日本犬のルーツはいつ、どこから?縄文犬と弥生犬について
みなさんは、日本犬のルーツをご存知でしょうか。
日本犬には、とても奥深い歴史があります。今回は、そんな日本犬のルーツについて学んでいきます。
日本犬のルーツとは?
日本犬といえば柴犬や秋田犬など、凛々しい風貌が特徴のかっこいい犬が思い浮かびます。
またとても賢く、忠犬のイメージが強いのも特徴です。
日本犬のルーツは、縄文時代と弥生時代に遡ることで、深く知ることが出来ます。この時代は、日本の犬にとって大きな変化がありました。
縄文犬
縄文時代とは、約1万5,000年前(紀元前131世紀頃)から約2,300年前(紀元前4世紀頃)の日本列島で発展した時代を指します。
縄文時代は、寒さの厳しい氷河期が終わり、地球が温暖になった時代です。地球が暖かくなったため、植物が豊かになり、動物の繁殖率が急激に高まった時代でもあります。
縄文人の主な食料は、木の実や狩猟で狩った動物だったと言われています。
狩猟のお供として、人々の生活に犬の存在がありました。その犬が縄文犬です。
風貌はオオカミに似ていて、オオカミと現代の犬の中間のような性質を持っていたのではないかと考えられています。
考古学的証拠
日本列島における縄文犬は、明治時代に日本の考古学の父、エドワード・モースによって発見されました。
発見された場所は、大森貝塚(東京都品川区、大田区周辺)で、推定時期は縄文後期だと分かりました。
また1997年には、宮城県や愛知県の貝塚で縄文女性と一緒に埋葬されている犬の発掘がありました。定説では、これらの貝塚は「現代の家族墓地のようなもの」だとされています。
犬をわざわざ大きな貝塚に埋葬する習慣は無かったので、縄文女性が先に亡くなった可能性が高く、女性の埋葬後、犬の埋葬が行われたと考えられています。
このことから、犬が人間によって家畜化されていた、もしくは飼い慣らされていた事が分かります。
縄文犬の役割
縄文時代は、狩猟や木の実採取が盛んな時代だったので、縄文犬は縄文人に大変重宝されました。
当時の主な狩猟獣はシカやイノシシで、縄文犬はそれらの動物の追跡、捕獲に従事していました。
犬はとても優秀な嗅覚を持っているので、追跡にはもってこいの動物です。
また、縄文人は身を守るために、危険な仕事、つまり捕獲を縄文犬に任せていました。つまり、飼い主に変わって、危険な捕獲作業を行なっていたと言うことです。
縄文犬と人々の関わり
そんな危険な仕事を任されていたのですから、当然怪我は付き物です。狩猟によって骨折や怪我をした犬は、一体縄文人にどのような扱いを受けていたのでしょうか。
縄文犬の場合には、食べられることはなかったと言われており、それについては考古学的な証拠があり、それを物語っています。
発掘された縄文犬の骨の一部を見ると、骨折が治癒された形跡がありました。骨折した骨は手当をしないと、一生折れたままです。しかし、この発掘された縄文犬の骨は繋がっていました。
当然、犬は自ら骨折の手当をすることはできませんから、人間が何らかの治療を行ったと考えるのが妥当ということになります。
従って、縄文犬は狩猟犬として、縄文人に大切に扱われていたと考えられているのです。
弥生犬
弥生時代は、紀元前10世紀頃から紀元後3世紀中頃に発展した時期で、縄文時代後の時代区分です。みなさんご存知、邪馬台国が卑弥呼によって発展した時代でもあります。
そんな弥生時代は、渡来人なしに語ることは出来ません。
渡来人は、稲作や米を保存する為の高倉式倉庫の建て方を伝授してくれたエキスパートたちです。そしてそれだけではありません。
渡来人は弥生犬を日本に連れてきた人たちです。つまり、弥生犬は日本原産種ではないんです。
縄文犬から弥生犬へ
日本が弥生時代の時、人々の食生活は穀物中心でした。
それまで狩猟が盛んだった縄文時代から、稲作への生活に変わり、人々の生活習慣や文化は大きく変化しました。
弥生時代は狩猟が盛んではなくなったので、狩猟犬、つまり縄文犬は必要なくなりました。そこにタイミングよく、渡来人が弥生犬を連れてきて、弥生犬の需要が高まりました。
弥生犬の役割
渡来人は、現在の地図で、中国大陸や朝鮮半島の辺りから来た人たちを指します。
中国大陸や朝鮮半島には、犬を食べるという風習がありました。そのため、犬を日本に連れて来た理由も、犬を食料として繁殖させるためでした。
犬の肉は人間にとって大切なタンパク源となるので、当時の穀物中心の食生活には欠かせない食料だったと考えられます。
考古的な発掘物によると、推定時期弥生時代の犬の骨に、かぶりついた痕や、骨がバラバラにされている形跡があります。このことから、弥生人によって食用にされていた可能性が非常に高いということが言えます。
ペットとしても扱われていた
でも、安心してください。すべての弥生犬が食用にされていたわけではありません。
弥生犬はペットとして、人々の生活に寄り添って生きていたとも考えられています。縄文時代、縄文犬は人々の相棒的な存在でした。
それが一転、渡来人によって食用となってしまったのです。当然、人間はその文化の異変にいきなり順応していくことはできません。
そのため、犬を食用とすることに抵抗のあった人もいたと考えられています。一部の人には食用として扱われていても、一部の人には大切な家族の一員として可愛がられていました。
縄文犬と弥生犬の現在
既に、縄文犬と弥生犬は、絶滅しています。
チャールズ・ダーウィンの提唱した、進化論によれば、生き物は自然淘汰されていくものです。大きな時の中で、生き物は日々、進化を遂げています。純血の縄文犬や弥生犬はもう存在していませんが、縄文犬や弥生犬から進化した犬は、現在も生き続けています。
それが日本犬です。秋田犬、柴犬、北海道犬や琉球犬などが挙げられます。日本に古くから存在する伝統種は、縄文犬や弥生犬に非常に近いとされており、縄文犬や弥生犬から進化したというのが有説です。
最後に
日本犬は、とても奥が深く、知れば知るほど魅力的に見えてきます。
狩猟のベストパートナーから一度は食用にされてしまった犬。そんな状況でも力強く生き抜いて、現在の日本犬が存在します。
犬ってとても力強い生き物ですね。そんな歴史を知ってから接すると、もっと日本犬の魅力に気が付いていただけるのではないでしょうか。
質問にお答えしました!
「大変、興味深い内容でよくわかりました。外観の特徴が詳しくわかれば、なお嬉しく思います。」
コメントありがとうございます。
縄文犬は、外見は柴犬に似ていますが、つり目で、顔の幅が狭く、オオカミのように鼻がとがっていたようです。
また弥生犬は、四国犬に似ており、やや大型で脚も長く、彫りの深い顔つきだったと言われています。
参考になりましたでしょうか?
これからもぜひご意見をお聞かせいただけたら幸いです!
【犬の進化】ダーウィンの進化論から見る犬の起源
人間の相棒、犬。犬は人間が飼いならした最初の動物だと言われています。
でも皆さん、犬の祖先って気になりませんか?
チャールズダーウィンの進化論によると、生き物は昔からずっと同じ体質を持っているのではなく、長い期間に渡って体質変化をしつづけていると言われています。
ということは犬も進化をしてきたって事ですよね?今回は犬の進化について紹介します。犬が大好きな皆さんには、知っておいて損はない情報ですよ。
世界最古の犬の化石
現在見つかっている最古の犬の化石は紀元前7,000-紀元前6,700年と推定されており、なんと驚く事に、日本の神奈川県夏島貝塚で見つかっているんです!アフリカやヨーロッパではなく、日本で、というのが、意外ですよね。
紀元前7,000-紀元前6,700ですと、日本では縄文時代早期。それは、私たちの祖先が、狩猟生活をしていた時代です。
犬の化石から見る進化論
現在の科学調査では、犬は2万年前から4万年前に人類によって飼いならされたオオカミの集団から、進化した可能性が高いと言われています。
シベリアのアルタイ山脈の洞窟では、推定3万3千年前のオオカミが発見されています。オオカミの化石としては、これが世界最古です。
この発掘されたオオカミの骨のDNAを分析すると、この動物が本来のオオカミよりも近代的な犬にもっとも密接に関連していることが分かったのです。このオオカミが犬の初期進化の決定的な証拠を見せています。
オオカミって人間に飼われていたの?
最初の犬が、すでに2万年前から4万年前に進化していたとするならば、オオカミが家畜化された結果、現在の犬に進化していった可能性が高いと考えられています。
いつ、どのように、オオカミを家畜化したかは未だ解明されておらず、謎のままです。
科学者の推測によると、オオカミが古代の狩猟採集民(=人間)を追いかけて、ゴミや食べかす、残飯を拾い集めて生きていたところを、偶然、人と接触し、それがきっかけとなって一緒に生活し始めたのではないかと考えられています。
つまり、簡単に言ってしまえば、犬の先祖であるオオカミはハイエナのような役割をしていたが、後に人間と行動を共にすることを選択し、一緒に生活を始めたという事ですよね。
犬に進化した経緯
現在では絶滅してしまったと言われているオオカミから犬へと進化を遂げた理由は、自然淘汰にあると言われています。
自然淘汰ってなに?
皆さん、「自然淘汰」という言葉をご存知ですか?
自然淘汰とは英語で“Natural Selection (ナチュラルセレクション)”と言い、人類学用語の一つです。この言葉は、生物が環境の変化に応じて体質の変化を遂げていく事を意味します。
かの有名なイギリスの生物学者、チャールズ・ダーウィンが作った言葉で、彼が提唱した“ダーウィンの進化論”にこの言葉が多く出てきます。
この自然淘汰の観点から犬の進化論を見ると、犬が私たち人間の相棒である理由が分かってきます。
オオカミが人間に接触
当時のオオカミは、人間のいわゆる“残飯処理班”だったと述べましたが、オオカミなのでもちろん、自分たちで獲物を捕獲することもしていました。
一方、人類はというと、進化を遂げて行くにつれ、知能が高まり、調理という技を取得しました。そして人類は狩猟で得た食料を加工し始めます。そうして、鼻が利くオオカミたちは生臭い肉から、加工された肉に興味を示すようになり、人間に引き寄せられていったのではないかと考えれています。
そうして、オオカミが人間の居住地に侵入し、人間の近くで生活をするようになりました。もちろんオオカミにとって、人間の近くで暮らす事は大変なリスクです。いつ、捕らえられ、食べられてしまってもおかしくはありません。
人間はオオカミを利用
オオカミの特性は高い狩猟能力と臭覚にあります。賢い人間がそのことに気づかない訳はありません。しかも、すぐ傍にその特性を生かせる動物がいたのです。
こうして、人間はオオカミを狩りに同行させるようになり、そしてオオカミは人間の生活に欠かせないパートナーとなっていったのです。
オオカミの能力は人間と生活していくと共に変化していき、必要のない能力は消え、人間が必要とする能力を、環境に順応しながら増やしていったと考えられているのです。この論理がまさに自然淘汰です。
犬の種類が多い理由とは
自然淘汰の理論で考えると、現在の犬の種類がとても多い理由が伺えますね。犬の種類は、全部で400とも500とも言われているんです。
犬は種類によって様々な長所と短所を持っています。これも人間と共に生活をしてきたことで生まれた特色だと思います。ある意味、現在の犬は人間によって作られた動物とも言えます。
もしかしたら、今の犬種も100年後には変わっているかもしれません。100年後も存在しているかもしれませんし、存在していないかもしれません。
しかし、それだけ古くから一緒に付き合ってきたパートナーであるからこそ、いつの時代も犬は人間の相棒として、傍に寄り添い続けて欲しいものです。