【獣医師監修】フレンチブルドッグがかかりやすい病気と対策法

フレンチブルドッグは、愛嬌のある表情や元気な性格が特徴で、日本でも飼育頭数の多い犬種です。

フレンチブルドッグを始めとした「鼻ぺちゃ」の専門誌もあるなど、根強い人気を誇っています。

しかし、外見が特徴的なフレンチブルドッグは、遺伝疾患など、犬種ならではのかかりやすい病気が存在します。
今回は、フレンチブルドッグの好発疾患と、日常生活における注意点について、獣医師が解説します。

フレンチブルドッグの基本情報

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歴史

フレンチブルドッグは、その名の通りフランスが原産の犬種です。
その歴史には諸説ありますが、一説には、18世紀にイギリスのブルドッグがフランスでパグやテリアと交配されて生み出されたと言われています。

身体的特徴

フレンチブルドッグの身体は、頭が大きい、目が大きい、鼻が潰れている、顔にシワが多いなどの非常に多くの特徴を備えています。

また、ブルドッグの耳が下に垂れ下がっているのに対して、フレンチブルドッグの耳は「bat ear(コウモリ耳)」と呼ばれる通りピンと立っているのが大きな特徴です。

性格

フレンチブルドッグの性格は、社交的、活発、従順、温厚と言われています。
その上、吠えることもあまりないので、飼育しやすい犬種です。

フレンチブルドッグの好発疾患

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フレンチブルドッグは、身体の構造上、呼吸器や骨関節系、皮膚の疾患が多い傾向にあります。
特に呼吸に関する病気は、生活に支障が出ることもあるため、日頃から注意してあげたいところです。

鼻腔狭窄(びくうきょうさく)

【症状】
・呼吸時の大きな音
・呼吸しづらそうな様子
【原因】
多くは先天的に鼻の穴が小さく、その奥の鼻道が狭くなっていることが原因。
後天的な原因としては外傷などがある。
【備考】
短頭種ではいくつかの呼吸器異常が重なることが多く、「短頭種気道症候群」という名前が付けられている。

軟口蓋過長(なんこうがいかちょう)

【症状】
・いびき
・呼吸困難
・呼吸時の大きな音
【原因】
喉の奥にある軟口蓋が生まれつき長く、気道にかぶさっていることが原因。
【備考】
鼻腔狭窄と同様、「短頭種気道症候群」のひとつ。
あまりにも呼吸に支障があるようなら、避妊や去勢手術の際に軟口蓋を短くする手術をする。

椎間板ヘルニア

【症状】
・首の痛み、首を持ち上げない
・震え
・患部を触ると怒る
・足を引きずる、四肢の不全麻痺
【原因】
背骨と背骨の間にある椎間板が、脊髄を圧迫することによる。
【備考】
ミニチュアダックスフントのような腰部椎間板ヘルニアだけでなく、頸部や胸部の椎間板ヘルニアもよく見られる。
頭が大きいフレンチブルドッグは、首などに負担がかかりやすい。

熱中症

【症状】
・体温の上昇(40℃以上)
・呼吸速拍
・粘膜が赤くなる
・意識混濁、ショック症状
【原因】
室温の上昇、興奮、激しい運動、長時間のドライヤーなど。
【備考】
短頭種で最も注意すべき病態。
急激な冷却は血栓形成に繋がることもあるため、熱中症が疑われる際は首や内股などを保冷剤などで冷やしつつ、すぐに動物病院に駆け込むこと。

皮膚疾患

【症状】
・かゆみ
・脱毛
・患部の赤み、フケ、カサブタ
【原因】
皮膚のバリア機能低下による細菌や真菌の感染、アトピーなど。
【備考】
「膿皮症」(皮膚常在菌による)、「マラセチア性皮膚炎」(脂っぽく、ベタベタする)などが主な原因疾患となる。
全体的にムッチリした体型であるため、趾間(しかん;足の指の間)や顔のシワの環境が悪くなりがち。

角膜潰瘍

【症状】
・目やに
・目が痛くて開けられない
・角膜の混濁、結膜充血、結膜浮腫
【原因】
多くは外傷によって角膜が傷つくことによる。
【備考】
鼻が短く、眼が大きいフレンチブルドッグは草や家具で眼を傷つけやすい。

肥満細胞腫

【症状】
・体表のしこり
・嘔吐、下痢などの消化器症状
【原因】
肥満細胞という白血球の一種が腫瘍化することによる。
【備考】
皮膚の肥満細胞が脾臓などに転移することもある。

日常生活のポイント①熱中症を予防する

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フレンチブルドッグのような短頭種を飼う上で、最も重要なことは「熱中症を予防すること」です。短頭種は、鼻が長い犬種に比べて呼吸が下手なので、体温調節が苦手です。

熱中症を予防するため、日常生活では次のようなことに気をつけましょう。

室温と湿度の管理

特に日本のような高温多湿の夏は、短頭種にはとても辛いもの。夏の間は常にエアコンを稼働し、室温が25℃以下になるように調整してあげましょう。

また、室温が適切であっても湿度が高いと熱中症になる恐れがあります。湿度は40%〜60%になるようにし、外出時も湿度の高い時は注意してください。

外出の時間帯

散歩や動物病院への通院の時間帯も考える必要があります。
特に夏場は、なるべく涼しい時間帯を選びましょう。

夏場の外出時は準備万全に

外に出る時間帯を調節しても、確実に熱中症を防げるとは限りません。
予期せぬ緊張や興奮によって、短頭種の体温は簡単に上がってしまいます。

できることなら、タオルや手ぬぐいに凍った保冷剤を入れ、首に巻いてあげるといいです。
また、ヒンヤリする素材の服などを着せるのも良いかもしれません。

日常生活のポイント②皮膚病対策

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フレンチブルドッグは皮膚トラブルが起きやすい犬種です。

特に顔の周りはシワが多く通気性が悪いため、皮膚の環境が悪くなりがちです。
定期的にシワのお手入れをしてあげましょう。

シワのお手入れ方法
①濡れティッシュなどでシワの間を拭く。
②その後、うちわなどでシワの間を乾かしてあげる。

日常生活のポイント③こまめな健康チェック

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犬は言葉を話せませんが、皮膚の異常や眼の異常など、外見で分かる疾患も多くあります。
異常を見逃さないためにも、日頃の観察で正常な愛犬の状態を把握しておきましょう。

また、被毛が短いため、スキンシップをとりながら体表の腫瘤病変も見つけやすいでしょう。

そして、少しでも気になることがあれば早めに動物病院を受診することが大切です。

まとめ

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フレンチブルドッグは決して丈夫とは言えない犬種です。
特に、熱中症を防ぐために夏場は常に気をつけなければなりません。

短頭種という特徴をしっかりと理解し、愛犬との生活をより良いものにして頂ければと思います。

【獣医師監修】失明の危険も!絶対に気をつけたい猫の眼の異常

ヒトや猫を含む動物にとって眼の健康は大切です。しかし、猫は言葉で自身の異常を訴えることができません。

目の異常は、猫の生活に支障をきたし、最悪の場合、失明に至ることもあります。
そのためにも、飼い主が早くに異常に気付き、対処をする必要があります。

本記事では、猫で見られる眼異常について獣医師が詳しく解説していきます。

眼異常とは

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眼異常と言っても、その症状は様々です。

比較的気付きやすいものから、気付きにくいものまでありますので、どのような症状があるのか確認しておきましょう。

名称 症状
充血 血管の拡張によって粘膜が赤く見える状態です。結膜や強膜などで見られることがあります。
眼脂 目ヤニのことです。生理的なものは透明に近いですが、細菌感染が関与していると黄色くなります。また、色は透明でも多量だとやはり異常です。
羞明(しゅうめい) 眼が開かない様子のことです。眩しそうに眼を細める様子からこう呼びます。
流涙 涙の量が増えている状態です。
視覚障害 視力に障害が出ている状態です。視力低下や失明がこれに当たります。

猫の眼の異常で受診する際に聞かれること

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動物病院では眼の検査として、光に対する反射、結膜や角膜の様子、角膜の傷の有無など眼の構造に関することを調べていきます。

しかし猫にとっては、光を眼に当てたり、じっとしていたりと少し負担になるかもしれません。そこで全ての検査を行わずに済むように、家での様子を問診にて聴取していきます。

  • いつから:外から帰って来てからか、急性か慢性かなど
  • ワクチン接種歴:猫ヘルペスウイルスⅠ型や猫クラミジア感染の可能性
  • 飼育環境:他の猫と接する機会があるか、他の猫が眼症状を呈しているかなど
  • 見えているか:動きが悪くなった、家具にぶつかる、高い所に行かなくなったなど

猫の眼の異常で考えられる疾患

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では愛猫の眼に異常が見られた際に、どんなことが考えられるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

結膜炎

結膜は、眼球の白眼の部分である眼球結膜と、まぶたの裏などの部分の眼瞼結膜に分けられます。いわゆる「眼が赤い」状態は、眼球結膜の充血によるものです。

結膜炎はこれら結膜に炎症が起きている状態で、感染(猫ヘルペスウイルス、猫クラミジア、マイコプラズマなど)、アレルギー、外傷、ドライアイなどが原因となります。症状は充血の他に、眼脂や浮腫が見られます。

角膜潰瘍

眼球の表面部分である角膜に傷が付くことを角膜潰瘍と言います。机の角に顔をぶつける、草むらに顔を突っ込む、猫同士のケンカなどといった原因によるものが多いです。

皮膚の傷と異なり、角膜の傷は自然治癒が難しく、放置するとどんどん傷が深くなります。結果として眼の深い部分に炎症が起き、手術が必要となることもあります。

また猫ヘルペスウイルス感染による結膜炎から角膜潰瘍を続発することもあるので注意が必要です。角膜潰瘍は相当痛く、同時に羞明や眼脂、流涙、充血などの眼症状が見られます。

ぶどう膜炎

ぶどう膜とは、虹彩、毛様体、脈絡膜の総称です。虹彩と毛様体は瞳孔の大きさを調節し、脈絡膜は眼に栄養を供する働きがあります。これらの構造に炎症が起きている状態をぶどう膜炎と言います。

ぶどう膜炎を引き起こす原因としては、感染、角膜への慢性的な刺激、外傷、糖尿病、高脂血症、腫瘍などが挙げられます。炎症によって痛みが生じるため、羞明、流涙といった症状が認められます。

網膜剥離

網膜は、スクリーンの役割をしている眼球後部の膜です。網膜が眼球から離れると、スクリーンに像が投影されなくなるために視覚障害が起きます。

慢性腎疾患や甲状腺機能亢進症などによる全身性高血圧、腫瘍によって引き起こされることがあり、基礎疾患を持っている猫は要注意です。突然の視覚障害を疑ったら、すぐに動物病院を受診してください。

緑内障

眼球が球状を保っていられるのは、内側からの圧力(眼圧)があるからです。眼圧がないと空気の抜けたボールのように、眼球は萎んでしまいます。逆に、この眼圧が高くなり、眼球がパンパンになるのが緑内障です。

緑内障の原因としては眼房水の排出異常や、他の眼疾患(白内障、ぶどう膜炎、水晶体脱臼など)、糖尿病などが挙げられます。また緑内障は失明にも繋がる怖い疾患ですが、他にも羞明、眼瞼痙攣、流涙などの症状が見られます。

白内障

レンズの役割をする水晶体が白く濁る疾患で、ヒトでも一般的な疾患です。視覚障害もそうですが、白内障の怖ろしいところは緑内障やぶどう膜炎を誘発する可能性があることです。

根本的な治療法は外科手術しかありませんが、初期の白内障であれば進行を遅らせる点眼薬もあります。早期発見が重要である眼疾患の一つです。

猫の眼の異常で注意すること

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眼疾患については、毎日の観察が非常に大切です。目自体の異常だけでなく、フラフラしていたり、よく物にぶつかったりする場合には、目異常によって周囲がよく見えていない可能性もあります。

高齢になってきて、「おや?」と思うことがあっても年のせいにせず、一度検診を受けてみてはいかがでしょうか。

眼の表面に何か付いている!

飼い主の方がびっくりした様子で、「眼の表面に何か付いている!大丈夫ですか?」と相談を受けることがあります。

しかし、動物病院を受診してもらうと、ただの毛だった……という経験です。
ヒトと違って、猫は意外に眼球表面にゴミが付いていても痛がりません。もちろん、放置すると角膜の損傷に繋がりますので、眼に何か付いているのを見つけた場合は優しくそっと取り除いてあげましょう。

なかなか取れない場合は、お気軽に動物病院にご相談ください。

まとめ

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眼の異常は結膜炎のような軽いものから、緑内障のように失明に繋がるものまであります。悪化させないためにも、少しでも違和感を覚えたらすぐに動物病院に連れて行ってください。

猫との生活で、顔を見る機会は多いと思います。その時に少し気を付け、眼に異常はないかなと確認することが重要です。愛猫のQOLを高めるためにも、眼疾患に注意しましょう。