犬や猟犬として現役で活躍する犬も多い

JKCに登録されている牧羊犬種のうち、イギリス原産の犬種は約30%を占め、イギリスの牧羊の歴史を感じさせられます。

現在でも地方の牧場では多くの牧羊犬が活躍しています。イギリスにはプロの牧羊犬訓練士がおり、訓練士により予めトレーニングされた牧羊犬たちが牧場に買われていきます。

また、スパニエルやレトリーバーといった、「ガンドッグ」と呼ばれる猟犬もイギリス原産の犬種が圧倒的に多くいます。犬種として昔から馴染みがあり一般家庭で飼われている場合もありますが、現役の猟犬として活躍している犬が多いのも興味深い点です。

3. 愛玩犬が意外と少ない

イギリス原産で愛玩犬として登録されている犬種は「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」と、その元となった「キング・チャールズ・スパニエル」の2種類のみ。両方ともイギリス王室で長らく愛されてきた犬種です。

愛玩犬種の少なさから、元々イギリスの人々にとっては、犬はただ可愛がるペットという感覚より、仕事を共にするパートナーという感覚のほうが近かったのかもしれません。

王室や上流階級以外では動物を家族のように可愛がる風潮はありませんでしたが、17世紀頃から都市部の中流階級を中心にペットを飼う文化が始まりました。

4. プリミティブタイプ(原始的な犬)がいない

日本とイギリスで対照的な点がこのプリミティブタイプの犬種の有無です。プリミティブタイプとは、あまり人の手が入っておらず本来の犬らしさを色濃く残している犬種のことであり、柴犬、秋田犬などの日本犬やシベリアンハスキーなどが該当します。

日本原産の犬は半数以上がこのプリミティブタイプに該当しますが、イギリス原産の犬にはプリミティブタイプがいません。このことから、イギリスがいかに犬の品種改良に積極的だったかがわかります。

最後に

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今回ご紹介したイギリスは、原産犬種の数や歴史の長さだけではなく、「ペット先進国」とも呼ばれ、動物福祉が充実しています

しかし、イギリスの歴史を紐解いてみると、牛に犬をけしかけて、その命を奪う様子を楽しむ「ブルベインディング」や、猟犬が獲物を仕留める光景を馬上から見て楽しむ「キツネ狩り」が盛んに行われていた時代がありました。

その後、そういった残酷な娯楽を批判する風潮が高まり、法律により禁止されていくわけですが、現在のイギリスの充実した動物福祉があるのは、発展した犬の文化があることはもちろん、その様な悔い改められた過去があることも関係があるのかもしれません。

とはいえ、素晴らしい犬の文化を持つイギリス。見習いたい点も多い、素敵な国ですね。

【クイズ】ノルウェージャン・フォレスト・キャットって知ってる?

ノルウェージャン・フォレスト・キャットは、ふわふわな被毛を持ち、穏やかな性格からとても人気な猫種です。しかし、一体どのような猫なのかよく知らないという方も多いでしょう。

今回は、ノルウェージャン・フォレスト・キャットについてクイズ形式でご紹介します。

それではさっそく、ノルウェージャン・フォレスト・キャットクイズにチャレンジしてみましょう!
Q.1 ノルウェージャン・フォレスト・キャットの歴史の説明として「誤っている」のはどれ?
正解です!
不正解です!
正解は「メインクーンなどと交配して生まれた」です。
ノルウェージャン・フォレスト・キャットは、遠い昔からノルウェーを中心に「スコウガット(森林の猫)」として親しまれてきた猫で、北欧神話にも登場します。なお、メインクーンは、ノルウェージャン・フォレスト・キャットとアメリカの土着の猫との交配により誕生したという説が有力です。

昔は、農場で飼われたり、バイキングの船に一緒に乗ったりして、ネズミ駆除の役割を担い人々に重宝されてきました。
Q.2 ノルウェージャン・フォレスト・キャットの特徴として「誤っている」のはどれ?
正解です!
不正解です!
正解は「運動は得意ではない」です。
大きめでがっしりとした身体をしており、運動能力は高く、高いところに登るのが大好きです。そのため、頑丈なキャットタワーを用意するといいでしょう。

長くて美しいダブルコートの被毛が特徴的で、寒さには比較的強く、暑いのは苦手です。熱中症の危険もありますので、夏場の室温はきちんと管理しましょう。

ノルウェージャン・フォレスト・キャットは長い時間をかけて成長します。身体の基礎は1年でできあがりますが、その後筋肉がさらに発達し、完全に成長しきるのには3〜5年ほどかかると言われています。
Q.3 ノルウェージャン・フォレスト・キャットがかかりやすい毛球症の説明として「誤っている」のはどれ?
正解です!
不正解です!
正解は「重症になると治療する術がない」です。
ノルウェージャン・フォレスト・キャットは、被毛が長いため毛球症になりやすく、嘔吐や便秘、食欲不振などの症状が見られます。

軽症であれば薬で治療できますが、重症化すると治療する術がないということではありませんが、胃を切開するといった大掛かりで負担の大きい手術が必要になるため、毛球症にならないよう対策する必要があります。
問正解/ 問中

今回はこちらの記事から問題を作成しました。 詳細が知りたい人はこちらも読んでみてください!
北欧の猫「ノルウェージャン・フォレスト・キャット」の特徴と飼い方
結果発表
問正解/ 問中
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猫はいつから人と暮らすようになった?世界と日本の歴史を解説

猫は、私たち人間にとって大変身近なペットです。猫の祖先は「リビアヤマネコ」で、古代メソポタミアが起源だと言われています。はるか遠い国から、猫は一体いつ頃、どのようにして日本にやってきたのでしょうか? この記事では、猫がいつ人と暮らすようになったのか、世界と日本の歴史について解説します。

猫が人と暮らすようになった理由

猫,歴史,リビアヤマネコ,足跡,エジプト,メソポタミア 人間が土地に定住して農耕を始めると、住居や倉庫に農作物や穀物を保存するようになりました。するとネズミが農作物や穀物を狙いにきます。そのネズミを追って、猫もやってきたのです。 猫は、人間の大切な農作物や穀物をネズミから守ってくれる存在になりました。ネズミを退治してくれるのに、農作物や穀物には手をださない猫は、人間にとってありがたかったでしょう。 猫の中には、人懐っこい子もいたはずです。人間の子どもたちにかわいがられていたのが想像できます。親猫を亡くした子猫を、人間が代わりに育てたケースもあったのではないでしょうか。ネズミ以外の御馳走をもらうときもあったでしょう。

世界で最も古い飼い猫は?

猫,歴史,リビアヤマネコ,足跡,エジプト,メソポタミア 世界で最も古い猫の飼育は、今から約4000年前の古代エジプトだと考えられていました。ところが2004年、地中海キプロス島にある約9500年前の遺跡から子猫の墓が発見されたのです。子猫は30代の男性と一緒に埋葬されていました。 30代男性の足元に埋葬されていたので、何らかの絆や関係があったと予想できます。キプロスは海に囲まれた島であり、もともと猫はいなかったそうです。つまり、人間が船に乗せて猫を連れてきたのでしょう。 キプロスの発掘により、猫は古代エジプトよりも5000年近く前から人と暮らしていたと判明しました。

猫が日本に来たのは弥生時代?

猫,歴史,リビアヤマネコ,足跡,エジプト,メソポタミア キプロスと同じく海に囲まれた日本には、猫は船に乗らないとたどりつけません。猫が自主的に船に乗るとは考えにくいため、誰かが連れてきたと考えられます。では、猫はいつ日本に渡ってきたのでしょうか?

8世紀に中国から日本に来た説

猫は古代メソポタミアから古代エジプトに、そしてヨーロッパから中国へと長い時間をかけて伝わってきました。そして中国から日本にやってきたといわれています。 猫が日本に渡ってきた時期は、1200~1300年前の8世紀ごろの奈良時代あたりとされていました。中国の大切な経典をネズミから守るために、一緒に船に乗せられたと推測されていました。 ところが、2007年の土器の発掘でこの説が翻ってしまいます。

古墳時代の土器に猫の足跡

2007年、兵庫県姫路市にある見野古墳の発掘調査で猫の足跡がついた須恵器が発見されました。須恵器とは、古墳時代の中期から平安時代に作られていた土器です。 足跡の付いた須恵器は、今からなんと1400年前の古墳時代後期(6~7世紀)のものと判明しました。足跡付きの土器の発掘により、猫は8世紀以前に日本にすでに来ていたとわかります。

猫の足跡つき土器は福井県にも

2018年には、福井県美浜町にある興道寺廃寺跡周辺の古墳周溝からも、猫らしい動物の足跡が付いた須恵器が発掘されました。見野古墳とほぼ同じ、古墳時代後期のものです。 古墳時代後期には、日本人の暮らしの中にすでに猫がいたと考えて間違いないでしょう。 「土器についた足跡の発見」というのがいかにも猫らしいですね。猫はいたずら心から、乾燥中の土器を踏んで歩いたのかもしれません。せっかく作った土器に足跡がついて、当時の人たちはどのような反応をしたのでしょうか。

弥生時代の遺跡から猫の骨?

2008年には、長崎県壱岐にある「カラカミ遺跡」の発掘調査で猫と思われる動物の骨が発掘されました。カラカミ遺跡は今から2000年前、弥生時代後半(紀元前3世紀ごろ)の遺跡です。 海に囲まれた壱岐は、魚が豊富に獲れます。漁で獲れた魚のおこぼれをもらいながら、穀物をネズミから守っていたのかもしれません。そもそもどこから、誰が壱岐に猫を連れてきたのでしょうか。

猫はどこから来た?

今から2000年前の弥生時代から猫がいたとなると、猫が中国からやってきた説も不確かなものになります。なぜなら、中国に猫が来たのは、およそ2000年前とされているからです。 つまり、中国に猫がやってくる前に日本に来ていた可能性も十分考えられるのです。または中国からとは別のルートがあったとも推測できます。

まとめ

猫,歴史,リビアヤマネコ,足跡,エジプト,メソポタミア 猫がいつ、どうやって日本にたどりついたのか、まだ判明されていない史実もたくさんありそうです。神秘的な猫にふさわしいエピソードといえるでしょう。 もしかしたら、愛猫にも古代メソポタミアの猫の血が流れているかもしれないと思うと不思議な感じがします。 最近は、ネズミ捕りの仕事をする猫は少なくなりました。今は一緒にいてくれるだけで、飼い主さんを癒す仕事をしているともいえますね。

【犬図鑑】実は穏やかでやさしい!ブルドッグの特徴と抱える問題とは

ブルドッグは、一見怖そうな印象もありますが、その見た目に反して実はとても穏やかな性格をしていることをご存知でしょうか? イギリスの国の犬にも指定されており、日本でも人気のある犬種ですが、ブルドッグ特有の問題も抱えています。 この記事では、ブルドッグの歴史や特徴、飼い方のポイントについてご紹介していきます。これから飼おうと思っている方だけでなく、現在飼っている方も、改めて飼育環境等の確認をしましょう。

ブルドッグの歴史

犬図鑑,ブルドッグ,犬種,歴史,性格,特徴,好発疾患,肥満,短頭犬種 ブルドッグはもともと、イギリスで行われていた牛と犬を戦わせる「ブルベインティング」という競技のために、マスティフ系の犬を改良して誕生しました。 その後、さらに改良が重ねられると、シワのある顔と大きな頭の特徴が目立つ犬種になりました。当時は体重が60kgもあったそうです。 1835年にイギリスで動物虐待法が成立すると、ブルベインティングは禁止されました。 愛好家たちにより、体は小さく改良され、攻撃的な性格が取り除かれると、現在のような温和で穏やかなブルドッグになり、多くの人に愛されるようになりました。

日本のソースブランドにも

ブルドッグといえば、「ブルドックソース」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。これは1900年頃に日本でブルドッグブームが起こり、「ブルドッグのように可愛がってもらいたい」という意味を込めて命名したそうです。 なお、ブルドックソース株式会社の英語表記は「Bull-Dog」ですが、創業者が濁音が続くのを避けたため、日本語では「ブルドック」と表記します。

ブルドッグの特徴

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身体的特徴

ブルドッグの体高は31〜36cm、体重はオスで25kg、メスで23kgほどです。 大きな頭、広い肩幅、大きく飛び出た目、がっしりとした四肢が特徴的で、小さな耳はバラの花のように広がっていることから、「ローズイヤー」と呼ばれています。

被毛

被毛はダブルコートで、換毛期には多くの毛が抜けます。 毛色は、ブリンドル(地色に黒や茶などの色が縞模様になったもの)、レッド、フォーン(金色)、ファロー(淡い黄色)などの単色か、これらの色とホワイトを組み合わせたパイドがあります。

ブルドッグの性格

やさしく穏やかで、他の犬や子どもとも仲良くできます。我慢強く、誰からも愛される犬種です。 一方で、マイペースで頑固な一面もあり、嫌なことや口に合わないご飯は頑なに拒否したり、散歩中に動かなくなったりしてしまうこともあるため、小さい頃からしつけをしておくことが重要です。

ブルドッグの好発疾患

犬図鑑,ブルドッグ,犬種,歴史,性格,特徴,好発疾患,肥満,短頭犬種 ブルドッグは、深いシワ短頭犬種という特徴から、いくつかかかりやすい病気があります。特に、以下の疾患は注意しましょう。
  • 皮膚病…シワの間に汚れがたまり、雑菌が繁殖して皮膚に炎症が起こる。
  • チェリーアイ…目頭にある瞬膜が赤く腫れて、目の外に飛び出してしまう。
  • 呼吸器障害…気道が狭くなり呼吸が困難になる。いびきや呼吸音が気になったら要注意。
  • 熱中症…体温が上昇し、呼吸が速くなったり意識が混濁したりする。

ブルドッグが抱える問題

犬図鑑,ブルドッグ,犬種,歴史,性格,特徴,好発疾患,肥満,短頭犬種 人工的に品種改良されてきたブルドッグは、いくつかの深刻な問題を抱えています。

遺伝的な多様性が低い

人間にとって理想的な見た目にするために少ない集団で交配が行われたことから、ブルドッグは遺伝的な多様性が低くなってしまいました。 2016年に報告された研究によると、北米、ヨーロッパ、アルゼンチンで暮らす計139匹のブルドッグのゲノム構造がほぼ同じであったことがわかっています。 遺伝的多様性が低いと、遺伝病を発症しやすくることから、ブルドッグの疾患は今後急増する可能性が示唆されました。

自然分娩ができない

ブルドッグの8割は帝王切開により生まれています。 これは、ブルドッグの胎児の頭が大きい一方で、親の骨盤が小さいことから、自然分娩はほぼ不可能なためです。

ブルドッグの飼い方のポイント

犬図鑑,ブルドッグ,犬種,歴史,性格,特徴,好発疾患,肥満,短頭犬種 ブルドッグが健康的に生活していく上で、押さえておきたいポイントがいくつかあります。

過度な運動を

ブルドッグはあまり運動が得意ではありません。20〜30分程度の散歩を1日2回行えば十分ですので、過度な運動をさせないように気をつけましょう。 体が重いため、激しい運動をしすぎると足や関節に負担がかかってしまいます。

シワの間を清潔に保つ

シワの部分は蒸れやすく、細菌が繁殖しやすいことから、放置してしまうと皮膚病の原因になります。 濡れたタオルでしっかり汚れを落とし、キレイにしたあとは水分を拭き取ってあげましょう

夏場は室温に気をつける

短頭犬種であるブルドッグは、熱中症になりやすいため、室内で飼いましょう。その際、室温だけでなく湿度にも注意することが大切です。 また、夏の散歩は暑い日中を避けて、なるべく早朝か夜の涼しい時間帯にするようにしましょう。

まとめ

犬図鑑,ブルドッグ,犬種,歴史,性格,特徴,好発疾患,肥満,短頭犬種 特徴的な見た目をしているブルドッグに魅力を感じ、愛してやまない人も多くいます。一方で、その特徴を維持するために遺伝的な多様性が低下し、遺伝病を抱えていたり、自然分娩ができなかったりと、目を背けてはいけない問題もあります。 ブルドッグを飼うことを決めたら、それらの問題を理解した上で、愛犬が幸せに過ごせるような環境を整えてあげてください。