【獣医師監修】犬の嘔吐から考えられる疾患

嘔吐は、動物病院に来院する犬で最も多い症状の一つです。実際に愛犬が嘔吐している場面に遭遇したことのある人も多いでしょう。

では、その嘔吐は何によるものなのでしょうか?今回は臨床の現場でよく遭遇する嘔吐の原因疾患について、獣医師が解説していきます。

消化器疾患


嘔吐の原因としてまず考えられるのは消化器、特に胃や十二指腸といった上部消化管の異常です。これら疾患によって胃液の分泌が過剰になったり、物理的な胃粘膜の刺激によって嘔吐が誘発されます。

急性胃炎・十二指腸炎

【症状】
急性の嘔吐、食欲不振、腹痛など。消化器症状以外の全身症状は通常見られないが、脱水や誤嚥性肺炎などによって重篤化することもある。
【原因】
古い食事、異物、化学物質、薬剤など。腎不全や肝不全から続発することも多い。
【備考】
原因が明らかな場合(異物や薬剤)はそれを除去するが、明らかでない場合には胃腸炎の治療をしてみて反応を見る診断的治療を行うことが一般的。

慢性胃炎

【症状】
嘔吐、食欲不振。嘔吐の回数は、1日に数回から1~2週間に1回まで様々。
【原因】
アレルギー、異物、薬剤、微生物などが挙げられるが、原因は特定されないことが多い。
【備考】
急性胃炎と同様に確定診断には内視鏡検査が有用だが、全身麻酔を伴うこともあり現実的ではない。

胃内異物

【症状】
急性の嘔吐、食欲不振。若齢の犬は特に注意。
【原因】
胃内容物の排出障害、胃粘膜の刺激から嘔吐が誘発される。
【備考】
異物の材質や形などから催吐などの内科療法、もしくは胃切開などの外科療法といった治療方針を決定する。

胃拡張・胃捻転症候群

【症状】
嘔吐、腹痛、流涎、急激な腹囲膨満から昏睡。
【原因】
胃が空気と食物によって急激に拡張することによる。食後に運動した後に発生しやすいと言われている。
【備考】
大型犬で多く、小型犬ではほとんど見られない。胃破裂を起こすこともあり、早期の診断と治療が必要な緊急疾患である。

幽門狭窄

【症状】
嘔吐、食欲低下、体重減少。
【原因】
原因はよくわかっていないが、幽門部(胃の出口付近)が肥厚することで胃排泄障害が起こる。
【備考】
超音波検査やバリウム造影で診断し、根本的治療は外科手術による。

胃の腫瘍

【症状】
嘔吐、食欲不振、体重減少など。場合によっては吐血、メレナ(黒いタール状の便)、貧血などが見られる。
【原因】
犬の胃の腫瘍はリンパ腫が最も多いとされている。
【備考】
慢性胃炎、ポリープなどが危険因子と言われている。

他の内臓疾患


消化器疾患以外にも嘔吐が見られるものがあります。血液検査などを行うのは、これらの疾患を見逃さないためです。

膵炎

【症状】
嘔吐、腹痛、元気消失、下痢など。
【原因】
膵臓からは消化酵素が分泌されるが、その酵素によって自己組織が消化されることによって強い炎症が起こる。危険因子としては薬剤、感染、高カルシウム血症、肥満、全身性代謝性疾患(糖尿病、副腎皮質機能亢進症、慢性腎不全)、腫瘍などが挙げられる。
【備考】
急性の膵炎では発症後24〜48時間以内の早期に治療を開始することが重要。

尿毒症

【症状】
嘔吐、消化管潰瘍、発作、異常呼吸など。
【原因】
腎不全などによって尿毒素が体内に蓄積することによる。
【備考】
腎不全の原因としては熱中症、毒物、感染、腫瘍、ショックなどがある。

肝胆道系疾患

【症状】
嘔吐、腹痛、黄疸、食欲低下など様々。
【原因】
慢性肝炎、胆石症、胆嚢炎などによって症状が引き起こされる。
【備考】
定期的な血液検査や画像検査によって早期に発見することが望ましい。

子宮蓄膿症

【症状】
食欲不振、多飲多尿、嘔吐、腹部膨満、陰部から膿様のものが排泄されるなど。
【原因】
子宮内で細菌が増殖し、膿液が貯留する。
【備考】
卵巣からのホルモン分泌が深く関与しており、早期の避妊手術が最も効果的な予防法となる。

代謝性・内分泌疾患


ホルモンの分泌異常によっても嘔吐は引き起こされます。中高齢で発生しやすい傾向にありますが、いずれも放置すると危険な疾患ですので、しっかりと検査することをおすすめします。

アジソン病(副腎皮質機能低下症)

【症状】
虚弱、体重減少、嘔吐、吐出、下痢、多尿、徐脈、低体温、震え、痙攣など。
【原因】
副腎から分泌されるホルモン(グルココルチコイドおよびミネラルコルチコイド)の不足による。犬では特発性の副腎委縮によるものが多い。
【備考】
適切なホルモン治療を行えば予後は良好。

糖尿病

【症状】
多飲多尿、多食、体重減少、嘔吐、下痢、脱水、感染症、白内障、昏睡など。
【原因】
膵臓からのインスリンの分泌低下、あるいはインスリンの作用低下。
【備考】
犬の糖尿病は若齢発症のものと、3歳齢以降発症のものに分けられる。いずれの場合でも犬の糖尿病治療にはインスリンが必要となる。

病気ではない嘔吐


嘔吐の中には、病気ではない一時的なものもあります。とは言っても愛犬は気持ち悪いはずなので、原因があるのなら速やかに取り除いてあげるべきでしょう。
病気ではなくても、嘔吐が見られた際には放置することは望ましくありません。

乗り物酔い

【原因】
三半規管から小脳へ伝わった刺激が嘔吐中枢を刺激すると考えられている。
【備考】
長時間の移動の前には酔い止め薬を服用するという選択肢もある。獣医師まで相談を。

消化不良

【原因】
古い食餌などの給餌による。
【備考】
ご飯の賞味期限や保管方法には注意を。

まとめ


無数にある病気の中で、今回紹介したものはごく一部です。
一過性で自己限定的な嘔吐の場合には経過観察とすることもありますが、嘔吐が慢性化している場合には一度検査を受けましょう。

愛犬に体調不良が見られた時には、獣医師に相談し、適切な治療を受けさせてあげてください。

【獣医師監修】キャバリアの好発疾患と予防のための飼育ポイント

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、穏やかで優しい性格の小型犬種です。怒ることが少ないので、見ていて癒されますよね。

日本でも飼育している方が多い犬種ですが、いくつかかかりやすい病気があることをご存知でしょうか。
今回の記事では、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの好発疾患と、日常生活でできる予防方法について、獣医師が詳しく解説します。

なお、犬種の名前が長いので、以降は「キャバリア」と表記します。

キャバリアの基本情報

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歴史

古くから愛犬家が多かったイギリス王室ですが、チャールズ1世、2世に愛されたことで知られるのが「キング・チャールズ・スパニエル」です。

19世紀になると、パグなどと交配して鼻の短いキング・チャールズ・スパニエルが流行しますが、チャールズ王の肖像画を見た愛犬家が、当時のタイプの犬種を復活させました。それが、「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」です。

「キャバリア」とは、中世の騎士のことで、チャールズ王に敬意を表して名付けられたと言われています。

身体的特徴

大きな目と大きな垂れ耳が特徴で、体重は5.4〜8.0kg程度、体高は30〜33cm程度です。
被毛は長く、色はブラック&タンルビートライカラー(赤褐色・黒・白の3色)、ブレンハイム(赤褐色・白)が代表的です。

性格 

温厚な性格で、他の人や犬に対してもフレンドリーです。
子犬の頃からお利口さんで、無駄吠えやかみ癖も少ないため、ペット初心者や子どものいる家庭にも適しています。

キャバリアの好発疾患

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では、キャバリアの好発疾患には何があるのでしょうか。
かかりやすい病気を知ることで、日頃からどんなことに注意すればいいのかがわかってくるかと思います。

僧帽弁閉鎖不全症

【症状】
咳、運動不耐性(疲れやすい、易疲労性)、興奮時の呼吸速迫など。
肺水腫になると呼吸困難、チアノーゼ(舌などの粘膜が青くなる)、安静時の呼吸速迫、運動時のふらつき、失神など。
【原因】
僧帽弁(左心房と左心室を隔てる弁)に異常が生じ、血液が逆流する。すると、心臓に負荷がかかり、心拡大や肺水腫が引き起こされる。
【備考】
他犬種では5歳齢以下ではまれだが、キャバリアでは4歳齢以上で42〜59%に心雑音が聴取される。

膵炎

【症状】
嘔吐、下痢、発熱、腹痛(上半身を下げてお尻を上げる「お祈りポーズ」)など。
【原因】
高脂肪食、高脂血症。心臓病による膵臓への血液供給の減少も原因となる。
【備考】
輸液も治療の一環となるが、心臓病があると慎重に水分を調整しなければならない。

腎不全

【症状】
嘔吐、流涎、多飲多尿、薄い尿、食欲不振、脱水など。
【原因】
心臓病によって腎臓への血液供給が減少することが原因。また、心臓病治療のために用いる利尿薬によっても医原性の腎不全が起こることがある。
【備考】
長期の心臓病コントロールには、腎臓への負担も同時に考えなければならない。

脊髄空洞症

【症状】
首の痛み、四肢の麻痺、抱っこした時に「キャン」と鳴くなど
【原因】
詳しい病態の病理発生は不明で、脳脊髄液の異常な貯留が原因と考えられている。
【備考】
水頭症やキアリ奇形(後頭骨の奇形)を併発していることが多く、また頸部での発生が多い。

白内障

【症状】
水晶体の白濁、視覚障害。
【原因】
加齢、外傷、代謝性(糖尿病など)、他の眼疾患(緑内障、水晶体脱臼、進行性網膜萎縮など)から続発などによる。
【備考】
キャバリアでは先天性の白内障の報告がある。

キャバリアに適した飼育環境

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キャバリアで注意したいのは、何と言っても心臓病に対するケアです。キャバリアと一緒に暮らしていく上で心臓病は避けては通れないものです。

今回は、心臓病に関するポイントを重点的にお話します。

1. 心臓病に対するケア

キャバリアは、加齢とともにほぼ確実に心臓病にかかります

しかし、だからと言って短命なわけではなく、きちんとコントロールし、心臓病と上手に付き合っていくことができれば良いのです。
心臓病が適切に管理されているかをチェックするポイントは、以下のようなものがあります。

食事

各フードメーカーで、ナトリウムを制限した心臓病食が販売されています。
手作り食を作る時も、塩分を抑える工夫が必要です。

運動

心機能が低下し、全身状態が悪くなると運動に対する意欲も落ちてしまいます。しかし、適度な運動は健康的な生活には欠かせないため、あまり長すぎない距離を散歩させてあげましょう。

投薬

心臓病のコントロールには外科的手術を行う場合を除いて、いくつかの内服薬が必要不可欠です。しかし、毎日何種類もの薬を飲ませるのは非常に大変で、中には途中で投薬に対して拒否反応を示す子もいます。

塩分の少ないおやつに紛れ込ませる、砕いて水に溶かして与える、フードに混ぜるなど、本人には負担のない投薬方法が求められます。

割ったり砕いたりしてはいけない薬もあるため、予め獣医師に相談してください。

呼吸数のチェック

心臓病、特にキャバリアでは僧帽弁閉鎖不全症が発生しますが、病態が悪化すると肺水腫になることがあります。

呼吸器の異常は、時に致命的になり、素早い対処が求められます。そんな時に確認していただきたいのが、安静時(主に睡眠時)の呼吸数です。具体的には1分間に40回を超えると、かなり苦しいと思われます。

15秒間の呼吸数を数え、4倍すると大体の呼吸数が算出できると思います。

舌の色のチェック

呼吸数と同様に確認して頂きたいのが舌粘膜の色で、青くなっていると非常に危険です。普段から色の状態をチェックしておき、異常が見られればすぐに動物病院を受診してください。

2. 肥満に注意

高血圧や過度の脂肪は心臓に負担をかけます。
また、肥満は膵炎や糖尿病といった他の病気のリスクになると同時に、ただでさえ心臓病で疲れやすい身体がさらに疲れやすくなる原因にもなります。

3. 爪切りや足裏の毛の処置を定期的に

キャバリアは足裏の毛が長くなりやすい犬種でもあります。
長い爪や足裏の毛によってブレーキが効きにくくなり、無駄な体力を使わせないためにも、これらの処置は定期的に行いましょう。

まとめ

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キャバリアとの生活には、素晴らしいことがたくさんあると思います。
たくさんの思い出を作るために、愛犬には長生きして欲しいものです。
たっぷりの愛情と、健康観察を毎日行ってあげてください。

【獣医師監修】猫の下痢の原因は?チェックすべきポイントを徹底解説

愛猫が下痢をしたら、飼い主のみなさんは何を疑うでしょうか。「単にお腹の調子が悪かっただけだ」と思うかもしれません。

しかし、猫の下痢は重大な病気のサインである可能性もあります。猫の病気に対する正しい知識がなければ、大切な愛猫の病気のサインを見逃してしまうかもしれません。

今回は、猫に下痢が見られた際に考えられる疾患や飼い主さんができることを、獣医師が詳しく解説していきます。

そもそも下痢とは

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下痢とは、水分を多く含んだ便のことで、その量は一般的に通常よりも多くなります。糞便量が多くなることで、トイレに行く回数も自然に増えます。

消化器系疾患において、下痢は嘔吐と並んでよく見られる症状であり、猫でも決して珍しいものではありません。

小腸性下痢と大腸性下痢

下痢は病変の部位によって「小腸性下痢」「大腸性下痢」に分類され、それぞれ症状に特徴があります。

その臨床徴候を下表にまとめました。

小腸性下痢 大腸性下痢
糞便量 著名に増加 正常~軽度の増加
排便回数 正常~軽度の増加 増加
しぶり あり
糞便中粘膜 あり
未消化物 あり なし
疼痛 なし 時々
糞便中血液 黒色便、タール便 鮮血便

しぶりとは、残便感があるのに排便がない状態のことです。腹痛や肛門の筋肉の痙攣が原因で、大腸性疾患の際に認められます。

内臓の出血と便

消化管内で出血があった際や、胃や小腸などの消化管上部での出血では腸内で血液が消化されることで、便が黒くなります。

一方で、大腸での出血の場合では、赤い血液の付着した鮮血便が認められます。

動物病院を受診する際に聞かれること

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下痢を呈する疾患は様々で、どこに原因があるかによって治療法も変わってきます。そのため、正確で迅速な診断が求められます。

猫が下痢をして受診する際は、予め次のような問診の内容を把握しておけば、早期診断に繋がるかもしれません。

  • いつから: 急性か慢性かなど
  • 便の性状: 色、臭い、水分量(水様、泥状、軟便など)
  • 他の症状: 嘔吐、黄疸、食欲不振など
  • ゴミ箱を漁っていないか: 異物、毒物の可能性

猫の下痢で考えられる疾患

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では、猫に下痢が見られた際にはどんな疾患が考えられるのでしょうか。

事前にしっかり把握しておくことで、猫の重大な病気にいち早く気づいてあげましょう。

猫汎白血球減少症

猫パルボウイルスの感染による感染症です。突然の下痢や嘔吐のために衰弱、脱水を起こします。

十分な免疫力を持っていない子猫に発生が多く、成猫ではワクチン接種による予防が可能です。

消化管内寄生虫症

種々の寄生虫による腸炎や消化吸収障害によって下痢が生じます。

駆虫薬による治療や予防が可能ですが、環境中の寄生虫を殲滅しない限り感染を繰り返すため、飼育環境を常に清潔に保つことが大切です。

炎症性腸疾患

リンパ球プラズマ細胞性腸炎好酸球性腸炎に分類される、下痢を主徴とした炎症疾患です。長く続き、一般的な下痢に対する治療にも反応しない下痢や嘔吐の場合には本疾患を疑います。

しかし、確定診断には内視鏡下での組織生検が必要であり、猫に大きな負担をかけることになります。

消化管内腫瘍

猫における消化管内腫瘍は、消化器型リンパ腫が非常に多く見られます。高齢猫で嘔吐や下痢などの消化器症状を呈する場合にはリンパ腫を視野に入れて検査を行います。

一方で、消化器型リンパ腫は小腸に腫瘤(しゅりゅう)性病変を作らないパターンもあり、パッと見ただけでは腫瘍と気付かないこともあります。

肝リピドーシス

いわゆる脂肪肝のことで、肥満以外にも様々な原因で発生します。脂肪肝の原因は、代謝やホルモンの異常、栄養素の不均衡、毒性物質、先天性代謝異常などです。

他にも、2週間以上にわたる長期的な食欲不振でも肝リピドーシスが発生することがあります。そのため、猫で食欲の異常を見つけたら放置せずに、食欲不振の原因を除去する必要があります。

また、肝リピドーシスの治療では鼻からカテーテルを入れて強制給餌を行うこともあります。

胆管肝炎

猫の慢性肝疾患で最もよく見られるのが胆管炎・胆管肝炎です。胆管肝炎は細菌が関与し、炎症性腸疾患や膵炎などを引き起こす化膿性のものと、炎症が胆管にのみ限局する非化膿性のものに分けられます。

化膿性胆管肝炎では急性の経過を取ることが多く、早期発見・早期治療が重要です。

膵炎

猫での膵炎(すいえん)の発生は多いとされていますが症状は劇的ではなく、嘔吐や下痢が見られることもありますが、元気消失や食欲不振のみのこともあります。

猫で膵炎が重要視されるのは、膵炎の他に、胆管肝炎肝リピドーシス炎症性腸疾患を続発することが多いからです。また、膵炎が慢性化することも多く、消化器症状と長期的に付き合っていくことも少なくありません。

甲状腺機能亢進症

高齢の猫でよく見られる疾患です。ホルモンを分泌する甲状腺組織の過形成や腺腫によって、過剰に甲状腺ホルモンが分泌されることにより起こります。

下痢や嘔吐の他に、食欲亢進と体重減少が顕著であり、治療を行わないとどんどん衰弱していきます。食欲はあるのに痩せていく現象が見られたら、この疾患の可能性が高いです。

猫が下痢をしたとき注意すること

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猫の下痢は痕跡が残るため、飼い主さんが最も気付きやすい症状の一つです。

下痢は単なるお腹の不調や食べ過ぎが原因とは限らないので、異変を感じたら早めに動物病院を受診しましょう。

動物病院に便を持参するとよい

居住空間を清潔に保つため、すぐに便を片づけてしまいがちですが、ちょっと待ってください。

「便には多くの情報が詰まっています」

猫は言葉が話せない分、便などから健康に関する情報を得る必要があります。できるだけ排泄してから時間の経っていない便を持参すると、動物病院でスムーズに糞便検査を行えます。

まとめ

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排便は、健康状態を表す重要なバロメーターです。日常的に便を観察することで、愛猫の健康管理を行うことができます。

人間側が猫の異常を感知し、すぐに対応することができると素晴らしいですね。

【獣医師監修】猫の嘔吐は正常な場合も!見分けるポイントをご紹介

猫の飼い主さんなら、一度は猫の嘔吐に遭遇したことがあるでしょう。

猫によっては健康でも吐くことはあります。しかし、確認した嘔吐が本当に正常かどうかを判断できますか?また、吐き戻しが連続して、1日に何回も確認できた場合はどうでしょう?

今回は猫における嘔吐について獣医師が詳しく解説していきます。

嘔吐と吐出

獣医 猫 嘔吐 吐出 疾病
「吐き戻し」には、「嘔吐」「吐出」の2つがあります。嘔吐は日常でも聞いたことがあるかもしれませんが、吐出は聞きなじみのない方もいるのではないでしょうか。
それぞれの違いについて見ていきましょう。

嘔吐とは

嘔吐は、延髄の嘔吐中枢が様々な原因により刺激されることで起こり、胃の内容物が食道に押し上げられて口から出る現象です。
他にも空嘔吐と呼ばれる、横隔膜と腹壁の連続的な動きが見られることが特徴です。

吐出とは

一方、吐出は咽頭や胸部食道の内容物を受動的に吐き出すことを言います。
受動的なので腹部に力が入ることはなく、気持ち悪いような様子も見られません。

また吐物に胃液を含まないため、吐物は酸性よりもむしろアルカリ性を示すことも特徴で、嘔吐との鑑別のためには重要なポイントです。

猫の嘔吐で動物病院を受診した際に聞かれること

獣医 猫 嘔吐 吐出 疾病
嘔吐を主訴とする動物病院への来院は非常に多く、また嘔吐を示す疾患も多岐にわたります。どこに異常があるのかは検査をしてみて初めてわかりますが、全ての検査を行おうとすると猫に大きな負担がかかってしまいます。

そこで問診を行うことで、ある程度の当たりを付けられる場合があります。

猫の嘔吐で動物病院を受診する際は、事前に次のようなポイントを把握しておくとスムーズです。

  • いつから: 急性か慢性かの判断
  • 誤食の可能性: ゴミ箱など漁った形跡がないか、異物や毒物の可能性
  • 病歴と治療歴: 嘔吐を誘発する薬剤の服用、他の疾患の既往歴
  • 食事との関連: 食事の変更(食物アレルギーの有無)、食後どのくらいの時間で嘔吐するのか、食事とは関係ないのかなど
  • 嘔吐物の様子: 内容物、色、臭いなど

猫の嘔吐で考えられる疾患

獣医 猫 嘔吐 吐出 疾病
嘔吐が症状として見られる疾患はたくさんあります。
全てを紹介することはできませんが、代表的なものをピックアップしました。

膵炎

猫において膵炎は非常に多い疾患です。
嘔吐の他に下痢、発熱、食欲不振などの消化器症状を呈します。

また十二指腸炎や胆管肝炎を併発することも多く、これら併発症の有無を検索する必要もあります。さらに膵炎が慢性化する場合もあり、長期的な管理が必要となることもあります。

異物

いたずら好きな性格の子や若い猫に多く見られます。
体の大きさの割に大きいものを口に入れることも多く、腸閉塞を起こすことが考えられます。

また、尖ったものは胃粘膜や腸粘膜を傷つけることもあり、最悪の場合は消化管を穿孔してしまいます。
さらに猫は紐などの細長いもので遊ぶことが好きな子が多く、誤って飲み込んでしまうとほとんどの場合、手術によって摘出しなくてはなりません。

炎症性腸疾患

小腸または大腸における原因不明の炎症によって、慢性的な腸障害を示す疾患です。
確定診断は内視鏡による腸の生検によりますが、全身麻酔が必要なために診断が難しい疾患でもあります。

嘔吐の他に慢性的な下痢も見られることが多く、食欲不振や体重減少も認められます。

腫瘍

猫における消化管の腫瘍としては、消化器型リンパ腫の発生が重要です。
FeLV(猫白血病ウイルス)陰性の老齢猫での発生率が高いとされています。そのため、中高齢猫で慢性的な嘔吐が見られた場合には、まずリンパ腫の存在を疑います

血液検査のみでは炎症性腸疾患との鑑別は困難であるため、超音波検査や細胞診を併用することによって診断を行います。

慢性腎不全

猫における最も一般的な嘔吐の原因となります。

猫は古代エジプトでも飼育されていた記録があり、もともと砂漠の動物であるため余分な水分を排泄しないように濃縮された濃い尿を出します。そのために腎臓は生まれた時からフル稼働状態となるので、年齢とともに腎不全になる可能性が高くなります

慢性腎不全になると、尿の排泄によってしっかりと体外へ毒素を排出できるよう、皮下補液による水分の補給が必要となります。また失われた腎機能は改善することはないため、若い年齢のうちからの腎臓へのケアは非常に重要です。

甲状腺機能亢進症

甲状腺は頸部腹側にある臓器で、基礎代謝に関与しています。甲状腺機能亢進症は、甲状腺から分泌されるホルモンが増加することで、食欲亢進と著しい体重減少を呈する疾患です。

また攻撃性も亢進するため、年齢とともに性格が変化したなどの徴候も甲状腺機能亢進症を疑う所見です。

血液検査によって血液中の甲状腺ホルモンを測定することで診断が可能なので、定期的な健康診断が早期発見のカギとなります。

猫は毛玉を吐く習性がある

獣医 猫 嘔吐 吐出 疾病
猫を飼ったばかりの人は驚くかもしれませんが、猫は毛玉を吐き出す習性があります。

これは、猫が毛づくろいをした際に飲み込んだ毛が便として排出されず、体内にたまった毛玉を口から排出するためです。一見、苦しそうに見えますが、吐いた後に食欲もあり、体調に影響がないようであれば問題ありません

しかし、吐こうとする仕草を見せるのに、毛玉を吐き出せない場合は、胃の中で毛の塊が形成されて排出できなくなってしまっている可能性があります。悪化すると開腹手術が必要になることがありますので、気付いたら早めに動物病院を受診しましょう。

なお、日頃からブラッシングを行うことで、猫の飲み込む毛量を減らすことができます。

猫の嘔吐で受診すべきか見分けるポイント

獣医 猫 嘔吐 吐出 疾病
猫に嘔吐が見られた際に動物病院を受診するかは非常に悩むところだと思いますが、連続した嘔吐や、嘔吐の他に臨床症状が認められる時には迷わず動物病院を受診しましょう。

一概には言えませんが、嘔吐の後に食欲があれば少し様子を見ても大丈夫なケースが多いです。しかし、少しでも様子がおかしいと感じた時は、その感覚を信じてすぐに動物病院を受診してください

まとめ

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猫の嘔吐はよく見られる症状のため、必ずしも体調が悪かったり、病気を患っているということではありません。

飼い主の判断が重要となる臨床症状であるため、異常を異常と感じ取れる嗅覚を日頃から養っておくことが重要です。