飼育放棄が急増!コロナ禍で世界中の人々を癒やしたペットたち

新型コロナウイルスが世界的に流行し始めてから3年以上が経ち、ようやく日常が戻ろうとしています。コロナ禍では、人々の不安や孤独感を埋めるために、世界中で多くのペットたちが新しい飼い主に迎えられました。

しかし、非常に残念なことに、世界にはコロナの終焉と共に飼育放棄されてしまうペットたちが数多くいます。今回は、そんなコロナと世界のペット事情について取り上げていきます。

癒やしを求めてペット需要が急増した「イギリス」

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イギリスではパンデミックのさなか、急激なペット需要の増加が見られました。

イギリスのペット産業協会「UK Pet Food」の統計によると、2020年から2022年にかけて、犬は約900万頭から約44%増の1300万頭、猫も750万頭から60%増の1200万頭に飼育頭数が急増しています。うさぎなどの小動物も犬や猫ほどの増加ではありませんが、飼育数は増加しました。

特に2021年は国内だけでは供給が追いつかず、海外から多くの子犬や子猫が輸入されています。ペットやその関連製品の販売額も過去最高を記録し、ペット産業は大いに潤いました。

しかし、2022年に入ると、電気、ガス、食料品など生活に欠かせない物品の物価が高騰し、インフレ率は40年ぶりの高水準となる11%を超えました。するとペットのエサ代や医療費が払えなくなり、飼育放棄する人が続出したのです。
英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)によると、2022年7月までに飼育放棄されたペットは、前年の同じ時期に比べ25%増加したそうです。

飼育数の増加に伴い動物福祉の向上が見られる「アメリカ」

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米国動物虐待防止協会(ASPCA)の調査によると、アメリカではコロナ禍で5世帯のうち1世帯が犬や猫などのペットを飼い始めました。その多くはまだ飼い主と一緒に暮らしていますが、リモートワークから出社勤務への変更や物価の高騰による飼育費用の問題などを抱えている人も多くいます。

そんな中、2022年6月にニューヨーク州で「パピーミルパイプライン法案(Puppy Mill Pipeline Bill)」が可決されました。この法案は「ペットショップによる犬、猫、うさぎの販売を禁止する。里親探しを目的とする特定の団体が、犬や猫を所有する団体と協力することは許可される。」というものです。
この法律により、営利目的だけの小動物の取引が禁止され、保護された動物たちの里親探しが奨励されることになります。

パピーミルとは「子犬工場」を意味し、無責任で動物福祉に反する繁殖を行う悪質なブリーダーのことを指します。このような繁殖業者を規制する動きは、アメリカの他の州でも見られ、カリフォルニア州、イリノイ州、メリーランド州などではすでに同様の法律が制定されています。

ロックダウンとバカンスの弊害が大きい「フランス」

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フランスでは約50%の家庭で何らかのペットを飼っています
そんなペット大国のフランスですが、コロナの影響で猫の不妊手術が例年通りに行えず、猫が増えてしまい、2021年の子猫の保護施設への引き渡しは2019年に比べて30%増加しました。

犬の場合はさらに深刻で、ロックダウン中に「犬の散歩」が外出理由として認められていたため、安易に犬を飼い始めた人が続出し、その後ロックダウンが解除されると飼育放棄が相次ぎました

かねてから、フランスでは夏のバカンス前にペットが捨てられることが多く、社会問題となっていました。フランスの動物保護団体の関係者は、その理由をバカンス先にペットを連れていくことが難しいためだと指摘しています。

そもそも、衝動的なペットの購入が飼育放棄の原因と考えられ、フランスの議会上院は2021年11月、動物の扱いに関する法律の改正案を可決しました。この法律の改正により、ペットショップでの犬や猫の展示や販売、インターネットによる犬や猫の販売は、2024年に禁止される予定です。

日本でも飼育放棄が起こっている

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日本もコロナ前の2019年と2020年、2021年を比較すると、欧米ほど顕著に増えたわけではありませんが、犬や猫の新規飼育頭数は増加しています。

日本ペットフード協会の調査によると、2020年の新規飼育数(推計)はコロナ前の2019年比で、犬が18%増の41万6千頭、猫は16%増の46万頭でした。2021年も犬・猫ともに2019年を上回り、犬は13%増の39万7千頭、猫は24%増の48万9千頭が新たに飼われています。

飼育放棄の割合はデータとして出ていませんが、動物保護団体からはコロナが収まってくるにつれ、保護数も増加したという声が多く聞こえてきます。

最後に

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今回は、日本と諸外国におけるコロナ禍のペット需要の増加や物価高騰の問題、各国で制定された法律などについてご紹介しました。残念ながら、今回取り上げた国以外でも世界情勢に翻弄されるペットたちが数多くいることは間違いありません。

このような問題に対して、自分に出来ることは何かをぜひ考えてみてください。ペットを衝動買いしようとしている人がいたらよく考えるように説得することや、SNSで動物福祉について投稿することもとても大切です。

一人ひとりができることは小さいかもしれませんが、同時に同じようにペットたちを心配している人も世界中にたくさんいます。多くの人が少しずつでも行動すれば、悲劇的なペットたちを生んでしまう世界を変えられるかもしれません。

食と命を考える!採卵鶏のオスとして生まれるとどうなるのか

日本における鶏卵の一人当たりの年間消費量は約337個で、世界ではメキシコに次いで2番目に多い国です。

卵料理は多くの人に愛されていますが、それが食卓に上がるまでに無惨に消えていく命があるのを、皆さんはご存じでしょうか。

今回は、採卵鶏のオスヒヨコの運命や各国の取り組みをご紹介していきます。これを機に、改めて食や命の大切さを考えていただければ幸いです。

生まれてすぐ消えていく命

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採卵鶏(さいらんけい)とは、卵を産ませるために育てられ、飼育される鶏のことで、そのほぼすべてがメスです。

卵を産むのにオスも必要ではないのかと思われるかもしれませんが、オスと交尾をしていれば「有精卵」が、交尾をしていなければ「無精卵」が産まれます。無精卵は人間の女性の排卵と同様の仕組みですので、オスは必要ありません。一般的にスーパーなどで売られている食用の卵は「無精卵」です。

鶏は卵だけでなく、肉も食用として身近な存在です。採卵鶏と肉用鶏は全く異なる品種であり、採卵鶏は通常の15倍もの卵を産むのに対し、肉用鶏は通常の4倍早く太るように品種改良されたという違いがあります。

肉用鶏は、オスもメスも関係なく成長させてから出荷されますが、採卵鶏のオスは卵を産むことが出来ず、肉用の品種でもないため食用に適さず、どこからも不要とされ、生後わずか1日で殺処分されています

そして、世界中でなんと年間約65億羽ものオスヒヨコが殺処分されているのです。

殺処分の方法とは

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殺処分の数だけ見てもおぞましいですが、その方法はさらに残酷です。

1.生きたままシュレッダーに入れて粉砕する

非常に残酷で衝撃的な方法ですが、次にご紹介する窒息や圧死より苦しむ時間が少ないとされています。

2.ゴミ箱などに入れて窒息または圧死させる

コンテナの中に不要な卵の殻と共に次々と放り込まれ、その重さで下の方のヒヨコから圧死していきます。
シュレッダーを用いるのも非人道的と言えますが、苦しみの長さや度合いはこちらの方が残酷だと言われています。

3.ガスで窒息死させる

二酸化炭素やアルゴンなどによるガス殺で、苦しみをできるだけ減らすために使われています。イギリスやオランダ、スイスなどで導入されていますが、日本では導入されていません

世界各国の取り組み

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アニマルウェルフェア(動物福祉)の観点からすると、深刻な問題がある採卵鶏のオスヒヨコについて、各国では様々な対策が検討されています。

1.卵肉兼用品種の開発

オスの殺処分をなくす取り組みとして、卵肉兼用の品種の開発が進められています。

ドイツのハノーバー獣医大学では、卵肉兼用の品種を使って、従来の品種との比較実験をしました。その結果、従来の品種と比べて「採卵鶏」ではメスの年間産卵数は50個減少し、「肉用鶏」は成長が2倍遅かったとされています。

卵や鶏肉の生産効率のみを考えれば、この結果は効率が悪いとされるでしょう。しかし、アニマルウェルフェアの観点からすると、従来の採卵鶏の多すぎる産卵数や、肉用鶏の急激な体の増量は、いずれも鶏に大きな苦痛をもたらすため、その苦痛から開放されると言えるのではないでしょうか。

2.卵の性別鑑定

ドイツやオランダ、イスラエルなどの企業が開発しているのが、卵の段階でオスを判別する方法です。すでに実用化されており、オスを殺さないで作られた卵が市場に出回っている国もあります。

アメリカでは、国内最大の鶏卵生産者団体が2016年にオスの殺処分の廃止に取り組み、研究に資金提供をしている段階です。南米の大手鶏卵生産者2社も2022年にオスの殺処分がない卵の生産方法へ切り替えることを発表しています。

3.殺処分が法律で禁止されている国も

2021年末、ドイツではオスヒヨコの殺処分は禁止になり、フランスでは2022年をもって禁止になりました。イタリアでは2026年までに禁止することが決定しています。

日本の現状

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2022年11月8日の参議院農林水産委員会にて、須藤元気議員が国会で初めて「生後1日で殺される採卵鶏のオスヒヨコ」について問題提起しました。その際の農林水産省の回答によると、オスヒヨコの殺処分について直接的なデータはなく、推計毎年1億1千ものヒヨコが殺処分されているのではないかとのことです。

オスヒヨコの殺処分の回避については、卵肉兼用品種の開発はされていませんが、卵の性別鑑定の研究は一部で進んでいるそうです。

先にお伝えしたドイツやフランスは国家の強力な支援の元で最先端の技術を開発し、オスヒヨコの殺処分を回避することが可能になりました。しかし、日本では国会で最初の議論がされたばかりです。多くの人にこの問題を周知し、国全体で取り組んでいくことが必要なのではないでしょうか。

まとめ

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近年、SDGsの観点からフードロスの問題が多く取り上げられています。確かに本来食べられるはずの食品を捨ててしまうのは良いことだとは言えません。

しかし、フードロス以前にフード(食材)にすらなれなかった命がいることも、もっと問題として掲げられても良いのではないのでしょうか。

食品のロスだけでなく、犬猫の殺処分問題なども含め、もっと視野を広げたライフ(命)のロスを、問題として考えられる世の中になることを願います。

傷つく動物をなくしたい!虐待事件の現状と「どうぶつ弁護団」の活動

動物保護団体の懸命な活動や法律の改正など、動物たちを守る機運が高まっている現代においても、動物への暴力事件や悪質な多頭飼育によるネグレクトなど、動物虐待事件はあとを絶ちません。

今回は、そんな動物への虐待問題に焦点をあてて、その現状と、今までにない動物保護を行う「どうぶつ弁護団」の活動をご紹介していきます。

年々増加する動物虐待事件

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警視庁の発表によると、令和3年(2021年)に全国の警察が検挙した動物虐待事犯は過去最多の170件。平成24年(2012年)は29件であったため、10年間で5倍以上検挙数が増えています。

この検挙数増加の背景には、単純に動物を虐待する人間が増えたというわけではなく、動物虐待を問題視する社会的な関心の高まりや、動物愛護管理法改正の影響により犯罪とされる行為の範囲が広がった影響が考えられます。

世論の追い風や法律の改正によって、動物たちにとってより良い世の中に変わりつつあるのかもしれません。しかし、未だ動物虐待を事件化するのには、高いハードルがあります。

動物虐待事件の認知や捜査の難しさ

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動物虐待事件が発覚しづらい点として、次のような問題が挙げられます。

  • 動物は虐待の被害を自ら申告できない
  • 飼い主から虐待されているケース、野良猫のような飼い主がいないケースなど、虐待を告発できる人間が存在しない
  • 密室で行われると、外部から虐待行為を認識できない

また、警察の捜査が難しくなってしまう点として、次のような問題が挙げられます。

  • 死亡した動物を発見した第三者が埋葬してしまうなど、虐待の証拠が残りにくい
  • 飼育放棄現場では死後時間が経過しているなど、死因がわかりにくい
  • 被害を受けた動物が逃げてしまい、犯人や犯行現場の把握が困難になることがある

弁護士による刑事告発の問題点

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動物虐待を発見し通報した人の中には、「通報しても警察が対応してくれない」、「本当に捜査をしているか不明」といった不満を持つ人も少なからずいると言われています。
各自治体には虐待を通報する窓口がありますが、警察と効果的な連携ができず、摘発につながっていないケースが多いのも問題点として指摘されています。

警察が動きやすくなるためには、民間人と警察がやり取りするのではなく、法律に精通した弁護士が間に入った刑事告発が非常に効果的ではありますが、ペット問題を取り扱う弁護士は少ないのが現状です。

また、弁護士に依頼することで弁護士費用の問題が出てきます。実際に動物虐待事件を扱う弁護士によると、依頼者のほとんどが個人や中小規模の動物保護団体であり、弁護士費用の捻出が難しい場合も少なくないそうです。

全国初の取り組み「どうぶつ弁護団」

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そんな中、2022年9月に動物虐待事件について刑事告発などを行うNPO法人「どうぶつ弁護団」が設立されました。動物への虐待を発見した人が通報しやすい環境を作り、警察の迅速な捜査により、深刻な虐待被害を防ぐことを目的としています。

「どうぶつ弁護団」が行う主な活動

  • 個人や動物保護団体などから提供された動物虐待の情報を独自に調査
  • 調査の上、必要と判断すれば動物愛護法違反罪などで証拠を集めて刑事告発
  • 不起訴になった場合は検察審査会に不服申し立て
  • 動物関係の法令や制度に対しての提言
  • 動物虐待の予防や動物愛護への理解を深める啓蒙活動

通報者は弁護士費用の心配がなくなる

「どうぶつ弁護団」の活動では、今までのように通報者が弁護士費用を工面する必要はなく、賛助会員の会費によって団体を運営していく方針とのこと。(2023年1月導入予定)

費用の心配がなくなることで、今まで見過ごされていた動物虐待事件にも適切な処罰が下される可能性が広がり、動物虐待を予防する効果も期待されています。

弁護士や各分野の専門家をメンバーに

メンバーは弁護士や獣医師で構成されており、今後獣医師はもちろん、医師や研究者など、広い分野の専門家との連携を目指して活動していくそうです。先述したように動物虐待事件は警察が動きづらいケースもありますが、法律や動物の専門家が警察への橋渡しになることで、スムーズに捜査へ繋げられる可能性が高くなります。

特定非営利活動法人 どうぶつ弁護団 ホームページ
https://animal-dt.org/

最後に

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今回は動物虐待問題に焦点を当ててお話してきましたが、動物虐待の処罰や防止は一概に動物のためだけではありません

凶悪な事件を起こした犯人の中には、人間に対する加害の前段階として、動物虐待を繰り返していた人物は少なくないのです。
また、悪質な多頭飼育の現場では、動物が発する臭いや鳴き声などにより、付近の住民が不快な思いをしながらの生活を強いられています。

傷つく動物を減らすことはもちろんですが、わたし達の安全で平穏な生活を守るという観点からも、動物虐待は見過ごしてはならない問題なのではないでしょうか。

【ペットクイズ】マイクロチップは装着すべき?得られるメリットとは

皆さんが飼っているペットにはマイクロチップが装着されていますか?海外の多くの国ではマイクロチップの装着が当たり前になりつつありますが、日本では未だ普及が進んでいないのが現状です。

本記事では、ペットのマイクロチップについてクイズ形式で解説していきます。ペットにマイクロチップを装着していない飼い主さんはもちろん、すでに装着しているという飼い主さんも、ぜひこのクイズ通して改めてマイクロチップの大切さを学んでみてください。

それではさっそく、ペットのマイクロチップクイズにチャレンジしてみましょう!
Q.1 マイクロチップで確認できる情報として「誤っている」のはどれ?
正解です!
不正解です!
正解は「飼い主の生年月日」です。
マイクロチップで確認できるのは以下の情報です。
  • 動物情報:名前、生年月、性別、動物種、犬・猫の種類と毛色
  • 飼育者情報:氏名、ふりがな、住所、電話番号、その他の緊急連絡先、FAX番号、メールアドレス
なお、マイクロチップが装着されていても情報が古ければ意味がありません。住所や連絡先が変わった時や、飼い主が変わった時は、必ずマイクロチップの情報を更新しましょう
Q.2 マイクロチップについて「誤っている」のはどれ?
正解です!
不正解です!
正解は「データ維持費として毎年お金がかかる」です。
マイクロチップの装着時にデータ登録料を支払えば、その後はお金は発生しません

2019年の動物愛護法の改正により、2022年6月からマイクロチップの装着が義務化されますが、これは犬・猫を販売するペットショップやブリーダーなどに限られています。そのため、現時点で飼っているペットにマイクロチップが装着されていなくても違法にはなりません。

マイクロチップの耐久年数は30年ほどとされており、犬や猫であれば一度装着すればつけかえる必要はありません。なお、マイクロチップの装着による副作用はないとされていますが、埋め込み部付近で、CTやMRI検査の画像が乱れる可能性があり、その際は一度取り除くこともあるそうです。
Q.3 マイクロチップの装着により期待できることとして「誤っている」のはどれ?
正解です!
不正解です
正解は「居場所がわからないのペットの探知」です。
マイクロチップにはGPS機能は付いていませんので、居場所がわからないペットの場所を探知する機能はありません。迷子や盗難の被害に遭わないようしっかり対策しましょう。

なお、マイクロチップを装着していれば、迷子や盗難にあっても保護された際に登録情報から飼い主を特定できますし、確実に我が子であるという証明ができます。チップを読み取るリーダーは全国の動物保護センター保健所動物病院などにあります。

また、飼い主は自分の情報が書き込まれていることを自覚するため、虐待や遺棄を抑制する効果が期待されています。
問正解/ 問中

今回はこちらの記事から問題を作成しました。 詳細が知りたい人はこちらも読んでみてください!
【獣医師監修】ペットのマイクロチップ装着を徹底解説!
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動物密輸大国の日本。映画『アウトブレイク』も他人事じゃない!

新型コロナウイルスが世界中に猛威を振るう今、1995年に制作された映画『アウトブレイク』を思い出した方も多いのではないでしょうか。 『アウトブレイク』は、密輸動物から感染症が蔓延したというフィクションですが、この話、現在の日本でも他人事ではありません。 その理由は、日本が「動物密輸大国」だから。 エキゾチックペットの人気沸騰に乗じて、特にアジア地域からの動物の密輸が後を絶ちません。空港等での検疫をすり抜けてしまう密輸動物は、人間に感染する感染症を持っている恐れがあり大変危険です。 今回は、動物の密輸がもたらす感染症の危険性について、映画『アウトブレイク』と、日本における動物の密輸の実態を通して考えていきましょう。

映画『アウトブレイク』が描いたもの

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『アウトブレイク』のあらすじ

『アウトブレイク』は、1995年にウォルフガング・ペーターゼン監督の元で制作されたアメリカ映画です。 物語は、米国陸軍伝染病医学研究所の研究チームが、アフリカの小さな村で、未知のウイルスによって村人たちが次々と命を落とす様子を目の当たりにするところから始まります。 その後、カリフォルニア州の町で同じ症状の感染症が発生。未知の感染症はエボラ出血熱に似たもので、致死率100%という凄まじい破壊力を持ち、瞬く間に町中を恐怖の渦に陥れました。 しかし、アフリカの感染者が移動をしなかったにも関わらず、なぜウイルスはアメリカで発生してしまったのでしょうか? その引き金となったのは、アフリカから密輸された1匹のサルでした。 ウイルスの宿主だったサルは、営利目的でアフリカからこっそり連れ出され、検疫をすり抜けてアメリカ国内に持ち込まれたのです。

『アウトブレイク』の着想は、ノンフィクション

アウトブレイク 感染症 動物密輸 パンデミック 映画『アウトブレイク』はフィクション映画ですが、その制作は、『ホット・ゾーン』(リチャード・プレストン著)というノンフィクション小説に着想を得ています。 『ホット・ゾーン』は、1989年にヴァージニア州レストンで実際に起きた、サルのエボラウイルス感染症事件を描いたものです。 フィリピンから輸入されたカニクイザルが、次々と出血熱を発症して死亡し、検査の結果、「レストン型」のエボラ出血熱であることがわかりました。 研究者など、サルと接触のあった人たちは死の恐怖に陥れられますが、このレストン型のエボラ・ウイルスはアフリカで人々を死に追いやってきたエボラ出血熱とは違い、幸い人間に対しては病原性がないことが分かりました。 しかし、これが仮に人間に対しても致死力のあるウイルスであったとしたら、大惨事になっていたことは間違いないでしょう。 他国からやってきた動物による病気の感染症拡大は、現実的にあり得る話なのです。

動物の輸出入に関するルール

アウトブレイク 感染症 動物密輸 パンデミック さて、『アウトブレイク』と『ホット・ゾーン』は、いずれもアメリカが舞台でしたが、これらの話は現実の日本でも決して他人事ではありません。 日本は「動物密輸大国」と言われています。 日本には次にご紹介するような、動物の輸出入に関するルールがあります。しかし、それらが確実に守られていない、つまり、「密輸」が横行しているために、海外の動物から感染症が広まるリスクが高まってしまうのです。

輸入禁止動物

日本では、感染症法によって次の7種の輸入が禁止されています。
輸入禁止動物 懸念される感染症
サル エボラ出血熱、マールブルグ病
プレーリードッグ ペスト
イタチアナグマ、タヌキ、ハクビシン 重症急性呼吸器症候群(SARS)
コウモリ ニパウイルス感染症、リッサウイルス感染症等
ヤワゲネズミ ラッサ熱
参照: 『感染症の予防及び動物検疫所 感染症の患者に対する医療に関する法律』の解説 ただし、試験研究用または展示用のサルは、特定地域からの輸入に限り、検疫を徹底することで輸入しても良いことになっています。

検疫対象動物

また、輸出入の際、動物検疫所で検疫を受けなければならない動物は、以下の5種です。
検疫対象動物 懸念される感染症
犬、猫、あらいぐま、きつね、スカンク 狂犬病
参照: 動物検疫所 狂犬病予防法の解説

その他の動物は?

これらの動物以外の全ての陸生哺乳類、鳥類についても、海外から日本に持ち込むことは原則禁止とされていますが、輸出国政府発行の衛生証明書を入手した上で、動物検疫所に届出をした場合、持ち込めることもあります。 もし、衛生証明書がない動物を届け出を行わずに持ち込めば、動物からウェストナイル熱、オウム病、鳥インフルエンザなどの感染症が広がる可能性があります

「動物密輸大国」日本

アウトブレイク 感染症 動物密輸 パンデミック 野生生物の取引を調査・モニターするNGO「TRAFFIC(https://www.trafficj.org/)」によると、2007年〜2018年の間に、日本の税関では1,161匹が、海外の税関では少なくとも1,207匹のエキゾチックペットが、日本への密輸動物として押収されました。日本の税関で差し止められた動物のほとんどは、東南アジアや東アジアからの密輸動物でした。 押収された動物は実際の密輸動物のほんの一握りに過ぎず、市場に出回ってしまった動物はもっとたくさんいると見られています。 そして、税関で押収された動物の中には、先ほどご紹介したような、人間に感染の危険性がある病気を持ち得る動物も多く含まれています。 密輸される動物の多くは、不衛生で過密な環境下で保管、輸送、販売されているため、感染症を持っている動物が一個体でもいれば、一気に広まってしまいかねません。これらの動物が、もしも監視をすり抜けて市場に出回ってしまえば、人間への感染症を広げてしまう可能性は十分にあります

まとめ

アウトブレイク 感染症 動物密輸 パンデミック 今回は、映画『アウトブレイク』と共に、「動物密輸大国」日本で密輸動物から感染症が持ち込まれるリスクを考えました。 『アウトブレイク』は、海外から密輸されたサルが引き金となって、出血熱が人間に瞬く間に広まってしまったというお話。この映画はフィクションでしたが、着想を得た『ホット・ゾーン』はノンフィクションですし、科学的にも、似たようなことは今後十分にあり得る話だと言えるでしょう。 特に、検疫をすり抜け、申告もされることのない密輸動物が多く取引されている日本では、『アウトブレイク』の話も決して他人事ではありません。 「お金を儲けたい」「珍しいペットが欲しい」という、個々の自分勝手な気持ちが、日本中に「アウトブレイク」を引き起こしてしまう可能性があるということを忘れてはいけません。 動物の密輸の危険性を改めて知るためにも、映画『アウトブレイク』を今一度観てみるのも良いかもしれませんね。

野生動物を飼ってもいいの?関連する法律をわかりやすく解説!

公園を散歩中にかわいらしい鳥を見つけたときや、家の近くでアライグマを見つけたとき、「飼いたい」と思ったことがある方、いらっしゃるかもしれません。 昔話では鳥や野生動物を飼育するシーンが登場することもありますが、現代には野生動物に関する法律が存在し、むやみやたらと飼育してしまえば、法律違反になることがあります。 今回は、野生動物の狩猟や飼育に関わる様々な法律をご紹介していきます。

野生動物を飼育するのは原則禁止

野生動物 鳥獣 狩猟 飼えない 野生動物を捕獲したり、飼育したりすることは、「鳥獣保護管理法」により、原則禁止されています。 ただし、狩猟鳥獣に指定されている動物であれば、狩猟や飼育が可能な場合があります。まずは、狩猟鳥獣にはどのようなものがあるのかを見ていきましょう。なお、狩猟鳥獣であれば全て狩猟・飼育して良いわけではありませんので、この後の解説もぜひよく読んでください。

狩猟鳥獣に指定されているもの

狩猟鳥獣とは、野生鳥獣のうち、肉・毛皮などを利用する目的で狩猟(捕獲・殺傷)の対象となる鳥獣のことで、狩猟が生息状況に大きな影響を与えることがないと判断されたものです。狩猟鳥獣は環境省によって定められ、現在は以下の48種が指定されています。
鳥類(28種) カワウ、ゴイサギ、マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、クロガモ、エゾライチョウ、ヤマドリ、キジ、コジュケイ、バン、ヤマシギ、タシギ、キジバト、ヒヨドリ、ニュウナイスズメ、スズメ、ムクドリ、ミヤマガラス、ハシボソガラス、ハシブトガラス 獣類(20種) タヌキ、キツネ、ノイヌ、ノネコ、テン(亜種のツシマテンを除く)、イタチ(オスに限る)、チョウセンイタチ、ミンク、アナグマ、アライグマ、ヒグマ、ツキノワグマ、ハクビシン、イノシシ(雑種のイノブタを含む)、ニホンジカ、タイワンリス、シマリス、ヌートリア、ユキウサギ、ノウサギ

狩猟には基本的に免許が必要

狩猟鳥獣は、狩猟の対象となる鳥獣ですが、実際に狩猟をするには都道府県からの許可により狩猟免許を獲得しなければなりません。 また、次のような様々な規則を適切に守って狩猟することが求められます。

狩猟期間

1年の中で、狩猟を行って良い期間は、日にち刻みできっちり決まっています。 狩猟期間は鳥獣の種類や自治体により異なり、また年によって期間が異なることもあるので、確認が必要です。

猟具の規定

鳥獣により罠や銃の規定も異なります。猟具によって免許の種類が異なるので、自治体に確認しましょう。

狩猟可能区域

自然環境保全の観点から制定された「鳥獣保護区」や、公道では狩猟をすることができません。 また、水鳥の鉛中毒防止のため、鉛散弾銃を使うことなどが禁止されている「指定両方禁止区域」や、狩猟鳥獣を増やすために一時的に狩猟を禁止する「休猟区」などの制度もあります。

狩猟鳥獣はルールを守れば飼育が可能

野生動物 ペット 飼える 許可 狩猟鳥獣は、捕獲の時期と場所の制限を守るなど適正に捕獲をした場合には、自治体の申請や許可などを得なくても飼育が可能です。 ただし、特定外来生物に指定されている動物の新たな飼育が原則として禁止されていたり、鳥獣への負担などを考えるとむやみやたらに捕獲、飼育をすることはおすすめしません。

飼育の許可・不許可は変わることがある

野生鳥獣の飼育をして良いかどうかは、時間の流れとともに変化することがあります。メジロを例にみてみましょう。
1950年 鳥類保護のために飼育可能な野鳥として、7種類の野鳥(メジロ、ウグイス、ホオジロ、ヤマガラ、ヒバリ、ウソ、マヒワ)が指定された 2007年 飼育可能な野鳥はメジロのみ、1世帯1羽に限るとされた 2012年 密猟者が飼育のための登録票を悪用してメジロを販売する問題が増えたため、野鳥の飼育が原則すべて禁止となった
※ただし、禁止になる前から飼われていたメジロに関しては飼育を続けて良いことになっています。 このように、飼育が可能か不可能かは、状況によって変化することがあるので、「昔は良かったんだから今も良いだろう」と考えず、随時情報を更新していくようにしましょう。

知っておきたいその他の法律

野生動物 保護 法律 ここまで主に、鳥獣保護管理法で規定された野生動物の取り扱いルールをご紹介しましたが、実はその他にも野生動物に関わる法律はたくさんあります。今回はその一部を取り上げて解説します。

文化財保護法

建物や芸術、史跡や景観などの文化財に加え、野生動物や植物などの天然記念物を保護するための法律です。天然記念物には、動物、植物、地質・鉱物、天然保護区域の4つがあり、全国で1000以上の記念物が指定されています。 これらの天然記念物に対してなんらかの影響をもつ行為をする際には、文化庁長官の許可が必要です。

種の保存法

絶滅危惧種の保存を目的とした国際条約「ワシントン条約」に基づき、国内法として制定された法律で、正式名称は「絶滅のおそれのある野生動物の種の保存に関する法律」です。 種の保存法では希少野生動植物種を、国内希少野生動植物種、国際希少野生動植物種、緊急指定種、特定国内希少野生動植物種の4つの区分に分類しています。 国内希少野生動植物種と緊急指定種に関しては、生きている個体の捕獲、採取、損傷、譲渡(器官や加工品も含む)が禁止されています。国際希少野生動植物種は、通関後の国内での譲渡などが禁止されています。 指定されている動植物の、特に重要な生息地は「生息地保護区」に指定されていて、監視や立ち入り禁止などの管理がされています。もちろん、こうした地域で勝手に動物を捕まえて飼育するなどといった行為は論外です。

外来生物法

特定外来生物の飼養・輸入を規制する法律で、正式名称は「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」です。 特定外来生物とは、海外から日本に導入されることで、在来生物の減少など、生態系に被害を及ぼすおそれがある生物のことです。 特定外来生物に関して、飼養、栽培、保管、運搬、輸入、譲渡、野外放出、植栽など、野外に拡大する可能性がある行為が禁止されています。 なお、生きている個体だけでなく、卵や種子なども含むので、例えば海外旅行先で見つけた卵を「帰って育てよう」などと、安易な気持ちで持ち帰ってはいけません。海外旅行をの際、帰りの飛行機の中で申告する必要があるのも、このためです。 また、外来生物法は、動物を海外から輸入する際にはもちろん気をつけなければなりませんが、国内ですでに繁殖している外来生物(アライグマなど)についても飼育が禁止されているので注意が必要です。

自己判断は禁物

野生動物 保護 飼える 飼えない 狩猟 今回は、野生動物の飼育について、様々な法律を元に解説しました。 野生動物を捕まえたり、飼育したりすることは基本的に禁止されていますが、狩猟鳥獣に指定されている動物であれば、飼えることがあります。 ただし、自治体や時間の経過によって状況が異なるので、都度、法律や条例を確認しなければなりません。 また、生態系の保護などを目的とした法律もたくさんあります。今回ご紹介できなかった法律や国際条約が、他にもいくつか存在します。保護地域などで狩猟をしないことはもちろん、各リストに指定されている動物かどうかを見極めるのは難しいですし、むやみに野生動物を捕まえるのは避けるべきでしょう。 色々な法律があって頭が混乱しそうですが、とにかく「野生動物は勝手に捕まえたり飼ったりしない。まずは自治体に相談する。」これをしっかり守ることが大切だということを覚えておきましょう。

かわいいけど飼うのは違法!シカをペットにできない理由とは

6月上旬、東京都の足立区で、野生のシカが捕獲されました。 捕獲されたシカが区の施設で保護されることがメディアで報じられると、区には「かわいそうだから引き取って飼育したい」という問い合わせが寄せられました。 しかし、野生鳥獣であるシカを飼うことは法律で禁止されており、原則として飼うことはできません。一方、シカは害獣として扱われているため、野生に返すことも難しく、殺処分の可能性も十分にあるといいます。 そもそも、なぜシカを飼ってはいけないという法律ができたのでしょうか? また、シカが害獣として捕獲・駆除されるようになったのには、どのような原因があるのでしょうか?

なぜシカを飼ってはいけないのか?

ニホンジカ 飼ってはいけない理由 法律 ペット シカの飼育は、鳥獣保護管理法(正式名称:鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)によって原則禁止されています。 では、この鳥獣保護管理法とはどのようなものなのでしょうか?

鳥獣保護管理法の目的

そもそも、鳥獣保護法(鳥獣保護管理法)はどのような目的で制定されたのでしょうか? まずは第一章第一条を見てみましょう。
第一条 この法律は、鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するとともに、猟具の使用に係る危険を予防することにより、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保(生態系の保護を含む。以下同じ。)、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資することを目的とする。
条文から、鳥獣の保護、管理、狩猟の適正化によって、「生物多様性」と「人間の生活環境、農林水産業」の2つを守っていくことを主な目的にしていることがわかります。

鳥獣保護法の歴史

鳥獣保護法の歴史は、1896年に成立した「狩猟法」まで遡ります。狩猟法は、狩猟の際の安全・秩序の確保を目的としていましたが、何度か法改正を重ねる中で、狩猟して良い鳥獣と、それ以外の鳥獣が分けられるようになり、鳥獣保護の意味合いを持つようになります。 また、生態系保護や、生活や農林水産業の保護の意味合いも含むようになり、2002年の鳥獣保護法全部改正にて、現在の鳥獣保護法の基盤が作られました。

2014年の改正で「管理」が色濃くなった

2014年に鳥獣保護法が改正されると、今まで以上に鳥獣個体数の「管理」の意味合いが強くなりました。 この背景には、1980年頃からの30年余りで、ニホンジカやイノシシの数が爆発的に増え、それに伴う鳥獣被害が増えたことが原因だとされています。 これに関して、環境保全団体からは、「生態系保全の意味合いが薄れ、増えすぎた鳥獣の管理に偏ることで、減りすぎた鳥獣の保護への考慮が不十分である」との非難も寄せられました。

シカの数は爆発的に増えた?

シカ 数 増えた 日本 環境省によると、1978年から2014年までの36年間で、ニホンジカが約2.5倍まで増えたとされています。 では、ニホンジカはなぜこんなにも増えたのでしょうか?また、ニホンジカの増加でどのような影響が出ているのでしょうか?まずは、一般的に言われている説をご紹介します。

なぜ増えたのか?

ニホンジカが増えた理由として、一般的に言われているのは、「人口の変化」「オオカミの絶滅」「温暖化」の3点です。

人口の変化

明治以降、中山間地域に人口がたくさん流れ込み、耕作地を開拓していったことで、野生生物が一気に減少しました。やがて、都市部に人口が流出したため、中山間地域では野生生物が再び数を増やした、と考えられています。また、人口減少と少子高齢化によって、狩猟人口が減ったことも原因の1つだとされています。

オオカミの絶滅

ニホンジカの天敵である、ニホンオオカミの絶滅も、大きな原因だと言われています。かといって、海外からオオカミを導入すれば、生態系に悪影響を及ぼす可能性があるため、無闇に天敵を放てば良いというわけではありません。

温暖化

気候変動によって、積雪が少なくなり、ニホンジカが生息できる地域が増えたことも、ニホンジカの増加に繋がったとされています。

なぜ「害獣」なのか?

シカ 害獣 被害 ニホンジカはとてもかわいらしい見た目をしていますが、鳥獣保護法では「害獣」として取り扱われています。その理由は、ニホンジカが数を増やしたことで、人間と自然環境に被害が及ぶようになったからです。

人間に与える被害

人間への被害は主にニホンジカが農作物を食べてしまうという被害です。そのため、電気柵を用いる、銃声を発する、罠を仕掛けるなどして、農家の人たちは様々なシカ対策を試行錯誤しています。

自然環境に与える被害

シカが増えすぎてしまえば、当然のことながら全体の食べる量も増えます。すると、山の中の植物が減ってしまったり、樹皮をはいで食べてしまったりします。全ての生き物は生態系のなかでつながりを持っていますから、ひとつバランスが崩れれば全てに影響が及ぶことになるのです。

「シカは異常に増えているわけではない」と考える専門家もいる

シカ 日本 数 増えていない 一般的に「シカは異常に増えている」と考えられている一方で、「確かに1970年頃と比較すると個体数は増えているが、今の状況が異常と考えるのは早計である」とする考え方もあります。 北海道大学の揚妻准教授によると、1970年よりもっと前の自然環境を考えると、オオカミが健在していた時期でもシカの数は今と同じくらいいたと推測することができ、1970年頃のシカの数が異常に少なかったという方がむしろ妥当だというのです。 つまり、人間の介入が少なかった本来の自然環境的には、シカの数を一生懸命減らそうとするよりむしろ、シカがたくさんいる状態を維持できる環境が望ましい可能性もあるということです。

シカと人間生活

シカ 人間生活 生態系 シカが増えていると考えるにしろ、現在が正常であると考えるにしろ、いずれにしても人間の営みがシカの生態に影響を与えてきたことには変わりありません。 シカに限らず、「かわいいから」といってすぐにペットにしてしまったり、飼えなくなってしまって野生に返すなどといった行為も、少なからず生態系に影響を与えてしまいます。 飼ってはいけないとされる動物は飼わないこと、また、飼い始めたペットは最後までしっかり面倒をみることを、ひとりひとりがしっかり守っていくことは、地球上の生態系や私たち自身の生活を守る上で欠かせないことなのです。

足立区で捕獲されたシカのその後

今回足立区で捕獲されたシカは、区からの依頼に応じた千葉県の市原ぞうの国が引き取りました。「エスケープしてきた」ことにちなんで「ケープくん」と命名され、検疫後、体調などを見ながら一般公開時期を決めるそうです。 ツイッターやフェイスブックなどでもケープくんの様子が定期的に報告されていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
市原ぞうの国 HP:http://www.zounokuni.com/ ツイッター:https://twitter.com/IEK_SW_official フェイスブック:https://www.facebook.com/zounokuni/

韓国でも義務化。ペット先進国スイスのペットに関わる厳しい教育

2020年1月、韓国は2022年からペットを購入する際に、所定の教育を受けることを義務付ける方針を公表しました。 動物虐待などの悲しいニュースが多い昨今、アジア圏、しかもお隣の韓国でこのような制度ができるのは、随分先進的なことではないでしょうか。 日本では、まだペットに関わる教育や講習は義務化されていませんが、外国のペットに関する教育事情はどのようになっているのでしょう。 今回は韓国で義務化されるペットの飼い主に関する教育の内容、及び、ペット先進国とも呼ばれるスイスの実情も合わせてご紹介します。

飼い主の教育が義務化された韓国

飼い主の教育が義務化された韓国 2020年1月14日、韓国の農林畜産食品部は、動物を虐待する行為についての処罰を強化する方針を示した「2020年から2024年動物福祉総合計画」を公表しました。 これにより罰則が以下のように変わります。

現在

    虐待によって動物を死に至らしめる行為に対する処罰 2年以下の懲役/2000万ウォン(約189万円)以下の罰金 動物遺棄に対する処罰 現行の300万ウォン以下の過料

2021年から

    虐待によって動物を死に至らしめる行為に対する処罰 3年以下の懲役/3000万ウォン以下の罰金 動物遺棄に対する処罰 300万ウォン以下の罰金
動物虐待罪が成立すると、動物に対する所有権が制限されます。その一環として2020年から、ペットの飼い主の責任意識を高めるため、ペットを購入する際に所定の教育を受けることが義務付けられました。 2019年に、日本でも動物愛護法が改正されましたが、それよりも厳しい処罰となっています。飼い主に対する教育を義務付けるというのも画期的です。

韓国のペットに対する意識はバラバラ

韓国のペットに対する意識はバラバラ なぜこのような教育の義務化が決められたのでしょうか。

動物を購入できる方法もさまざま

日本の場合は、ペットを迎え入れるとなるとペットショップで購入するのが一般的な選択肢です。最近ではインターネットからの購入もできます。また、保健所や譲渡会で保護された動物を譲り受ける方も多くなってきています。 韓国でも保護動物を譲り受けてペットとして迎え入れるなどの活動が見られますが、日本と同様にペットショップでお金を出して購入する方が一般的です。しかも、日本に比べて安価な価格が設定されており、誰でも購入しやすい環境が整っています。 安易にペットを購入できることから、気に入らないことがあったり、飼うことが難しくなったら、すぐに捨ててしまうというケースも増えてきており、これが問題となっています。この法律が制定された背景には、近年、韓国でも動物愛護を訴える人が増えてきていること関係しているでしょう。

悲しい事件も

2019年1月には、ペットショップで購入した「子犬が排泄物を食べてしまうので返品したい」と訪れた女性が、子犬を店員に投げつけ、死亡させてしまうといった悲惨なニュースがありました。Twitterなどでも話題になったため、ご存知の方も多いかもしれません。 また、山口県にある柴犬専門のペットショップでは、韓国の購入者から犬が大きくなり、排泄物が多すぎるという理由から、犬を買い換えたいと要望を受けたということもニュースに上がっています。 動物愛護や福祉に関心がある人はいるものの、国全体としてはまだその意識が足りていないことが、今回このような制度ができた一因であるように思えます。

ペット先進国のスイスでは

ペット先進国のスイスではティアハイムと呼ばれる動物保護施設から動物を引き取るのが一般的 ペット先進国として知られるスイスでは、ペットショップでの生態販売はないと言われており、動物を飼うためには、ティアハイムと呼ばれる動物保護施設から動物を引き取るのが一般的だそうです。 また、バスや列車などの交通機関やレストラン、ホテルなど多くの場所で、ケージに入れられることなく飼い主と犬が一緒にいるところが見受けられます。 日本ではあまり考えられませんが、スイスでは日常的な光景なのです。こういった光景は、イギリス等、他の欧州各国でも見られ、珍しいことではありません。

犬を飼うために免許がいるスイス

ペット先進国のスイスでは免許が必要 スイスでは、すべての犬と飼い主に法律で講習と訓練を義務付けています。 初めて犬を飼う人は、犬を受け入れる前に講習を必ず受けなければなりません。しつけの必要性、犬にかかる経費の明細など、飼育に不可欠な知識を学びます。その他、必要な予防接種やマイクロチップなどを合わせると、この時点で約6,000円程かかります。 犬を飼うことの大変さを知り、ここで諦める人も出てくるようです。

実技訓練も

犬を迎え入れたら、1年以内に飼い主自身が飼い犬を連れてしつけの実技訓練を受けなければなりません。1回1時間のしつけ訓練、および実技テストが4回に分けて行われます。ここでも約7,000円程の費用がかかります。 これらに合格すると、ようやく免許取得の証明書がもらえます。なお、飼育経験がある人も新しい犬を飼う際にも実技試験が必要です。 言い換えるならば、訓練されていない犬がスイスにはいないことになります。

犬にかかる税金もある

さらに、飼い始めて1年後から1頭約17,000円の犬税の徴収が開始されます。2頭目以降はさらに高額になるよう設定されている自治体もあるようです。 このように飼い主にも飼い犬にも厳しい講習や制度があるため、スイスではいたるところで犬と人間が一緒に生活できる環境が整っているのでしょう。 また、動物を人間と同じく社会の一員として見ており、動物に対してもお金をかけ、講習や訓練を受けてもらうという考え方があります。そのようなことから、殺処分ゼロの国と呼ばれるようになったのでしょう。

最後に

韓国とスイスのペットのための教育制度 日本でも2019年に動物愛護法が改正されたばかりですが、今回は、ペットのための教育制度について韓国とスイスの2カ国の紹介をしました。 日本でも、東京都の小池百合子知事が、「ペットの殺処分ゼロ」を公約としていましたが、期限としていた2020年よりも1年早く殺処分ゼロを達成したと発表していますが、実際には150匹ほどの犬猫が殺処分されていたとの報道もあります。 また、殺処分ゼロが達成された都道府県がある一方、殺処分はゼロだが、実際には糞尿にまみれて、とても幸せとは言えない生活を強いられている犬や猫たちもいます。これは私たちが望む世界なのでしょうか? 捨てられてしまった動物を保護し、新しい飼い主を探すことは大事です。それと同じように、安易に犬や猫を購入してしまう飼い主や、捨ててしまう飼い主に対して、動物福祉に関する教育を行い、動物に対する意識を変えていくことも大事なのではないでしょうか。 動物福祉に対する考えが遅れている韓国では、既に飼い主に対する教育が始まろうとしています。動物先進国であるスイスやスウェーデン、イギリスなどをお手本に、日本でももっと踏み込んで、動物に対する教育が義務化されるべきではないでしょうか。