【獣医師監修】犬・猫の慢性腎臓病にオススメな食事管理のポイント
動物の慢性疾患において、腎臓病は非常に大きな割合を占めています。
特に、猫では7歳以上の猫の70%が腎臓病であるという報告もあります。また、犬でも心臓疾患に併発する形で腎臓病を発症するケースが多くあります。
では、慢性腎臓病のペットに家でしてあげられることは何でしょうか。
今回はその中の一つとして、慢性腎臓病における食事管理を紹介します。
慢性腎臓病において食事管理は必要!
腎臓は血液から、窒素などの不要な成分を濾しだし、尿を作る臓器です。
ですが、腎機能が低下すると、窒素の排泄能が落ち、体内に毒素が蓄積されていくのです。
窒素は蛋白質(アミノ酸)に含まれるため、食事による窒素の摂取、すなわち蛋白質の摂取を調節する必要があります。
また、蛋白尿や血液中のリンは、腎機能をさらに低下させることがわかっています。
腎不全の症例では、食事管理によってこれらの栄養素の調整が求められます。
腎疾患における食事管理で気を付けたいこと
腎臓の組織は、一度破壊されると回復することはありません。
そのため腎不全に陥ってしまった場合には、残された腎組織を徹底的にケアする必要があります。
腎臓のために気を付けたい食事管理のポイントは以下の4つです。
1.ナトリウムの制限
いわゆる塩分の制限です。高いナトリウム濃度は高血圧を引き起こす一因となり、高血圧は腎不全をさらに悪化させます。
2.リンの制限
腎不全症例ではリンの代謝が不全となり、体内にリンが溜まっていきます。リンは腎不全を悪化させるだけでなくビタミンDの活性を低下させ、骨を弱くさせてしまいます。
そのため、摂取するリンの量を減らす必要があります。
3.良質な蛋白質の摂取
蛋白質中の窒素は、蓄積することで尿毒症の原因となります。
しかし、蛋白質は生きるために必要不可欠な栄養素であるため、単に制限して摂取量を減らすことは逆に命取りになります。
腎不全に限らず病気に打ち勝つための体力を蓄えるため、良質な蛋白質を選択して摂取することが求められています。
4.オメガ3脂肪酸の強化
EPAやDHAというものをご存じでしょうか。近年に注目されるようになった栄養素で、腎臓に起きている炎症を抑え、蛋白尿の発生を低減させる効果があるとされています。
おすすめメーカーの腎臓病療法食
犬でも猫でも発生数が多い腎臓病ですが、それだけに各メーカーでも腎臓病の療法食には力を入れているようです。
腎臓病における懸念の一つとして、食欲不振があります。療法食を食べてほしいのに食欲がないせいで、ついつい味の濃いものをトッピングしてしまうことがあるかもしれません。しかし、それは悪手です。
いくつかある療法食の中で、その子の口に合った嗜好性の良いものを選びましょう。ここでは、代表的な腎臓病療法食をご紹介していきます。
ロイヤルカナンの腎臓サポート
オメガ3脂肪酸配合、高カロリー、蛋白質の調整、リンの制限など腎臓病に必要な栄養の調整がなされています。
ウェットタイプもあるため、腎不全による脱水の対処も可能となります。
ヒルズのk/d
ヒルズの腎臓病療法食の特徴は、栄養の調整はもちろんですが、特筆すべきは味のバリエーションです。
チキン、ビーフ、野菜入りなど、豊富な種類の味が用意されています。缶詰タイプもあります。
腎不全における食欲の低下を考慮したラインナップです。
手作り食の注意点とは?
時間がある方や、病気のペットに何かしてあげたいと考えている方には手作り食も有効です。
実際に長い病気との生活の中で、ペットとのコミュニケーションのために食事を手作りしている方もいます。
では、食事を手作りする上で注意するべきことは何でしょうか。
必要な栄養素と食材
まずは、腎臓病の食事に必要な食材をおさらいしておきましょう。
- 良質な蛋白質:ササミ、豚肉など
- オメガ3脂肪酸:魚、大豆など
ただし、ササミや豚肉ならたくさんあげてもいいというわけではありませんのでご注意ください。
いくら良質な蛋白質とは言えど、腎臓のためには過剰摂取は禁物です。
控えるべき食べ物
一方で、栄養の観点から控えた方がいい食材もあります。
- 粗蛋白質:ジャーキー、米や小麦に含まれる蛋白質など
- ナトリウム:人間の食べる加工食品全般
- リン:シラス、チーズ、魚卵、卵、レバーなど
リンについては、食事に添加することでリンを吸着してくれるサプリメントがありますので、それを利用するのもいいかもしれません。かかりつけの動物病院にご相談ください。
食事で腎臓病を予防できる?
確実に病気を予防することは不可能ですが、食事管理によりある程度、腎臓病の発症を遅らせることはできます。
早い時期から塩分やリンを制限することで、腎臓へのダメージが低減します。
あまりにも色々なものを制限する必要はありませんが、少しだけ意識してみてはいかがでしょうか。
まとめ
腎臓は生きる上で非常に大切な臓器です。ペットが健康に生活できるためにも、食事による腎臓のケアは試してみる価値があるのではないでしょうか。
食事管理はあくまで治療の補助として用いますが、その恩恵は非常に大きいものとなります。また、常日頃から健康的な食事を意識することで、ある程度の予防を期待できます。
大切なペットと1日でも長く一緒に過ごせるよう、健康を意識してあげることが大切です。
高齢猫の死亡原因上位の腎臓病と、それを予防する方法
高齢猫の死亡原因となる病気のひとつでもある腎臓病。そのリスクは、7-8才頃から急速に高まると言われています。何が原因で、どんな症状があり、どのような予防をすればいいかを知っておくことは猫を飼育する上でとても大切なことです。
突然、腎臓病と診断されて戸惑わないためにも、腎臓病について知り、少しでも長く愛猫と一緒に居られるように予防を心がけるようにしましょう。最後に日頃の生活の中で気をつけて欲しいポイントもまとめていますので、まだ若い猫を飼っている方は、こちらを参考にしてみてください。
腎臓病とは
腎臓は体の毒素や老廃物の除去、水分の調節など、生命を維持し、体の環境を一定に保つ役割を担っています。
腎臓病は、そのような腎臓の機能が低下することで起こり、貧血やおう吐、脱水など、身体中にさまざまな問題を引き起こします。一度機能が失われた腎臓はほとんど回復することがないため、普段から腎臓に負担がかからない生活をすることが大切です。
なぜ猫は腎臓病にかかりやすいの?
では、なぜ猫は腎臓病にかかりやすいのでしょうか?
2016年の東京大学大学院での研究により、猫がもつAIM(マクロファージ細胞自然死阻害タンパク質)が十分に機能していないことが分かりました。そのため、腎臓に傷がついても修復されず、腎臓病にかかる可能性が高くなってしまうのです。(参考:http://first.lifesciencedb.jp/archives/12082)
それに加えて、腎臓を構成するネフロンの数が関係していると考えられています。ネフロンは、人間には両方の腎臓に約200万個ありますが、犬には約80万個、猫には約40万個しかありません。この数の違いが、より腎臓病を引き起こす可能性を高めているのです。
また、猫は7歳を超えると腎臓病にかかる確率が上がります。理由には諸説ありますが、ネフロンの数が加齢とともに減少していくためだと考えられています。健康な猫でも、年齢を重ねるごとに減少していき、全体の60%以上が壊れるか機能が低下すると腎臓病の症状が表れると言われています。
腎臓病にかかりやすい猫種
猫の中でも特に腎臓病にかかりやすいとされている猫種がこちらです。
- シャム
- アビシニアン
- ペルシャ
- ソマリ
- ロシアンブルー
- 三毛猫
もちろん、飼っている猫が上記に該当する・しないで、腎臓病にかかる・かからないと明確に区別されるわけではありません。あくまで参考程度に留めておくと良いでしょう。しかし、あらかじめ腎臓病にかかりやすい猫種だということを知っておくことが大切です。
腎臓病チェックリスト
腎臓病は症状がわかりにくい病気で、単なる加齢による症状だと勘違いしてしまうことも多いため、気付いた時には腎機能が7割以上も失われていることがあります。大切な愛猫が腎臓病にかかっていないか、些細な症状も見逃さないようにしたいですね。
まずは、以下のリストでチェックしてみましょう。
- 以前より水を何度も飲むようになった
- トイレの回数が増えた
- 1回のオシッコの量が増えた
- オシッコの色がうすくなった
- オシッコのにおいがしなくなった
- 毛並みが悪くなってきた
- 体重が減少してきた
もし該当する点がある場合は、かかりつけの獣医さんに診てもらいましょう。特に、水を飲む回数が増えたり、トイレの回数が増えたりした場合は、なるべく早く受診することをオススメします。
予防するには
猫の場合は、規則正しい食生活をしていても腎臓病にかかってしまうことがあります。
その可能性を少しでも減らすために、以下の点に気をつけましょう。
食事を気をつける
塩分や脂肪の多い食事は腎臓に負担をかけてしまうため、与えないようにしましょう。
また、タンパク質を分解してできる老廃物を体の外に出すのも腎臓の役割です。タンパク質の過剰摂取にも気をつけましょう。
トイレを清潔に保つ
猫はきれい好きな子が多く、トイレが気に入らないと排泄を我慢してしまうことがあります。
排泄を我慢することで腎臓に負担がかかりますので、トイレは常にきれいにしておきましょう。
ストレスを与えない
猫はストレスに弱く、体調に影響を与えます。
なるべくストレスを与えないよう、のんびりできる環境を整えてあげましょう。
年に一度は定期検診を
腎臓病はなかなか症状が表れにくく、違和感を感じた時にはすでに腎臓病は進行してしまっています。進行を遅らせるような治療方法も進歩してきていますが、一度ダメージを受けた腎臓は元には戻りません。
早期に発見するために、定期的に血液検査や尿検査をすることがとても大切です。
最後に
腎臓病は猫を飼う上で決して目を背けてはいけない病気です。原因や予防方法をしっかりと理解し、健康に良い食事やストレスをなるべく感じないような環境を整えてあげましょう。少しでも長く愛猫と一緒にいられるように、飼い主さんがしっかり気にかけてあげてください。