【獣医師監修】ミニチュア・ピンシャーの好発疾患と飼い方のポイント
ミニチュア・ピンシャーは毛が短く、線の細い小型犬種です。
小顔で、守ってあげたくなるような表情も魅力の一つですよね。
そんなミニチュア・ピンシャーですが、いくつか好発する疾患があります。
今回の記事では、獣医師の視点から、動物病院でも目にすることの多いミニチュア・ピンシャーの疾患について解説していきます。
ミニチュア・ピンシャーの基本情報
歴史
ミニチュア・ピンシャーは、ドーベルマンを小型化したような見た目をしていますが、その歴史はドーベルマンより長く、17~18世紀頃と推定されています。
中型のヘル・ピンシェルが祖先で、ジャーマン・ピンシャーや、ダックスフンド、イタリアングレーハウンドなどとの交配を経て、現在のミニチュア・ピンシャーの形になったと言われています。
身体的特徴
オス・メスともに、体高は26~32cm、体重は4~6kgが理想とされています。
手足が細いながらも筋肉質な体をしています。
被毛は短毛で、色は赤系の単色か、ブラック&タンもしくはチョコレート&タンです。
性格
明るく活発な性格ですが、繊細で警戒心が強い面もあり、初めての人や犬には攻撃的になることがあります。
また、体が小さいながらもとても勇敢で、大きな犬にも臆することなく向かっていく子が多く、番犬としても最適です。
ミニチュア・ピンシャーの好発疾患
ミニチュア・ピンシャーのかかりやすい病気は、皮膚と骨関節の疾患が多い傾向にあります。
聞いたことのある病気もあるかと思いますが、順番に紹介します。
アトピー性皮膚炎
【症状】
痒み、紅斑、丘疹、色素沈着(皮膚が黒っぽくなる)、苔癬化(たいせんか:皮膚が厚くなる)など。病変は四肢端、腋窩部(脇の下)、肘屈曲部、膝内側部、大腿部内側部、頸部に現れる。外耳炎を併発していることも多い。
【原因】
発症機序は完全には解明されていない。ハウスダスト、花粉、カビなどのアレルゲンに対する過剰な免疫反応が、痒みを伴う皮膚炎症状を引き起こすと考えられている。
【備考】
犬のアトピー性皮膚炎は人間と異なり、加齢とともに症状が悪化していく傾向にある。早期に診断と治療を行うことが重要。
アレルギー性皮膚炎
【症状】
痒みを伴う炎症性皮膚病変形成。
【原因】
食事、ノミによる刺咬などによる過剰な免疫反応による。
【備考】
食事アレルギーは眼および口の周囲、外耳道、四肢端、背部に、ノミアレルギーは尾根部、尾部、大腿部、鼠径部に見られることが多い。
カラーダイリューション脱毛
【症状】
薄い毛色部分に起こる脱毛や乏毛。皮疹やフケを伴うこともある。
【原因】
メラニンが不均等に毛に分布されることによると考えられている。
【備考】
生後数年以内に被毛の異常を認める先天性遅発性脱毛症の一つである。
膝蓋骨脱臼
【症状】
患肢の挙上(足を地面に着かない)、跛行(足を引きずる)、膝の周りを舐めるなど。
【原因】
外傷、先天的な解剖学的異常(膝蓋骨の嵌まっている大腿骨の溝が浅い、膝蓋骨に付着している筋肉の左右不均衡など)
【備考】
膝蓋骨が外れたり嵌まったりを繰り返すことで関節炎が進行し、前十字靭帯断裂や歩行不能に陥ることもある。膝蓋骨脱臼と診断されたら膝関節への配慮が必要。伸びをするように片足を伸ばす動作は、自分で膝蓋骨を嵌め直している可能性あり。
大腿骨頭壊死症
【症状】
進行する跛行(足を引きずる)、痛みなど
【原因】
骨端への血液供給が不十分となり、大腿骨の成長板などに梗塞を来たすことによる。高い遺伝率を有するので、親の既往歴は要チェック。
【備考】
数ヵ月~1歳齢までに、進行性の跛行を呈する。内科的治療で痛みをコントロールできない場合は外科による大腿骨頭切除を行うこともある。
ミニチュア・ピンシャーに適した飼育環境
ミニチュア・ピンシャーとの暮らしの中で、これら好発疾患の早期発見や予防のために、どのようなことに注意して暮らせばよいのでしょうか?
愛犬との快適な生活のために注目するポイントを解説します。
1. 寒さ対策は必須
ミニチュア・ピンシャーは毛が短いので、寒さには弱い犬種です。
室内では暖房を活用し、毛布をおくなどして暖かくしてあげましょう。また、その際に乾燥によって皮膚が悪くなることもあるので、同時に加湿も行います。
さらに、散歩などで外に出る際には、服を着せてあげるといいでしょう。
2. 運動量の確保
筋肉質な犬種であるミニチュア・ピンシャーは、散歩やその他の運動によって筋肉量を保つ必要があります。
散歩の時間は意識的に長めにとってあげる、一緒に走るなどの工夫が必要でしょう。
ただし、急激なダッシュは禁物です。前十字靭帯断裂や脱臼に繋がります。
運動によってストレスを解消する目的もあるので、一緒に暮らす際には運動のことを重点的に考える必要があります。
3. 皮膚の状態は常にチェック
ミニチュア・ピンシャーは皮膚疾患が多い犬種です。毛が短い分、皮膚の状態は比較的観察しやすいかと思います。また、痒みを伴う疾患も多いため、痒み行動がないかも要チェックです。
夏は涼しく除湿し、冬は暖かく加湿をしてあげて、皮膚への刺激をできるだけ少なくしてあげましょう。
さらに、ハウスダストや花粉などもアレルギーの原因になるため、部屋はこまめに掃除・換気しましょう。
4. 滑りにくい床に
皮膚疾患と同じように、ミニチュア・ピンシャーでは骨関節疾患が多く見られます。
特に、屋内で飼育する際には、床が滑りやすいと各関節に余計な負荷を与えることになります。
床は滑りにくいように、カーペットやマットを敷くなどの工夫をしてあげましょう。
まとめ
ミニチュア・ピンシャーの好発疾患には、痒いものや痛いものが多いため、早くに異常に気付き、不快感を取り除いてあげることが大切です。
愛犬を毎日観察し、適切な飼育環境を整えることで、病気の予防や早期発見に繋げましょう。
【獣医師監修】パピヨンの好発疾患と予防のための5つのポイント
パピヨンは、蝶のような大きな耳が特徴の小型犬種です。
賢い子が多く、日本でも人気で、街を歩いていてもよく目にすることがあります。そんなパピヨンですが、特異的にかかりやすい病気がいくつかあります。
今回の記事では、パピヨンのかかりやすい病気と、おすすめの飼育環境について、獣医師が詳しく解説します。
パピヨンの基本情報
歴史
パピヨンはフランスとべルギーが原産の犬種で、先祖はスパニエルの一種とされています。16世紀以降、マリー・アントワネットなどヨーロッパの貴族から愛されてきました。
当時は垂れ耳が多かったのですが、まれに立ち耳のパピヨンが生まれ、18世紀末頃からは立ち耳のパピヨンが選択的に繁殖されるようになります。その後、チワワなどとの交配によって小型化し、現在のような姿になりました。
名前の由来
パピヨン(papillon)はフランス語で「蝶」という意味があり、パピヨンの耳が蝶の羽を開いたような姿であることから名付けられました。
身体的特徴
体高は20〜28cm、体重は3.0〜4.5kgで、超小型犬に分類されます。
被毛はシングルコートで長めで、色は白を基本として黒、茶、レモン、セーブルなどの色の組み合わせです。
性格
人間が大好きで甘え上手なため、誰に対してもフレンドリーです。ただし、警戒心が強い一面もあります。
また、知能が高い犬種としても知られています。
さらに、パピヨンは小型犬でありながら運動能力に優れているため、動き回るのが大好きです。
パピヨンの好発疾患
パピヨンには、その解剖学的特徴や遺伝的な背景から好発する傾向のある疾患があります。
どんな病気があるのか、どんな症状が現れるのかを理解しておけば病気の早期発見に繋がります。
僧帽弁(そうぼうべん)閉鎖不全症
【症状】
運動不耐性(疲れやすい、易疲労性)、咳、興奮時の呼吸速迫など。
病態が進行し肺水腫となると、呼吸困難、チアノーゼ、安静時の呼吸速迫、運動時のふらつき、失神など。
【原因】
僧帽弁(左心房と左心室の間にある弁)の異常により、心臓の収縮とともに血液が逆流する。これによって循環が悪くなり、心臓への持続的な負荷のために心拡大が引き起こされる。
【備考】
全身臓器への血液供給が減少することにより、膵炎や腎不全を併発することもある。
脱毛症X
【症状】
大腿部背側(お尻の少し下)や頸部、手足の先端以外の脱毛、育毛障害。
色素沈着(皮膚が黒っぽくなる)、面皰、フケなどが見られることも。
【原因】
病態は不明。(Xは不明の意味)
【備考】
3歳齢以下の未去勢雄に好発し、トリミング(特にサマーカット)の後に気付くことが多い。
進行性網膜萎縮
【症状】
初期症状は夜盲症で、徐々に視覚消失を起こす。
【原因】
光を感じる細胞(桿体細胞)の変性による。
【備考】
網膜が発達している間、または生後6週齢までの若い時期に発症することもある。
眼瞼内反症
【症状】
流涙、眼瞼痙攣、角膜周囲の充血、結膜充血など。
【原因】
眼瞼辺縁が内側に曲がっていることによって、眼瞼辺縁と角膜が接触することによる。
【備考】
痛みによって眼瞼は腫れ、さらに眼瞼内反症が悪化するという悪循環に陥ることもある。
白内障
【症状】
水晶体の白濁、視覚障害。
【原因】
加齢、外傷、代謝性(糖尿病、低カルシウム血症など)、他の眼疾患からの続発(水晶体脱臼、網膜異形成、進行性網膜萎縮など)による。
【備考】
老齢疾患のイメージが強いが、若齢(0〜6歳齢)でも発症することがある。
膝蓋骨脱臼
【症状】
足を引きずる、歩き方がおかしい、患肢が地面に着かないなど。
【原因】
外からの強い衝撃、生まれつき膝蓋骨が外れやすい体質など。
【備考】
膝蓋骨脱臼を放置すると重度の関節炎や前十字靭帯断裂を続発することもある。
パピヨンとの日常生活で注意したい5つのポイント
パピヨンのかかりやすい病気に基づき、日常でどんなことに注意すればよいのかをまとめます。
1. 床を滑りにくくする
フローリングなどの滑りやすい床は、膝関節に対して負担がかかります。
膝への負荷は、膝蓋骨脱臼に繋がります。また、膝蓋骨脱臼を既に持っている子は、膝蓋骨がはまったり外れたりを繰り返すことで関節炎を併発することもあります。
愛犬が行動する部屋の床にはカーペットやマットを敷くなど、滑りにくくする必要があります。
2. 爪切りや足裏の毛の処置を定期的に行う
犬の肉球は、走っている時にブレーキの役割を果たします。
爪や足裏の毛が伸びていると、肉球が床と触れずブレーキが効きにくくなり、膝に余計な負担をかけることになります。
トリミングやブラッシングなどの際に、定期的に処置しましょう。
3. 段差にも注意
ソファや小さな椅子などの段差は、飛び乗りや着地の際に大きな衝撃が加わる場合があります。
膝や腰への衝撃は膝蓋骨脱臼や骨折などを引き起こすこともあり、危険です。
ソファやベッドには犬用の階段をつけ、抱っこから降ろす際にはできるだけ床に近づけてから降ろしてあげることが大切です。
4. 心臓病の徴候を見逃さない
パピヨンは僧帽弁閉鎖不全症の発生が多い犬種です。心臓の病気は発見が遅れたり放置したりすると命に関わる可能性があります。
日常生活で観察したいこととしては、以下のような項目があります。
- 散歩に行きたがらなくなった
- 散歩に行ってもすぐに帰りたがる
- 咳をする
- 安静時の呼吸が速い
動物病院が併設されているトリミング室を利用している場合は、定期的に聴診をしてもらうといいかもしれません。
半年に一度の健康診断も、早期発見には有用ですので検討してみてください。
5. 眼のチェックも忘れない
心臓病と同じように、パピヨンは眼の病気も多い犬種です。
眼のチェック項目についてもまとめておきます。
- 涙が多くないか
- 目ヤニが多くないか
- 目ヤニの性状はどうか(色、粘度など)
- 眼が赤くないか
- 黒目が白く濁っていないか
- まぶたが痙攣していないか
これらの異常が見られるようになった場合は、動物病院を受診してみましょう。
まとめ
今回はパピヨンの好発疾患について解説しました。
病気は重くなる前に診断し、適切な処置をすることが非常に重要です。
愛犬が長生きできるよう、日頃から健康について意識し、異常があればすぐに動物病院を受診してくださいね。
かわいいけど放置して大丈夫?犬が横座りをする理由とは
ある日、愛犬がいつもと違う座り方をしているのを見たことはありませんか?その姿がかわいくてつい写真を撮ったという方もいるかもしれません。
リラックスしているだけであれば心配はありませんが、病気の可能性もあるかもしれません。
この記事では、犬が横座りをしている場合に考えられることと、病気にならないための4つのポイントをご紹介します。
犬の横座りとは
横座りは「お姉さん座り」とも呼ばれ、前足は普通の「お座り」と同じですが、後ろ足は片方に投げ出してお尻を床に着けて座る座り方です。猫では見かけることが多いですが、犬では珍しいかもしれません。
その姿はとてもかわいらしく、SNSで「横座り」や「お姉さん座り」と検索すると、横座りした犬の写真がたくさんアップされています。
単なるクセかも
たまにしか横座りしなかったり、左右がいつもバラバラという場合は、特に心配する必要はありません。
小さい頃からの座りグセであったり、単にリラックスしているだけという可能性が高いです。お散歩から帰ってきたあとによく行うなど、たまに見かける程度であれば問題ないでしょう。
犬の横座りで考えられる病気
今まで横座りしたことがなかったのに、突然するようになったり、いつも一方向にのみ崩れるという場合は、関節の病気を患っている可能性があります。横座りをしているのは、痛い足を庇っているからなのです。
どんな病気が考えられるのか、詳しく見ていきましょう。
1. 股関節形成不全
股関節形成不全は、股関節の骨が変形してしまい、関節内に炎症などの異常が起こる病気です。
遺伝的な要因が7割、環境的な要因が3割といわれており、犬の骨成長と筋肉の成長のバランスが崩れることが原因と考えられています。
股関節形成不全の主な症状
- 横座りをする
- 散歩を嫌がる
- 散歩の途中で座る
- 不自然な歩き方をする
- 腰を左右に振って歩く
- 高いところからの上り下りを嫌がる
骨と筋肉の成長がアンバランスになり、常に少し脱臼した状態になるため、歩き方に異常が出ることが多いです。
股関節形成不全を起こしやすい犬種
- ゴールデンレトリーバー
- ラブラドールレトリーバー
- ジャーマン・シェパード
- セント・バーナード
股関節形成不全は、大型犬や超大型犬の成長期によく見られます。しかし、小型犬や中型犬でも起こることがあり、小型犬では成長期での診断が難しいとされています。
2. 膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝蓋骨脱臼は、その名の通り、膝蓋骨がずれて脱臼してしまっている状態のことです。
先天的なものと、交通事故の他、高いところからの飛び降りや転倒などによる後天的なものがあります。
膝蓋骨脱臼の主な症状
- 横座りをする
- 後ろ足を不意に伸ばす
- 運動を嫌がる
- 不自然な歩き方をする
- ケンケンやスキップをする
必ずしも痛みを伴う症状が現れるわけではないため、初期段階では気づけない場合が多いです。また、歩行が困難になっても痛みを感じない犬もいるため、「年のせい」と勘違いしてしまうこともあります。
膝蓋骨脱臼を起こしやすい犬種
- トイ・プードル
- ポメラニアン
- チワワ
- ヨークシャーテリア
- マルチーズ
- 柴犬
- ゴールデンレトリーバー
小型犬に多く見られますが、中・大型犬でも発症するため注意が必要です。
病気にならないための4つのポイント
1. 肥満に気をつける
体重が重くなると、膝への負担が大きくなります。肥満にならないよう、定期的な運動と適切な食事を心がけましょう。
すでに太り気味の場合は、急に過度な運動をしてしまうとかえって膝に負担がかかってしまうので注意しましょう。
2. 滑りにくい床にする
フローリングなどの床材はすべりやすく、膝や腰に負担がかかります。すべりにくいようにマットやカーペットを敷いてあげましょう。
3. 爪や足裏の毛を定期的にカットする
犬の肉球はブレーキの役割も果たしていますが、爪や足裏の毛が伸びているとブレーキの効きが悪くなり、膝や腰に負担がかかります。
普段はあまり気にしないところかもしれませんが、定期的にお手入れをしてあげてください。
4. 段差を減らす
ソファやベッドなどの段差を上り下りする際も、膝や腰に負担がかかってしまいます。
段差が小さくなるような専用の階段やスロープを設置しましょう。
犬の座り方・歩き方がおかしいと感じたら
以下の症状が一つでも当てはまったら、関節の病気かもしれません。重症化すると歩けなくなってしまうこともあるため、気づいたら早めに動物病院へ連れていきましょう。
- 突然横座りをするようになった
- 足を触ると嫌がる様になった
- 散歩を嫌がるようになった
- 足を引きずるようになった
- 腰を振るように歩くようになった
その際、犬の様子を動画や写真を撮っておくと獣医さんも診断しやすくなります。
まとめ
犬の横座りは一見かわいらしくリラックスしているようにも見えるため、特に気にしない飼い主さんも多いかもしれません。実際、犬のクセやリラックスしているだけであれば、気にする必要はありません。
しかし、突然横座りするようになったり、痛がる素ぶりを見せた場合は関節の病気を患っている可能性があります。
普段から愛犬の様子をよく観察し、違和感があるようなら動物病院を受診しましょう。
【獣医師監修】目と関節の疾患に注意!マルチーズの好発疾患と予防法
白く美しい被毛をもつマルチーズは、日本でも人気の小型犬種です。季節による換毛もなく、室内で飼いやすい犬種でもあります。
ところで、マルチーズの身体のつくりなどによって、かかりやすい病気があることをご存知でしょうか。
今回は、マルチーズの好発疾患と、それを考慮した気をつけたい飼育環境について解説していきます。
マルチーズの基本情報
歴史
紀元前1500年頃に、フェニキア人により地中海のマルタ島に持ち込まれた犬がマルチーズの祖先だと考えられています。マルチーズは、最初から愛玩犬として飼われていたため「世界最古の愛玩犬」と呼ばれることもあります。
15世紀には愛玩犬として貴族の間で人気となり、19世紀にはヴィクトリア女王もマルチーズを飼育していました。日本では1960年代後半から人気を博し、現在でも多くの人に愛されています。
身体的特徴
体高は20〜25cm、体重は3.2kg以下で、小型犬に分類されます。
純白で光沢のある被毛のイメージがありますが、淡いタンやレモン色の被毛をもつ子もいます。シングルコートのため抜け毛は少ないですが、美しい被毛を維持するためにもお手入れは大切です。
性格
明るく活発で、好奇心が旺盛です。運動が好きで甘えん坊なため、一緒に遊んでコミュニケーションをたくさん取りましょう。
一方で、警戒心が強く、自分よりも大きい犬や騒がしい子供に対して吠えることもあります。無理やりしつけられるのは嫌いなため、褒めながらゆっくりしつけてあげてください。
マルチーズの好発疾患
マルチーズで特に気をつけなければならないのは、目の周りの疾患や関節疾患です。
ここでは動物病院に来院するマルチーズの中で、特に多く見られる疾患をいくつかご紹介します。
流涙症(りゅうるいしょう)
【症状】
涙焼け、眼の周りの皮膚の炎症。
【原因】
涙管の閉塞(先天的、涙管周囲の炎症など)、眼瞼内反、逆さ睫毛、マイボーム腺機能不全など。
【備考】
小型犬の流涙症は涙焼け症候群とも呼ばれる。
膝蓋骨脱臼
【症状】
跛行(足を引きずる)、患肢の挙上(足を地面に着けない)など。
【原因】
膝蓋骨(膝のお皿)が嵌まっている大腿骨の溝が浅い、膝蓋骨に付着している筋肉の左右不均衡、大きな物理的衝撃など。
【備考】
膝蓋骨脱臼が長期にわたると関節炎が深刻になってくる。前十字靭帯断裂のリスクも上昇する。
気管虚脱
【症状】
「ガーガー」というガチョウのような特徴的な咳、呼吸困難など。
【原因】
生まれつき気管を構成する軟骨が弱く吸気時に気管が潰れてしまう、過度な皮下脂肪による気管の圧迫など。
【備考】
重度の場合は酸素交換が十分に行えず、舌が青くなることもある(チアノーゼ)。
水頭症
【症状】
痙攣、てんかん発作、運動失調、行動異常、発育障害など。
【原因】
先天的異常により、脳室に脳脊髄液が過剰に貯留することによる。他にも脳腫瘍や外傷によっても起こることがある。
【備考】
先天性の場合、通常は1歳以下に発症する。子犬に痙攣発作が見られた場合は速やかに動物病院を受診すること。
糖原病
【症状】
筋力の低下、易疲労性(疲れやすい)、失神、空腹時や運動後に見られる低血糖性の痙攣など。
【原因】
糖代謝に関わる酵素の先天的異常により、肝臓や筋肉にグリコーゲンが異常に蓄積する。
【備考】
生存には鼻カテーテルによる栄養給餌が不可欠。誤嚥性肺炎による呼吸困難にも陥りやすいので注意。マルチーズではⅠa型(フォンギルケ病)と呼ばれる型が報告されている。
免疫介在性血小板減少症(IMTP)
【症状】
皮膚や歯肉などの点状出血、血尿、血便、鼻出血、貧血など。
【原因】
止血を担う血小板を自己免疫が攻撃し、破壊することによる。
【備考】
他の血小板減少を示す疾患を除外することで診断するので、時間がかかる。しかし肺の出血や重度の急性出血以外では状態は良好なことが多い。
マルチーズの飼育環境
マルチーズと一緒に暮らす上で、いくつか注意したいところがあります。どんな病気が発生しやすいかを理解し、何に気をつければいいか考えましょう。
ここでは愛犬のために整えてあげるべき環境について説明します。
滑りにくい床
床が滑りやすくブレーキが効きにくい状態だと、膝関節や腰に大きな負担がかかります。特に、膝関節への負荷は膝蓋骨脱臼を引き起こすことがあります。
床がフローリングの家庭は、カーペットやマットを敷いてあげることで、床を滑りにくくしてあげましょう。
爪切りと足裏の定期的な処置
犬の肉球はブレーキの役割を担っています。
伸びた爪や足裏の毛によって肉球が床と接触しなくなると、ブレーキの効きが悪くなり、これもまた膝や腰に負担がかかります。
定期的に爪切りなどの処置は行ってあげましょう。もし嫌がってしまうようであれば、かかりつけの動物病院スタッフまで相談してみてください。
目ヤニを取ってあげる
マルチーズは顔の周りの毛が長い犬種です。そのため、目ヤニが毛に付いてガビガビになってしまうことがよくあります。
目ヤニは病気でなくても生理的に出ることがありますので、見つけたらティッシュなどで拭き取ってあげましょう。目の周りの毛は眼球を刺激するので、定期的にトリミングしてあげることも大切です。
目ヤニが多い、目が赤いなどの症状が出た場合はすぐに動物病院にかかるようにしてください。
肥満に注意
マルチーズは太りやすい犬種と言われています。
過度な体重増加は関節に負担をかけるだけでなく、糖尿病などの全身疾患のリスクとなります。
日頃の食事や運動によって太らない、太りにくい体質にするように心がけましょう。
首輪よりハーネスを利用する
マルチーズの中には生まれつき気管が弱い子がいます。
首輪を使用すると首に圧迫が生じ、気管を潰れて咳が出ることがあります。
動物福祉の観点からも近年では首輪ではなく、首に負担の少ないハーネス(胴輪)を使用することが推奨されています。
まとめ
今回はマルチーズの好発疾患について解説しました。目の周りの疾患や関節疾患は、お手入れや住環境の改善などでしっかり対策しましょう。
しかし、やはり性格などその子によってのケアの仕方があると思います。愛犬にとって良いと思えることはどんどん試してみてください。
柴犬を飼うなら知っておきたい!柴犬の好発疾患と最適な飼育環境
柴犬は、昔から番犬として飼われている日本犬です。キリッとした目元とは裏腹に、飼い主の前では甘えた表情も見せてくれるところが魅力的ですよね。
柴犬は番犬という性質から、警戒心が強く、臆病な性格であると言われています。また、柴犬がかかりやすい病気もいくつか存在します。柴犬と一緒に生活するにあたって、飼い主さんはどのようなことに気をつけたら良いのでしょうか?
今回の記事では、柴犬の好発疾患と、柴犬にとって最適な飼育環境について解説していきます。
なお、「豆柴」は正式な犬種名ではなく、小さめの柴犬のことを指して呼ぶことがあります。
柴犬の好発疾患
柴犬は、皮膚疾患と眼疾患が非常に多い犬種です。
特に、アトピー性皮膚炎は命に直接関わるものではありませんが、犬にとってはとても嫌な病気です。
柴犬に多い病気を把握しておき、いざという時に素早い対応ができるようにしておきましょう。
アトピー性皮膚炎
【症状】
強い痒み(顔面、四肢端、手足首、腋、膝、耳など)、発赤、脱毛、色素沈着(皮膚の色が黒くなる)
【原因】
はっきりした原因はわかっていないが、花粉やハウスダストなどのアレルギー物質が関与していると考えられている。
【備考】
犬のアトピー性皮膚炎はヒトと異なり、年齢と共に症状が重くなる。診断や治療には時間がかかるが、放置すると愛犬は非常に苦しむ。
アレルギー性皮膚炎
【症状】
痒み(眼および口周り、耳、四肢端、背部)、発赤など
【原因】
食餌中に含まれるアレルゲン
【備考】
アトピー性皮膚炎の診断のためには食物アレルギーを除外しなければならない。臨床症状もアトピー性皮膚炎と似ているので、しっかりと鑑別する。
舐性(しせい)皮膚炎
【症状】
発赤、腫脹、二次感染による膿など
【原因】
身体の特定の部位を舐め続けることで、そこに皮膚炎が生じる。
【備考】
特に肢端に発生し、暇な時間に舐め続けていることが多い。
膝蓋骨(しつがいこつ)脱臼
【症状】
跛行(足を引きずる)、挙上(患肢を上げる)、膝を舐めるなど
【原因】
先天的に膝蓋骨を納める溝が浅い、膝に強い衝撃を受けるなど
【備考】
体重の過度な増加は膝への負担を増大させる。またフローリングなどの踏ん張りが効きづらい床では膝に大きな負荷がかかる。
認知症
【症状】
夜鳴き、狭い場所に入りたがる、同じ所をグルグル回る、昼夜逆転など
【原因】
ヒトと異なり、犬の認知症の研究はあまり進んでいない。原因についてもよくわかっていない。
【備考】
柴犬だけでなく犬と一緒に生活を始める前に、犬も認知症になることを認識しておく必要がある。介護は精神的にも肉体的にも大変だが、かかりつけの動物病院にしっかり相談すること。
白内障
【症状】
視力の低下、水晶体の白濁など
【原因】
加齢によるもの、糖尿病などの代謝性疾患に関係するもの、緑内障など他の眼疾患に起因するものなど様々。
【備考】
緑内障、ぶどう膜炎、網膜剥離を続発することがある。
柴犬に最適な飼育環境
柴犬がどんな病気にかかりやすいかの傾向がわかったところで、次に柴犬と一緒に暮らす上での注意点を紹介します。
ただし、どれも柴犬の体質や性格を考えて重要なこととなりますが、同じ柴犬でも個体差はあるので、最終的には自分の愛犬に一番合った飼育環境を見つけてあげてくださいね。
1. 被毛のお手入れ
柴犬は被毛の入れ替わりが激しい犬種です。
特に、冬毛が夏毛に生え換わるときは、もう一頭柴犬ができるのかと思うほどに毛が抜けます。
定期的にブラッシングを行い、抜け毛を除去してあげましょう。ただし、ブラッシングが苦手な子もいますので、ストレスにならないようにしてあげてください。
また、ブラッシングの際は皮膚の状態を確認し、皮膚疾患がないかもしっかりチェックしましょう。
2. 床は滑りにくく
膝関節や腰への負担を軽減させるために、床は滑りにくい素材にすることをおすすめします。フローリングの場合は、愛犬の生活スペースだけでも滑りにくいマットを敷いてあげるなどしてみましょう。
また、定期的に爪切りや肉球周りの毛を刈ってあげることで、足元が滑りにくくなります。
3. 爪切りが困難なときは
柴犬の中には、鼻先や肢端に触れられることを極端に嫌がる子がいます。そんな子に無理矢理爪切りを行うと、愛犬との信頼関係を崩すことになりかねません。
無理をせず、動物病院などで足先の処置を頼みましょう。
4. ストレスをしっかり発散させる
周囲の出来事に敏感で臆病な性格の柴犬には、極力ストレスのない環境が必要です。
とは言っても、生活の上でのストレスをゼロにすることは困難ですので、散歩などでしっかりとストレスを発散させてあげましょう。
雨が続いて散歩に行けない時期は、家の中などでたくさん遊んであげましょう。
5. 柴犬は水が苦手?
柴犬はシャワーなどの水が苦手な子が多いように思います。定期的にシャンプーをしてあげたいところだと思いますが、水を怖がる子は無理をする必要はありません。
濡れタオルで身体を拭いてあげる程度にしておきましょう。
また、水を使わないドライシャンプーもあるので利用するのもいいでしょう。
まとめ
柴犬は日本ならではの犬種で、海外でも徐々に人気が出てきています。
しかし、一方で、柴犬ならではの厄介な病気も多く、日常的なケアが重要です。
しっかりと健康に気を付けて、病気の早期発見に努めましょう。
【犬図鑑】パピヨンの歴史や性格、飼い方のポイントをご紹介!
上品な見た目と賢く活発な性格が魅力的なパピヨンは、かつてヨーロッパ貴族に愛されていました。そして現在は、日本国内でも全犬種の中で毎年上位の飼育頭数を誇っています。
この記事では、パピヨンの歴史や性格、飼い方のポイントなどをご紹介していきます。パピヨンを飼っている人も、これから飼ってみたいと思っている人もぜひ参考にしてください。
パピヨンの歴史
パピヨンはフランスとべルギー原産の犬種で、先祖はスパニエルの一種とされています。16世紀以降、ポンパドゥール夫人やマリー・アントワネットをはじめとするヨーロッパの貴族から愛されるようになり、多くの絵画にもパピヨンが描かれました。
当時は垂れ耳のタイプがほとんどでしたが、まれに立ち耳のパピヨンが生まれ、18世紀末頃からは立ち耳のパピヨンが選択的に繁殖されてきました。
その後、チワワなどとの交配によりサイズも小さくなり、現在のような姿のパピヨンが誕生したとされています。
名前の由来
パピヨン(papillon)はフランス語で「蝶」という意味があり、パピヨンの耳が蝶の羽を開いたような姿であることから名付けられました。
また、垂れ耳のパピヨンはフランス語で「蛾」という意味の「ファーレン(phalene)」と呼ばれており、日本では同じ犬種として認められていますが、別の犬種として扱っている国もあります。
パピヨンの特徴
大きさ
体高は20〜28cm、体重は3〜4.5kgで、超小型犬に分類されます。
オスとメスでサイズに違いはあまりありませんが、オスの方が少しだけ大きい傾向がみられます。
被毛
被毛はシングルコートで長めです。耳と尾にはパピヨンを象徴する長い飾り毛があり、優雅な見た目をしています。
ジャパンケネルクラブでは、白地であれば全ての色が認められるとしており、黒、茶、レモン、セーブルなどの色が組み合わさって二色の「パーティカラー」や三色の「トライカラー」になります。
パピヨンの性格
パピヨンの魅力は外見だけではありません。その愛くるしい性格も人気の理由のひとつです。
すべての人とフレンドリー
人間が大好きで甘え上手なため、小さな子どもから高齢者まで、誰とでも仲良くなれます。
初対面の人や犬にも友好的ですが、警戒心が強い一面もあるため、トラブルにならないよう注意してあげましょう。
知能は高いが従順ではない
賢いことで知られるパピヨンの知能の高さは、全犬種の中でも上位に入ります。
一方で、自己主張が強く、従順さはあまりみられないため、子犬の頃からしっかりとしつけることが大切です。
活発で運動が大好き
パピヨンは小型犬にも関わらず、運動能力に優れ、飼い主と一緒にドッグスポーツを楽しめます。
パピヨンの好発疾患
パピヨンはほかの小型犬と比べると遺伝の病気は少なく、あまり病気になりません。しかし、それでも注意したい疾患があります。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝蓋骨脱臼は、膝のお皿にずれが生じて脱臼してしまう疾患で、小型犬によくみられます。先天的な場合と、足に負担がかかることが原因の後天的な場合があります。
立っている状態で膝がカタカタ震えだす、足をかばいながら痛がるなどが見られる場合は、膝蓋骨脱臼の疑いがあります。すぐに病院に連れていきましょう。
眼瞼内反症(逆さまつげ)
まぶたが内側に巻き込んでいる先天的な疾患で、眼球がまつげに刺激されて、角膜や結膜の疾患を引き起こします。
常に涙目になっており、放置すると目ヤニや涙やけなどが見られるようになります。
パピヨンの飼い方のポイント
散歩や運動
1日30分程度の散歩を2回行いましょう。パピヨンは小型犬ですが、体力があり運動好きな子も多いので、長めの散歩が必要です。
ただし、激しい運動を長時間行うと足に負担がかかるため、適度な運動量を守りましょう。
足腰への負担がかからない環境
滑りやすい床や、段差の登り降りは、犬の足に負担がかかります。
床には滑りにくいマットを敷き、犬がソファやベッドに登ることがあるのなら、専用の階段やスロープを設置してあげましょう。
お手入れ
パピヨンはシングルコートで、抜け毛は少なく、トリミングは必要ありません。しかし、長く柔らかい被毛で絡まりやすいため、ブラッシングは毎日してあげると良いです。
また、立ち耳のため、垂れ耳の犬と比べると耳の病気になりにくく、耳のお手入れも頻繁に行う必要はありません。
まとめ
昔から多くの人に愛されてきたパピヨンの魅力は、気品にあふれた見た目だけでなく、フレンドリーで賢く、活発な性格にもあります。
賢いがゆえに、一度甘やかすとわがままになってしまうこともありますが、子犬の頃から正しくしつければ、最高のパートナーになることは間違いないでしょう。
パピヨンを飼っている方も、これから飼おうと思っている方も、ぜひ参考にしてみてください。
【犬クイズ】小型犬は特に要注意!パテラってどんな病気?
本記事では、パテラの特徴や予防法についてクイズ形式で解説していきます。
それではさっそく、犬のパテラクイズにチャレンジしてみましょう!
「血液を全身に送り出せなくなる病気」は心不全、「目の水晶体が濁る病気」は白内障、「椎間板がずれて脊髄を圧迫する病気」は椎間板ヘルニアの説明です。
パテラが発症しても必ずしも痛みを伴うわけではないため、なかなか初期段階で気づけない場合が多いです。
パテラの進行状況は、膝蓋骨の外れやすさによって4つのグレードに分類されています。
- グレード1:膝蓋骨は、手で簡単に外せるが、手を離すとすぐに正しい位置に戻る。
- グレード2:膝蓋骨が、膝の曲げ伸ばしだけで簡単に外れる。
- グレード3:膝蓋骨が常に外れた状態だが、手で押すと正常な位置に戻る。
- グレード4:膝蓋骨が常に外れた状態で、手で押しても正常な位置に戻らない。
肥満で体が重かったり、床が滑りやすかったりすることも膝への負担が大きくなります。太り過ぎには注意し、床は滑りにくいマットを敷きましょう。
適度な運動は筋肉を丈夫に保ち、パテラの予防に役立ちます。しかし、過剰な運動はやはり膝に負担がかかりますので避けましょう。
今回はこちらの記事から問題を作成しました。 詳細が知りたい人はこちらも読んでみてください!
知らないうちに愛犬が膝を脱臼?小型犬に多い疾患「パテラ」とは
【獣医師監修】脱臼だけじゃない!ポメラニアンの好発疾患と予防法
ポメラニアンの歴史と特徴

ビクトリア女王が愛した!ドイツ出身の牧羊犬
ポメラニアンはドイツやポーランド周辺の「ポメラニア地方」が原産の犬種で、「ジャーマン・スピッツ」や「サモエド、ノルウェージャンク・エルハウンド」などが祖先として知られています。 18世紀ごろにイギリスへ持ち込まれた当時は、ポメラニアンは体重10kg程度の中型犬でしたが、ビクトリア女王が自ら繁殖を行い、5kg程度にまで小型化したと言われています。 その後、「ビクトリア女王が愛した犬種」として注目を浴び、その人気は今でも衰えることを知りません。ポメラニアンのお手入れ
ポメラニアンの最大の特徴は、その毛並みです。抜け毛が多いため、日々のブラッシングやトリミングが欠かせません。 皮膚病の予防にもなるので、日常的にブラッシングしてあげましょう。ポメラニアンの性格
また、ポメラニアンは活発で友好的な性格ですが、同時に繊細な面もあり、知らない人や動物に対して吠える、咬むなどの攻撃行動を取る子もいます。 そのため、子犬のうちからしっかりと社会化をすることが重要です。 また、無駄吠えが激しい場合は壁に防音材を貼るなどして、ご近所トラブルを防ぎましょう。散歩中に他の動物に会わない時間帯やルートを選ぶのも良いかもしれません。ポメラニアンの好発疾患

気管虚脱
【症状】 ・「ガーガー」という特徴的な咳 ・呼吸困難 【原因】 気管のチューブ型を保持している軟骨が弱いせいで、呼吸時(主に吸気)に気管が潰れてしまうことが原因。 【備考】 生まれつき軟骨が弱い場合もあるが、脂肪によって頚部が圧迫されることによって発症する場合もある。
脱毛症X(アロぺシアX)
【症状】 ・体幹部や太もも、頸部の脱毛 【原因】 病態に不明な部分が多く、原因はわかっていない。 【備考】 3歳未満の雄に発生が多く、サマーカットの時に認知されやすい。 外貌の変化のみで、日常生活に支障はない。
水頭症
【症状】 ・知覚異常 ・運動障害 ・痙攣発作 ・四肢の麻痺 【原因】 頭蓋骨内の脳脊髄液が過剰に貯留し、脳を圧迫することによる脳脊髄液の産生増加、脳脊髄液の排出低下、頭蓋奇形などが原因。 【備考】 ポメラニアンのような小型犬種は頭蓋骨の奇形が起こりやすいと言われている。
涙管閉塞
【症状】 ・過剰な流涙 ・涙やけ 【原因】 先天的に涙管が狭い、炎症による涙管の狭窄など。 【備考】 涙は涙腺で作られ、涙管を通って眼と鼻に抜けていく。しかし、何らかの原因で涙管が閉塞すると、鼻への涙が全て眼に集まり、常に泣いているような状態となる。 多くは先天性で、避妊去勢手術の際に同時に治療するケースが多い。
膝蓋骨脱臼
【症状】 ・患肢の挙上(地面に足を着けない) ・跛行(足を引きずる) ・患部を舐める 【原因】 生まれつき膝蓋骨を収める大腿骨の溝が浅い、膝蓋骨に繋がる筋肉の左右不均衡、外傷など。 【備考】 身体全体で伸びをしながら、後ろ足を伸ばすような仕草は、外れた膝蓋骨を自分ではめ直している可能性がある。
環軸亜脱臼
【症状】 ・四肢の不全麻痺 ・跛行などの運動障害 ・首を上に持ち上げにくそうな様子を見せる ・痛みで震える ・抱っこの際にキャンと鳴く 【原因】 環椎(第一頚椎)と軸椎(第二頚椎)の関節の不安定や、先天的な骨の構造異常、後天的な外傷。 【備考】 頚椎の脱臼は命に関わることもある。首が痛そうな時は無理に触らないこと。
疾患予防のために!日頃からできる⑤つの心得

①段差や階段に注意
身体が小さく骨も細いポメラニアンは、骨折のリスクが高い犬種です。 人間にとっては小さな段差でも、ポメラニアン目線では大きなものに映ることもあります。 犬用の階段などを使って段差を小さくする、高いところには登れないようにバリケードを作るなどの工夫が必要です。②ブラッシングやトリミングで被毛のお手入れを
フワフワの被毛をキープするため、皮膚病から愛犬を守るためにも定期的なブラッシングは不可欠です。 また、長い被毛は毛玉になりやすいという特徴もあります。 スキンシップを取るように、毛を梳かしてあげましょう。③肥満にならないように注意
肥満になりやすいのも、ポメラニアンの特徴です。 他の犬種よりも毛がフワフワしているため、外見で太っているかの判断がつきにくいためと考えられます。 日々のスキンシップを通して、腰のくびれはあるか、肋骨は軽く触れるかなどのチェックをしましょう。 また、食事管理や運動によって太らない習慣をつけることも大切です。④誤飲に注意
ポメラニアンは好奇心旺盛な性格で、何でもかじりたがります。 そのため、人間が普段使っているものや食べているものを口に入れてしまう事故も多くなっています。 留守にするなど目を離す時は、なるべく手の届く所にものを置かないようにしましょう。 また、ゴミ箱を蓋付きのものにすることも有効です。⑤首輪よりハーネス
気管や首の骨が生まれつき弱い子が多いので、散歩時のリードは首輪よりも胴輪(ハーネス)を着けるようにしましょう。 またリードを強く引っ張ることも、できれば避けたいところです。まとめ
