幸運を呼ぶ?ヘミングウェイキャットと呼ばれる猫の正体とは
ノーベル賞も受賞したアメリカの文豪アーネスト・ヘミングウェイは、愛猫家としても知られています。
そんなヘミングウェイの名前がついたヘミングウェイキャットとはどのような猫で、なぜ「幸運を呼ぶ猫」と呼ばれるのでしょうか。
この記事では、ヘミングウェイキャットについてご紹介し、猫の指が多くなる多肢症という遺伝病について解説していきます。
猫の指の本数はいくつ?
ヘミングウェイキャットの解説をする前に、通常、猫の足の指の数はいくつかご存知でしょうか。
正解は、前足の指が5本ずつ、後ろ足の指が4本ずつの計18本です。
猫が木などに登るときは、前足で抱え込むようにするため、後ろ足はあまり使う機会がなく、後ろ足の親指に相当する部分が退化してしまったと考えられています。
一方で、猫の前足は意外と器用で、おもちゃや食べ物をつかんだり、水槽に入っている金魚を捕まえたりできるのも特徴です。
ヘミングウェイキャットとは
ヘミングウェイキャットは、足の指の本数が通常より多い猫のことを指します。
アメリカの文豪が好んでいたことから「ヘミングウェイキャット」と呼ばれることが多いですが、「ミトン猫」「ボクシング猫」「スノーシュー猫」などと呼ばれることもあります。
指の本数は猫によりますが、1つの足に1本だけ指が多い子もいれば、前後の足の指の合計が28本とギネス世界記録に認定されている猫もいます。なお、一般的には前足のみに見られる場合が多く、4本の足すべての指の本数が多い猫はほとんどいません。
指の数が多い猫は、先天的に身体の異常を伴う「多指症」という遺伝子疾患の一つです。多指症については、後ほど詳しく解説します。
幸運を呼ぶ猫?
多指症の猫は、通常の猫と比べるとより器用だといわれ、船上でマストに渡したロープも軽々登ったり、ネズミを捕まえたりすることにも長けていたため、「幸運を呼ぶ猫」として船乗りの間で愛されていました。
アメリカの文豪アーネスト・ヘミングウェイ
ヘミングウェイは、20世紀の文学界に大きな影響を与えたアメリカの文豪です。
『誰がために鐘は鳴る』や『老人と海』などの代表作があり、1954年にはノーベル文学賞も受賞しました。
ヘミングウェイは、友人の船乗りから「スノーボール」という名前の猫を譲り受けました。この猫は、前足の指が6本ずつある多指症の猫でしたが、愛情をたくさん注いで育てました。
多指症の猫の別名にも名前を残すくらいですから、とても大切にしていたことが伺えますね。
ヘミングウェイハウス
ヘミングウェイは世界中に住居を構えましたが、その中でもフロリダ州のキーウェストにある屋敷は博物館として「ヘミングウェイハウス」の名で公開されています。そこでは現在でも、ヘミングウェイが飼っていた「スノーボール」の直系子孫が50匹ほど飼われており、そのうちの半数程度が多指症の猫だそうです。
ヘミングウェイハウスに住むこれらの猫は、フロリダ州が管理しており、定期的な健康診断も行うなど、大切に守られています。
多指症とはどんな病気?
引用:YouTube
『Cute Polydactyl Cats with Extra Toes Compilation』 by pawbaby
https://youtu.be/Gv1Dz_sfrvM
多指症は、遺伝子の突然変異によって引き起こされる先天性疾患で、指の本数が通常よりも多い病気です。
多指症の猫は、船におけるネズミ退治の使役猫として広まり、アメリカやカナダ、イギリスなどではよく見られる奇形の一種です。多指症は優性遺伝のため、両親のどちらかが多指症の遺伝子を持っていると、多指症の猫が生まれる可能性が高くなります。
日本ではほとんど見かけることはありませんが、海外では「幸運を呼ぶ猫」として多くの人から愛されています。
健康被害は?
多くの多指症の猫は、健康面では特に影響はなく、日常生活で支障をきたすことはほとんどありません。
ただし、場合によっては爪が研ぎにくいこともありますので、定期的な爪のお手入れが大切です。
起こりやすい猫種
多指症は以下の猫種でよく見られます。しかし、なぜこれらの猫種に多指症が多く現れるのかははっきりとわかっていません。
- メインクーン
- ピクシーボブ
ピクシーボブの半数程度は多指症であるといわれるほど起こりやすいといわれています。猫種の中では唯一多指症が容認されており、各足に7本の指まで認められています。
まとめ
ヘミングウェイキャットは、言い方を変えれば奇形の一種です。日本では敬遠されることが多いため、流通に乗ることはほとんどありませんが、海外では多指症の猫を個性として多くの人に受け入れられ愛されています。
そもそも、多指症の猫の存在も知らなかったという方もいるかもしれません。この記事をきっかけに、多指症の猫に興味を持っていただけたら幸いです。
今はなかなか海外に行くことが難しい時勢ですが、もし機会があればヘミングウェイハウスを訪れ、幸運を呼ぶ猫たちに会ってみてください。
【獣医師監修】メインクーンの好発疾患と4つの健康管理のポイント
メインクーンは、世界一大きい猫としてギネスにも認定されている猫種です。小さい猫種にはない存在感と、モフモフの毛が魅力的ですよね。
一方でメインクーンには、注意したい遺伝疾患がいくつか報告されています。
今回の記事では、メインクーンの好発疾患と日常生活でできる健康管理について、獣医師が詳しく解説します。
メインクーンの基本情報
歴史
メインクーンは、北米でもっとも古い猫種のひとつとして知られています。
起源には諸説ありますが、ノルウェージャンフォレストキャットなどの北欧の猫が北米に入り、現地の猫と交配して生まれたという説が有力視されています。
また、遺伝的には不可能な組み合わせですが、体の大きさや被毛の特徴から、メインクーンはアライグマと猫の交配で生まれたという伝説も有名です。
身体的特徴
メインクーンはがっちりとした胴長の体格で、体重はオスで6~9kg、メスで3~6kg程度が一般的です。
フサフサの被毛が特徴的の長毛種ですが、実はダブルコートではなくシングルコートに分類されます。
性格
性格は明るくて人懐っこく、家族にも知らない人にもフレンドリーに接することのできる猫種です。
また、賢い猫としても知られており、犬のように投げたボールを取って来るなどのしつけが可能です。
メインクーンの好発疾患
メインクーンは、報告されている遺伝疾患が比較的多い猫種です。
どんな病気が発生する可能性があるか、事前に把握しておくことで、病気の早期発見・予防につなげましょう。
肥大型心筋症
【症状】
運動不耐性(疲れやすい)、胸水や腹水貯留に伴う呼吸困難、食欲低下、嘔吐など。血栓塞栓症を併発した場合には後肢の不全麻痺や完全麻痺、後肢の冷感などが現れやすい。
【原因】
心筋の肥大(厚くなる)によって心臓が膨らみにくくなり、一度に送り出される血液の量が減少する。メインクーンでは遺伝性が証明されている。
【備考】
肥大型心筋症と診断された後はたとえ血栓がなくても、血栓の形成予防の処置も同時に行う。
股関節形成不全
【症状】
腰を左右に振った独特の歩き方、関節炎を併発している場合には疼痛が認められる。
【原因】
過剰な体重や過剰な運動によって発症する。先天的に股関節の嵌まりが緩いことによる。
【備考】
安静にする、抗炎症薬を用いるなどの治療が行われるが、外科手術が選択される場合もある。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
【症状】
貧血、可視粘膜(歯茎など)の蒼白、頻脈、頻呼吸など。
【原因】
ピルビン酸キナーゼという酵素の遺伝的欠損によって溶血性貧血が引き起こされる。これは常染色体劣性遺伝によって伝達される。
【備考】
年齢とともに骨髄線維症と骨硬化症が進行し、造血能は低下していく。
進行性網膜萎縮
【症状】
昼盲、夜盲、徐々に進行する視覚障害、失明。
【原因】
網膜に存在する光を感じる細胞が徐々に変性することによる。
【備考】
猫の視覚を判断することは難しいが、家具にぶつかる、近くの物を目で追わなくなるなどの徴候が見られることがある。また家具は配置を覚えていることもあるため、普段とは違う場所に障害物(段ボールなど危険のないもの)を置き、ぶつからないかチェックすることも有効。
脊髄性筋萎縮症
【症状】
生後15〜17週齢で見られる後肢の虚弱と震え。その後ジャンプができなくなり、筋肉の萎縮、可動域の低下が見られるようになる。
【原因】
遺伝的に運動神経が消失することによる。これは常染色体劣性遺伝によって伝達されるため、素因がある子は繁殖には供さない。
【備考】
症状がなくても遺伝的にキャリアである可能性があるので繁殖の際には注意が必要。
メインクーンの健康管理
続いて、これら好発疾患が発生する可能性を踏まえ、メインクーンとの生活において、どのような健康管理を行えば良いのかを解説します。
1. 日頃からブラッシングを
体が大きく、被毛も長いメインクーンには、最低でも週2〜3回、抜け毛が多くなる初夏から秋にかけては1日1回のブラッシングを行いましょう。
ブラッシングによって毛玉を予防したり、口から入る被毛を減らすことで毛球症の発生を抑えることができます。
最初はスリッカーブラシやピンブラシで全体をブラッシングし、ほぐれにくい毛玉はハサミで切ります。最後にコームで仕上げましょう。
2. 熱中症に注意
もともと猫は暑さに強い動物ではありますが、被毛の長いメインクーンは熱中症にかかりやすい傾向にあります。
夏場はエアコンなどを積極的に使用し、愛猫にとって過ごしやすい空間を作ってください。
ガンガンに冷房を効かせる必要はありませんが、人間が快適だと思える室温(27度前後)を意識しましょう。
万が一、熱中症を疑うような症状が現れた場合はすぐに動物病院を受診してください。
3. 巨体でも運動できる場所を確保
大きな体のメインクーンにとって、特に室内飼いの場合では、運動量にも限界があります。
水平方向である横の移動だけでなく、キャットタワーなどを設置して、ジャンプなども取り入れた三次元的な運動ができると効果的です。
4. 理想体型の維持
体格の大きなメインクーンにとって、太っているのかどうかの判断は難しいのではないでしょうか。
猫の標準体重は、1歳の時の体重と言われています。健康診断時の際に獣医師さんに体型の状態を聞いた上で、体重を把握しておき、過度に増えすぎないようにしましょう。
また、被毛が多くて体型がわかりにくいですが、肋骨が軽く触れるくらいが理想の皮下脂肪量と言われています。ブラッシングの時など、定期的に胸の周りを触ってみてください。
まとめ
今回は、メインクーンがかかりやすい病気と健康管理のポイントを解説しました。
愛猫も生き物ですから、紹介した遺伝疾患以外にも体調を崩すことがあるかもしれません。
日常的に愛猫の健康状態を観察し続け、微妙な変化にも気付けるようにしましょう。
【獣医師監修】ミヌエットの好発疾患と病気予防のポイント
ミヌエットは、ペルシャとマンチカンを掛け合わせて生まれた新しい猫種です。フワフワの毛と、可愛らしい姿が魅力で、徐々に人気が出てきており、動物病院でも見る機会が増えています。
そんなミヌエットですが、遺伝的に発生しやすい病気がいくつか存在します。
今回は、ミヌエットの好発疾患について獣医師が詳しく解説します。
ミヌエットの基本情報
歴史
短足でないマンチカンは捨てられてしまうことが多かったのですが、1996年に短足愛好家のブリーダーが短足猫の固定を試みたのが始まりです。最初にペルシャとマンチカンを交配させ、その後、ヒマラヤンなどの長毛種を掛け合わせて、現在のような姿になりました。
当初は、短足という特徴からフランスの英雄にちなみ「ナポレオン」と呼ばれていましたが、2015年に「ミヌエット」と改称されました。
身体的特徴
がっしりとした身体と、マンチカン由来の短い足が特徴ですが、マンチカンと同様に足の長いミヌエットも存在します。
ペルシャのようなふわふわとしたダブルコートの被毛を持ち、ホワイト、ブラック、シルバー、ブルー、クリームなどさまざまな毛色が認められています。
性格
ペルシャ由来の甘えん坊な性格と、マンチカン由来の好奇心が強く活発な性格を兼ね備えています。
社交的で警戒心が少ないため、飼い主以外の人にもすぐに懐きます。しかし、あまりしつこくすると嫌がるので注意しましょう。
ミヌエットの好発疾患
ミヌエットの誕生背景にはペルシャおよびマンチカンの存在があります。よって好発疾患には、これら2種類の猫種に共通するものが挙げられます。
遺伝によって発生しやすいものもあるので、愛猫の両親に病気が起きていないかはしっかりと確認しておきましょう。
多発性嚢胞腎
【症状】
元気消失、食欲不振、多飲多尿、嘔吐、流涎、下痢、脱水、口内炎、発作、貧血など。
【原因】
遺伝的に腎臓に多数の嚢胞が形成され、腎不全を呈する。
【備考】
若齢でも腎不全の症状が見られる場合、検診などで腎臓に嚢胞が見られる場合は経過を注意深く観察する。
肥大型心筋症
【症状】
運動不耐性(疲れやすくなる)、胸水貯留や腹水貯留、肺水腫に伴う呼吸困難、呼吸速迫、元気消失、食欲低下、嘔吐など。
【原因】
心筋(心臓の筋肉)が厚くなり、心臓が膨らみにくくなる。これによって血液が渋滞し、循環不全を呈する。
【備考】
血栓塞栓症を併発することが多く、四肢の麻痺などを引き起こす。肥大型心筋症と診断された後は血栓の形成予防も同時に行っていく。
流涙症
【症状】
涙液量増加による涙焼け。
【原因】
先天的な鼻涙管の閉塞、結膜炎などの炎症による涙道閉鎖などによって、涙腺で産生された涙が鼻に抜けていかないことによる。
【備考】
涙焼けで被毛が黒っぽくなるだけでなく、皮膚炎も起こることがある。
角膜炎
【症状】
疼痛、角膜浮腫(角膜が白っぽくなる)など。結膜炎を併発している場合には結膜充血や結膜浮腫なども見られる。
【原因】
機械的刺激やヘルペスウイルスの感染。
【備考】
ミヌエットは活発な性格の子が多く、家具などに眼をぶつけることで角膜に傷が付くことも多い。
甲状腺機能亢進症
【症状】
多食、体重減少、多飲多尿、活動の亢進、攻撃性の亢進、嘔吐、下痢など。
【原因】
甲状腺の過形成により、甲状腺から分泌されるホルモンが過剰になることによる。
【備考】
高齢の猫では最も一般的な内分泌疾患と言われている。
ミヌエットの健康管理
愛猫が最も多くの時間を過ごすのが自宅です。家の環境や生活習慣を少し見直すだけで、愛猫の病気に早く気づくことができるかもしれません。
これら好発疾患の早期発見や予防の観点から、ミヌエットとの生活でどんなことに注意すべきかを紹介します。
1. こまめなブラッシング
長毛のミヌエットは、毛玉形成および毛球症の予防のために定期的にブラッシングをしてあげましょう。
皮膚に毛玉ができてしまうと、そこが引っ張られ、痛みや炎症が引き起こされます。毛玉を梳かす際にはスリッカーを用いますが、スリッカーの硬い毛先が直接皮膚に当たると傷がつき、そこから感染などが起こることがありますので注意しましょう。
また、定期的にムダな毛や抜け毛を取り除いてあげることによって、グルーミング(毛づくろい)の際に口から入る毛が少なくなります。抜け毛の処理の際には柔らかいブラシを使いましょう。
手袋タイプのブラシもあるので、スキンシップのついでに抜け毛処理をしてあげてもいいかもしれません。
2. 運動できる環境
毎日の適度な運動がなければ、愛猫は簡単に肥満体型になってしまうでしょう。
もともと活発な性格の猫種でもあり、運動ができない環境は猫にとってストレスです。
時間を作って一緒に遊ぶ、一人でも体を動かせるようにキャットタワーなどを設置するなどの工夫が必要です。その際、ミヌエットは手足が短いため、高さのあるキャットタワーは逆に体に負担をかける場合があるので注意しましょう。
3. 尿の状態をチェック
尿には腎泌尿器系の疾患や内分泌疾患などの徴候が現れることが多いため、愛猫の健康状態を知る手段として、毎日の尿の状態を確認することが重要です。
尿量、色、できれば排尿回数なども把握しておくといいでしょう。
もしかしたらトイレの種類(猫砂、新聞紙など)によっては尿の状態が確認しにくいかもしれませんが、トイレの種類を変えると、その子の性格によっては排尿をしなくなることもあります。
愛猫が快適に排泄できるトイレの状態で、尿を確認しましょう。
4. 眼の状態もしっかり確認
ミヌエットは、眼疾患も比較的多い猫種です。毎日顔を見る時に、眼に異常がないかも確認しておきましょう。
眼に関する観察のチェックポイントは以下のようなものがあります。
- 涙が多くないか
- 充血がないか
- 左右で眼の開き方に差がないか
- 目ヤニが多くないか
まとめ
ミヌエットは近年に出てきた新しい猫種のため、飼い方や病気などの情報は他の猫種に比べると少ないかもしれません。
今回ご紹介したポイントに注意して飼育し、わからないことがあれば、気軽に動物病院までご相談ください。
【獣医師監修】ラグドールの好発疾患と健康管理のポイント
ラグドールはモフモフの毛が特徴的な、ぬいぐるみのような猫種です。実際に、「ラグ・ドール(rag doll)」は英語で「ぬいぐるみ」という意味があります。
日本でも飼育している方が多い猫種ですが、いくつか発生しやすい病気が存在するのをご存知でしょうか?
今回の記事では、ラグドールの好発疾患や、日常生活での飼い方のポイントについて獣医師が詳しく解説します。
ラグドールの基本情報
歴史
ラグドールは、1960年代、アメリカ・カリフォルニア州に住んでいたブリーダーの手によって誕生しました。ペルシャやバーマン、バーミーズなどとの交配によって生まれた子猫が基礎だと考えられています。
ラグドール(ragdoll)という名前は、英語で「(布製の)ぬいぐるみ」を意味し、「大人しく抱かれる姿が、まるでぬいぐるみのようだ」として、この名前がつけられました。
身体的特徴
被毛の各部分にある「ポイント」と呼ばれるまだら模様が特徴です。
大きめの頭に、ややつり上がった青い瞳、低めの鼻が真ん中についた丸顔をしており、被毛の長さはミディアムロングです。
体格は大きめでがっしりとしていて、中には体重が10kgを超える場合もありますが、オスで約7〜9kg、メスで約5〜7kgが平均とされます。
性格
おおらかでおっとりとしており、知らない人にもよく懐きます。鳴き声は小さく、成猫になるとあまり激しい運動をしなくなる子も多いようです。
ただし、帰巣本能が強いため、譲渡や引っ越しの際には脱走やストレスに注意しましょう。
ラグドールの好発疾患
まずは、ラグドールに発生しやすい遺伝的疾患や、身体的特徴からかかりやすい病気をいくつか紹介します。
聞きなれない疾患もいくつかあると思いますが、どんな病気があって、どんな症状が現れるのか、しっかりと理解しましょう。
肥大型心筋症
【症状】
運動不耐性(疲れやすい)、胸水や腹水貯留、呼吸困難、食欲不振、嘔吐など。
【原因】
心臓の筋肉が肥厚することで心臓が膨らみにくくなり、循環障害を呈する。
【備考】
左心房に血栓が形成されやすく、それが大動脈に詰まり大動脈塞栓症を引き起こすことがある。塞栓を起こしやすいのは腹大動脈遠位端(太ももの付け根)や腎動脈で、それぞれ四肢の麻痺や尿産生停止が認められる。
進行性網膜萎縮
【症状】
昼盲や夜盲、徐々に進行する視覚障害、失明。
【原因】
網膜に存在する光を感じる細胞が変性することによる。この変性は遺伝的に起こる。
【備考】
猫の視覚機能を正確に評価することは難しいが、物を目で追いにくくなった、家具によくぶつかるようになったなどの症状が現れたら要注意。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
【症状】
貧血、運動不耐性(疲れやすい)、頻脈など。
【原因】
酵素であるピルビン酸キナーゼの遺伝的欠損によって溶血性貧血が起こる。常染色体劣性遺伝によって伝達されるので、両親に本疾患の素因があるかどうかは要チェック。
【備考】
健康診断では赤血球数やヘマトクリット値などの貧血を評価する項目に注意する。
ムコ多糖症
【症状】
顔面骨の形成異常、関節の運動機能障害、後肢麻痺、角膜混濁など。
【原因】
ムコ多糖を分解する酵素の欠損によって全身臓器(骨、軟骨、角膜、心臓など)にムコ多糖が蓄積し、症状が現れる。
【備考】
検査会社によっては遺伝子検査が可能。
毛球症
【症状】
嘔吐、便秘、腸閉塞など。
【原因】
グルーミング(毛づくろい)の際に口から入った被毛が消化管に詰まる。
【備考】
毛玉を溶解するフードやサプリメント用いて予防することもできる。上手に毛玉を吐けない子は利用も検討。
ラグドールの健康管理
ラグドールの好発疾患には、先天的な遺伝子異常に基づくものもあります。遺伝疾患の予防は難しいかもしれませんが、発見を早く行い、迅速に対応することが肝心です。
また、毛球症などについては、日々の生活環境を見直すことで発生を少なくできるかもしれません。
ラグドールと一緒に生活する上でどんなことに注意すべきか、見ていきましょう。
1. 定期的なブラッシング
猫はキレイ好きな動物なので、ある程度は自身で毛づくろい(グルーミング)をして被毛や皮膚を清潔に保っています。
しかし、加齢とともにグルーミングの頻度は減ってきますし、ラグドールは元々毛が長いので毛が絡まって毛玉ができやすい猫種です。
毛玉を放置すると皮膚が引っ張られ、そこに炎症が起きます。
また、グルーミングによって口から被毛が体内に入り、消化管に毛玉が詰まることもあります。
長毛のラグドールには、定期的なブラッシングを心がけましょう。
2. 尿の状態を毎日チェック
尿の状態を日頃から観察することで、病気の早期発見に繋がります。
腎泌尿器系の疾患はラグドールに限らず、猫で非常に多い疾患です。
健康な状態の尿量や尿の色を把握しておくことで、異常にいち早く気づきましょう。
3. 季節に合わせた温度管理
長毛のラグドールは、夏の暑さには弱い猫種です。
猫は犬のようにパンティング(口でハーハーしながら行う体温調節)もしませんので、熱中症には十分に注意しなければなりません。
夏場はクーラーを適切に使い、涼しい環境を作りましょう。27度前後を目安に、人間が快適だと感じる温度で大丈夫です。
ちなみに猫が安静時に口呼吸をしていたら、心臓病や呼吸器疾患の疑いがあるため動物病院を受診してください。
4. 定期的に健康診断を受けよう
外見では判断しにくい病気もたくさんあります。
血液検査や画像検査など、定期的に健康診断を受けることをおすすめします。
7歳までの若い時期は年に1回、7歳以上のシニアは半年に1回くらいを目安に受けておくと安心です。
猫にとっての半年は人間の年齢で換算すると2年程になりますので、決して短い期間ではありません。
病気は早期に発見し、適切な治療を受けることが望まれます。ぜひ健康診断は検討してみてください。
まとめ
本記事では、ラグドールの好発疾患と、日常生活でできる健康管理をご紹介しました。
病気になってしまったときに十分な対応ができるような環境が大切です。
愛猫との生活がより良いものとなるように願っています。
猫の外耳炎は早期発見が大切!原因や症状、予防方法をご紹介
猫の耳からくさいにおいがしたり、耳垢が出たりしていることがあれば、猫は「外耳炎」にかかっている可能性があります。
外耳炎は猫にとって珍しい病気ではありませんが、早期に治療しないと痛みが強くなり、治りが遅くなってしまう恐れがあります。
今回の記事では、猫の外耳炎について、原因や症状、治療方法や予防方法についてご紹介します。
外耳炎とは?
耳は、外側から「外耳」「中耳」「内耳」の大きく3つに分けられますが、「外耳」に炎症が起こっている状態が外耳炎です。
「外耳」は、耳介から外耳道にかけての部分で、外耳道の一番奥に鼓膜が張っています。一般的に言う「耳の穴」をイメージするとわかりやすいでしょう。
炎症が起こる原因は後ほど詳しく解説しますが、細菌や寄生虫、アレルギーなどが主な原因とされます。
猫の外耳炎の症状
猫に次のような症状が見られたら、外耳炎を疑いましょう。
- 耳垢の量が増える
- 耳の匂いが臭い
- 耳が赤く腫れる、湿疹ができている
- 耳をかゆがる
- 耳を床にこすりつける、頭を振る動作が増える
症状が進行すると、痛みが強くなって耳を触られることを嫌がったり、耳が腫れて穴が塞がったり、膿が出てきたりするようになります。
また、外耳からその奥の中耳や内耳にかけても炎症が広がることで、中耳炎、内耳炎を併発することもあります。
外耳炎の原因
菌の感染
通常は耳に存在しない細菌に感染して外耳炎になることもありますが、ブドウ球菌という細菌や、マラセチアという真菌(カビ)など、正常な耳道にも存在する菌が、増殖しすぎることが原因となる場合が多いです。
特に、怪我をしていたり、耳の中の湿り気が多い場合に感染しやすくなります。時期としては、湿度が高くなる梅雨時期に悪化しやすいです。
【耳垢の特徴】
細菌感染による場合は、黄色い耳垢やドロッとした耳垢。
真菌感染による場合は、茶色い耳垢。
いずれも匂いがきつい。
寄生虫による感染
耳の中に、「耳ダニ」や「耳ヒゼンダニ」などの寄生虫がいることもあります。
特に、ペットショップから迎え入れたばかりの猫や、元野良猫などに多いです。
【耳垢の特徴】
黒っぽくパサパサした耳垢が大量に出る。
アレルギー
アレルギーが出やすい体質だと、外耳炎になりやすいです。食物アレルギーの症状が外耳に出ることもあります。
【耳垢の特徴】
耳垢が多くなる場合とならない場合があるが、耳を痒がる仕草がサインとなる。
異物
植物の小さな種などが耳の中に入って、耳道を刺激してしまうことでも炎症がおきます。
【耳垢の特徴】
耳垢が多くなる場合とならない場合があるが、耳を痒がる仕草がサインとなる。
猫の外耳炎の治療
外耳炎を起こしてしまったら、様子を見るのではなく、できるだけ早く治療をすることが重要です。
初期段階であれば、すぐに症状が落ち着くことが多いです。
具体的にどのような治療をするのか見ていきましょう。
まずは耳道内を洗浄する
動物病院で外耳炎が診断されると、まずは耳道に溜まった耳垢や細菌などを洗浄します。
炎症がひどい場合は一度で全ての汚れを取り除くことが困難なので、猫の様子を見ながら無理のない範囲で洗浄し、数日間薬を飲むなどして腫れが引いてから洗浄を進めることもあります。
点耳薬と駆虫薬
耳道を洗浄して一時的に綺麗になったように見えても、細菌や真菌、寄生虫は残ってしまい、放置すれば再び増殖してしまいます。
それを防ぐため、抗生剤や抗真菌剤などを耳に投与します。点耳薬は動物病院だけでなく、自宅でも投薬をするよう指導されることもあります。
また、ミミダニが寄生していることが分かれば、駆虫薬を投与します。
アレルギーの治療
外耳炎の原因がアレルギーの場合は、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を除去することが必要です。
まずはアレルギー検査を行い、アレルゲンを特定できたら、食事内容の改善やノミの駆除、ハウスダスト対策などを行います。
それでも症状の改善が見られなければ、ステロイド剤での症状緩和や、徐々にアレルゲンに慣らす「減感作療法」を検討することもあります。
耳血腫の治療
外耳炎が原因で、耳に血腫ができる「耳血腫」を引き起こすことがあります。
その場合は、耳介に注射針をさして溜まった血を抜いたり、切開して排出したりします。
【外耳炎の治療期間】
外耳炎の治療期間は、原因や症状の程度によって異なります。
軽度であれば、動物病院での洗浄や自宅での点耳薬の投与などで、1週間から2週間程度で落ち着きます。
慢性的な外耳炎やミミダニが原因の外耳炎では、治療が数ヶ月〜数年、場合によっては一生治療を継続することもあります。
猫の外耳炎の予防
猫の耳のお手入れは、通常は毎日する必要あはりませんが、定期的にチェック・清掃をしないと、どの猫でも外耳炎を発症する可能性があります。
日頃から、猫の耳の状態を観察し、清潔を保つようにしましょう。
耳のチェック
猫の耳の健康チェックでは、次のような点に注意してみましょう。
- 耳からくさいにおいがしないか
- 赤みがないか
- 耳垢がたくさん出ていないか
猫が屋外から帰ってきたら
屋外に行くことのある猫では、雨に濡れた状態から外耳炎を発症しやすくなったり、植物の種子などの異物が外耳炎の原因となったりします。
猫が屋外から帰ってきたら、耳が濡れていたり、異物がついていないか確認するようにしましょう。
猫の耳のお手入れ方法
特に気になる症状がない場合はお手入れをする必要はありませんが、少しの汚れであれば、コットンなどの柔らかいもので耳の入り口をそっと拭き取りましょう。
綿棒などで強めに掃除をしたり、耳の奥まで掃除をしたりすると傷をつけてしまう恐れがあるので、自宅では行わないようにしましょう。
まとめ
猫の外耳炎は、決して珍しい病気ではありません。
原因は様々ですが、日頃から耳の状態をチェックして、異常があればすぐに動物病院に連れて行くことで、症状が軽いうちに治療をすることができます。
猫の健康のために、外耳炎の予防と早期発見に努めましょう。
【獣医師監修】ノルウェージャン・フォレスト・キャットの好発疾患
ノルウェージャン・フォレスト・キャットは長毛で大型、筋肉質で野性味のある猫種です。モフモフの体には思わず顔を埋めたくなります。
そんなノルウェージャン・フォレスト・キャットですが、猫種ならではのかかりやすい病気がいくつかあるのをご存知でしょうか。
今回の記事では、ノルウェージャン・フォレスト・キャットの好発疾患や日常生活でできる病気の予防などについて、獣医師が詳しく解説します。
なお、猫種の名前が長いので、以降は「ノルウェージャン」と記載します。
ノルウェージャンの基本情報
歴史
ノルウェーを中心に、古くから「スコウガット(森林の猫)」として親しまれてきた猫で、北欧神話にも登場します。
昔のノルウェーの人たちと暮らしていたノルウェージャンは、農場で飼われたり、バイキングの船に一緒に乗ったりして、ネズミの駆除役として活躍しました。
その後、第二次世界大戦の影響で個体数が激減し、一時は絶滅の危機に。
しかし戦後、ノルウェージャンを愛する人たちの力によって、再び個体数を増やすと、1970年代にはヨーロッパの「国際猫協会」に品種登録され、世界中にファンを持つ人気の猫となりました。
身体的特徴
大きめでがっしりとした体つきで、体重は3〜9kgほどです。長くて美しいダブルコートの被毛が特徴的な猫です。
毛色や模様は、ブラック、ホワイトなどの単色や、シルバー、ブラウンが混ざったバイカラー、タビー柄などがいます。季節によって、毛色のトーンが変わることもあるようです。
性格
性格はとても穏やかで、他のペットに対してもフレンドリーです。飼い主さんにも従順で、知らない人や子供と遊ぶのも大好きです。
好奇心が旺盛で賢く、いたずら好きの猫や、簡単な芸を覚えられる猫もいるようです。
ノルウェージャンの好発疾患
慢性腎疾患など一般的に猫に多い疾患の他に、ノルウェージャンには遺伝的に発生しやすい疾患があります。
遺伝子の異常があるからといって必ずしも病気になるわけではありませんが、どんな疾患があり、どんな徴候が見られるのかは、しっかりと把握しておきましょう。
グリコーゲン貯蔵異常(糖原病)
【症状】
筋力の低下、易疲労性、低血糖、昏睡など。
【原因】
糖代謝に関わる酵素の先天性異常により、グリコーゲンが肝臓や筋肉に蓄積する。ノルウェージャンでは遺伝疾患として報告がある。
【備考】
非常に稀な病気で、まだ解明されていないことが多い。
毛球症
【症状】
便秘、食欲不振、嘔吐など。腸閉塞が引き起こされると腹痛、排便困難、便臭の嘔吐物なども見られる。
【原因】
グルーミングによって口から取り込まれた被毛が消化管内で絡まり、閉塞を来たす。
【備考】
毛玉対策用フードや毛玉溶解サプリメントによって毛玉の排泄を促す、あるいは定期的なブラッシングなどによって口に入れる被毛の量を減らすことで予防する。
糖尿病
【症状】
多飲多尿、体重減少、肥満、嘔吐、下痢、便秘、脱水、昏睡、感染症にかかりやすい、傷が治りにくいなど様々。
【原因】
遺伝的要因(インスリンの分泌が少ないことやインスリンの効果が低いなど)と環境要因(肥満やストレスなど)が相互に関与することで発症する。肥満、老齢、感染症、膵炎などが危険因子となる。
【備考】
猫は元々肉食動物であり、アミノ酸からグルコースを作り出す代謝系が活発である。よって興奮やストレスで血糖値が上昇しやすく、血糖値を上昇させる因子や血糖値を下降させられない因子が関与すると糖尿病になりやすい。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
【症状】
貧血、運動不耐性(疲れやすい)、頻脈など。
【原因】
ピルビン酸キナーゼが遺伝的に欠損することによる溶血性貧血が見られる。常染色体劣性遺伝で伝達されるため、遺伝子変異がある場合は繁殖には供しない。
【備考】
年齢とともに骨髄線維症および骨硬化症が進行し、造血能は低下していくので注意。
ノルウェージャンの飼育で注意したいこと
ノルウェージャンという猫種だからこそ、日常の中で注意したい点があります。
好発疾患を踏まえて、普段の生活でどんなことに注意すればよいのかを見ていきましょう。
1. 肥満に注意
ノルウェージャンは、元々体の大きな猫種です。それに加えて被毛が長いため、肥満には非常に気付きにくいです。
しっかりとしたカロリー管理と適度な運動によって太りすぎを予防しましょう。
一般的に、被毛の下の皮膚を触ってみて、肋骨が軽く触れるくらいが適正な体型と言われています。
スキンシップの際に定期的に肋骨に触れて、肥満チェックをしてみてください。ただし、あまり強く触ると痛いので注意が必要です。
2. 大きな体でも運動できるスペースを
室内で生活をしていると、簡単に運動不足になります。
特に大きいサイズのノルウェージャンでは、「体を動かす場所がない→脂肪がついてさらに体が大きくなる」という悪循環に陥りやすいです。
大きめのキャットタワーなどを用意し、体を動かせる環境を整えましょう。
3. 季節に合わせた温度調整
元々寒い地方の猫であるノルウェージャンは、暑さに弱い猫種です。
そのため、猫の中でも熱中症にかかりやすいと言われています。
夏場はクーラーなどで室温を下げ、逆に冬場は暖かくなりすぎないようにしましょう。
人間が快適に生活できる温度であれば問題ないと思います。
4. ブラッシングは定期的に
長い被毛は、放置すると簡単に毛玉になってしまいます。
毛玉によって皮膚が引っ張られて痛みを感じると同時に、大きくなっていく毛玉によってだんだんと身動きが取りにくくなっていきます。
また、猫は自身で定期的にグルーミング(毛づくろい)を行うことによって被毛や皮膚の健康を守っています。
その際に長い被毛を飲み込んでしまうことで、毛球症に陥ることもあります。
定期的にブラッシングをしてあげることによって無駄な被毛を除去し、毛玉が大きくなる前に処理してあげることが必要です。
ムダ毛の除去には柔らかいブラシを、毛玉を少し梳かす時にはスリッカーを使用します。
まとめ
ノルウェージャンとの生活は、特別なことに満ちています。
愛猫が与えてくれるものはかけがえのないものであり、飼い主は愛猫の健康を最大限守らなければなりません。
愛猫との生活が素晴らしいものになることを願っています。何か変わったことがあれば遠慮なく動物病院にご相談ください。
【猫編】ワクチン・駆虫薬で予防できる病気とその他の病気の予防法
猫にはヒトと同様に、さまざまなワクチンや予防薬があります。
犬であれば狂犬病ワクチンやフィラリア予防などが浮かびますが、猫の飼い主の皆さんはどんな病気の予防をしていますか?よくわからないし、今まで何もなかったから大丈夫という理由で放置していませんか?
この記事では、ワクチンや駆虫薬で予防できる猫の病気と、その他の病気の予防法についてまとめました。
ワクチンで予防できる病気
ワクチン接種が義務付けられている病気
猫には犬の狂犬病のように、ワクチン接種を義務付けられている病気はありません。そのため、猫はワクチンを接種しなくても問題ないと思うかもしれませんが、猫が安全に生きていくためにも、いくつかのワクチン接種が推奨されています。
ワクチン接種を推奨されている病気
以下に、同時に接種可能な混合ワクチンの種類を表にしました。
3種 | 4種 | 5種 | |
---|---|---|---|
猫ウイルス性鼻気管炎 | 〇 | 〇 | 〇 |
猫カリシウイルス感染症 | 〇 | 〇 | 〇 |
猫汎白血球減少症 | 〇 | 〇 | 〇 |
猫クラミジア | – | – | 〇 |
猫白血病 | – | 〇 | 〇 |
混合ワクチンには、「コアウイルス」と呼ばれる猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症の3つが最低限含まれています。
また、1種類の感染症を単体で予防できるワクチンもあります。特に猫エイズとも呼ばれる猫免疫不全ウイルス感染症は、猫同士の喧嘩やグルーミングによって簡単に感染するため、脱走時の保険のために屋内飼育の猫にも接種が推奨されています。
どの混合ワクチンを接種するべきかわからないという方は、かかりつけの動物病院で相談しましょう。
駆虫薬で予防できる病気
内部寄生虫
猫の体の中に寄生する寄生虫を「内部寄生虫」といいます。
ヒトにも感染する人獣共通感染症であるものも多く、猫の健康を守ることで、家族の健康も守ることができます。
- 猫回虫(人獣共通感染症)
- 猫鉤虫(人獣共通感染症)
- 猫条虫(人獣共通感染症)
- 瓜実条虫(人獣共通感染症)
- 多包条虫(人獣共通感染症)
- 犬糸状虫
多包条虫はエキノコックス、犬糸状虫はフィラリアとも呼ばれ、どちらも犬によく見られる寄生虫ですが、猫での寄生報告もあります。特にフィラリアは犬よりも少数の寄生虫で肺に障害を与えることがわかっているため、屋内・屋外問わず予防を徹底しましょう。
フィラリア予防は、蚊が出始める5月頃から蚊がいなくなってから1ヶ月後の12月頃まで、他の寄生虫は一年を通して月に1度投与する必要があります。
外部寄生虫
猫の体の表面に寄生する寄生虫を「外部寄生虫」といいます。
- ノミ
- マダニ
- ミミヒゼンダニ
- ハジラミ
ノミはノミアレルギーや猫ひっかき病などの病原菌を媒介します。また、マダニは、ヒトで死亡報告もある重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を媒介します。
どちらも屋内飼育の猫なら関係ないと考えるかもしれませんが、脱走してしまったり、飼い主が気づかないうちに家の中に持ち込んでしまうことも考えられますので、確実に予防する必要があります。
まとめて予防しよう
駆虫薬の中には、内部寄生虫と外部寄生虫をまとめて予防できるものもあります。その分、値段は張りますが、いくつも薬を与える必要がないのでオススメです。こちらもぜひかかりつけの動物病院で相談してみてください。
病気の予防と早期発見の6つのポイント
多くの病気は、予防をしていても100%防げるというわけではありません。しかし、普段のちょっとした習慣が、病気になりにくい体にしたり、早期発見につながったりすることがあります。
1. 体重管理
肥満は、糖尿病や心疾患、呼吸器疾患、骨関節疾患などさまざまな病気の原因であり、寿命を縮めてしまいます。太ったらダイエットするのではなく、太らないよう、食事量をしっかり管理し、毎日の散歩も欠かさずに行いましょう。
一方で、痩せすぎにも注意しなければいけません。体重が徐々に減少している場合、腫瘍や心疾患、腎疾患、肝疾患などが考えられます。また、糖尿病の末期には体重が減少するため、「ダイエットの成功」と勘違いしないように気をつけましょう。
2. 塩分の摂りすぎに注意
猫の死亡原因の上位を占める腎臓病。その原因のひとつとして、塩分の過剰摂取が知られています。一度味の濃いものを与えると、薄味のものを食べなくなってしまうこともあるので、普段から塩分の摂取量には気をつけましょう。
なお、チャオチュールの塩分濃度が高くて腎臓病になるというデマが流れたこともありましたが、1日の目安を守っている限りは特に問題ありません。
2. 定期的にブラッシングする
換毛期だけでなく、普段からブラッシングをしてあげましょう。
頻度は猫種によって、毎日ブラッシングが必要な場合と、数日に1回で良い場合があります。愛猫に適したブラッシングの頻度を知っておきましょう。
スキンシップになるのはもちろん、皮膚の異常やノミやダニの付着、しこりなどの体の異常にいち早く気づけるかもしれません。
3. 尿や便をチェックする
尿や便は猫の健康状態を見る上でとても重要です。毎日確認することで、血が混じっている、下痢気味、尿量が少ない、便に動くものがいるなどの異変に早く気づけるでしょう。
4. 誤食に気をつける
中毒症状の多くは、食品の放置による誤食や飼い主の無知が原因であることが多いです。
特に絶対に猫に与えてはいけないものは以下の通りです。
- ネギ類
- ぶどう
- チョコレート
- キシリトール
- アルコール
- 人間の薬
ぶどうが危険であると報告されたのは2001年と最近のため、知らないという人も多いかもしれません。しかし、急性腎不全になり死亡してしまう危険もあるため、猫に与えてはいけません。
猫が食べたら危険なものは猫の届かないところに管理し、誤って口にしないように気をつけましょう。
5. 飲水・食事量の確認
肥満や偏食を防ぐために食事を管理することももちろん重要ですが、猫が1日に食べたり飲んだりした量をきちんと把握しておくと、体調不良の際に異変に気づきやすいです。
飲水の量は意識しないとなかなか把握しづらいですが、例えば多飲多尿の場合は腎不全が疑われますし、少なすぎても脱水になってしまいます。
メモリのあるお皿を使い、毎日の飲水量を把握するよう習慣づけましょう。
6. 猫種の好発疾患を知る
かかりやすい病気は猫種によって異なるため、猫を飼うことを決めたら、まずはその猫の特性を調べ、どんな性格なのか、どんな病気になりやすいかなどをしっかり調べましょう。そうすることで、事前に対策をしたり、定期的に健康診断をしたりすることで、早期の発見が可能です。
特に、スコティッシュフォールドの折れ耳や、スコ座りと呼ばれるおじさんのような座り方は、骨軟骨異形成症という疾患の症状のひとつです。見た目だけで「かわいい」と思うのではなく、その理由を知ることも大切です。
まとめ
猫は室内で飼育することも多く、ワクチン接種も義務でないことから、あまり対策をしていないという方も多いかもしれません。
しかし、脱走や災害で外に出て感染してしまうこともありますし、時には飼い主自身が感染源となることもあるでしょう。また、ペットホテルを利用するときなども、ワクチンの接種が必要な場合がほとんどです。
愛する猫が健康で長生きできるよう、飼い主としてできる限りの対策をしてあげましょう。
犬はキャットフードが好き?常食化がNGな理由とは
犬はキャットフードを好んで食べることを知っていますか?
犬と猫の両方を飼っている方は、犬がドックフード以上にキャットフードや猫缶に興味を示す様子を見たことがあるかもしれません。
しかし実は、犬がキャットフードを食べ続けると、中長期的に健康への悪影響をもたらしてしまうのです。
今回は、犬がキャットフードを好む理由、犬と猫の必要な栄養素の違い、犬にキャットフードをあげ続けてはいけない理由をご紹介します。
犬がキャットフードを好む理由
犬はなぜキャットフードを好む傾向にあるのでしょうか?実は、キャットフードには美味しく感じる要素が2つあるのです。
1.嗜好性が高く作られている
一般的に猫は食に対する好き嫌いが多く、偏食しやすいと言われています。
猫の味覚は人間や犬に比べて弱く、特に甘味はほとんど感じられないのですが、代わりに嗅覚はとても発達しています。
猫の好みに対応するため、キャットフードは魚などの香りが強いものが多くなっています。
2.タンパク質とナトリウムが豊富
猫は犬に比べて、必要とするタンパク質とナトリウムの量が多いため、キャットフードにはそれらが多く含まれています。
タンパク質を構成するアミノ酸は甘味や旨味がするものが多く、また、ナトリウムは塩味がするため、キャットフードは犬にとっても味が濃く美味しいと感じられるのでしょう。
ちなみに、猫は甘味をほとんど感じませんが、犬は甘味に敏感だと言われています。
犬と猫、必要な栄養素の違いとは?
キャットフードにはドッグフードよりも多くの栄養素が含まれています。では、犬と猫で必要な栄養素にはどのような違いがあるのでしょうか?
タンパク質
肉食動物である猫は犬よりも高タンパク・高脂質の食事を必要とします。
猫は常に体内で一定のタンパク質をエネルギーに変えています。そのため、必要とするタンパク質は犬の2倍程あると言われています。
猫特有の必須栄養素
また、猫には犬と違って、体内で作れない栄養素が存在します。
具体的には、タウリン(アミノ酸の一種)、アラキドン酸(脂肪酸の異種)、ビタミンAです。これらは食事から摂取する必要のある必須栄養素となります。
- タウリンは網膜、心臓、神経、生殖、免疫調節などに重要な栄養素です。
- ラキドン酸は重要なエネルギー源となる他、腎機能や皮膚の健康に関連します。
- ビタミンAは皮膚や被毛、視力の健康を保ちます。
犬がキャットフードを食べ続けると…
猫は犬よりも必要な栄養素が多いため、キャットフードには多くの栄養が含まれることがわかりました。しかし、栄養豊富だからといって犬にも食べさせて良いというわけではないのです。
犬が食べてはいけないものは入っていないため、少量であれば食べても問題はありません。しかし、日常的に食べ続けてしまうと、少しずつ体に変化が現れます。
以下では犬がキャットフードを食べ続けることによる、4つのリスクをご紹介します。
1.栄養バランスが偏る
犬は猫よりも、犬種や成長によって体の大きさにばらつきが出ます。キャットフードではその犬に合った栄養を十分に補えません。
そのため、犬種や体格に合ったフードでないと、栄養不足・栄養過剰による健康への影響が懸念されます。
2.腎臓への負担
腎臓は、取りすぎた栄養を体の外へ排出する機能があります。
キャットフードはドッグフードと比べて、タンパク質・脂質・塩分の量が多いため、日常的に摂取すると腎臓に負担がかかってしまいます。
その結果、慢性腎臓病・腎不全のリスクが高まります。
3.肥満になりやすい
高タンパク・高脂肪のキャットフードを食べ続けると、肥満に繋がります。
肥満は関節炎や糖尿病など、様々な病気の原因になるため気をつけましょう。
4.ドッグフードを食べなくなる
犬が一度嗜好性の高いキャットフードの味を覚えてしまうと、ドッグフードを食べなくなり偏食につながる可能性があります。
興味本位であげてみる、といったことはしないようにしましょう。
逆に猫がドックフードを食べるとどうなる?
反対に、猫がドックフードを食べてしまうとどうなるのでしょうか?
ドックフードは猫にとっての嗜好性は低いため、好んで食べる猫はあまり多くないと考えられます。万が一食べてしまっても少量なら問題ありません。
しかし、日常的に食べ続けると以下のように健康を損ねる可能性があります。
タウリン不足
猫が食事から摂取する必要のあるタウリンは、ドッグフードには多くは含まれません。
タウリン不足の状態が続くと、網膜に障害が起き視力低下を引き起こし、最悪、失明の恐れもあります。また、心筋症や免疫機能不全のリスクもあります。
ビタミンA不足
猫が体内で生成できないビタミンAは、ドッグフードには含まれないことが多いです。
ビタミンAが不足すると、皮膚疾患、夜盲症や繁殖障害が起こります。
ウェットフードは消化できない
食材がそのまま入っているような犬用のウェットフードなどは、猫が消化できない可能性があるため注意が必要です。
まとめ
犬にとって魅力的なキャットフードですが、栄養の過剰摂取による疾患や偏食の恐れがあるため、進んであげることはしないようにしましょう。
食欲が減退した犬にキャットフードをトッピングしてあげてみる、ということもあるようですが、偏食や栄養の偏りなどのリスクを十分に理解した上で、一時的・少量にとどめてください。
食欲減退の原因が何らかの疾患である場合、栄養が偏ると悪化する恐れがあるため、まずは獣医師に相談することをお勧めします。
犬・猫別のフードにすることを大前提に、愛犬・愛猫それぞれに合うごはんを探してみてくださいね。