動物福祉先進国で急増!ヴィーガン食生活に編集部が挑戦してみた感想

シェリー編集部では以前、家畜の動物福祉や環境問題、健康維持などの理由から、世界でヴィーガン人口が増えていることをみなさんにお伝えしました。

畜産のあり方を考え直し、今まであまり知らなかったヴィーガンの生活を知ってみたいという思いから、シェリー編集部の3名で、「1週間ヴィーガンチャレンジ」をやってみることにしました。

なぜ今、「ヴィーガン」?

ヴィーガン 動物福祉 環境 健康

ヴィーガン料理は、肉や魚、乳製品、卵、蜂蜜など、動物性のものを使わない料理のことを言います。

ヴィーガンチャレンジに参加した3人の編集部は、どうしてヴィーガンに興味を持ったのでしょうか。

編集部員Aの場合

もともと動物福祉に関心がありましたが、今までは主にペットの福祉が中心でした。しかし、ペットのことを考えるうちに、家畜の福祉も確かに考えなきゃいけない、と思うようになりました。あとは、歯の治療で療養中だったので、ちょうど食事があまり食べられなかったという理由もあります(笑)

編集部員Bの場合

最近少し体型が気になっていたとき、ヴィーガンはバランスよく食べれば健康に良いという話を聞いて、やってみようという気持ちになりました。また、「ヴィーガンの食べ物の調達は難しいのかな?」「逆にお肉を食べないことで体調が悪くなったりしないのかな?」という興味もありました。

編集部員Cの場合

ヴィーガンに関心を持った一番の理由は、畜産業が環境問題の大きな要因となっていると知ったことでした。食生活を変えるのには勇気がいるけど、畜産業が地球環境に対して相当な破壊力を持っていることを知って、このままではいけないような気がしました。そこでまずは1週間、自分で試してみることにしました。

ここに挙げられたように、動物福祉健康維持環境問題などへの関心の高まりから、今、特に欧米の若者を中心にヴィーガン人口が拡大しています。日本ではまだあまり浸透していないように思えますが、これからヴィーガン食を取り入れる人や、ヴィーガン料理を提供するレストランが日本でも増え、なじみのあるものになっていくでしょう。

なお、今回は食生活のみの見直しを行っていますが、本当のヴィーガンは、食生活だけではなく、洋服はもちろん、石鹸や化粧品などの生活用品の全てを植物性由来のものに変えます。

どんな料理を作ったの?

ヴィーガン料理と聞いて、みなさんはどのようなことを思い浮かべるでしょうか?「ヘルシーなものが多そう」「野菜だけを食べる」「食べられるものが少なそう」「美味しくなさそう」など、いろいろなイメージがあるでしょう。

ここでは、編集部が1週間でチャレンジしたヴィーガン料理をご紹介します。

代替肉「ソイミート」を使った料理

大豆たんぱくから作られた代替肉「ソイミート」を使えば、本物のお肉がなくてもこれまでと同じ料理が楽しめます。

初めはわずかに味にクセがあると感じましたが、よく洗って、しっかり絞って味を染み込ませるなど少し工夫してみたところ、本物のお肉とほとんど変わらないおいしさでした。何も言わなければ家族も代替肉とは気づかなかったほど、再現度が高かったです。

大豆は「畑のお肉」とも呼ばれているのをご存知の方も多いでしょう。ソイミートのグラム当たりのタンパク質量は本物のお肉より多く、代わりに脂質などが少ないため、栄養面でも優れています。

ヴィーガン ソイミート  大豆ミート 代替肉

上段:唐揚げ、回鍋肉、カレーライス
下段:餃子、麻婆茄子、筑前煮

ソイミートはさまざまなメーカーから販売されていますが、今回編集部が使ったのは、「三代目茂蔵豆腐」の大豆のお肉シリーズ。

水で戻した後、「しっかり絞って洗う」を数回繰り返せば、大豆の臭みが消えて行きます。

豆製品などを使った料理

豆類、豆腐、豆乳、車麩などを使えば、タンパク質をしっかり補うことができます。

ヴィーガン 豆腐 豆乳 豆 料理

上段:おからハンバーグ、豆の野菜煮込み、車麩の肉じゃが風
下段:厚揚げの煮物、豆腐と長芋のがんもどき、豆乳坦々うどん

フルーツを使った料理・甘いおやつ

牛乳やバター、白砂糖を使わなくても、豆乳や菜種油、ピーナッツバターやメープルシロップなどを使うことでパンケーキやクッキーなどを作れます。

栄養補給のため、ナッツ類やオートミールも混ぜ込んでみました。

ヴィーガン スイーツ おやつ

上段:ココナッツ・パンケーキ、ごまクッキー
下段:ラズベリーアイスクリーム、スムージーボウル

ヴィーガン食に挑戦してみた感想

ヴィーガン 豆腐 豆乳 豆 料理

編集部員Aの感想

しっかり食べ物を選んで食べていたので、「体に良いものを食べている」という感覚がありました。出汁など、一部の食品は植物性のものを選ぶ難しさを感じましたが、甘いものも食べられる(白砂糖はNGなので、てんさい糖を使います)し、牛乳がなくても豆乳で代替できるし、思っていたより食べられるものの制限は小さいかったです。
また、今までヴィーガンは宗教的な意味合いが強いものだと思っていたのですが、社会問題に対する意識の高さからヴィーガンになる人もたくさんいるのだろうと思うようになり、ヴィーガンに対するイメージも変わりました
これからも、毎日完璧にとはいかずとも、基本的には続けていきたいと思っています。

編集部員Bの感想

Aさん同様、始める前は「ヴィーガン=食べられるものがほとんどない」というイメージがあったのですが、実際にやってみると、ヴィーガンでも食べられるものは随分多いのだと分かりました。
また、肉を食べなかった場合に体調を壊すのではないかと少し疑いましたが、全然そんなことはなかったですし、気持ち的にも、「肉を食べたい!」という欲求も特に生まれませんでした。ただ、日本ではまだスーパーなどにヴィーガン食品が充実していないことや、慣れていないこともあって、材料の調達が少し大変でした。
これからは無理のない範囲で、週に1日はヴィーガン料理を取り入れていきたいと思っています。

編集部員Cの感想

ずっとお肉を食べて育ったので、始める前はお肉を食べられないことに抵抗がありました。しかし、「ヴィーガン料理」と言っても、豆乳やアーモンドミルク、豆腐、代替肉、豆類など、これまで使っていた動物性のものを植物性のものに置き換えるだけで作れるものも多く、食べられるメニュー自体はこれまでとあまり変わりませんでした
味もおいしかったので、お肉を食べたいという気持ちも自然と消えていきました。お腹の弱い家族は、植物ベースにしてからは胃もたれやお腹を壊すことが減り、腸内環境が改善されたと感じています
材料を置き換えるだけで、これまで通りおいしく食べて家畜動物や地球環境を守れるのなら、もっと早くから始めればよかったと思いました。

3人とも、チャレンジを始める前は、ヴィーガンは食べられるものが限られていると思っていましたが、食べ物を少し変えてみるだけで、実はヴィーガンでも食べられるものは随分と多いことが分かりました。

また、タンパク質等の栄養も、豆類や穀物類などを上手に取り入れれば、ヴィーガンでもしっかり摂取できることも分かりました。

まとめ

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ヴィーガン食を1週間続けた結果、ヴィーガンに対するイメージが変わり、生活に欠かせない「食」や、畜産業に関わる動物福祉や環境問題について考えるきっかけにもなりました。

みなさんの中には、「ヴィーガンに興味はあるけど、今後一切動物性のものを口にしないというのは、ちょっとハードルが高いかも…」と感じている方も多いのではないでしょうか。

ヴィーガンに対して、あるいは動物福祉や健康、環境問題に少しでも関心のある方は、毎日でも、週に数日だけでも、夜ご飯だけでも、それぞれが自分のペースで、ヴィーガン料理を食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか。

ペットだけじゃない!家畜の動物福祉に世界が大注目

犬や猫などのペットの動物福祉は日本でも関心が高まっていますが、今、欧米を中心に家畜の動物福祉も大きな注目を集めています。みなさんが普段口にしている食肉の裏には、どのような現実が隠されているのでしょうか。

世界に遅れをとっている日本は、何を考え直さなければならないのでしょうか。

今回は、家畜の動物福祉をテーマに世界と日本の今を考えましょう。

日本の畜産業の動物福祉は遅れてる?

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国産のお肉と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。なんとなく、美味しく安全で清潔なイメージが浮かぶかもしれません。

では、家畜の動物福祉についてはどうでしょうか。

イメージが湧きにくいかもしれませんが、実は家畜の動物福祉に関して、日本は残念ながら「後進国」と言われています。

国際基準では・・・

OIE(世界動物保健機関)の陸生動物衛生規約(2004年に作成され、最新版は2019年版)では、基本原則として、次の5つの「自由」が掲げられました。

①飢えと渇きからの自由
②恐怖と苦痛からの自由
③寒暖の不快からの自由
④痛み、傷、病気からの自由
⑤正常な行動様式を発言する自由

OIEは、これらの家畜の「自由」を守るよう求めています。具体的には、動物が十分に動き回れる十分なスペースや清潔な環境を保つことや、動物が感じる痛みや恐怖を最小限にまで抑えた方法で飼育や屠殺を行うことが必要とされます。

日本政府はこの指針作りに携わりましたが、残念なことに、日本語訳は未だ正式には公表されていません。

欧米で進む畜産業の改善

主に欧米先進諸国では、家畜の動物福祉を推進する飼育方法や屠殺方法にシフトする動きが見られます。

例えば、鶏をケージにぎゅうぎゅう詰めにすることなく、自由に地べたを歩き、羽を広げられるように放し飼いをする「ケージフリー」方式をとることが、多くの企業、地域、さらには国レベルで宣言されています。

牛や豚などの他の家畜動物に関しても、OIEの指針に基づいて飼育・屠殺するよう、各国で法律の整備や監視の強化がなされています。

日本は動物福祉の後進国

各国で畜産業の動物福祉への取り組みが加速する中、日本は他国に遅れをとっています

実際、OIEや、動物愛護団体の国際NGO「ワールド・アニマル・プロテクション(WAP)」などによる動物福祉の視点からみた日本の畜産業の評価は、「先進国と比較するとかなり低いレベルである」という結果が出ました。

OIEの勧告を受け、2019年6月に改正された改正動物愛護法では、畜産業者に対し地方自治体などが動物愛護法の視点から指導をすることが努力義務として盛り込まれましたが、改善のスピードはかなり緩やかなのが現状です。

動物福祉に一歩前進した企業たち

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家畜の動物福祉に考慮した企業は、日本ではまだごく一部ですが、ここでは、アニマルライツセンターが公表した「アニマルウェルフェアアワード2020」に選ばれた企業をご紹介します。

イオン

プライベートブランドのケージフリー卵の販売を始め、今後、販売店舗を全国に増やしていく姿勢を示しました。

ラッシュジャパン

これまでもケージフリーの卵を選んでいましたが、2019年にはさらに、卵を全く使わない「エッグフリー」を宣言しました。他にも、動物実験を行わずに作られたもののみを販売する宣言もしています。

貞光食糧工業

日本で初めて、ガスで鶏の意識を失わせてから屠殺する「ガススタニング」という手法を導入しました。

ホライズンファームズ

日本で初めて、母豚をストールに閉じ込めない「ストールフリー宣言」を出しました。

日本では一般的に、母豚は一頭ずつ「ストール」に閉じ込められ、ほとんど身動きのできない状態で過ごさなければならず、その間強いストレス症状を示します。他国ではすでに規制がある国も多いですが、日本ではいまだにこの方法が主流です。

イケア

ホットドッグやミートボールなど、植物性たんぱく質を使った手に届きやすい価格の販売を増やしています。植物性ホットドッグ『ベジドッグ』は、COP24(気候変動枠組条約第24回締約国会議)でも提供されました。

世界で広がるヴィーガニズム

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ヴィーガンとは?

ヴィーガンとは、宗教や体質以外にも、動物福祉、環境保全、健康維持など様々な理由から、動物性の食べ物(肉、魚、卵、牛乳、蜂蜜など)を一切食べず、植物性の食べ物(野菜、果物、穀物、豆類など)から栄養を摂る人たちのことを言います。

なぜ今、ヴィーガンか?

今、世界のヴィーガン人口が爆発的に拡大しています。
Instagramでも、「#vegan」のタグを付けた投稿は1億件近くに達し、ヴィーガンが大きな注目を浴びていることがわかります。

1.動物愛護

近年、ペットの動物福祉については欧米を中心に関心が高まっていましたが、今度は家畜についても動物福祉を見直す動きが広まっています。

中でも多くの人に食肉について考え直すきっかけとなったのが、畜産業の裏側を映し出したいくつかのドキュメンタリー映画です。

ほとんど動き回れないほど狭い飼育場で育てられ、生きたまま痛めつけられて泣き叫ぶ悲惨な動物の姿を見て大きなショックを受け、「少なくとも自分はこの動物虐待に加担したくない」と思った人たちも多いようです。

2.環境保全

畜産業開拓のための大規模な森林破壊や、家畜の排せつ物などを合わせると、畜産業が排出する温室効果ガスは、世界中の全ての交通手段(飛行機、車、船、列車など)が排出する量とほぼ同レベルであるのが現状です。

さらに、世界中の陸地の実に26%が家畜の放牧地に使われている上、農地の75〜80%が家畜が食べる飼料の生産にあてられており、仮に畜産業をなくしたとしたら、現在の世界の人口の3倍もの人々の食事を賄えるようになるとの研究もあります。

環境保全が世界中で緊急かつ重大なトピックとなっている今、特に環境保全に意識の高い欧米を中心に畜産業の見直しが進んでいます。

3.健康維持

ヴィーガンは不健康だと思う方もいるかもしれませんが、実はヴィーガンにはダイエットや腸内環境改善効果のほか、ガンや糖尿病、心臓病などの疾患のリスクが下がるという研究も次々と発表されています。

ただし、ヴィーガンとひとくちに言っても、豆や穀物を食べない偏った食事をしたり、砂糖などを多く含む加工食品を食べ過ぎれば、健康には当然被害が及びます。一方偏食が体に悪いのは肉食でももちろん同じで、「ヴィーガンだから不健康」という理解は早とちりでしょう。

あの有名人もヴィーガン

ヴィーガンの有名人として、シンガーソングライターのアリアナ・グランデビリー・アイリッシュ、テニス選手のノバク・ジョコビッチのほか、タイタニックでヒロインを演じたケイト・ウィンスレットなどが知られています。

少し前までは、欧米においてもヴィーガンに対しては偏見が多かったようですが、有名人が次々にヴィーガンを宣言することで、ヴィーガンに関心を持つ人が増えたとも考えられます。

日本でも大人気のアリアナ・グランデは、記者に対し、「私、人間よりも動物の方が好きなの。冗談じゃないわ、本当よ。」と答えたそうです。そんな彼女は、日本の枝豆や豆腐、ひじきなどがお気に入りの食材だと明かしています。

まとめ

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今回は、ペットから少し離れ、家畜の動物福祉について、世界と日本の今を考えました。

家畜動物の境遇の改善だけにとどまらず、環境保全や健康への関心の高まりも相まって、世界中でヴィーガン人口が増え続け、ベルリンでは15%がヴィーガン、他のEU諸国でも若者を中心に国民の約10%がヴィーガンという時代になっています。

アメリカでも、ここ数年でヴィーガン人口が6倍に増え、欧米のレストランではヴィーガンメニューが当たり前のように提供されるようになっています。

ペットの飼育に関しても遅れを取る日本ですが、家畜に関してもそれは同様です。食肉の裏側に目を背け続けてきた日本は、まだまだ畜産業について海外諸国の事例から学ぶべきことが多いのではないでしょうか。