【獣医師監修】犬の嘔吐から考えられる疾患
嘔吐は、動物病院に来院する犬で最も多い症状の一つです。実際に愛犬が嘔吐している場面に遭遇したことのある人も多いでしょう。
では、その嘔吐は何によるものなのでしょうか?今回は臨床の現場でよく遭遇する嘔吐の原因疾患について、獣医師が解説していきます。
消化器疾患
嘔吐の原因としてまず考えられるのは消化器、特に胃や十二指腸といった上部消化管の異常です。これら疾患によって胃液の分泌が過剰になったり、物理的な胃粘膜の刺激によって嘔吐が誘発されます。
急性胃炎・十二指腸炎
【症状】
急性の嘔吐、食欲不振、腹痛など。消化器症状以外の全身症状は通常見られないが、脱水や誤嚥性肺炎などによって重篤化することもある。
【原因】
古い食事、異物、化学物質、薬剤など。腎不全や肝不全から続発することも多い。
【備考】
原因が明らかな場合(異物や薬剤)はそれを除去するが、明らかでない場合には胃腸炎の治療をしてみて反応を見る診断的治療を行うことが一般的。
慢性胃炎
【症状】
嘔吐、食欲不振。嘔吐の回数は、1日に数回から1~2週間に1回まで様々。
【原因】
アレルギー、異物、薬剤、微生物などが挙げられるが、原因は特定されないことが多い。
【備考】
急性胃炎と同様に確定診断には内視鏡検査が有用だが、全身麻酔を伴うこともあり現実的ではない。
胃内異物
【症状】
急性の嘔吐、食欲不振。若齢の犬は特に注意。
【原因】
胃内容物の排出障害、胃粘膜の刺激から嘔吐が誘発される。
【備考】
異物の材質や形などから催吐などの内科療法、もしくは胃切開などの外科療法といった治療方針を決定する。
胃拡張・胃捻転症候群
【症状】
嘔吐、腹痛、流涎、急激な腹囲膨満から昏睡。
【原因】
胃が空気と食物によって急激に拡張することによる。食後に運動した後に発生しやすいと言われている。
【備考】
大型犬で多く、小型犬ではほとんど見られない。胃破裂を起こすこともあり、早期の診断と治療が必要な緊急疾患である。
幽門狭窄
【症状】
嘔吐、食欲低下、体重減少。
【原因】
原因はよくわかっていないが、幽門部(胃の出口付近)が肥厚することで胃排泄障害が起こる。
【備考】
超音波検査やバリウム造影で診断し、根本的治療は外科手術による。
胃の腫瘍
【症状】
嘔吐、食欲不振、体重減少など。場合によっては吐血、メレナ(黒いタール状の便)、貧血などが見られる。
【原因】
犬の胃の腫瘍はリンパ腫が最も多いとされている。
【備考】
慢性胃炎、ポリープなどが危険因子と言われている。
他の内臓疾患
消化器疾患以外にも嘔吐が見られるものがあります。血液検査などを行うのは、これらの疾患を見逃さないためです。
膵炎
【症状】
嘔吐、腹痛、元気消失、下痢など。
【原因】
膵臓からは消化酵素が分泌されるが、その酵素によって自己組織が消化されることによって強い炎症が起こる。危険因子としては薬剤、感染、高カルシウム血症、肥満、全身性代謝性疾患(糖尿病、副腎皮質機能亢進症、慢性腎不全)、腫瘍などが挙げられる。
【備考】
急性の膵炎では発症後24〜48時間以内の早期に治療を開始することが重要。
尿毒症
【症状】
嘔吐、消化管潰瘍、発作、異常呼吸など。
【原因】
腎不全などによって尿毒素が体内に蓄積することによる。
【備考】
腎不全の原因としては熱中症、毒物、感染、腫瘍、ショックなどがある。
肝胆道系疾患
【症状】
嘔吐、腹痛、黄疸、食欲低下など様々。
【原因】
慢性肝炎、胆石症、胆嚢炎などによって症状が引き起こされる。
【備考】
定期的な血液検査や画像検査によって早期に発見することが望ましい。
子宮蓄膿症
【症状】
食欲不振、多飲多尿、嘔吐、腹部膨満、陰部から膿様のものが排泄されるなど。
【原因】
子宮内で細菌が増殖し、膿液が貯留する。
【備考】
卵巣からのホルモン分泌が深く関与しており、早期の避妊手術が最も効果的な予防法となる。
代謝性・内分泌疾患
ホルモンの分泌異常によっても嘔吐は引き起こされます。中高齢で発生しやすい傾向にありますが、いずれも放置すると危険な疾患ですので、しっかりと検査することをおすすめします。
アジソン病(副腎皮質機能低下症)
【症状】
虚弱、体重減少、嘔吐、吐出、下痢、多尿、徐脈、低体温、震え、痙攣など。
【原因】
副腎から分泌されるホルモン(グルココルチコイドおよびミネラルコルチコイド)の不足による。犬では特発性の副腎委縮によるものが多い。
【備考】
適切なホルモン治療を行えば予後は良好。
糖尿病
【症状】
多飲多尿、多食、体重減少、嘔吐、下痢、脱水、感染症、白内障、昏睡など。
【原因】
膵臓からのインスリンの分泌低下、あるいはインスリンの作用低下。
【備考】
犬の糖尿病は若齢発症のものと、3歳齢以降発症のものに分けられる。いずれの場合でも犬の糖尿病治療にはインスリンが必要となる。
病気ではない嘔吐
嘔吐の中には、病気ではない一時的なものもあります。とは言っても愛犬は気持ち悪いはずなので、原因があるのなら速やかに取り除いてあげるべきでしょう。
病気ではなくても、嘔吐が見られた際には放置することは望ましくありません。
乗り物酔い
【原因】
三半規管から小脳へ伝わった刺激が嘔吐中枢を刺激すると考えられている。
【備考】
長時間の移動の前には酔い止め薬を服用するという選択肢もある。獣医師まで相談を。
消化不良
【原因】
古い食餌などの給餌による。
【備考】
ご飯の賞味期限や保管方法には注意を。
まとめ
無数にある病気の中で、今回紹介したものはごく一部です。
一過性で自己限定的な嘔吐の場合には経過観察とすることもありますが、嘔吐が慢性化している場合には一度検査を受けましょう。
愛犬に体調不良が見られた時には、獣医師に相談し、適切な治療を受けさせてあげてください。
【獣医師監修】ブリティッシュ・ショートヘアの好発疾患と飼い方
ブリティッシュ・ショートヘアは、グレー(ブルー)の短毛が美しい猫種です。性格もどっしりと落ち着いていて、比較的手のかからないと日本でも人気です。
ところで、ブリティッシュ・ショートヘアには好発疾患があるのをご存知でしょうか。
今回はブリティッシュ・ショートヘアのかかりやすい病気と、それを踏まえたオススメの飼育環境について解説していきます。
ブリティッシュ・ショートヘアの基本情報
歴史
ブリティッシュ・ショートヘアは、ローマ帝国がイギリスへ侵入する際に、ネズミを駆除するためのワーキングキャットとして連れてこられたと考えられています。
それからしばらくは、農場などでネズミ退治を目的に飼われていましたが、19世紀中頃に優秀な個体を選択し、品種改良が行われました。
その後、1871年のロンドンで開かれたキャットショーで紹介され、注目を集めました。
身体的特徴
体重は4〜8kgで、力強くがっしりとした体つきをしています。成猫になるには3〜5年ほどかかるといわれており、他の猫種に比べると成長はゆっくりです。
被毛は短毛のダブルコートです。毛色はブラック、ホワイト、クリームなどさまざまですが、「ブリティッシュブルー」と呼ばれる灰色の毛色が一般的で人気があります。
性格
ブリティッシュ・ショートヘアは、温和でのんびりした性格をしています。
自立心が強いため、スキンシップはあまり好まず、抱っこや撫でられることも嫌がります。しかし、猫の方から近寄ってくることもありますので、その際は思う存分甘やかしてあげてください。
ブリティッシュ・ショートヘアの好発疾患
まずは、ブリティッシュ・ショートヘアに多い疾患をいくつか紹介します。
どんな症状が出るのかなど、病気をきちんと理解しておけば、日常生活の中で愛猫の異常に気づきやすくなるかもしれません。
肥大型心筋症
【症状】
食欲不振、嘔吐、運動不耐性(疲れやすい)、胸水貯留、腹水貯留など。
【原因】
心筋が厚く固くなることによって、心臓の動き(主に拡張能)が阻害される。また左心房内に血栓が形成されやすく、大動脈に乗って末端で詰まることも多い。
【備考】
血栓塞栓症が随伴した場合、最も多いのは腹大動脈遠位部(太ももの付け根あたり)で、突然の後肢麻痺が見られる。肥大型心筋症と診断された後は、心筋症の治療の他に血栓の予防も同時に行う。
尿石症
【症状】
頻尿や血尿などの膀胱炎症状。尿道閉塞や尿管閉塞を来たすと急性腎不全の症状(食欲廃絶、嘔吐など)を呈する。
【原因】
腎臓から膀胱までの尿路で結石が形成され、物理的刺激による炎症や閉塞による症状を呈する。
【備考】
特にオスでは尿道閉塞のリスクが高い。また結石の種類(ストラバイトやシュウ酸カルシウムなど)によって食事療法が適用となるかが変わる。
多発性嚢胞腎
【症状】
食欲不振、嘔吐、脱水、多飲多尿、貧血など。
【原因】
腎臓に多数の嚢胞が形成され、腎機能に障害がおこる。遺伝的要因の関与が疑われる。
【備考】
慢性腎不全は高齢猫に多い病態だが、多発性嚢胞腎では若齢で慢性腎不全の症状が見られることも多い。血液検査と同時に、画像による腎臓の検査も定期的に行うべきである。
糖尿病
【症状】
多飲多尿、多食、体重減少、白内障、嘔吐、下痢、便秘、脱水、歩行障害、昏睡など多岐にわたる。
【原因】
過体重、老齢、膵炎、腫瘍、感染症などが危険因子となる。インスリンは分泌されているが効果が低いⅡ型糖尿病が多いと言われている。
【備考】
猫はアミノ酸からグルコースを作り出す代謝経路が活発で、またインスリンの分泌が低い特徴がある。よって猫では肥満、ストレス、感染症など血糖値を上げる因子、血糖値を下げられない因子が関わると糖尿病になりやすい。
ブリティッシュ・ショートヘアに適した飼育環境
これらの好発疾患を踏まえたブリティッシュ・ショートヘアへのオススメの飼育環境について見ていきましょう。
今回は好発疾患の予防や、病気の早期発見に着目してご紹介します。生活習慣を見直し、万が一の時に素早い対応ができるようにしましょう。
肥満に注意
ブリティッシュ・ショートヘアに限ったことではありませんが、肥満は多くの病気のリスク因子となります。
肥満を予防するためには、食事管理と適度な運動が不可欠です。食事は総合栄養食を与え、栄養のバランスが崩れないように配慮しましょう。
また、室内外だとどうしても運動不足に陥りやすくなります。走り回るなどの二次元的な動きだけでなく、ジャンプなどの三次元的な動きを採り入れた運動スペースを確保しましょう。
尿の状態をチェック
腎泌尿器疾患や糖尿病など、ブリティッシュ・ショートヘアには尿に異常が見られる疾患が多く発生します。
健康な状態での尿の量や色をしっかりと把握し、毎日の尿の状態をチェックしましょう。
しかし、トイレの種類(猫砂、新聞紙など)によっては尿の性質を正確に把握することは難しいかもしれません。少なくとも尿の色(血尿かどうか)および尿が少なくないかは見ておくといいでしょう。
水はいつでも飲めるように
腎臓への負担を軽減するため、または尿路での結石形成を抑制するためにも、十分な飲水量を確保する必要があります。
猫は清潔な水しか飲みたがらないので、飲水場は常に清潔にし、こまめに水を替えてあげましょう。
飲水場の環境が気に入らないと水を飲まないことがあったり、家の中の複数箇所に飲水場を設置してあげるとなお良いでしょう。猫が水を飲みたいと思った時に、いつでも飲むことができます。
飲水量の把握
一日にどれくらい水を飲むのかも把握しましょう。尿量が多い時には飲水量も多くなります。
予め器にどのくらいの量の水を入れ、どのくらいなくなったのかをチェックすれば、蒸発で誤差はあれど、ある程度の飲水量は把握できるはずです。メモリのある容器を使うと便利です。
猫では体重1㎏あたり一日50ml以上の飲水で異常と言えます。体重5㎏の子では一日で250ml以上の水を飲むと多いという計算です。
おおよその計算にはなりますが、頭の片隅に置いて頂ければと思います。
まとめ
こちらの記事で紹介した他にも、病気にかかってしまうことはあると思います。そんな時は慌てずに、動物病院までご相談してください。
定期的に健康診断を受け、病気の早期発見とその後のケアについてしっかり考えていきましょう。
【獣医師監修】ノルウェージャン・フォレスト・キャットの好発疾患
ノルウェージャン・フォレスト・キャットは長毛で大型、筋肉質で野性味のある猫種です。モフモフの体には思わず顔を埋めたくなります。
そんなノルウェージャン・フォレスト・キャットですが、猫種ならではのかかりやすい病気がいくつかあるのをご存知でしょうか。
今回の記事では、ノルウェージャン・フォレスト・キャットの好発疾患や日常生活でできる病気の予防などについて、獣医師が詳しく解説します。
なお、猫種の名前が長いので、以降は「ノルウェージャン」と記載します。
ノルウェージャンの基本情報
歴史
ノルウェーを中心に、古くから「スコウガット(森林の猫)」として親しまれてきた猫で、北欧神話にも登場します。
昔のノルウェーの人たちと暮らしていたノルウェージャンは、農場で飼われたり、バイキングの船に一緒に乗ったりして、ネズミの駆除役として活躍しました。
その後、第二次世界大戦の影響で個体数が激減し、一時は絶滅の危機に。
しかし戦後、ノルウェージャンを愛する人たちの力によって、再び個体数を増やすと、1970年代にはヨーロッパの「国際猫協会」に品種登録され、世界中にファンを持つ人気の猫となりました。
身体的特徴
大きめでがっしりとした体つきで、体重は3〜9kgほどです。長くて美しいダブルコートの被毛が特徴的な猫です。
毛色や模様は、ブラック、ホワイトなどの単色や、シルバー、ブラウンが混ざったバイカラー、タビー柄などがいます。季節によって、毛色のトーンが変わることもあるようです。
性格
性格はとても穏やかで、他のペットに対してもフレンドリーです。飼い主さんにも従順で、知らない人や子供と遊ぶのも大好きです。
好奇心が旺盛で賢く、いたずら好きの猫や、簡単な芸を覚えられる猫もいるようです。
ノルウェージャンの好発疾患
慢性腎疾患など一般的に猫に多い疾患の他に、ノルウェージャンには遺伝的に発生しやすい疾患があります。
遺伝子の異常があるからといって必ずしも病気になるわけではありませんが、どんな疾患があり、どんな徴候が見られるのかは、しっかりと把握しておきましょう。
グリコーゲン貯蔵異常(糖原病)
【症状】
筋力の低下、易疲労性、低血糖、昏睡など。
【原因】
糖代謝に関わる酵素の先天性異常により、グリコーゲンが肝臓や筋肉に蓄積する。ノルウェージャンでは遺伝疾患として報告がある。
【備考】
非常に稀な病気で、まだ解明されていないことが多い。
毛球症
【症状】
便秘、食欲不振、嘔吐など。腸閉塞が引き起こされると腹痛、排便困難、便臭の嘔吐物なども見られる。
【原因】
グルーミングによって口から取り込まれた被毛が消化管内で絡まり、閉塞を来たす。
【備考】
毛玉対策用フードや毛玉溶解サプリメントによって毛玉の排泄を促す、あるいは定期的なブラッシングなどによって口に入れる被毛の量を減らすことで予防する。
糖尿病
【症状】
多飲多尿、体重減少、肥満、嘔吐、下痢、便秘、脱水、昏睡、感染症にかかりやすい、傷が治りにくいなど様々。
【原因】
遺伝的要因(インスリンの分泌が少ないことやインスリンの効果が低いなど)と環境要因(肥満やストレスなど)が相互に関与することで発症する。肥満、老齢、感染症、膵炎などが危険因子となる。
【備考】
猫は元々肉食動物であり、アミノ酸からグルコースを作り出す代謝系が活発である。よって興奮やストレスで血糖値が上昇しやすく、血糖値を上昇させる因子や血糖値を下降させられない因子が関与すると糖尿病になりやすい。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
【症状】
貧血、運動不耐性(疲れやすい)、頻脈など。
【原因】
ピルビン酸キナーゼが遺伝的に欠損することによる溶血性貧血が見られる。常染色体劣性遺伝で伝達されるため、遺伝子変異がある場合は繁殖には供しない。
【備考】
年齢とともに骨髄線維症および骨硬化症が進行し、造血能は低下していくので注意。
ノルウェージャンの飼育で注意したいこと
ノルウェージャンという猫種だからこそ、日常の中で注意したい点があります。
好発疾患を踏まえて、普段の生活でどんなことに注意すればよいのかを見ていきましょう。
1. 肥満に注意
ノルウェージャンは、元々体の大きな猫種です。それに加えて被毛が長いため、肥満には非常に気付きにくいです。
しっかりとしたカロリー管理と適度な運動によって太りすぎを予防しましょう。
一般的に、被毛の下の皮膚を触ってみて、肋骨が軽く触れるくらいが適正な体型と言われています。
スキンシップの際に定期的に肋骨に触れて、肥満チェックをしてみてください。ただし、あまり強く触ると痛いので注意が必要です。
2. 大きな体でも運動できるスペースを
室内で生活をしていると、簡単に運動不足になります。
特に大きいサイズのノルウェージャンでは、「体を動かす場所がない→脂肪がついてさらに体が大きくなる」という悪循環に陥りやすいです。
大きめのキャットタワーなどを用意し、体を動かせる環境を整えましょう。
3. 季節に合わせた温度調整
元々寒い地方の猫であるノルウェージャンは、暑さに弱い猫種です。
そのため、猫の中でも熱中症にかかりやすいと言われています。
夏場はクーラーなどで室温を下げ、逆に冬場は暖かくなりすぎないようにしましょう。
人間が快適に生活できる温度であれば問題ないと思います。
4. ブラッシングは定期的に
長い被毛は、放置すると簡単に毛玉になってしまいます。
毛玉によって皮膚が引っ張られて痛みを感じると同時に、大きくなっていく毛玉によってだんだんと身動きが取りにくくなっていきます。
また、猫は自身で定期的にグルーミング(毛づくろい)を行うことによって被毛や皮膚の健康を守っています。
その際に長い被毛を飲み込んでしまうことで、毛球症に陥ることもあります。
定期的にブラッシングをしてあげることによって無駄な被毛を除去し、毛玉が大きくなる前に処理してあげることが必要です。
ムダ毛の除去には柔らかいブラシを、毛玉を少し梳かす時にはスリッカーを使用します。
まとめ
ノルウェージャンとの生活は、特別なことに満ちています。
愛猫が与えてくれるものはかけがえのないものであり、飼い主は愛猫の健康を最大限守らなければなりません。
愛猫との生活が素晴らしいものになることを願っています。何か変わったことがあれば遠慮なく動物病院にご相談ください。
【獣医師監修】腰への負担に要注意!ウェルシュ・コーギーの好発疾患
コーギーは元々牧羊犬として活躍していましたが、現在ではイギリス王室でも飼われている犬種として有名です。
一方で、かかりやすい病気も複数あり、動物病院に通っている子も少なくありません。
今回はウェルシュ・コーギーのかかりやすい病気とおすすめの飼育環境について、獣医師が解説していきます。
ウェルシュ・コーギーの基本情報
歴史
コーギーには、ペンブロークとカーディガンの2種類がおり、それぞれ異なった歴史を持ちます。なお、日本で多く飼われているのはペンブローク種です。
ペンブローク
ペンブロークは、1107年にフランドル(ベルギーからフランス北部にまたがる地域)の織工がウェールズに移住した際に一緒にやってきたとされています。ウェールズのペンブロークシャーで牧畜犬として飼われ、スピッツなどと交配して改良されて現在の姿になりました。
カーディガン
カーディガンは、紀元前1200年頃に生まれたと伝えられています。中央アジアからヨーロッパに導入されてイギリスにやってきて、牧畜犬として活躍していました。
有能な犬であったことから、1925年頃まではその存在が隠されていましたが、イギリス国王が飼育したことをきっかけに、世間に知られるようになりました。
身体的特徴
ウェルシュ・コーギーは、胴長短足が特徴で、体はがっしりとした筋肉質です。被毛はダブルコートです。
カーディガン種の方が少し大柄で、毛色のバリエーションが豊富です。
性格
好奇心が旺盛で、遊ぶのが大好きです。勇敢で自己主張が強いことから「性格が悪い」と言われることもありますが、物覚えも良く、飼い主に忠実であるため、しっかりしつければ良いパートナーになれるでしょう。
ウェルシュ・コーギーの好発疾患
コーギーには、犬種に特異的に発生しやすい疾患がいくつかあります。聞き慣れないものもあるかもしれませんが、どれも気をつけたい疾患です。
大切なのは、どんな症状が出るのか、その徴候を見逃さないことです。コーギーの好発疾患を理解し、日々の健康観察に活かしてください。
椎間板ヘルニア
【症状】
腰~背中の痛み、歩様異常、後肢の麻痺、排尿障害など。
【原因】
椎間板物質の突出により、脊髄が圧迫されることによる。
【備考】
分類の中で最も重いグレードⅤでは、深部痛覚消失後から48時間以内に手術を行わないと脊髄機能が回復する可能性は低い。異常が見られたらすぐに動物病院へ。
変性性脊髄障害
【症状】
徐々に進行する後肢の麻痺に始まり、前肢、首へと進行していく。跛行(足を引きずる)、歩様異常、尿失禁、呼吸困難など。
【原因】
はっきりとした原因は不明。遺伝的な素因があるとも言われている。
【備考】
麻痺はあるが痛みはないので、後肢麻痺だけでは元気や食欲に異常は見られない。足をこすって歩くようになったら、傷を作らないように足先を保護する必要がある。
糖尿病
【症状】
多飲多尿、削痩、肥満、被毛の変化、各種感染症(皮膚感染症、膀胱炎、外耳炎、子宮蓄膿症など)、白内障、嘔吐、下痢、便秘など多岐にわたる。
【原因】
インスリンの分泌低下。加齢、肥満、環境の影響によってインスリンの作用が不足することによる。
【備考】
副腎皮質機能亢進症、ステロイドの投与、発情周期関連などがその他の糖尿病に関連する。糖尿病は糖代謝に異常を示す代謝性疾患であり、異常なケトン体が蓄積する。ケトン体が多くなるとアシドーシスや昏睡が起こる。
フォンウィルブランド病(vWD)
【症状】
出血が止まりにくい。
【原因】
フォンウィルブランド因子(vWF)は血小板の接着に関与し、この因子に異常が見られると出血時間の延長が見られる。
【備考】
乳歯の生え変わりに血が止まらない、手術時に血が止まらないなどによって発見されることがある。
上皮基底膜ジストロフィ(無痛性角膜潰瘍、持続性角膜びらん)
【症状】
眼瞼痙攣、流涙、角膜びらんなど
【原因】
角膜の基底膜細胞が機能的あるいは形態的に変化することによる。
【備考】
潰瘍を伴うこともある。ジストロフィは「組織の縮退、形態異常」の意味。
ウェルシュ・コーギーの飼育環境
コーギーで気をつけたいのが、骨関節疾患と脊髄障害です。これらは遺伝的に発生しやすいものですが、生活環境を見直すことで発生率を下げることもできます。
既に実施している方も多いと思いますが、今一度確認し、問題点はぜひ改善してみてください。
滑りにくい床に
コーギーは軟骨異栄養犬種といい、生まれつき軟骨が弱い犬種であるため、腰部椎間板ヘルニアが発生しやすいです。
椎間板ヘルニアの予防のためには、腰に負担をかけないことがもっとも重要です。
日常生活を送る家の床が滑りやすいと愛犬のブレーキが効きにくくなり、体に変な力が入ってしまいます。フローリングなどの床の家は、カーペットを敷くなどの対策をとってみてください。
段差にも注意
腰に負荷がかかるタイミングとして、段差の昇り降りも挙げられます。ソファや椅子などに飛び乗る、あるいは飛び降りた際に椎間板ヘルニアを発症することも珍しくありません。
骨折を始めとする他の骨関節疾患を予防する意味も込めて、家の中の段差を極力無くす工夫をしてみましょう。
人間にとっては小さな段差も、足の短いコーギーにとっては大きく思えることもあるので、注意深く点検しましょう。
抱っこは横抱きで
犬の基本姿勢は、背骨が地面に対して並行となっています。よって、抱っこをする時も横抱きにすることが推奨されます。
縦の抱っこ(頭が上、お尻が下になっている抱っこ)は背骨に負担がかかるため、やめた方がいいでしょう。
同様に、手を持って二本足で歩かせる行為も腰への負担となるおそれがあり、椎間板ヘルニアを誘発する可能性があるのでやめた方がいいでしょう。
糖尿病への配慮
コーギーの好発疾患の一つに糖尿病があります。糖尿病は生活習慣やその子の体質、他の病気の有無など様々な要因がリスク因子となります。
特にコーギーでは、肥満が糖尿病のリスク因子として重要です。食事管理や適度な運動によって太りにくい体づくりを目指しましょう。
また、肥満は骨関節に過度な負荷をかけるため、スリムな体型維持は椎間板ヘルニアの予防にも繋がります。
まとめ
今回は、コーギーに多い病気を中心に解説しました。普段の生活の中で、危険はないか改めて確認してみてください。
話は変わりますが、コーギーのおしりは写真集にもなっていますよね。ご存知でしたか?
コーギーと一緒に暮らしている方は、おしりも愛でつつ、愛犬の健康も守ってあげてください。
【デブ猫対策】ご飯は適切?6つのチェック項目で太った体を改善!
猫は、人間のように自分で生活をコントロールすることはできません。「最近太り気味だし、最寄りの一駅で降りて、ちょっと歩いて帰ろう」なんてことは出来ないのです。
飼い主さんのお世話の仕方次第で、あなたの愛猫は健康的な猫にもおデブな猫にもなります。もし、少し太っているかも?と気になるようでしたら、これ以上太ってしまわないように、6つのチェック項目を確認し改善していきましょう。
猫の肥満は、病気のもと
どんな病気になるの?
人間と同じで、猫も太り過ぎはさまざまな病気の原因になります。肥満の猫に特に多い病気には次のようなものがあります。
- 糖尿病
- 関節炎(体重が増加するため)
- 皮膚病(グルーミングできなくなるため)
- 尿路疾患(トイレに行く回数が減るため)
猫が長生きをするには、飼い主さんによる健康管理が欠かせません。確かに太った猫もかわいいですが、太り過ぎには注意をして、肥満から生じる病気は防ぐようにしましょう。
猫が太る原因を考える
猫が太る主な原因は、「カロリーの摂取しすぎ」と「運動不足」です。この記事では、その中でも「カロリーの摂取しすぎ」について考えます。
愛猫が最近太ってきたなぁという場合には、心当たりがあるものはないか探してみてください。
【デブ猫対策 その1】 パッケージの裏側を読もう
猫を太らせないためには、年齢に合わせてキャットフードの量や回数を調節していく必要があります。キャットフードのパッケージの裏側に、分量などが記載されているのですが、しっかりと読んでいるでしょうか。
なお、そこに書かれている数字もあくまで一般的に言われている目安です。人間でも太りやすい人や太りにくい人がいるように、個体によって適切な量はまちまちです。猫の様子や体重の増減を見ながらフードの量を調整していくと良いでしょう。
【デブ猫対策 その2】 目分量であげない
猫にキャットフードをあげる時、どのように分量を決めていますか?適切な分量を食べていないと、すぐに太ったり痩せたりします。猫は体が小さいため、ご飯の影響がとても大きいのです。
しっかりと計りを使って、毎回決まった分量をあげることが大切です。目分量であげていると、だんだん適量からずれていってしまうので、「いつの間にか太ってきた」、少ない場合は「猫が急に痩せてきたかも?」なんてことになりかねません。
【デブ猫対策 その3】 おやつをあげすぎない
人間と同じで、消費カロリー < 摂取カロリーとなれば、自然と太っていきます。
おやつをあげると喜ぶからと、ついつい何度もあげてしまいがちですが、おやつのカロリーを考慮しないと猫が太る原因になってしまいます。「摂取カロリー = キャットフードのカロリー + おやつのカロリー」という公式を忘れないようにしましょう。
複数の家族がおやつをあげる場合は、タッパーなどに1日分のおやつを入れておき、与えすぎを防ぎましょう。
【デブ猫対策 その4】 回数は適切か?
猫を太らせないようにするためには、成長に合わせて餌をあげる回数を調整する必要があります。子猫やシニア猫は、一度にたくさんの食べ物を消化するのが難しく、少ない分量を数回に分けて与えると良いとされています。
一般的な目安は次の通りです。
- 子猫 3回
- 成猫 2回
- シニア猫 3回
ただし、上記はあくまで目安です。猫はもともと1日に何度も狩りをする生き物で、犬などと比べると胃が小さく、1度に少量しか食べることができません。場合によっては1日の食事量を5回に分けて与えることを推奨されることもあります。
適切な回数は猫によるところが多いため、ぜひ愛猫との生活の中で、一番ストレスがない回数を模索してみてください。
【デブ猫対策 その5】 食事は決まった時間に
いつも猫に餌をあげるのは、何時ごろでしょうか?時間帯は決まっていますか?不規則な食生活は、太る原因にもなります。
特別な理由がない限りは、猫も人間と同様、規則正しい生活をしたほうが良いとされています。猫の体調把握のためにも、時間を決めてあげるようにしましょう。これにより、いつもお腹が空かない時間に求めるのはなぜか?など推測ができるようにもなります。
【デブ猫対策 その6】 置き餌はしない
キャットフードを、決まった時間に出したり片付けたりせずに、ずっと出しっ放しにしておくことを「置き餌」といいます。
置き餌をしていると、食べすぎてしまったり、いつどれぐらい食べているかを把握することができず食生活が不規則になってしまいます。
特に、多頭飼いをしている場合、「ある猫だけが太りだす」というケースをよく聞きます。多くの猫がいる状態で餌を置きっ放しにしていると、どの猫がいつ、どれぐらい食べたのかを把握することが難しくなるため、その点からも良くない習慣と言えます。
また、長時間、キャットフードを放置しておくと酸化してしまうので、健康にもあまり良くありません。
適切な食事あってこその、健康体!
愛する猫が甘えた声で要求すると、餌やおやつを与えたくなってしまうでしょう。しかし、甘やかすことでデブ猫になってしまったら、苦しむのは愛する猫です。毎日あげる餌だからこそ、しっかりと管理し、肥満にならないように気をつけましょう。
特に、キャットフードを変えた時はいつも以上に注意が必要です。キャットフードにより、カロリーも違いますし、吸収される栄養素の量も異なります。愛猫の観察をしっかり行い、体重や体型の変化にいち早く気づけるといいですね。
- 改訂履歴
- 2021/08/27 情報を更新
- 2020/05/08 情報を更新
- 2017/11/01 初版公開
ロシアンブルーでも病気にかかる!リスクを減らす飼い方のポイント
グレーのきれいな毛並みとエメラルドグリーンの瞳が特徴の、ロシアンブルー。
筆者の動物病院にも連れて来られることが多い猫種で、きちんと手入れがされているロシアンブルーは、「カッコイイ」、「上品」という印象が強いです。
そんなロシアンブルーですが、猫種特有のかかりやすい病気はあるのでしょうか?
今回は、ロシアンブルーの好発疾患と、飼育環境の注意点を、獣医師が詳しく解説します。
ロシアンブルーの好発疾患?
猫には、その品種によって遺伝的にかかりやすい病気があります。それは、人間がその猫種を作出する際に近親交配を続けたことによります。
しかし、ロシアンブルーには、猫種で特徴的な遺伝性疾患が存在しません。その意味で、ロシアンブルーは非常に優秀な猫種だと言えます。
ロシアンブルーは病気に強い?
ロシアンブルーには遺伝的に発生しやすい疾患はありませんが、生き物である以上、病気にならないというわけではありません。
他の猫種と比較して特別に免疫力が強いわけでもなければ、内臓が際立って丈夫なわけでもないのです。
他の猫達と同様に、病気の基礎知識を理解しておくことで、早期発見・早期治療につなげましょう。
ロシアンブルーの飼い主さんが知っておきたい病気
慢性膵炎(すいえん)
【症状】
元気消失、食欲不振、間欠的な嘔吐、体重減少など。
時に下痢、脱水、黄疸などが見られることも。
【原因】
急性膵炎の反復、または膵臓が長期にわたり糖尿病や他の疾患の影響を受け続けることによる。
【備考】
猫の膵炎は、胆管炎、胆管肝炎、肝リピドーシス、炎症性腸疾患との併発が多い。
また、トキソプラズマ感染症やヘルペスウイルス感染症によっても膵炎が誘発される。
糖尿病
【症状】
多飲多尿、体重減少、削痩、嘔吐、脱水、下痢、便秘、低体温など。
【原因】
猫は元々インスリンの分泌が少なく、アミノ酸からグルコースを作り出す代謝系が活発。
肥満、ストレス、感染症など、血糖値が上昇する因子、血糖値を下げられない因子が関わると糖尿病になりやすい。
【備考】
猫では糖尿病による神経障害が起こることが知られており、末期には腎不全が発症する。
慢性腎不全
【症状】
多飲多尿、尿色が薄くなる、食欲減少、体重減少、嘔吐、下痢、口内炎など。
【原因】
慢性的に加えられた腎臓への負担(傷害)を修復する過程で線維化が進行することで発症する。
【備考】
慢性腎不全は貧血や尿毒症を引き起こす。
骨折
【症状】
患肢の痛み、挙上など。
【原因】
外からの物理的な衝撃。
【備考】
家具の隙間に足を挟む、ドアに尻尾を挟むなどには注意。
甲状腺機能亢進症
【症状】
体重減少、脱毛、多食、嘔吐、多飲多尿、活動の亢進、攻撃性の増加など。
【原因】
ホルモン分泌能を有した甲状腺の片側性または両側性の過形成または腺腫。
【備考】
甲状腺癌によるものは全体の1~2%と少ない。
ロシアンブルーを飼う際のポイント
生き物ですから、気をつけていても病気が発生してしまうのは仕方のないことです。
しかし、病気によっては、日常生活を見直すことで発生のリスクを低下させられるものもあります。
1. 尿量の把握
ロシアンブルーに限らず、猫で最も注意したいのが腎臓病です。
猫は、人間や他の動物と比較して濃い尿を排泄します。
その濃い尿を作るために、腎臓には大きな負担がかかっている状態で、腎臓に対するケアを怠ると、加齢とともに腎臓病の症状が現れます。
腎臓の異変は外見では分かりませんが、尿量が増えた、尿が薄くなった、水をたくさん飲むようになったなどは、腎臓病のサインかもしれません。
毎日の排泄物を処理する際に、少しだけ気をつけてみてください。
2. 飲水量の把握
愛猫が一日にどのくらいの量の水を飲むのかは、腎臓病や甲状腺機能亢進症を発見する上で非常に重要です。
しかし、蒸発や、水飲み皿をひっくり返すなどによって正確な飲水量を計測するのは本当に難しいことです。
それでも、皿にどのくらい水を入れて、何時にどのくらい減っていたかを記録していくことによって、飲水量の増減のおおよその判断はつくと思います。
毎日の記録は大変ですが、できる範囲で構いませんので、日常の健康チェックを行いましょう。メモリ付きの容器を使うと便利です。
3. 若い頃の運動量は多め
ロシアンブルーは筋肉質で、他の猫種と比べると少しだけ必要な運動量が多い猫種です。
特に若いうちは、運動不足によるストレスから病気になることもあるため、注意が必要です。
遊んであげる時間を作る、猫が一人でも遊べる工夫をする、キャットタワーを設置するなど、考えてあげましょう。
もちろんその際に、小さなオモチャを飲み込んでしまう、高いところから落ちてケガをするなどがないように気をつけてあげましょう。
4. 定期的な健康診断を
例え病気を疑うような明らかな症状がなくても、安心ではありません。
猫は本能的に、自分が弱っている姿を隠す傾向にあります。つまり、食欲不振などの症状が現れた時には、すでに病気は進行してしまっていることが多いのです。
そこで、若いうちは1年に1度、シニア(7歳以上)では半年に1度の健康診断をオススメします。
「何もないから病院には行かない」のではなく、「何かあるかもしれないから行く」という意識を持てば、病気の早期発見に繋がります。
ただし、動物病院が極度に嫌いな子もいますので、その子の性格に合わせた健康管理プログラムを獣医師と相談することが重要です。
まとめ
ロシアンブルーは、性格の穏やかな子が多く、猫種特有の好発疾患もないため、飼いやすい猫種です。
大切な家族の一員であるという意識を忘れずに、病気にしない生活や、万が一病気になってしまった時にすぐに適切な対処ができる心構えを持っておきましょう。
【獣医師監修】太り過ぎに注意!アメリカンショートヘアの好発疾患
アメリカンショートヘアは、昔から日本で人気の猫種です。
猫を飼ったことがなくても、アメリカンショートヘアの名前くらいは知っているという人も多いでしょう。それだけメジャーで、日本でも飼育頭数が多い猫です。
では、猫の品種によって気をつけなければならない病気や、飼育環境はあるのでしょうか。今回はアメリカンショートヘアの好発疾患と飼育環境についてまとめました。
アメリカンショートヘアの歴史
アメリカンショートヘアの祖先はイギリスのブリテッシュショートヘアで、1620年に移民を乗せたメイフラワー号のネズミ退治猫としてアメリカにやってきました。
もともと使役猫として飼われていたことから、愛玩目的の純血種である必要がなく、異なる種の猫との交配が行われました。そのため、比較的丈夫な体になったとされています。
その後、アメリカの愛好家たちの手により品種が固定され、「アメリカンショートヘア」という純血種として現代にまで受け継がれてきました。
アメリカンショートヘアの好発疾患7つ
純血種というのは、近い血を交配し続けることで守られています。それ故に遺伝的に発生しやすい疾患があり、体が丈夫とされるアメリカンショートヘアも例外ではありません。
それでは、アメリカンショートヘアの好発疾患について詳しく見ていきましょう。
肥大型心筋症
【症状】
・呼吸速拍
・胸水
・腹水
・嘔吐
・食欲不振【原因】
心臓の筋肉(心筋)が大きくなり、心臓の拡張能が低下することによる。アメリカンショートヘアでは遺伝性の肥大型心筋症が報告されている。【備考】
診断には超音波検査が必要。また動脈血栓塞栓症が続発することが多く、注意が必要。
動脈血栓塞栓症
【症状】
・突然の後肢麻痺
・後肢の冷感
・大声で鳴く【原因】
心臓などで形成された血栓が、動脈の細い部分(特に大腿動脈)に詰まる。【備考】
肥大型心筋症では血栓が形成されやすい。治療には血栓を溶かす薬剤を用いるが、長く閉塞した血栓がなくなると、末端の壊死した組織や細胞が全身を巡る「腫瘍溶解症候群」が起こり、時に命に関わる。
糖尿病
【症状】
・多飲多尿
・脱水
・易感染性
・嘔吐
・下痢
・昏睡
・低体温【原因】
インスリンの分泌不足や、インスリンの作用不足。猫の場合、インスリンは分泌されていることが多く、ヒトのⅡ型糖尿病と類似する。【備考】
雄は雌の1.5倍発生が多く、肥満はインスリンの効きを悪くする。他の危険因子としては加齢、膵炎、腫瘍、感染症も挙げられる。
多発性嚢胞腎
【症状】
・多飲多尿
・尿が薄くなる
・食欲不振
・嘔吐
・口内炎や消化管潰瘍などの尿毒症症状
・貧血【原因】
多くは遺伝性で、両親に発病がないか確認する必要がある。【備考】
治療法や予防法がないため、早く発見してできるだけ症状を緩和していく。
肝リピドーシス
【症状】
・急激な体重減少
・食欲不振
・嘔吐
・下痢
・便秘
・黄疸【原因】
肥満の猫が、2週間以上の食欲不振などで栄養が偏ると肝臓に過剰な脂肪が蓄積する。【備考】
肥満の予防が重要であるが、他の病気による食欲不振も引き金になり得る。
尿石症
【症状】
・血尿
・頻尿
・トイレに行くが排尿しない
・腹痛【原因】
腎臓や膀胱などの泌尿器に結石が形成されることによる。【備考】
結石は普段の食事や、体質によって形成されやすいものがある。また雄の場合は、尿道に結石が閉塞することも多く、緊急手術が行われる。
関節炎
【症状】
・動きたがらない
・患部を舐める
・関節の腫れ
・痛み【原因】
慢性的な関節への負担、肥満などにより関節軟骨が擦り減ると、骨の変形が引き起こされる。【備考】
肥満の予防が重要。
アメリカンショートヘアを飼うなら注意したい4つのこと
「猫は犬と違って散歩も必要ないし、手間がかからない」と思っていませんか?しかし、人間と一緒に生活をする以上、愛猫の健康を守るためにはやはり気をつけなければならない生活習慣があります。
アメリカンショートヘアの好発疾患を理解し、どんなことに注意すべきかを確認しましょう。
①太りにくい食事管理
糖尿病や関節炎、あるいは膀胱にできた結石が尿道に閉塞しないためにも、肥満を防止することが重要です。そのためには、栄養バランスの整った太りにくい食習慣を作りましょう。
特に避妊や去勢をした子は太りやすい傾向にありますので、ライフステージにあった食事を用意してあげてください。
②しっかりした運動
食事管理と同様に、肥満の予防のためには適度な運動も必要です。
もともと、日常的にたくさんの運動を必要とする猫種ではありませんが、キャットタワーを設置するなどの工夫は必要でしょう。時間がある時はおもちゃで遊んであげるのも良いですね。
③尿のチェック
アメリカンショートヘアの好発疾患には、腎臓疾患や糖尿病など尿に異常が現れるものが多くあります。
日々の生活の中で、尿量がいつもより増えていないか、あるいは減っていないかを確認しましょう。また、尿の色が薄い、赤いなどの見た目の異常もあるかもしれません。
トイレをただ片付けるのではなく、排泄物を確認する習慣をつけましょう。
④飲水量の把握
尿の量は、飲水量と密接に関係しています。
留守の間は置き水をすることになりますが、一日で愛猫がどのくらい水を飲んだかを把握しておくことはとても大切です。
目盛りのある容器を用意すると、飲んだ量が分かりやすいのでおすすめです。
また、夏場などは特に、飲み水を切らさないように注意してください。
常に新鮮な水を飲めるような環境を整え、しっかり飲んでしっかり排泄をしてもらうことで、腎臓への負担を軽減します。
まとめ
アメリカンショートヘアは、猫の純血種の中では特に病気が多いというわけではありません。しかし、やはり生き物ですので、どうしても体調を崩すことはあるでしょう。
病気にさせない環境を整えると同時に、病気を早く見つけられるよう、排泄物のチェックや飲水量の確認を習慣づけることが大切です。
【獣医師監修】気になる猫の多飲多尿!もしかしたら病気かも?
猫との生活で把握しておきたいパラメーターに、「飲水量」と「尿量」があります。
普段あまり気にしないという飼い主さんも多いかもしれませんが、これらを把握しておくことが、猫の健康を把握することにも繋がります。
今回は猫の多飲多尿について、獣医師が詳しく解説していきます。
多飲多尿とは
多飲多尿とは、飲水量および尿量が通常よりもかなり増加することです。
具体的には猫の場合、一日で体重1㎏当たり45~50ml以上の飲水があれば多飲と判定します。また、尿量に関しては、一日で体重1㎏当たり40ml以上の排尿があれば多尿と判定されますが、尿量を自宅で測定することは困難です。
よって飼い主が異常に気付きやすいのは、「最近よく水を飲む気がする」という行動の変化でしょう。飲水量が増えれば尿量も増えますし、逆に尿量が増えれば飲水量も自然と増えます。どちらが先かはわかりませんが、多飲と多尿は対になって現れることが多いです。
猫の多飲多尿で受診した聞かれること
自宅での飲水や排尿の様子は、飼い主にしかわかりません。猫は自分で症状を訴えられない分、家での自然な行動から情報を読み取る必要があります。
動物病院を受診する際は、以下のことを確認しておきましょう。
- 飼育環境:暑すぎないか、水はいつでも飲めるか、食事の種類(カリカリ、缶詰など)
- 元気や食欲の有無
- 体重減少の有無:急激な体重減少があるか
- 嘔吐や下痢の有無
- 排尿時の様子:尿意の回数、尿失禁、尿臭、色など
- 投薬歴:ステロイドや利尿薬など
猫の多飲多尿で考えられる疾患
多飲多尿が見られた時に、ただ喉が渇いているだけなのか、病気による症状の一環なのか、判断を誤ると大変なことになります。自分で判断せず、必ず獣医師に相談しましょう。
ここでは、猫の多飲多尿が見られた際にどのような疾患が考えられるか、詳しく解説していきます。
慢性腎不全
猫で飲水量や尿量が増えた際に、最初に疑うべき病態です。
特に6歳齢を超えると腎臓病の罹患率が急激に上昇するというデータもあり、10歳以上の猫の30〜40%が腎不全にかかっているとも言われています。
「慢性」と名のつく通り、慢性腎不全は徐々に進行していく病気です。そのため、若い時期からの食事管理や定期的な健康診断などの腎臓に対するケアを行うことで予防しましょう。
甲状腺機能亢進症
甲状腺は、体内の活動を活発にするホルモンを分泌する臓器です。
甲状腺の機能が亢進(こうしん)すると代謝が異常に活性化され、食べても体重が落ち続けていく、攻撃性が増すなどの症状が見られるようになります。
また甲状腺機能の亢進によって、腎臓への血流が増加している可能性があります。このことから、甲状腺機能亢進症の治療を行った結果、隠れていた腎不全が現れてくることもあります。
糖尿病
猫の糖尿病はインスリンの作用不足による、いわゆる2型糖尿病が主と言われています。
また猫の糖尿病では、雄は雌の1.5倍発症しやすく、その危険因子として肥満、老齢、感染症、腫瘍、膵炎などが挙げられます。
尿検査や血中グルコース濃度の測定によって診断が可能であるため、高齢になってきたら健康診断を受けることをおすすめします。
尿崩症
動物の尿は、水よりも重く(濃く)作られており、それはバソプレシンというホルモンが関係しています。バソプレシンは腎尿細管における水の再吸収を促進し、尿を濃いものにします。
尿崩症はバソプレシンの分泌不足、あるいは作用不足によって尿が薄く大量に排泄される疾患です。水に近い尿を多量に排泄するために大量の水を飲みますが、それでも足りずに脱水することもある怖い病気です。
心因性多渇
運動不足やストレス環境下では自律神経の機能が低下し、多飲多尿を示すことがあります。
獣医療において「ストレス」と診断するのは非常に難しいことです。今一度飼育環境を見直し、猫にとって暮らしやすい環境を作ってあげてください。
医原性
利尿薬やステロイドなど、服用することで多飲多尿を示す薬剤があります。
もちろん、それらは他の疾患の治療のために服用しているのですが、十分な説明がないとびっくりすることも多いです。
投薬する際にはあらかじめ、その薬の作用について理解しておくことが重要です。
猫の多飲多尿で注意すること
ただ漫然と生活していては、愛猫の異変に素早く気付くことはできません。
とは言っても全てに気を付けることは不可能ですので、ポイントを押さえて健康チェックをしていきましょう。
飲水量の把握
愛猫が高齢になってきたら、食事量などと同様に飲水量を把握しておきましょう。
外飼いであったり、複数の猫を飼育している場合には飲水量の把握は難しいかと思いますが、猫の多飲多尿を確認する上で一番有効な方法でもあります。
飲水用の器にどのくらい水を入れたのか、一日の最後にどのくらい水が残っているのかを確認すれば、おおよその飲水量が見えるはずです。内側にメモリのついた容器を使えば確認の際に便利です。
定期的な健康診断
やはり病気の早期発見には健康診断は欠かせません。猫の場合は、血液検査の他に尿検査も同時に行うといいでしょう。
自宅での飲水量および尿量の把握が困難でも、尿に異常が見られた場合には多飲多尿が見えてくることもあります。6歳齢を超えたら、少なくとも半年に一回は健康診断を受けましょう。
まとめ
腎不全や甲状腺機能亢進症など、猫で注意したい疾患では多飲多尿が見られることが多くあります。「たまたま喉が乾いているだけかな?」と思うこともあるかもしれませんが、愛猫に違和感を覚えたら、すぐに動物病院へ連れて行くようにしましょう。
一緒に生活する中で異変を見落とさない目を養うことが、愛猫の長生きの秘訣かもしれません。