【獣医師監修】犬の嘔吐から考えられる疾患

嘔吐は、動物病院に来院する犬で最も多い症状の一つです。実際に愛犬が嘔吐している場面に遭遇したことのある人も多いでしょう。

では、その嘔吐は何によるものなのでしょうか?今回は臨床の現場でよく遭遇する嘔吐の原因疾患について、獣医師が解説していきます。

消化器疾患


嘔吐の原因としてまず考えられるのは消化器、特に胃や十二指腸といった上部消化管の異常です。これら疾患によって胃液の分泌が過剰になったり、物理的な胃粘膜の刺激によって嘔吐が誘発されます。

急性胃炎・十二指腸炎

【症状】
急性の嘔吐、食欲不振、腹痛など。消化器症状以外の全身症状は通常見られないが、脱水や誤嚥性肺炎などによって重篤化することもある。
【原因】
古い食事、異物、化学物質、薬剤など。腎不全や肝不全から続発することも多い。
【備考】
原因が明らかな場合(異物や薬剤)はそれを除去するが、明らかでない場合には胃腸炎の治療をしてみて反応を見る診断的治療を行うことが一般的。

慢性胃炎

【症状】
嘔吐、食欲不振。嘔吐の回数は、1日に数回から1~2週間に1回まで様々。
【原因】
アレルギー、異物、薬剤、微生物などが挙げられるが、原因は特定されないことが多い。
【備考】
急性胃炎と同様に確定診断には内視鏡検査が有用だが、全身麻酔を伴うこともあり現実的ではない。

胃内異物

【症状】
急性の嘔吐、食欲不振。若齢の犬は特に注意。
【原因】
胃内容物の排出障害、胃粘膜の刺激から嘔吐が誘発される。
【備考】
異物の材質や形などから催吐などの内科療法、もしくは胃切開などの外科療法といった治療方針を決定する。

胃拡張・胃捻転症候群

【症状】
嘔吐、腹痛、流涎、急激な腹囲膨満から昏睡。
【原因】
胃が空気と食物によって急激に拡張することによる。食後に運動した後に発生しやすいと言われている。
【備考】
大型犬で多く、小型犬ではほとんど見られない。胃破裂を起こすこともあり、早期の診断と治療が必要な緊急疾患である。

幽門狭窄

【症状】
嘔吐、食欲低下、体重減少。
【原因】
原因はよくわかっていないが、幽門部(胃の出口付近)が肥厚することで胃排泄障害が起こる。
【備考】
超音波検査やバリウム造影で診断し、根本的治療は外科手術による。

胃の腫瘍

【症状】
嘔吐、食欲不振、体重減少など。場合によっては吐血、メレナ(黒いタール状の便)、貧血などが見られる。
【原因】
犬の胃の腫瘍はリンパ腫が最も多いとされている。
【備考】
慢性胃炎、ポリープなどが危険因子と言われている。

他の内臓疾患


消化器疾患以外にも嘔吐が見られるものがあります。血液検査などを行うのは、これらの疾患を見逃さないためです。

膵炎

【症状】
嘔吐、腹痛、元気消失、下痢など。
【原因】
膵臓からは消化酵素が分泌されるが、その酵素によって自己組織が消化されることによって強い炎症が起こる。危険因子としては薬剤、感染、高カルシウム血症、肥満、全身性代謝性疾患(糖尿病、副腎皮質機能亢進症、慢性腎不全)、腫瘍などが挙げられる。
【備考】
急性の膵炎では発症後24〜48時間以内の早期に治療を開始することが重要。

尿毒症

【症状】
嘔吐、消化管潰瘍、発作、異常呼吸など。
【原因】
腎不全などによって尿毒素が体内に蓄積することによる。
【備考】
腎不全の原因としては熱中症、毒物、感染、腫瘍、ショックなどがある。

肝胆道系疾患

【症状】
嘔吐、腹痛、黄疸、食欲低下など様々。
【原因】
慢性肝炎、胆石症、胆嚢炎などによって症状が引き起こされる。
【備考】
定期的な血液検査や画像検査によって早期に発見することが望ましい。

子宮蓄膿症

【症状】
食欲不振、多飲多尿、嘔吐、腹部膨満、陰部から膿様のものが排泄されるなど。
【原因】
子宮内で細菌が増殖し、膿液が貯留する。
【備考】
卵巣からのホルモン分泌が深く関与しており、早期の避妊手術が最も効果的な予防法となる。

代謝性・内分泌疾患


ホルモンの分泌異常によっても嘔吐は引き起こされます。中高齢で発生しやすい傾向にありますが、いずれも放置すると危険な疾患ですので、しっかりと検査することをおすすめします。

アジソン病(副腎皮質機能低下症)

【症状】
虚弱、体重減少、嘔吐、吐出、下痢、多尿、徐脈、低体温、震え、痙攣など。
【原因】
副腎から分泌されるホルモン(グルココルチコイドおよびミネラルコルチコイド)の不足による。犬では特発性の副腎委縮によるものが多い。
【備考】
適切なホルモン治療を行えば予後は良好。

糖尿病

【症状】
多飲多尿、多食、体重減少、嘔吐、下痢、脱水、感染症、白内障、昏睡など。
【原因】
膵臓からのインスリンの分泌低下、あるいはインスリンの作用低下。
【備考】
犬の糖尿病は若齢発症のものと、3歳齢以降発症のものに分けられる。いずれの場合でも犬の糖尿病治療にはインスリンが必要となる。

病気ではない嘔吐


嘔吐の中には、病気ではない一時的なものもあります。とは言っても愛犬は気持ち悪いはずなので、原因があるのなら速やかに取り除いてあげるべきでしょう。
病気ではなくても、嘔吐が見られた際には放置することは望ましくありません。

乗り物酔い

【原因】
三半規管から小脳へ伝わった刺激が嘔吐中枢を刺激すると考えられている。
【備考】
長時間の移動の前には酔い止め薬を服用するという選択肢もある。獣医師まで相談を。

消化不良

【原因】
古い食餌などの給餌による。
【備考】
ご飯の賞味期限や保管方法には注意を。

まとめ


無数にある病気の中で、今回紹介したものはごく一部です。
一過性で自己限定的な嘔吐の場合には経過観察とすることもありますが、嘔吐が慢性化している場合には一度検査を受けましょう。

愛犬に体調不良が見られた時には、獣医師に相談し、適切な治療を受けさせてあげてください。

犬・猫の反省ポーズに要注意!ヘッドプレッシングは脳の病気のサイン

みなさんは、「ヘッドプレッシング」というペットの行動を知っていますか?
あまり馴染みのない言葉ですが、「反省ポーズ」などとも呼ばれ、SNSなどで見かけたことがあるかもしれません

このヘッドプレッシング、よく知らなければ、「何か反省しているのかな?」と勘違いをして放置してしまいやすい行動です。

しかし実は、ヘッドプレッシングは危険な脳の病気のサインの可能性があります。
今回の記事では、犬や猫がヘッドプレッシングをする理由や考えられる疾患、対処法などを解説します。

そもそもヘッドプレッシングとは?

引用元(YouTube)
「If You Find Your Pet Doing This, Take Them To The Vet Immediately」
https://www.youtube.com/watch?v=VzRQz5Y0-1A

ヘッドプレッシングとは、顔を下向きにして壁などに頭を押し付ける行動のことを言います。
犬や猫以外にも、馬や牛、ヤギもヘッドプレッシングをすることがあるようです。

何かを反省しているの?

その姿は、何かを反省して落ち込んでいるかのようにも見えるため、「反省ポーズ」とも呼ばれています。
また、光や音を遮るために顔を覆って眠る「ごめん寝」にも似ており、知らなければあまり気にせずに放置してしまうかもしれません。

実は危険な病気のサインかも

ところがこのヘッドプレッシング、実は重大な脳の疾患のサインである可能性があります。
知らないで放置してしまうと命にも関わる危険性があるため、犬や猫のヘッドプレッシングには要注意です。

ヘッドプレッシングの見分け方

ヘッドプレッシングは、顔を下向きにして眠る「ごめん寝」や、飼い主さんの足に頭をこすりつけるそぶりとは何が違うのでしょうか?

以下がその特徴です。

  • 壁や冷蔵庫、柱など、硬いものに対して頭を押し付けている
  • 頭を押し付けたまましばらくじっと動かない
  • 座ったまま頭を押し付けていて、寝ているわけではなさそう

ヘッドプレッシングで疑われる病気

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犬・猫がヘッドプレッシングをするようになった場合、疑われる疾患は主に「脳や神経系の疾患」です。

  • 脳腫瘍
  • 脳卒中
  • 前脳疾患
  • 頭部外傷
  • 脳炎
  • 毒性中毒(アルコール、殺虫剤など)
  • 門脈体循環シャント
  • 肝性脳症
  • 神経系の感染症(狂犬病・寄生虫・細菌・ウイルス・真菌感染症)
  • 代謝障害(門脈体循環シャント、高/低ナトリウム血症/低血糖症)

もし、ここ最近頭の打撲や危険物の誤飲をした場合、脳に異常が起きている場合もあります。
心当たりがある場合は、犬・猫がヘッドプレッシングをしないかどうか観察しましょう。

なお、全身麻酔による昏睡状態から目覚めた時にもヘッドプレッシングをすることがありますが、これは一時的なものであり、長引かなければあまり心配する必要はありません。

すぐに動物病院へ

脳や神経に関わる疾患は、特に早期発見・早期治療をする必要があります。
ヘッドプレッシングや、次に紹介するその他の異常行動が見られた場合は、いち早く動物病院を受診しましょう。

他にも、こんな症状・行動が見られる

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脳や神経系に疾患がある場合、ヘッドプレッシングの他に次のような異常行動や症状が見られることがあります。

  • 壁をずっと見つめている
  • 部屋の隅でじっと動かない
  • 同じ所を往復する
  • 円を描くように歩く
  • 床に顔や頭を擦り付ける
  • 聴覚・視覚障害
  • 発作

動物病院を受診する前にまとめておくと良いこと

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ヘッドプレッシングで動物病院を受診する際、次のような点を事前にまとめておくと診察がスムーズに進みます。

  • 時期:症状はいつ頃はじまったか
  • 症状:どのような症状がどの程度の頻度・時間で表れるのか
  • 思い当たる原因の有無:症状があらわれる前に、頭をぶつける・誤飲などの出来事がなかったか
  • 病歴:ペットの病歴や治療歴

ペットの様子を動画撮影しておこう

ヘッドプレッシングなどのペットの異常行動は、素人の判断ではどこまでが正常でどこからが異常なのか、判断するのが難しい場合があります。
そのため、自宅での様子を事前に動画撮影しておき、獣医師さんに見てもらうことをおすすめします。

まとめ

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今回は、犬や猫が頭を硬いものに押し付ける、「ヘッドプレッシング」について、その見分け方や疑われる疾患について解説しました。

よく知らなければ放置してしまいそうな仕草ですが、実は大変危険な病気が隠れている恐れがあり、一刻も早く動物病院に連れて行く必要があります。

ペットは調子が悪くても、飼い主さんに言葉で訴えることができません。
だからこそ、ヘッドプレッシングなどの病気の兆候を飼い主さんがよく知っておき、ペットが出してくれるサインにいち早く気づいてあげられるようにしましょう。

【獣医師監修】スコティッシュフォールドに多い疾患とその対策

スコティッシュフォールドは、垂れた耳とぷっくり丸い顔が特徴の猫種です。

日本でも人気が高く、スコティッシュフォールドを飼育する方や、飼育したいと考える方が増えています。
そこで今回は、スコティッシュフォールドに起こりやすい病気と、注意したい飼育環境についてまとめました。

スコティッシュフォールドの歴史や性格

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歴史

Scottish(スコットランドの)fold(折りたたむ)」という名前の通り、スコットランドが原産の猫で、1960年代に耳の折れた猫をベースに交配を繰り返して生まれた猫種です。

「折りたたまれた耳」が特徴の猫種ですが、実は、不完全な折れ耳、または立ち耳のスコティッシュフォールドもいます

スコティッシュフォールドは、進化の過程で折れ耳を獲得したのではなく、突然変異で生まれた折れ耳の猫を人為的に交配したものであるため、必ずしも折れ耳の遺伝子が発現するとは限りません

立ち耳のスコティッシュフォールドを、最近では「スコティッシュストレート」と呼ぶこともあるようです。

性格

スコティッシュフォールドは、おだやかで人懐っこい性格をしているため、「猫と一緒に遊びたい」「甘えてほしい」と思っている方にはおすすめの猫種です。
また、運動量も比較的少ないため、おとなしめの猫を飼いたい方にも最適です。

スコティッシュフォールドの好発疾患

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スコティッシュフォールドには、注意しなければならない疾患が存在します。特に注意したいのは骨軟骨異形成症で、これはスコティッシュフォールドの垂れ耳にも関係しています。

健康診断の時に何を注意すればよいのか、考えながら読んでいただければと思います。

骨軟骨異形成症

【症状】
足を引きずる様子。
【原因】
スコティッシュフォールドに特徴的な遺伝性疾患。
【備考】
中手骨や中足骨(いずれも指の骨)などの骨格変形が特徴。有効な治療法はなく、対症療法のみ。
折れ耳同士で繁殖させると発症しやすいため、最近では折れ耳のスコティッシュフォールド同士の交配は原則禁止とされる。

多発性嚢胞腎

【症状】
多飲多尿、頻尿、無尿、嘔吐、下痢、食欲不振など。
【原因】
遺伝的に起こる疾患で、腎臓にたくさんの袋(嚢胞)が形成されることで腎機能障害を引き起こす。
【備考】
若いうちから腎不全症状が見られる場合もあるので、定期的に血液検査や画像検査で腎臓のチェックを。

肥大型心筋症

【症状】
呼吸速拍、胸水、腹水、疲れやすい、元気消失、食欲不振、嘔吐など。
【原因】
アメリカンショートヘアの血が混じってる場合には、家族性発生が報告されている。
【備考】
心臓内で血栓が形成されやすく、動脈(特に大腿動脈)に塞栓することが多い。
その場合、後肢の麻痺と突然の痛みを生じる。

外耳炎

【症状】
耳の痒み、臭い、汚れなど。
【原因】
耳道の環境悪化によって、細菌や真菌などの微生物が異常増殖することによる。
【備考】
スコティッシュフォールドの垂れ耳は耳道内環境が悪化しやすい。特に耳が硬い子は要注意。

尿石症

【症状】
膀胱炎症状(頻尿、血尿など)、腹痛など。
【原因】
食事のミネラルバランスの異常、避妊や去勢によるホルモンバランスの乱れなど。
【備考】
肥満傾向の子は、膀胱内の結石が尿道に閉塞することも多く、この場合は緊急疾患として取り扱う。
速やかに閉塞を解除しないと急性腎不全となり、命に関わる。

日頃から気をつけたいポイント

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以上の好発疾患を踏まえて、スコティッシュフォールドと一緒に暮らす上で、飼い主さんが日頃から気をつけてあげたいことを解説します。

痛みのサインを逃さない

スコティッシュフォールドの好発疾患に「骨軟骨異形成症」がありますが、これは外見を観察するだけではわかりません。
日々の歩き方、ジャンプの頻度、動く頻度などをチェックし、異常にいち早く気づいてあげることが必要です。

「スコ座り」には要注意

また、スコティッシュフォールドは「スコ座り」と呼ばれる独特のポーズをすることがあります。両後肢を前に投げ出したおじさんのような体勢で、SNSでも人気のポーズです(#スコ座り)。

しかしこれは、関節にかかる負担を軽減するための姿勢で、関節疾患や肥満の子によく見られます
「可愛いから写真を撮る」ではなく、一度動物病院でしっかり検査をしてもらうのが良いでしょう。

定期検診でレントゲンを

症状が見られなくても病気が進行していたり、痛みを我慢して表に出さないこともあります。
スコティッシュフォールドは特に、半年に1回程度の画像検査をおすすめします。

レントゲン画像上で関節に異常が見られた場合には、できるだけ運動をさせない、室内の段差をなくすなどの対応が必要です。

耳掃除

垂れ耳で、耳の軟骨が硬い傾向にあるスコティッシュフォールドは、定期的に耳のお手入れが必要です。

その際、綿棒を使ってガシガシ掃除をすると、耳の粘膜を傷つけてしまうため、柔らかいコットンを軽く湿らせ、優しく拭ってあげるくらいがちょうどいいです。

耳掃除を嫌がる猫も多いので、無理をせず、定期的に動物病院でケアを依頼することも考えてみてください。

尿のチェック

猫は、腎臓病が非常に多い動物です。

毎日の排泄で、尿の量が変化していないか、あるいは尿の色に変化はないかをしっかりと確認しましょう。
肉眼ではわからないこともあるので、特に7歳以上のシニア期の子は定期的に尿検査をすることが推奨されます。

まとめ

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特徴的な遺伝性疾患があるスコティッシュフォールドですが、だからといって寿命が短いわけではありません。愛情をしっかり注ぎ、病気を早期に発見することができれば、十分に長生きできます。

あらかじめかかりやすい病気を知っておき、少しでも異常を感じたらすぐに動物病院に連れて行きましょう。そして、もし病気になったとしても、その病気とうまく付き合う方法を考えていきましょう。

【獣医師監修】猫が水を飲まないのは病気?動物病院を受診すべき?

猫の飼い主さんであれば、日常生活の中で愛猫の食事量や尿量、排便回数などを気にしている方も多いでしょう。

しかし、猫が飲む水の量はいかがでしょうか?目には見えづらいこともあり、なかなか把握できていない飼い主さんもいることと思います。
もしも猫の飲水量が少ないのなら、猫の体に異変が起きている可能性があります。

今回の記事では、猫の飲水異常について、獣医師が詳しく解説していきます。

そもそも飲水異常とは

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飲水異常は、「水を飲めない」、あるいは「水を飲む量が少ない」状態のことを指します。

ややこしいですが、水をたくさん飲むようになる「多飲」とは区別しています。

猫が水を飲まなくなる理由

猫が水を飲まなくなる原因は主に口の中にあります。水を飲まない以外にも、食欲不振などの症状を伴うことが多いです。

飲水量の低下は脱水状態を引き起こし、循環する血液量が減少してしまいます。
これによって尿を産生する腎臓への負担が増大し、慢性腎不全のリスクが高まることになります。

猫の飲水異常で受診した際に聞かれること

動物病院内では緊張もあって、猫の飲水の様子を確認できないことがあります。
そのため、自宅での猫の様子が、飲水異常の原因を探る手掛かりとなります。

  • 飼育環境:食物の種類や形状(カリカリ、缶詰など)、飲水用容器の形状など
  • 元気、食欲の有無:飲水行動をするか
  • 嘔吐や下痢の有無:そのほかにも体調に異変はないか
  • 飲水量:どの程度、飲水量が減少したのか

猫の様子を動画撮影しておこう

猫が水を飲みにくそうにしている様子を動画で撮影しておくと、診断の役に立つかもしれません。
しかし、水飲み場でカメラを構えていては、猫も落ち着いて水を飲めません。

遠くから、さりげなく撮影しましょう。また、猫の手が届かないところからに定点カメラを設置しておくと便利です。

猫の飲水異常で考えられる疾患

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なぜ愛猫が水を飲まないのか、考えられる理由はいくつかあります。
もし健康上の問題があるとしたら、速やかに異常を取り除く必要があります。

衰弱

猫が弱ってしまって、水を飲もうにも動けない状態です。
衰弱する原因は様々ですが、猫が弱っていることが確認できた場合はすぐに動物病院を受診してください。

猫は、本能的に体調不良を隠そうとする動物です。気が付いた頃にはすでに衰弱していることもあります。

口内炎

猫が口を痛がり、飲食に支障を来たしている状態です。

猫では、猫カリシウイルスの感染慢性腎不全による粘膜の傷害、リンパ球形質細胞性口内炎がよく見られます。

抗菌薬や消炎鎮痛薬の投与によって改善されることもあれば、治療がなかなか効かないこともあります。

また、肥満傾向のある猫では、食欲不振が継続することで「肝リピドーシス」という病気を発症することもあるため、たかが口内炎と言って甘く見てはいけません。

歯肉炎

3歳以上の猫の80%以上が歯周病」というデータもあるように、今や歯周病は猫にとっても一般的な疾患になりつつあります。

大抵の場合、飲水障害が見られる前に固いものを食べづらそうにする様子が見られます。
ドライフードを常食としている猫は、歯周病を見つけやすいかもしれません。

破歯(はし)細胞性吸収病巣

猫では、歯肉縁の歯質に吸収が起こることが報告されています。
つまり、歯が溶けてしまっているのです。

1976年に初めて報告された疾患で、原因は不明ですが、猫の60%に発生していると言われています。
歯肉炎と同様に、口の痛みによって飲食が障害されます。

破折(はせつ)

ケンカや不慮の事故などによって、歯が折れてしまうことがあります。

先端が欠けている程度であれば無症状のことも多いですが、深く折れている場合は歯髄が露出し、痛みが生じます
ケンカでの破折はほとんどが犬歯であるため、外からでも発見することは難しくありません。

口腔内腫瘍

猫の口腔内腫瘍はほとんどが悪性で、扁平上皮癌と線維肉腫が多いとされています。
食欲不振、口臭、嚥下(えんげ)障害(物をうまく飲み込めない状態)が見られることが多いため、飲水障害以外の症状にも注意が必要です。

咽喉頭麻痺

のど(咽頭)から食道への食物の移送がうまく行えない状態を咽頭麻痺と言います。

原因は中枢神経系の異常や、神経筋接合部の異常などが考えられますが、ほとんどが先天性のものと言われています。
飲み込むことがスムーズでなくなるため、誤嚥性肺炎のリスクもあります。

眼疾患

白内障や網膜剥離などによって、視力の低下、あるいは失明が起こると飲水行動が減少します。

猫の視力の測定は非常に困難ですが、あまり動かなくなる、慣れている場所で家具にぶつかるなどの徴候が見られた際には要注意です。

猫の飲水で普段から気をつけたいこと

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飲水量の減少は、よほど注意していないと見逃してしまう徴候です。
普段から、猫の健康に関するデータは揃えておきましょう。

飲水量の把握は日頃から

置き水や多頭飼育の場合には、正確な飲水量の測定は困難というか不可能です。
しかし、最初に器に入れておく水の量を把握し、一日でどのくらい水が減ったのかを見ることはできます。

メモリがついている器などを選ぶとよいかもしれません。

飲水用の器を変えてみる

猫の中には、気に入らない器からは水を飲まない子もいます

また、成長などによって体の構造が変化すると、ずっと使用している器でも水が飲みにくくなることもあります。
病気の可能性も疑いつつ、猫の器を試しに変えてみるとよいでしょう。

まとめ

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腎不全のリスクを低下させるためにも、猫にはたくさん水を飲んで欲しいところです。

そのためにも、猫の飲水量の異常に一早く気付くことは大切です。
猫の飼い主さんは、愛猫の飲水状態を日頃から観察し、何か異常があれば早目に動物病院を受診しましょう。

【獣医師監修】猫の体重減少は危険!早く気付けば病気の早期発見に

猫を抱き上げたとき、「ちょっと軽くなった」と感じることはありませんか?もしくは、猫の体を撫でたときに、「骨が当たるようになった」なんてことありませんか?

猫も生物ですので、生きている中で多少の体重の増減はあります。しかし、体調不良の際には、体重が目に見えて減少することがあります。抱っこしてみて、軽くなったかなと思ったらそれは病気のサインかもしれません。

今回は猫の削痩について獣医師が詳しく解説していきます。

削痩(さくそう)とは?

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「削痩」とは読んで字のごとく、体重減少によって体型が痩せ細ることです。

個体差によりますが、季節の変わり目やその日の体調によって多少の体重の増減はあります。しかし、問題となるのは急激に体重が落ちる場合、もしくは徐々にではあるが確実に体重が落ちていく場合です。

削痩はエネルギーを勝手に大量消費するような腫瘍疾患や、食欲不振を引き起こす疾患、栄養の吸収が阻害される疾患などで主に見られます。たくさん食べるのに体重が落ちていく状態は明らかに異常であるため、精密な検査が必要です。

猫の体重減少で動物病院を受診する前にチェックしておくこと

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体重減少を引き起こす疾患は多岐にわたり、そのすべてに対して検査を行うことは現実的ではありません。

なぜ体重減少が起きているのか、問診によってある程度絞り込む必要があります。動物病院を受診する前に以下のことをチェックしておきましょう。

  • いつから: 何日でどのくらい体重減少があったのか
  • 生後1歳齢前後の体重: 標準体重からどの程度体重が少ないのか
  • 摂食態度: 食欲の有無、摂食量の確認
  • 同居動物の有無: 食事の横取りの可能性
  • 他の臨床徴候: 嘔吐、下痢、多飲多尿、頻尿など

同じ猫種であっても、骨格の大きさなどによって標準体重は異なります。
通常は体が出来上がった生後約1歳齢の体重をその子の標準として、体重の増減をチェックします。

猫の体重減少で考えられる疾患

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では体重が減った時にどんな疾患が考えられるのでしょうか。代表的な疾患を詳しくご紹介します。

腫瘍疾患

高齢猫で体重減少が見られた際に鑑別に入れるべき疾患の一つです。

特に消化器型リンパ腫の発生率が高い傾向にあり、検査として一般血液検査の他に腹部超音波検査を勧められることが多いです。この消化器型リンパ腫では、小腸における栄養吸収の低下や、食欲不振、嘔吐、下痢によって体重が減少します。

またリンパ腫に限らず、腫瘍性疾患の末期にはがん性悪液質(栄養失調により衰弱した状態)となることが多くあります。悪液質は、疾患によるカロリー消費の増加によって理想体重の10%以上の減少が起こり、筋委縮や眼窩の落ち込みなどが見られます。

慢性心疾患

慢性の心臓疾患においても心性悪液質となることがあります。

猫で多いのは肥大型心筋症です。肥大型心筋症は、心筋が厚くなることで心臓が拡張しにくくなる疾患です。時に血栓を形成し、大腿動脈に血栓が閉塞すると、激しい痛みや呼吸困難を引き起こし、高い確率で死亡します。

慢性腎疾患

猫での慢性腎不全の発生率は非常に高いことで知られます。
慢性腎不全では水分を過剰に排泄するため、脱水による体重減少や削痩が確認できます。

また他にも蛋白漏出性腎症では、尿中に蛋白質が出現します。通常では蛋白質は再吸収されますが、尿中に排泄されるために栄養が効率よく吸収できない状態となります。

慢性肝疾患

肝不全による胆汁酸性低下や蛋白代謝低下によって栄養障害が起こります。
猫の肝胆疾患は、肝リピドーシスや胆管肝炎が多いとされています。

嘔吐や下痢といった消化器症状が見られることがほとんどであるため、日常の健康観察および定期的な健康診断によって早期発見が可能です。

甲状腺機能亢進症

高齢猫では特に多い内分泌疾患です。甲状腺ホルモンの過剰分泌によって、多食なのに体重が減少していきます。
攻撃性も増すことがあるため、年齢とともに性格の変化が認められたら一度動物病院を受診してみましょう。

また7歳齢を超えたら、半年に一度は健康診断を受けることをおすすめします。

糖尿病

糖尿病の発病初期は体重増加を示しますが、末期では体重は減少します。また糖尿病は肥満猫での発生が多く、病的な体重減少を「ダイエット成功」と勘違いするケースもあります。

これまで紹介してきた他の疾患と同様、定期的な健康診断が求められます。

猫の体重減少で注意すること

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体重計に静かに乗ってくれない、抱っこが嫌いなど理由は様々ですが、猫の体重を管理することは難しいため、毎日ではなく週に1回、月に1回など定期的に測定しましょう。

もしどうしても測定が困難なようなら、撫でた時の筋肉や脂肪の付き具合を観察しましょう。動物病院で定期的に体重だけ測定してもよいです。

長毛の場合は削痩に気付きにくい

パッと見ただけで痩せているかどうかを主観的に判断することは間違いではないと思います。

しかし、特に長毛の子は、被毛の下に皮膚があるために削痩に気付きにくいことも事実です。
体を撫でる時に肋骨に触れられるか、肉付きはどうかなどを常に気にしてあげましょう。

まとめ

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猫は人間よりも体が小さい分、例えば体重が1kg減った時に人間よりも大きな体重変化になります。

体重減少は比較的わかりやすい体調不良のサインでもあり、いち早く気付いてあげることが、病気の早期発見と早期治療に直結します。

愛猫とスキンシップを取りながら、日常での健康チェックを徹底していきましょう。

【獣医師監修】猫の嘔吐は正常な場合も!見分けるポイントをご紹介

猫の飼い主さんなら、一度は猫の嘔吐に遭遇したことがあるでしょう。

猫によっては健康でも吐くことはあります。しかし、確認した嘔吐が本当に正常かどうかを判断できますか?また、吐き戻しが連続して、1日に何回も確認できた場合はどうでしょう?

今回は猫における嘔吐について獣医師が詳しく解説していきます。

嘔吐と吐出

獣医 猫 嘔吐 吐出 疾病
「吐き戻し」には、「嘔吐」「吐出」の2つがあります。嘔吐は日常でも聞いたことがあるかもしれませんが、吐出は聞きなじみのない方もいるのではないでしょうか。
それぞれの違いについて見ていきましょう。

嘔吐とは

嘔吐は、延髄の嘔吐中枢が様々な原因により刺激されることで起こり、胃の内容物が食道に押し上げられて口から出る現象です。
他にも空嘔吐と呼ばれる、横隔膜と腹壁の連続的な動きが見られることが特徴です。

吐出とは

一方、吐出は咽頭や胸部食道の内容物を受動的に吐き出すことを言います。
受動的なので腹部に力が入ることはなく、気持ち悪いような様子も見られません。

また吐物に胃液を含まないため、吐物は酸性よりもむしろアルカリ性を示すことも特徴で、嘔吐との鑑別のためには重要なポイントです。

猫の嘔吐で動物病院を受診した際に聞かれること

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嘔吐を主訴とする動物病院への来院は非常に多く、また嘔吐を示す疾患も多岐にわたります。どこに異常があるのかは検査をしてみて初めてわかりますが、全ての検査を行おうとすると猫に大きな負担がかかってしまいます。

そこで問診を行うことで、ある程度の当たりを付けられる場合があります。

猫の嘔吐で動物病院を受診する際は、事前に次のようなポイントを把握しておくとスムーズです。

  • いつから: 急性か慢性かの判断
  • 誤食の可能性: ゴミ箱など漁った形跡がないか、異物や毒物の可能性
  • 病歴と治療歴: 嘔吐を誘発する薬剤の服用、他の疾患の既往歴
  • 食事との関連: 食事の変更(食物アレルギーの有無)、食後どのくらいの時間で嘔吐するのか、食事とは関係ないのかなど
  • 嘔吐物の様子: 内容物、色、臭いなど

猫の嘔吐で考えられる疾患

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嘔吐が症状として見られる疾患はたくさんあります。
全てを紹介することはできませんが、代表的なものをピックアップしました。

膵炎

猫において膵炎は非常に多い疾患です。
嘔吐の他に下痢、発熱、食欲不振などの消化器症状を呈します。

また十二指腸炎や胆管肝炎を併発することも多く、これら併発症の有無を検索する必要もあります。さらに膵炎が慢性化する場合もあり、長期的な管理が必要となることもあります。

異物

いたずら好きな性格の子や若い猫に多く見られます。
体の大きさの割に大きいものを口に入れることも多く、腸閉塞を起こすことが考えられます。

また、尖ったものは胃粘膜や腸粘膜を傷つけることもあり、最悪の場合は消化管を穿孔してしまいます。
さらに猫は紐などの細長いもので遊ぶことが好きな子が多く、誤って飲み込んでしまうとほとんどの場合、手術によって摘出しなくてはなりません。

炎症性腸疾患

小腸または大腸における原因不明の炎症によって、慢性的な腸障害を示す疾患です。
確定診断は内視鏡による腸の生検によりますが、全身麻酔が必要なために診断が難しい疾患でもあります。

嘔吐の他に慢性的な下痢も見られることが多く、食欲不振や体重減少も認められます。

腫瘍

猫における消化管の腫瘍としては、消化器型リンパ腫の発生が重要です。
FeLV(猫白血病ウイルス)陰性の老齢猫での発生率が高いとされています。そのため、中高齢猫で慢性的な嘔吐が見られた場合には、まずリンパ腫の存在を疑います

血液検査のみでは炎症性腸疾患との鑑別は困難であるため、超音波検査や細胞診を併用することによって診断を行います。

慢性腎不全

猫における最も一般的な嘔吐の原因となります。

猫は古代エジプトでも飼育されていた記録があり、もともと砂漠の動物であるため余分な水分を排泄しないように濃縮された濃い尿を出します。そのために腎臓は生まれた時からフル稼働状態となるので、年齢とともに腎不全になる可能性が高くなります

慢性腎不全になると、尿の排泄によってしっかりと体外へ毒素を排出できるよう、皮下補液による水分の補給が必要となります。また失われた腎機能は改善することはないため、若い年齢のうちからの腎臓へのケアは非常に重要です。

甲状腺機能亢進症

甲状腺は頸部腹側にある臓器で、基礎代謝に関与しています。甲状腺機能亢進症は、甲状腺から分泌されるホルモンが増加することで、食欲亢進と著しい体重減少を呈する疾患です。

また攻撃性も亢進するため、年齢とともに性格が変化したなどの徴候も甲状腺機能亢進症を疑う所見です。

血液検査によって血液中の甲状腺ホルモンを測定することで診断が可能なので、定期的な健康診断が早期発見のカギとなります。

猫は毛玉を吐く習性がある

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猫を飼ったばかりの人は驚くかもしれませんが、猫は毛玉を吐き出す習性があります。

これは、猫が毛づくろいをした際に飲み込んだ毛が便として排出されず、体内にたまった毛玉を口から排出するためです。一見、苦しそうに見えますが、吐いた後に食欲もあり、体調に影響がないようであれば問題ありません

しかし、吐こうとする仕草を見せるのに、毛玉を吐き出せない場合は、胃の中で毛の塊が形成されて排出できなくなってしまっている可能性があります。悪化すると開腹手術が必要になることがありますので、気付いたら早めに動物病院を受診しましょう。

なお、日頃からブラッシングを行うことで、猫の飲み込む毛量を減らすことができます。

猫の嘔吐で受診すべきか見分けるポイント

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猫に嘔吐が見られた際に動物病院を受診するかは非常に悩むところだと思いますが、連続した嘔吐や、嘔吐の他に臨床症状が認められる時には迷わず動物病院を受診しましょう。

一概には言えませんが、嘔吐の後に食欲があれば少し様子を見ても大丈夫なケースが多いです。しかし、少しでも様子がおかしいと感じた時は、その感覚を信じてすぐに動物病院を受診してください

まとめ

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猫の嘔吐はよく見られる症状のため、必ずしも体調が悪かったり、病気を患っているということではありません。

飼い主の判断が重要となる臨床症状であるため、異常を異常と感じ取れる嗅覚を日頃から養っておくことが重要です。

【獣医師監修】放置しないで!犬の多飲多尿の原因とは?

「愛犬が水をたくさん飲んで、たくさんおしっこをする」と感じたことはありませんか?

「水をたくさん飲めば尿も多くなるのは自然なことだから、放置しても大丈夫だろう」と思うかもしれません。確かに、飲水量が増加すれば尿量も増加します。

しかし、本当に放置してもよいのでしょうか?

今回は犬における多飲多尿について、獣医師が詳しく解説していきます。

「多飲」「多尿」の基準は?

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まず、多飲と多尿とは何なのか説明していきます。

読んで字のごとくなのですが、どの程度水を飲むようになれば多飲なのか、どの程度尿量が増加すれば多尿なのかを知っておくことは重要です。

多飲とは

食事の内容にもよりますが、一般的に1日の水分摂取量は体重1㎏当たり40〜60mlと言われています。体重5㎏の子は約200~300mlくらいです。

多飲はこれを大きく超えて、1日に体重1㎏当たり90〜100ml以上の水分を摂取している状態を言います。

多尿とは

一方、1日の尿量は一般的に体重1㎏当たり20〜40mlと言われています。多尿はこれを超えて、1日に体重1㎏当たり45〜50mlの尿を排泄している状態を言います。

尿量が増加することで、自然と排尿回数も増加しますし、時には失禁も見られることもあります。また、尿量が増加すると、失われた水分を補うために飲水量も増加します

多飲と多尿は密接に関係しているのです。

犬の多飲多尿で受診する際に聞かれること

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飲水量や尿量の変化以外にも、診断を行う上で大切なポイントがいくつかあります。
日常生活の中で、次のような項目をしっかりチェックしておきましょう。

  • 飼育環境: 食事の変更(缶詰かドライフードか)、高温低湿度、薬物投与歴(ステロイドや利尿薬など)
  • 元気食欲の有無
  • 排尿時の様子
  • 発情の有無: 避妊や去勢の有無

犬の多飲多尿で考えられる疾患

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多飲多尿によって考えられる疾患を紹介していきます。
疾患が進行すると多飲多尿以外の症状も認められるようになるため、できるだけ早く気付いて治療を行う必要があります。

慢性腎不全

腎臓で尿の濃縮が上手く行われなくなると、尿量が増加します。

腎臓では体内毒素の排泄と同時に、水分の再吸収が行われています。必要以上の水分排泄は効率が悪く、時に命に関わるからです。腎機能が低下すると、水分が体外に余計に排泄されるようになり、飲水量も増加します

腎不全が進行すると体内に毒素が蓄積し、「尿毒症」と呼ばれる状態に移行します。これは非常に危険な状態で、嘔吐や流涎、食欲廃絶といった症状が認められます。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

腎臓の上には、「副腎」という小さな臓器が存在しています。副腎は生命活動に必要な様々なホルモンを分泌する臓器で、ミネラルバランスの調整や糖代謝、血圧や心拍数の調整などを司っています。

「副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)」は、この副腎の働きが過剰になる疾患で、特にステロイドホルモンの過剰分泌によって多飲多尿を始め、皮膚症状や腹部膨満などが見られ、糖尿病を併発する場合も多いです。

5歳以上の中高齢犬での発生が多く、全ての犬種に発生することから、シニア期における健康診断は特に重要です。

糖尿病

糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの欠乏によって起こります。

初期症状として多飲多尿の他に、食欲増進、体重減少が認められ、数週間で進行して嘔吐や脱水の原因となる「代謝性アシドーシス」が起こります。

これによって、重度の循環障害による血液量の低下と循環虚脱により、昏睡状態に陥り、命に関わることもあります。また、糖尿病の合併症として、白内障や膵炎などを併発することが知られています。

子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は、未避妊の雌犬で、発情期の約1ヵ月後に発生することが多いとされています。

外陰部からの排膿によって気付くことが多い疾患ですが、中には排膿が見られないこともあり、発見が遅れると腎不全や敗血症性ショックが引き起こされます。

臨床症状は多飲多尿の他に、食欲不振、嘔吐、下痢などが見られます。発情の後、特に高齢犬では飲水量や尿量にも注意を払う必要があります。

尿崩症

脳の視床下部と呼ばれる部位では、「バソプレシン」というホルモンが分泌されます。バソプレシンは腎臓における水の再吸収に関与し、バソプレシンがないと尿は水に近い薄いものになってしまいます。

「尿崩症」は、何らかの原因によって視床下部におけるバソプレシンの分泌が減少する、あるいは腎臓におけるバソプレシンの作用が低下する疾患です。

飲んだ水がそのまま尿として排泄されるため、非常にのどが渇きます。そのため脱水に注意が必要です。

薬剤による多飲多尿

各種疾患の治療のために、ステロイドや利尿薬などを服用していると飲水量および尿量は増加します。

現在の愛犬の状態をしっかりと把握すると同時に、服用している薬剤の作用や副作用についても理解しておくことが重要です。

犬の多飲多尿に気づいたら

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では、実際に「愛犬の飲水量や尿量が多いかもしれない」と思ったら、飼い主さんはどんなことに注意すればよいのでしょうか。
動物病院を受診する前に確認しておきたいことを紹介します。

動物病院に尿を持参しよう

多飲多尿が起こっている場合は、尿が薄くなっていることがほとんどです。
見た目には正常でも、意外に尿比重は低くなっていることもあるので、一度尿検査を行ってみるといいでしょう。

排尿中に尿を空中でキャッチすることが理想ですが、難しければペットシーツを裏返して、溜まった尿を持参すると楽です。
尿の採取には、スポンジの付いた棒のようなものを動物病院で貰えると思いますので、相談してみてください。

飲水量の測定をしておこう

自宅での尿量の測定は、はっきり言って困難です。しかし、どのくらい水を飲んでいるのかを測定することはできるでしょう。

予め飲水用の皿に入れておく水の量を把握しておき、どのくらい減ったかを確認します。蒸発する量もあるため正確な飲水量ではありませんが、ある程度は把握することが可能です。

まとめ

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犬の多飲多尿は、珍しい症状ではありません。

大きな体調不良が見えない分、動物病院の受診が遅れることも多いのですが、背景には大きな病気が隠れている場合もあります。

日常的に愛犬の健康状態をチェックし、おかしいと思ったら早めに獣医師さんに相談しましょう。

知らないうちに愛犬が膝を脱臼?小型犬に多い疾患「パテラ」とは

みなさんは、「パテラ」もしくは「膝蓋骨脱臼」という疾患を聞いたことがあるでしょうか?

パテラは、膝のお皿にずれが生じて脱臼をしてしまう疾患で、特に小型犬にとってはよくある身近な疾患です。
多くの犬の飼い主さんは、「うちの犬は足を痛そうにしていないから大丈夫だろう」と思うかもしれませんが、実は、パテラは痛みを伴わないことのある、症状に気づきにくい疾患なのです。

今回は、パテラの症状や原因、予防方法を分かりやすくお伝えします。

パテラとは

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パテラ(膝蓋骨脱臼)とは、膝蓋骨(膝のお皿)がずれて脱臼してしまった状態のことを言います。
膝蓋骨は本来、大腿骨の溝に収まっていますが、これが何らかの理由によって溝からずれてしまうと、パテラになります。

膝蓋骨脱臼は、英語で「patellar luxation」と表現されますが、診断の多い一般的な疾患であることから、略して「patellar(パテラ)」と呼ばれるようになりました。

パテラには「内側」と「外側」がある

パテラには、膝蓋骨が大腿骨の内側にずれる場合(膝蓋骨内方脱臼)と、外側にずれる場合(膝蓋骨外方脱臼)があります。
内側にずれることの方が多いですが、大型犬は小型犬よりも外方脱臼を起こしやすいです。

パテラの原因

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パテラの原因には、先天的なものと後天的なものがあります。

先天的な原因

現段階では、まだはっきりとは解明されていませんが、パテラには遺伝的な要因が関わっていると考えられています。

生まれつき後ろ足の骨が曲がっていたり、膝のお皿を安定させる筋肉や靭帯などの組織に異常があったりすると、膝のお皿が大腿骨の溝から外れやすくなると考えられています。

パテラは、トイ・プードル、ポメラニアン、チワワ、パピヨン、ヨークシャテリア、マルチーズなどの小型犬に多くみられますが、柴犬やゴールデンレトリーバーなどの中・大型犬でも発症します。

後天的な原因

先天的な原因以外にも、交通事故の他、高いところからの飛び降り転倒などの後天的な原因でもパテラになってしまうことがあります。

飛び降り・転倒など、足に負担がかかる出来事があった後、はっきりと見える怪我がなくても、足を引きずることがある、ケンケンをするなど、歩行に異常がみられる場合はパテラである可能性が高いです。

パテラの症状

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パテラを起こしても必ずしも痛みを伴う症状が発生するわけではないため、飼い主さんがなかなか初期段階で気づくことができない場合が多いです。

パテラの進行状況は、膝蓋骨の外れやすさによって4つのグレードに分類されています。

グレード1:膝蓋骨は、手で簡単に外せるが、手を離すとすぐに正しい位置に戻る。
グレード2:膝蓋骨が、膝の曲げ伸ばしだけで簡単に外れる。
グレード3:膝蓋骨が常に外れた状態だが、手で押すと正常な位置に戻る。
グレード4:膝蓋骨が常に外れた状態で、手で押しても正常な位置に戻らない。

グレード1、2では、はっきりとした症状は出にくいですが、激しい運動のあとにケンケンをすることや、外れた膝関節を自分で戻そうと、後ろ足をふいに伸ばすなどの行動があります。さらに症状が進行してグレード3、4になると、歩き方に異常がみられたり、足が伸ばせないためにうずくまって歩いたりするようになります。

しかし、歩行困難になっても痛みを感じない犬もいるため、「痛がってないし、きっと年のせいだろう」と、パテラに気づけずに過ごしてしまうこともしばしばあるようです。

パテラの予防

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愛犬がパテラになってしまわないためには、どのような予防方法があるのでしょうか。

1.太り過ぎに注意

人間も同じですが、犬も体重が重くなると膝への負担が大きくなります。

ただし、現段階で愛犬がすでに太り気味の場合、ダイエットのためだからといって、太った体でいきなり過度な運動を始めるとかえって膝に負担がかかります。まずは食事を見直し、適度に運動をしましょう。

2.床を滑りにくくする

床が滑りやすいと、足への負担が大きくなります。

床に滑り止めワックスをかけたり、滑りにくいマットを敷くなどの対策をとりましょう。また、家の中で犬と遊ぶときは、できるだけ滑りにくい場所を選びましょう。

床の対策だけでなく、愛犬の足裏の毛が伸びていると滑りやすいので、定期的にカットしてあげましょう。

3.段差を極力減らす

段差の登り降りは、犬の足に負担がかかります。
犬がソファやベッドに登ることがあるのなら、専用の階段やスロープを設置しましょう。

また、外出時も、階段などの大きな段差では抱っこしてあげると負担が軽減します。

4.過度な運動は控える

適度な運度で筋肉を丈夫に保つことはパテラの予防に役立ちますが、やりすぎは禁物です。
毎日の散歩は、大型犬で1時間程度、小型犬で30分程度で十分です。

また、ハイキングやドッグスポーツをする場合も、段差を過剰に登り降りさせたり、長時間運動させることは避けましょう。

5.「おかしいな?」と思ったら早めの診断を

「少し足を気にしているかも?」「歩き方がいつもと違うかも?」など、少しでもおかしいと思ったら、早めにかかりつけの獣医師に相談しましょう。
特にシニア犬では、年齢のせいだと早合点してしまう飼い主さんが多いですが、放っておくと歩けなくなってしまうこともあるので注意しましょう。

まとめ

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今回は、犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)の症状や原因、予防方法をお伝えしました。

パテラは決して珍しい疾患ではありませんが、痛みを起こさないこともあるために、飼い主さんがなかなか気づけないうちに進行してしまうのが怖い疾患です。

進行してしまうと歩行困難になってしまうこともあるため、まずはパテラにかからないように適切な予防を行いましょう。そして、少しでも異常が見られたら、なるべく早めに獣医さんに診てもらいましょう。