【獣医師監修】メインクーンの好発疾患と4つの健康管理のポイント
メインクーンは、世界一大きい猫としてギネスにも認定されている猫種です。小さい猫種にはない存在感と、モフモフの毛が魅力的ですよね。
一方でメインクーンには、注意したい遺伝疾患がいくつか報告されています。
今回の記事では、メインクーンの好発疾患と日常生活でできる健康管理について、獣医師が詳しく解説します。
メインクーンの基本情報
歴史
メインクーンは、北米でもっとも古い猫種のひとつとして知られています。
起源には諸説ありますが、ノルウェージャンフォレストキャットなどの北欧の猫が北米に入り、現地の猫と交配して生まれたという説が有力視されています。
また、遺伝的には不可能な組み合わせですが、体の大きさや被毛の特徴から、メインクーンはアライグマと猫の交配で生まれたという伝説も有名です。
身体的特徴
メインクーンはがっちりとした胴長の体格で、体重はオスで6~9kg、メスで3~6kg程度が一般的です。
フサフサの被毛が特徴的の長毛種ですが、実はダブルコートではなくシングルコートに分類されます。
性格
性格は明るくて人懐っこく、家族にも知らない人にもフレンドリーに接することのできる猫種です。
また、賢い猫としても知られており、犬のように投げたボールを取って来るなどのしつけが可能です。
メインクーンの好発疾患
メインクーンは、報告されている遺伝疾患が比較的多い猫種です。
どんな病気が発生する可能性があるか、事前に把握しておくことで、病気の早期発見・予防につなげましょう。
肥大型心筋症
【症状】
運動不耐性(疲れやすい)、胸水や腹水貯留に伴う呼吸困難、食欲低下、嘔吐など。血栓塞栓症を併発した場合には後肢の不全麻痺や完全麻痺、後肢の冷感などが現れやすい。
【原因】
心筋の肥大(厚くなる)によって心臓が膨らみにくくなり、一度に送り出される血液の量が減少する。メインクーンでは遺伝性が証明されている。
【備考】
肥大型心筋症と診断された後はたとえ血栓がなくても、血栓の形成予防の処置も同時に行う。
股関節形成不全
【症状】
腰を左右に振った独特の歩き方、関節炎を併発している場合には疼痛が認められる。
【原因】
過剰な体重や過剰な運動によって発症する。先天的に股関節の嵌まりが緩いことによる。
【備考】
安静にする、抗炎症薬を用いるなどの治療が行われるが、外科手術が選択される場合もある。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
【症状】
貧血、可視粘膜(歯茎など)の蒼白、頻脈、頻呼吸など。
【原因】
ピルビン酸キナーゼという酵素の遺伝的欠損によって溶血性貧血が引き起こされる。これは常染色体劣性遺伝によって伝達される。
【備考】
年齢とともに骨髄線維症と骨硬化症が進行し、造血能は低下していく。
進行性網膜萎縮
【症状】
昼盲、夜盲、徐々に進行する視覚障害、失明。
【原因】
網膜に存在する光を感じる細胞が徐々に変性することによる。
【備考】
猫の視覚を判断することは難しいが、家具にぶつかる、近くの物を目で追わなくなるなどの徴候が見られることがある。また家具は配置を覚えていることもあるため、普段とは違う場所に障害物(段ボールなど危険のないもの)を置き、ぶつからないかチェックすることも有効。
脊髄性筋萎縮症
【症状】
生後15〜17週齢で見られる後肢の虚弱と震え。その後ジャンプができなくなり、筋肉の萎縮、可動域の低下が見られるようになる。
【原因】
遺伝的に運動神経が消失することによる。これは常染色体劣性遺伝によって伝達されるため、素因がある子は繁殖には供さない。
【備考】
症状がなくても遺伝的にキャリアである可能性があるので繁殖の際には注意が必要。
メインクーンの健康管理
続いて、これら好発疾患が発生する可能性を踏まえ、メインクーンとの生活において、どのような健康管理を行えば良いのかを解説します。
1. 日頃からブラッシングを
体が大きく、被毛も長いメインクーンには、最低でも週2〜3回、抜け毛が多くなる初夏から秋にかけては1日1回のブラッシングを行いましょう。
ブラッシングによって毛玉を予防したり、口から入る被毛を減らすことで毛球症の発生を抑えることができます。
最初はスリッカーブラシやピンブラシで全体をブラッシングし、ほぐれにくい毛玉はハサミで切ります。最後にコームで仕上げましょう。
2. 熱中症に注意
もともと猫は暑さに強い動物ではありますが、被毛の長いメインクーンは熱中症にかかりやすい傾向にあります。
夏場はエアコンなどを積極的に使用し、愛猫にとって過ごしやすい空間を作ってください。
ガンガンに冷房を効かせる必要はありませんが、人間が快適だと思える室温(27度前後)を意識しましょう。
万が一、熱中症を疑うような症状が現れた場合はすぐに動物病院を受診してください。
3. 巨体でも運動できる場所を確保
大きな体のメインクーンにとって、特に室内飼いの場合では、運動量にも限界があります。
水平方向である横の移動だけでなく、キャットタワーなどを設置して、ジャンプなども取り入れた三次元的な運動ができると効果的です。
4. 理想体型の維持
体格の大きなメインクーンにとって、太っているのかどうかの判断は難しいのではないでしょうか。
猫の標準体重は、1歳の時の体重と言われています。健康診断時の際に獣医師さんに体型の状態を聞いた上で、体重を把握しておき、過度に増えすぎないようにしましょう。
また、被毛が多くて体型がわかりにくいですが、肋骨が軽く触れるくらいが理想の皮下脂肪量と言われています。ブラッシングの時など、定期的に胸の周りを触ってみてください。
まとめ
今回は、メインクーンがかかりやすい病気と健康管理のポイントを解説しました。
愛猫も生き物ですから、紹介した遺伝疾患以外にも体調を崩すことがあるかもしれません。
日常的に愛猫の健康状態を観察し続け、微妙な変化にも気付けるようにしましょう。
かわいいけど放置して大丈夫?犬が横座りをする理由とは
ある日、愛犬がいつもと違う座り方をしているのを見たことはありませんか?その姿がかわいくてつい写真を撮ったという方もいるかもしれません。
リラックスしているだけであれば心配はありませんが、病気の可能性もあるかもしれません。
この記事では、犬が横座りをしている場合に考えられることと、病気にならないための4つのポイントをご紹介します。
犬の横座りとは
横座りは「お姉さん座り」とも呼ばれ、前足は普通の「お座り」と同じですが、後ろ足は片方に投げ出してお尻を床に着けて座る座り方です。猫では見かけることが多いですが、犬では珍しいかもしれません。
その姿はとてもかわいらしく、SNSで「横座り」や「お姉さん座り」と検索すると、横座りした犬の写真がたくさんアップされています。
単なるクセかも
たまにしか横座りしなかったり、左右がいつもバラバラという場合は、特に心配する必要はありません。
小さい頃からの座りグセであったり、単にリラックスしているだけという可能性が高いです。お散歩から帰ってきたあとによく行うなど、たまに見かける程度であれば問題ないでしょう。
犬の横座りで考えられる病気
今まで横座りしたことがなかったのに、突然するようになったり、いつも一方向にのみ崩れるという場合は、関節の病気を患っている可能性があります。横座りをしているのは、痛い足を庇っているからなのです。
どんな病気が考えられるのか、詳しく見ていきましょう。
1. 股関節形成不全
股関節形成不全は、股関節の骨が変形してしまい、関節内に炎症などの異常が起こる病気です。
遺伝的な要因が7割、環境的な要因が3割といわれており、犬の骨成長と筋肉の成長のバランスが崩れることが原因と考えられています。
股関節形成不全の主な症状
- 横座りをする
- 散歩を嫌がる
- 散歩の途中で座る
- 不自然な歩き方をする
- 腰を左右に振って歩く
- 高いところからの上り下りを嫌がる
骨と筋肉の成長がアンバランスになり、常に少し脱臼した状態になるため、歩き方に異常が出ることが多いです。
股関節形成不全を起こしやすい犬種
- ゴールデンレトリーバー
- ラブラドールレトリーバー
- ジャーマン・シェパード
- セント・バーナード
股関節形成不全は、大型犬や超大型犬の成長期によく見られます。しかし、小型犬や中型犬でも起こることがあり、小型犬では成長期での診断が難しいとされています。
2. 膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝蓋骨脱臼は、その名の通り、膝蓋骨がずれて脱臼してしまっている状態のことです。
先天的なものと、交通事故の他、高いところからの飛び降りや転倒などによる後天的なものがあります。
膝蓋骨脱臼の主な症状
- 横座りをする
- 後ろ足を不意に伸ばす
- 運動を嫌がる
- 不自然な歩き方をする
- ケンケンやスキップをする
必ずしも痛みを伴う症状が現れるわけではないため、初期段階では気づけない場合が多いです。また、歩行が困難になっても痛みを感じない犬もいるため、「年のせい」と勘違いしてしまうこともあります。
膝蓋骨脱臼を起こしやすい犬種
- トイ・プードル
- ポメラニアン
- チワワ
- ヨークシャーテリア
- マルチーズ
- 柴犬
- ゴールデンレトリーバー
小型犬に多く見られますが、中・大型犬でも発症するため注意が必要です。
病気にならないための4つのポイント
1. 肥満に気をつける
体重が重くなると、膝への負担が大きくなります。肥満にならないよう、定期的な運動と適切な食事を心がけましょう。
すでに太り気味の場合は、急に過度な運動をしてしまうとかえって膝に負担がかかってしまうので注意しましょう。
2. 滑りにくい床にする
フローリングなどの床材はすべりやすく、膝や腰に負担がかかります。すべりにくいようにマットやカーペットを敷いてあげましょう。
3. 爪や足裏の毛を定期的にカットする
犬の肉球はブレーキの役割も果たしていますが、爪や足裏の毛が伸びているとブレーキの効きが悪くなり、膝や腰に負担がかかります。
普段はあまり気にしないところかもしれませんが、定期的にお手入れをしてあげてください。
4. 段差を減らす
ソファやベッドなどの段差を上り下りする際も、膝や腰に負担がかかってしまいます。
段差が小さくなるような専用の階段やスロープを設置しましょう。
犬の座り方・歩き方がおかしいと感じたら
以下の症状が一つでも当てはまったら、関節の病気かもしれません。重症化すると歩けなくなってしまうこともあるため、気づいたら早めに動物病院へ連れていきましょう。
- 突然横座りをするようになった
- 足を触ると嫌がる様になった
- 散歩を嫌がるようになった
- 足を引きずるようになった
- 腰を振るように歩くようになった
その際、犬の様子を動画や写真を撮っておくと獣医さんも診断しやすくなります。
まとめ
犬の横座りは一見かわいらしくリラックスしているようにも見えるため、特に気にしない飼い主さんも多いかもしれません。実際、犬のクセやリラックスしているだけであれば、気にする必要はありません。
しかし、突然横座りするようになったり、痛がる素ぶりを見せた場合は関節の病気を患っている可能性があります。
普段から愛犬の様子をよく観察し、違和感があるようなら動物病院を受診しましょう。
【獣医師監修】ラブラドールレトリーバーの好発疾患と健康チェック
ラブラドールレトリーバーは、盲導犬としても活躍が見られる賢い犬種です。人間が大好きで、飼い主に従順なことも特徴として挙げられます。
今回は、ラブラドールレトリーバーのかかりやすい病気と、それを踏まえた予防や健康チェックの方法をご紹介します。ラブラドールレトリーバーを飼っている方も、これから飼おうと思っている方もぜひご一読ください。
ラブラドールレトリーバーの基本情報
歴史
ラブラドールレトリーバーは、カナダ東部に位置するニューファンドランド島にいた「セントジョーンズレトリーバー」が祖先と考えられています。水中での作業が得意だったため、魚を回収する使役犬として活躍していました。
その後、能力の高さからイギリスに持ち込まれ、他のレトリバーと交配が行われて現在の姿になりました。
身体的特徴
体高は56〜57cm程度、体重は30~36kgで、大型犬に分類されます。
毛色はブラック、イエロー、チョコレートの3種類が公認されています。ダブルコートのため、抜け毛は多く、普段からのブラッシングが大切です。
性格
盲導犬としても活躍するラブラドールレトリーバーは、穏やかで、人に喜ばれることが大好きです。人懐っこいため番犬には向きませんが、飼い主には従順で賢く、自分で判断して行動することもできます。
一方で、うれしくなると興奮しすぎて、コントロールが効かなくなってしまうこともあります。大型犬ゆえ、攻撃性はなくとも他の犬や人に飛びかかるとケガをさせてしまうこともありますので注意しましょう。
ラブラドールレトリーバーの好発疾患
ラブラドールレトリーバーはどんな病気にかかりやすいかを理解し、その兆候を見逃さないことが重要です。ここでは、ラブラドールレトリーバーの好発疾患について解説します。
拡張型心筋症
【症状】
運動不耐性(疲れやすい)、胸水貯留、腹水貯留、呼吸困難など
【原因】
遺伝の関与、L-カルニチンやタウリンの欠乏などが関与している。
【備考】
心腔の顕著な拡大と収縮力の低下が特徴的。心臓から血液を送り出す力が弱くなり、全身の循環量が低下する。さらに心臓が収縮した後に心臓内の血液が空にならず、少しずつ溜まっていき、それが胸腔や腹腔に漏れ出て胸水や腹水となる。
股関節形成不全
【症状】
腰を左右に振った独特の歩き方(モンローウォーク)、うさぎ跳びのような歩き方、疼痛など
【原因】
遺伝が関与。過剰な栄養と過剰な運動によって発症が増加する。
【備考】
関節のゆるみが長期間持続すると関節炎を併発する。子犬の時期にレントゲン撮影を行い、早期に診断する必要がある。
肥満細胞腫
【症状】
皮膚のしこり、嘔吐、下痢、痒みなど
【原因】
遺伝的要素が関与していると考えられている。
【備考】
肥満細胞は免疫に関与する細胞で、ヒスタミンなどを含有する。患部をいじったりすることでこのヒスタミンが分泌され、痒みや消化器症状が引き起こされる。肥満とは付くが、太っているから発生しやすいということはない。
白内障
【症状】
水晶体の白濁、視力の低下、失明など
【原因】
ラブラドールレトリーバーでは先天性の白内障が報告されている。糖尿病や高コレステロールもリスク要因となる。また、緑内障、網膜剥離、ぶどう膜炎に続発することもある。
【備考】
出生時に見られるもの、生後6カ月齢まで、生後6ヵ月~1歳齢まで、1歳齢~3歳齢に見られるものに分類される。
進行性網膜萎縮
【症状】
夜盲、視覚消失、失明
【原因】
出生時には正常だが、数ヵ月を経て光を感じる細胞の傷害が起こる。
【備考】
夜盲症は初期症状である。
脂漏性皮膚炎
【症状】
過剰なフケ、タコ、ニキビのようなものが幼齢時から認められる。多くは2歳齢までに発症し、加齢とともに悪化する。
【原因】
先天的に表皮や脂腺の細胞増殖が速い、ターンオーバーが短いなど。
【備考】
好発部位は首、腋窩(ワキの下)、鼠径部、外耳。細菌や酵母の二次感染が起こると痒み、脱毛、炎症、悪臭を伴う。
病気の予防と健康チェック
愛犬が長く元気でいられるためには、普段からの予防や健康チェックが重要です。
ラブラドールレトリーバーという犬種の一般的な性格を考慮した上で、どんな点に注意したらいいかをご紹介します。
十分なスキンシップをとる
ラブラドールレトリーバーは人間が大好きなので、構ってあげることでストレスが発散されます。時間をとってしっかりと遊んであげましょう。
大型犬は暇になると手や足を舐めるクセがある子が多いと言われています。肢端の舐めすぎは舐性皮膚炎の原因となるので、留守番のときも愛犬を飽きさせない工夫が必要かもしれません。
それが難しければ、帰宅後に愛情表現を忘れないようにしましょう。
肥満に注意
ラブラドールレトリーバーは太りやすい犬種です。
肥満は、ただでさえ重い体重を支えている大型犬にとって骨関節にさらに負担をかけるため、生まれつき股関節に不安がある子にとっても大きな問題です。
また、糖尿病などの病気のリスク要因にもなるので、食事管理などでしっかり体重のケアをしましょう。
皮膚の状態をチェック
ラブラドールレトリーバーは、皮膚肥満細胞腫や組織球肉腫などの皮膚腫瘍や皮膚炎など、皮膚の病気が多い犬種です。
スキンシップの際には以下の点をチェックしましょう。
- 皮膚に赤みがないか
- なでた時に痒がっていないか
- 脱毛がないか
- しこりみたいなものがないか
- しこりがあるなら大きくなっていないか
子犬期にはレントゲンも
大型犬は、成長期にレントゲンを撮影し、股関節形成不全がないかをチェックした方がいいでしょう。レントゲン検査は麻酔の必要もなく、短時間で終わるため愛犬の負担も少なくて済みます。
また、子犬の時期に放射線を浴びることを心配される方も多くいますが、全く問題ありません。むしろ検査をせずに、関節疾患を見逃すことの方がリスクは高いと言えます。
まとめ
病気の治療には早期発見と早期治療が重要です。犬は言葉が話せないので自分の不調を訴えることができませんが、愛犬の健康状態を毎日チェックすることで、いち早く異常に気づけるでしょう。
ラブラドールレトリーバーは飼い主と遊ぶことが大好きです。その想いに応えてあげ、愛犬との生活をより豊かなものにできるといいですね。
【獣医師監修】子犬・子猫を飼うなら知っておきたい9つの先天性疾患
子犬や子猫を飼いたいと思っている方は、犬や猫が生まれつき持っている「先天性疾患」についてご存知でしょうか?
疾患の種類によっては、早期治療や日常生活での配慮が必要な場合があります。
今回は、犬や猫の先天性疾患について、具体例や対処法を獣医師が詳しく解説します。
先天性疾患とは
先天性疾患とは、その名の通り「生まれつきの疾患」の意味で、奇形や組織の構造異常などとも言います。
例えば、生命活動に大きな役割を果たしている心臓などに構造異常があると、わずかな異常であっても身体に大きな負担がかかります。
また、先天性疾患の中には遺伝するものもあり、親に何らかの疾患がないかどうかを確認することが非常に重要です。
注意したい先天性疾患
ペットショップやブリーダーから子犬や子猫を迎える時に、身体の一部分が欠損していればすぐにわかります。
しかし、内臓などの組織は外からは見ただけでは判断できないため、もしかしたら先天性の異常が潜んでいるかもしれません。
ここでは、動物病院でも見かける機会の多い先天性疾患を9つ紹介します。
①動脈管開存症
【正常】
通常、生後2〜3日で「動脈管(胎児期に肺動脈と大動脈を繋いでいる穴)」は閉鎖する。
そして、肺動脈には酸素の少ない「静脈血」が、大動脈には酸素が豊富な「動脈血」が流れる。【動脈管開存症とは】
動脈管が開口した状態で、血圧の高い大動脈の血液が肺動脈に流れ込む。
そして、肺への血液量が増加し、結果として左心房への負担が増大する。この状態が長く続くと、逆に肺動脈から大動脈への血液の流入が起こり、酸素の少ない血液が全身を巡るようになる。
②心室中隔欠損
【正常】
心臓は4つの部屋に分かれており、その中でも右心室は肺動脈へ、左心室は大動脈へ血液を送り出す役割を担う。
右心室と左心室は「中隔(ちゅうかく)」という壁で分けられている。【心室中隔欠損とは】
生まれつき「中隔」が欠損、あるいは一部に穴が空いた状態。通常は、全身に血液を送らなければならないため、右心室より左心室の方が血圧が高くなっている。
中隔の欠損により血液が左心室から右心室に流れ込んでしまうと、肺への血液量が増加し、左心房への負担が大きくなる。
③門脈体循環シャント
【正常】
身体の各組織に行き渡った血液は、静脈を通って心臓に戻ってくる。
その途中で、肝臓の中の血管「門脈」を通過して、身体の老廃物を解毒する。【門脈体循環シャントとは】
肝臓の手前から肝臓の出口に直接血管が繋がっている(シャント)状態。
このため、身体の毒素は肝臓を経由せず、全身を循環する。
また、肝臓は糖を貯蔵する働きもしているが、肝臓への血液が少なくなると、致命的な低血糖を引き起こすこともある。
④異所性尿管
【正常】
腎臓で作られた尿は、尿管を通って膀胱に溜められる。【異所性尿管とは】
尿管が膀胱以外の部位、例えば直接尿道や膣に開口している状態。
すると、尿は膀胱を経由しないため、常に尿漏れが起こる。
尿が流れ続けている状態では、そこから細菌感染を起こすこともある。
⑤口蓋裂(こうがいれつ)
「硬口蓋(口の中の上顎の部分)」に穴が空き、口腔と鼻腔が繋がっている状態。
食べたものが鼻腔を通り、肺に流れ込むと、誤嚥性肺炎に繋がることも。
食後に、未消化の食べ物のようなものが鼻から出てくることがあれば、口腔内を検査してみると良い。
⑥水頭症
【正常】
脳は、頭蓋骨の中で脳脊髄液に浮かんでいる。【水頭症とは】
脳脊髄液が過剰に貯留している状態。
脳室内の液体によって脳は圧迫され、神経症状や運動障害が引き起こされる。
⑦肘関節形成不全
【正常】
肘関節は、「上腕骨」と「前腕の骨(橈骨と尺骨)」からなる。【肘関節形成不全とは】
この関節の咬み合わせが不十分な状態で、少しの刺激で肘関節脱臼が起こる可能性がある。
前肢を引きずる様子があれば、レントゲンを撮ってみると良い。
⑧股関節形成不全
【正常】
股関節は、骨盤を形成する「寛骨」と「大腿骨」からなる。【股関節形成不全とは】
寛骨の溝が浅いなどによって、股関節の形成が不十分な状態で、頻繁に股関節脱臼を起こすようになる。
大型犬に多く見られ、成長期の検診ではレントゲンで股関節の状態をチェックすることも多い。
⑨膝蓋骨脱臼
【正常】
「膝蓋骨(膝の皿)」は、大腿骨の溝に沿って上下に移動することで、膝の滑らかな動きを実現している。【膝蓋骨脱臼とは】
大腿骨の溝が生まれつき浅いなどによって、膝蓋骨が大腿骨から外れた状態。
膝蓋骨の脱臼を繰り返すことによって関節炎が起きたり、前十字靭帯が断裂することもある。
寄生虫予防やワクチン接種の際にチェック
これら先天性疾患は、初めての動物病院受診の際にしっかりとチェックします。
動物病院受診のタイミングは様々ですが、ワクチン接種やフィラリア予防薬を開始する頃が多いです。
その際、気になる健康上の問題点があれば獣医師に伝えておきましょう。
レントゲンはある程度成長してから
骨は生後、徐々に軟骨から硬骨に置き換わっていきます。
そのため、あまりにも若いうちにレントゲンを撮っても意味がありません。
成長するにつれて症状が出てこないか確認しながら、時期を見て検査をしていきます。
まとめ
犬や猫が生まれつき持っている異常は、飼い主さんの努力で予防することはできません。
しかし、できる限り早期に発見し、早めに処置をすることで、先天性疾患による様々なリスクを小さくすることはできます。
子犬や子猫の頃から、できるだけの健康管理をしてあげましょう。