【獣医師監修】犬の尿の色がいつもと違う!考えられる原因や病気とは
犬の健康時の尿色は、黄色~淡い黄色と言われています。しかし、突然愛犬の尿色が赤や褐色になっているのを発見した時、あなたはどうしますか?
尿の色が変化するのは、尿中に普段は出現しないような物質が出現していることが示唆されます。
では、尿色の変化によってどんな異常が考えられるのでしょうか。今回は犬の尿外観異常について解説します。
尿の色から病気の原因がわかる?
犬の尿の色がいつもと違う場合、体に何らかの異常が起こっていると考えた方がいいでしょう。
尿の色が変化する原因はいくつかあります。
- 【赤色】赤血球が尿中に排出されている
- 【褐色】赤血球が破壊され、血色素が尿中に排出されている
- 【橙色】赤血球が破壊され、ビリルビンが尿中に排出されている
では、具体的にはどのような疾患が考えられるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
赤色(血尿)
尿の色が赤い時には、尿中に赤血球が出現していると考えられます。膀胱炎を始めとした泌尿器疾患で多く見られる色です。
実際に尿検査をしてみると、尿中に大量の赤血球が検出されます。
下部尿路感染症(LUTI)
【症状】
少量ずつの頻回排尿、排尿時の痛み、血尿など。
【原因】
細菌、マイコプラズマ、真菌などの微生物の感染による。これらの感染は、尿の残留、尿路結石、腫瘍、水分摂取量の不足、尿量の減少、尿糖の排泄などが誘因となる。
【備考】
症状の程度は原因菌、感染からの時間経過、合併症の有無によって異なる。感染が尿管や腎臓にまで波及すると、発熱や腎不全症状が現れる。
膀胱結石
【症状】
血尿、頻尿、排尿時疼痛、尿淋瀝(尿がポタポタ垂れる)、トイレ以外での排尿など。
【原因】
尿の塩濃度、尿pH、尿の停留時間、食物中の無機質濃度不均衡、尿路感染などが誘因となり、膀胱内に結石が形成される。
【備考】
膀胱内の結石が尿道に移動し、そこで閉塞を起こすことがある。速やかに閉塞を解除しないと急性腎不全や膀胱破裂などを招くこともある。
泌尿器腫瘍(尿管、膀胱、尿道)
【症状】
血尿、頻尿、排尿困難など。
【原因】
各組織に腫瘍が発生し、そこから出血することで血尿が生じる。
【備考】
腫瘍の種類としては移行上皮癌が最も多い。また膀胱の移行上皮癌はメスのほうがオスよりもリスクが高いと言われている。
薬剤
【症状】
血尿
【原因】
抗がん剤(シクロホスファミド)の投与による無菌性出血性膀胱炎。
【備考】
腫瘍の治療の際に見られることがある。
褐色(血色素尿)
茶色っぽい尿色では、赤血球の赤色の成分である血色素が出現していると考えられます。つまり、赤血球が何かしらの原因で破壊され、それが尿中に排泄されているのです。
犬糸状虫症(フィラリア症)
【症状】
運動不耐性(疲れやすい)、発咳、腹水、呼吸困難(肺水腫)、血色素尿など。寄生虫の寄生数、寄生部位、宿主の肺動脈や肺の病変程度によって多様な症状を呈する。
【原因】
犬糸状虫(フィラリア)が心臓に寄生することによる。犬糸状虫は蚊によって媒介される寄生虫で、月に1回の駆虫が必要である。
【備考】
フィラリアの駆虫薬を投与する前には、予めフィラリアへの感染がないことを血液検査にて確認する。フィラリア陽性犬にフィラリア駆虫薬を投与すると、致死的なショックを引き起こすことがあるためである。
タマネギ中毒
【症状】
貧血、血色素尿など。
【原因】
タマネギ、ネギ、ニンニク、ニラなどのネギ類の採食によって赤血球が破壊されることによる。
【備考】
柴犬や秋田犬などの日本犬には、タマネギ中毒に高感受性の家系が存在する。また、亜鉛、アセトアミノフェンといった物質の摂取でも同様の症状を呈することがある。
橙色(ビリルビン尿)
尿色がいつもよりオレンジ色を帯びている場合、あるいは肉眼的には正常でも、尿中にビリルビンという色素が出現していることがあります。
正常でもビリルビンが尿中に出現することは珍しくありませんが、尿検査で2+以上だと異常と見なされます。
ビリルビンが関与しているということは、肝胆系に何らかの異常があることが示唆されます。また、この場合、血液検査でも血中ビリルビン値の異常が見られることがあります。
胆管閉塞
【症状】
嘔吐、食欲不振、腹痛、黄疸など。
【原因】
胆石や胆嚢粘液嚢腫、周囲組織の腫瘍や炎症によって胆管が閉塞し、ビリルビンが肝細胞間へ逆流することで血清や組織が黄染する。ビリルビン尿は高ビリルビン血症や皮膚の黄疸に先行して発見されることも多い。
【備考】
胆嚢破裂を続発する危険があるため、早期に外科的な治療を行う必要がある。
肝疾患
【症状】
嘔吐、食欲不振、腹痛、下痢、黄疸など。
【原因】
肝炎、肝硬変、肝腫瘍などによって肝機能が低下し、血中ビリルビン濃度が上昇することによる。
【備考】
肝臓の疾患では確定診断の際に肝生検を行う必要があることが多い。
まとめ
突然の尿色異常は、非常にビックリすると思います。しかし、尿外観異常がどんな原因で起こるのかをおおよそ理解しておけば、不測の事態にも迅速に対応できるでしょう。
慌てず、できることなら異常が見られる尿を採集し、速やかに動物病院までご相談ください。
【獣医師監修】猫の尿で毎日健康チェック!尿から気付ける病気とは
猫を飼っているみなさんは、日常的に猫のトイレの掃除をしていると思います。その日常のトイレ掃除、何も考えずにただ漠然と行っていませんか?
言葉が話せない猫にとって、尿は大切な健康に関する情報です。健康の異常が尿の異常となって現れることもあるので、いつものトイレ掃除で尿の状態を確認することが重要です。
今回は、猫における尿の外観異常について、獣医師が詳しく解説していきます。
尿外観異常とは
猫の尿の色は通常、黄色~淡い黄色をしています。尿の外観異常は、この尿の色が濃くなる、薄くなる、赤くなるなどの異常を呈する状態です。
代表的なものは「血尿」です。主に泌尿器系の疾患によって尿色に異常が生じます。
猫の尿の異常で動物病院を受診する前に
愛猫の尿の異常に気付いたら、なるべく早めに動物病院を受診する必要があります。あらかじめ次のようなことを把握しておくと、診断がスムーズに進みます。
- いつから:急性か慢性か
- 尿の様子:色、臭いなど
- 排尿時の様子:頻尿の有無、排尿時に痛みがありそうか、尿漏れの有無など
- 飼育環境:環境の変化、猫がイタズラした可能性など
尿の持参もしよう
尿の外観異常が見られた場合、尿検査は必ず行いたい検査です。自宅で採尿が可能であれば、その尿で検査を行った方が猫への負担が少なくて済みます。
ウロキャッチャーと呼ばれる、スポンジが先端に付いた棒があり、簡単に採尿をすることができます。ウロキャッチャーは動物病院で購入することができます。
その際、細菌や蛋白質の混入を防ぐために、猫の排尿を空中でスポンジにキャッチすることが望ましいのですが、なかなか現実的ではありません。そこで、裏返したペットシーツの上に排尿させると楽に採尿できます。
また、無菌的に採尿するために、動物病院にてカテーテルまたは穿刺による採尿を行うこともあります。
猫の尿の異常で考えられる疾患
では、尿の外観異常が見られたとき、猫の体の中では何が起こっているのでしょうか。
疾患が泌尿器だけに起きている場合もあれば、全身に影響を及ぼしている場合もあります。
ここからは、猫の尿に外観異常が見られた際に疑われる疾患をご説明します。
特発性膀胱炎
膀胱炎は、猫において非常に多くみられる疾患です。
膀胱炎にはいくつか原因がありますが、その中でも注意したいのが「特発性膀胱炎」です。
特発性膀胱炎にはストレスが関与していると言われています。引っ越しや、近所の工事音、ペットホテルに預けるなど、住環境の変化がストレスとなって膀胱炎になることが多いのです。
血尿や頻尿といった泌尿器症状が見られ、時には腹痛や食欲不振も認められます。生活の中で猫のストレスを緩和してあげることが非常に重要です。
結石性膀胱炎
結石性膀胱炎は膀胱炎の中でも、膀胱の中に結石が形成されることに起因するものです。
膀胱内の結石がゴロゴロ転がることで膀胱粘膜を傷つけ、炎症が起こります。
結石の種類にもいくつかあり、体質や栄養状態によってできやすい結石が異なります。
また、形成された結石の大きさによっては、尿道閉塞を起こす可能性があります。
特に、雄猫の尿道は非常に狭く、閉塞を起こしやすくなっています。
タマネギ中毒
猫にとってタマネギは毒物で、食べると赤血球が破壊されます。
それによって赤血球の赤い色素が尿中に現れ、血色素尿となります。タマネギ中毒は重度の貧血を引き起こし、命を落とす危険もあります。
タマネギを食べてしまった可能性が少しでもあるのなら、すぐに動物病院を受診してください。
多発性嚢胞腎
腎臓に嚢胞(のうほう)が多数形成される先天性腎疾患で、ペルシャやエキゾチックショートヘアで見られます。
初期は無症状ですが、嚢胞が増えてくると腎機能障害が起こります。
徴候としては血尿、嘔吐、多飲多尿および尿路感染症などが認められます。
確定診断は超音波検査にて腎臓の嚢胞の大きさや個数を確認しますが、これは生後1~2カ月から可能です。
治療法は確立されていないので、慢性腎不全に対する対症療法を行うしかありません。
泌尿器系腫瘍
猫の高齢化によって腫瘍による尿外観異常も増えてきています。
泌尿器系の腫瘍は悪性であることが多く、腎臓や膀胱に腫瘍が発生します。
血尿と排尿困難が主な臨床症状であるために、膀胱炎と診断された後に治療を行ってもなかなか治らず、精査してみて見つかることも多くなっています。
胆管閉塞
胆管は胆嚢と十二指腸を繋ぎ、胆汁の通り道となる管です。
この胆管が閉塞すると、血清や組織が胆汁色素(ビリルビン)によって黄色く染まる「黄疸」が発生します。
血清中のビリルビン濃度が高くなると、尿中のビリルビン濃度も高くなり、尿は濃い黄色になります。尿中のビリルビンは尿検査によって検出可能です。
ただし、排尿回数が少ない猫は元々尿色が濃いことがあるため、判断が難しいと言えます。
慢性腎不全
腎臓で尿の濃縮がうまくできなくなると、尿色は薄くなります。
何かしらの対策を行わないと、70%以上の猫が慢性腎不全になると言われており、猫と腎不全は切っても切れない関係となっています。
年齢とともに尿が薄くなった、尿量が増えた、飲水量が増えたなどの症状が見られた場合は腎不全を疑いましょう。
変性した腎臓の細胞は、例え治療しても元に戻ることはなく、また腎不全の臨床症状が現れる頃には腎細胞の約60%が機能しなくなっていると言われています。
残った腎細胞にいかに負担をかけないかが長生きの秘訣になります。
猫の尿の異常にいち早く気づくために
日頃から猫の尿色の確認をすることで、早めに異常に気づいてあげたいものです。
猫の異常に早く気づくために、飼い主さんはどのようなことができるでしょうか。
トイレでの尿色確認
猫砂など、トイレのタイプによっては尿の色を確認しにくいかもしれません。しかし、例えば白い砂に変えてみるなどの対策で、多少は尿の色が確認しやすくなります。
さらに排尿後のトイレの様子を写真に撮っておけば、小さな変化に気付くことができるかもしれません。
外飼いの時は
外で排泄する習慣がある子については、尿色を確認することはできません。しかし、膀胱炎や腎不全などの疾患では血尿以外にも頻尿などの症状が見られることがほとんどです。
尿色に頼れない以上、他の徴候を見逃さないようにしましょう。
まとめ
猫の尿の外観異常は、排泄物として残るため、比較的気付きやすい異常です。
特に、猫は泌尿器に疾患をかかえやすい性質があります。愛猫が長生きできるよう、日頃から注意して猫の尿を観察してあげましょう。