犬のひげは切ってもいいの?ひげの役割とカットを巡る議論

「ひげ」は陸上のほとんどの哺乳類に生えています。もちろん犬も例外ではありません。

猫のひげは重要な役割を果たしていると言われていますが、犬のひげはどのような役割を果たしているのでしょうか?

トリミングに行くとひげが短く切られていることもあるため、何となく「そこまで気にしなくても大丈夫」と思っている方も多いと思います。
しかし、「犬のひげは切らない方が良い」という意見もあるのをご存知ですか?

今回は、犬のひげの役割と、ひげのカットを巡る議論についてご紹介します。

犬のひげが果たす役割と特徴

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ひげも立派な感覚器官

犬のひげは、口の左右だけでなく目の上や顎の周辺にも生えている、「触毛」と呼ばれる感覚器官です。

犬は五感の中でも特に嗅覚が発達しているため、猫ほどひげは重要ではありませんが、猫のひげと同じように、気流の動きから周囲の情報を得たり平衡感覚を保ったりするために使われています。

犬が野生だった頃は、ひげを感覚器官として駆使し、生茂る草木の中で生活をしていたのです。

ひげは定期的に自然と生え変わる

家の中で、犬のひげが落ちているのを見かけたことがあるかもしれません。

犬のひげは、被毛と同じように、一定期間で生え変わります
生え替わりの途中であっても無理に抜くことはせず、自然と抜け落ちるのを待ちましょう。

ただし、一度に大量に抜け落ちている場合は、皮膚に何らかのトラブルが発生している可能性があります。
皮膚の状態を確認し、動物病院に行くことをお勧めします。

ひげを切っても痛みは感じない

犬のひげを切ること自体に痛みは伴いません。しかし、根本から切ったり抜いたりすると、痛いだけでなく、皮膚のトラブルにもつながるため絶対に避けましょう。 

ひげの機能の変化

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野生時代は重要な役割を持っていた

上記でも触れたように、犬が野生で暮らしていたころ、ひげは外部センサーとして重要な役割を果たしていました。さらに、仲間とのコミュニケーション、感情の伝達手段としても使われていたと考えられています。

ペットの犬はひげがなくても困らない?

犬が家畜化し、品種改良が進むにつれて、以前ほどの機能は失われていきました。

特にペットや人間のパートナーとして暮らす犬は、その生活上ひげがなくても困らない、と考えられています。
これが現在犬のひげを切っても大丈夫と言われる理由となっています。

実際、犬のひげを切っても、ほとんどの場合で犬の行動や反応に変化はないようです。

ひげのことはまだよく分かっていない

一方で、犬のひげをカットした後に、犬が空間認識を失ったように見えたという報告もあるようです。

犬のひげを切るとどのような影響があるのか、という正確な研究結果は今のところまだないのが実情です。

犬のひげを切る目的

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デザイン性

トリミングの際の見た目のデザイン性、ファッション性を重視してひげをカットすることがあります。

定期的にトリミングに行く必要のある長毛種や中毛種の犬には様々なカットスタイルがありますよね。そのなかでも、顔周りをすっきりさせるために毛とひげをカットする場合があります。

また、ドッグショーに出場する犬は、一般的にひげを整えるようです。

口周りの汚れ防止

プードルやシュナウザーのような、毛が長い種類の犬は、毛が伸びるにつれて口周りに食べ物や汚れが溜まってしまうことがあります。

皮膚トラブルや匂いを防ぐために、ひげを含めた毛を切ることがあります。

犬のひげは切らないほうがいい?

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犬のひげは感覚器官として今も大切

先述の通り、ひげには感覚器官としての役割があります。実際に、薄暗い環境の中で、犬はひげからの情報を得ることがあるようです。

特に、加齢や病気によって視力が弱い、または失ってしまった犬にとっては、ひげから得られる情報は生活上、重要であると言えるでしょう。

ひげを切ることは犬にとって「自然」なのか

デザイン性のためだけに、「むやみに」ひげを切ることは犬にとって不自然だという意見もあります。

犬のひげをカットする理由は、「見た目上良いから」という人間側の考え方によるものがほとんどです。

ペットである犬は、確かに野生で生活をしないため、ひげがなくても普通に生活を送ることができるでしょう。しかし、ひげの有無にこだわるのではなく、犬を自然のままにしておきたいという意見は多くあるようです。

まとめ

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今回は、犬のひげの役割とひげのカットを巡る議論についてご紹介しました。

犬のひげは、感覚器官です。

確かに、なくても生活に大きな支障はないとは言え、愛犬のひげをカットすることにメリットがないと感じられた場合や、不自然であると感じた場合は、あえて切る必要はありません。
また、切った後に、行動や反応に変化が見られる、あるいは視力に問題がある犬は切らないようにした方が良いでしょう。

その一方で、健康や生活上メリットがある場合は、ひげを切っても生活に大きな支障はきたさないので、問題はないということもできます。賛否はあるものの、ファッションのために切ることも、飼い主の選択肢の1つです。

犬のひげの役割を知った上で、それぞれの愛犬のためにベストな選択をするようにしましょう!

猫のひげを切るのはNG!猫のひげの6つの役割と病気のサインとは

猫のひげはとても大切なものだから切ってはいけない、ということはみなさんもご存知だと思います。

では、猫にとってひげはどのような役割を果たしており、どれくらい大切なものなのでしょうか?ひげが抜け落ちてしまう場合は病気のサインかもしれません。

今回は猫のひげについて詳しく解説します。

猫のひげは全身に生えている

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猫のひげ、といえば口の左右に生えている長い数本を思い浮かべますよね。
愛猫の顔をじっと観察してみると、口の左右だけではなく、目の上やアゴの下にもひげが生えていることに気がつくと思います。

猫の顔には全部で5カ所にヒゲが生えており、顔の部位ごとに名称がついています。愛猫の顔を見ながらチェックしてみてください。

猫の顔のひげの部位
上毛(じょうもう):目の上の眉毛のようなひげ。約6本。
頬骨毛(きょうこつもう):頬骨の上・目の横下あたりのひげ。生えていない猫もいる。1~2本。
上唇毛(じょうしんもう):頬に生えるいわゆる猫のひげ。長く数も多い。約16本。
口角毛(こうかくもう):口の端の短めのひげ。1~2本。
頭下毛(とうかもう):アゴの下にの短いひげ。数本。

さらに、手根球と呼ばれる前足の少し離れた肉球の周りにも3〜4本のひげが生えています。個体差はありますが全身のひげを合計すると50〜60本ほどあるようです。

猫のひげは動かすことができるセンサー

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猫のひげは「触毛」あるいは「洞毛」と呼ばれ、被毛とは区別されています。人間のひげは体毛ですが、猫のひげは立派な感覚器官で、筋肉に繋がっているため自在に動かすことが可能です。

他の被毛よりも長く深く生えており、根元にはたくさんの神経が通っています。従って、ひげに何かが触れると神経を通って脳に伝わる仕組みになっています。全身に生えたひげは周りの情報を察知するセンサーのような働きをしているのですね。

猫のひげの役割とは?

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生まれたばかりの子猫でもひげは立派に生えています。猫にとって、ひげは生きるためにとても大きな役割を果たしているからです。

では、猫のひげには具体的にどのような役割があるのでしょうか?猫のひげの役割を6つご紹介します。

①平衡感覚を保つ

人と比べて視覚の弱い猫は、ひげによって平衡感覚を保っています。
狭く不安定な場所や高いところでも下に落ちることなく歩け、暗い場所でも視覚に頼らずに行動できるのはひげのおかげなのです。

②空間を認識する

ひげの先に触れるものを感じ取ることで、空間の広さや形を認識することができます。
猫は顔が通る広さであればどんな隙間も通れると言われていますが、まず顔を入れてみて、ひげを使って隙間の広さを確認しています。(肥満気味の猫は顔が通っても体が通らないことも!)

③気流や湿度を探知する

猫のひげは非常に繊細なため、わずかなをも察知します。どの方向からどのくらい強い風が吹いているのかを感知することで、獲物や天敵の居場所を認識することができます。このため、暗い中でもネズミを捕まえることができます。

また、猫のひげは湿度も感知します。
低気圧が近づき湿気が多くなると、ひげに水分が付きダランと下がり、ひげの機能が低下してしまいます。それを防ぐために猫は顔とひげを洗い、ひげのハリを保とうとします。

「猫が顔を洗うと雨が降る」ということわざがありますが、まさにこの猫の習性を表しています。

④獲物の状態を察知する

猫のひげは獲物の匂いや音など、空気の微弱な振動をも捉えることができます。前足に生えているひげも獲物を追う際に使われているようです。

獲物を追っている最中はひげが前方に向かって伸びるため、獲物との距離を察知し、素早く攻撃することができます。

また、猫が獲物を口に加えると、ひげが獲物を包み込むようにしてその状態を確認します。ひげの感覚で獲物が生きているかどうかを見極め、急所をひと噛みすることができます。

⑤目を保護する

猫の目の上のひげはまぶたの神経とつながっています。ひげに刺激を感じると素早くまぶたを閉じて目を守ります。
また、小さなゴミを吸着し目に入ることを防ぐこともあるようです。

⑥感情を表す

猫のひげから感情を読み解くことができます。
尻尾などと合わせて、猫のボディランゲージを観察してみてください。

  • 下向き:リラックスしている時、あるいは体調が悪い時
  • 上向き:嬉しい時
  • 前向き:何かに興味を持っている時
  • 後ろ向き:怖い・びっくりしている時(餌を食べる時、水を飲む時にも汚れないように後ろ向きになります)

繊細で重要な猫のひげを切る・抜くは絶対にしてはダメ!

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ひげは猫が生活する上でとても大切な器官の一つです。そんな猫のひげを切ったり抜いてしまうと、平衡感覚が鈍り、壁にぶつかったり暗闇で思うように動くことができなくなったりしてしまいます。

また、猫のひげは深いところから生えており、根元には神経や血管が通っているため、引っ張って抜くと痛みを感じます。
ひげが急になくなることで動くことに自信をなくしたりショックを受けたりしてしまう可能性もあるので、切ったり抜いたりすることは決してしないでください。

冬の間はストーブでひげの先が焦げてしまうこともあるので、猫とストーブの距離が近づきすぎないように注意しましょう。

猫のひげが抜ける・切れるは病気のサイン?

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猫のひげは半年に一度、換毛期に合わせて自然と生え変わりますので、数本落ちているのを見つけても問題はありません。

しかし、大量に抜け落ちていたり切れていたりする場合は以下に上げるような病気の可能性が高いです。早めに動物病院で診てもらいましょう。

猫にきび(猫ざそう)

食べかすや水分などが皮膚に残ることで、皮膚の常在菌が異常繁殖して炎症を起こします。
他にも食器などの雑菌繁殖、アレルギーなど様々な原因があります。

初期は皮膚に黒い小さな斑点が現れます。悪化すると皮膚に赤い斑点ができ、痒がる仕草を見せます。この時に毛やひげが抜けることがあります。さらに悪化するとただれたり出血することがあります。

初期の時点であれば、湿らせた暖かいタオルで拭いたり、猫用シャンプーで体を洗うことで治ることがあります。
しかし、ひげが抜ける場合はすでに悪化しており、炎症や細菌感染を併発していることが多いため、すぐに動物病院を受診してください。

猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症)

猫エイズウイルスに感染することで発症し、徐々に免疫力が低下して病気にかかりやすくなります。口内炎や下痢、あるいは他の重い病気を併発する危険性があり、その中にひげが抜ける症状も含まれます。

治療法が確立されていない病気ですが、室内飼いの猫で、野良猫などの猫エイズウイルスを持つ猫と接触する(咬まれる)可能性がなければ感染するリスクはほとんどありません。

一方、外飼いの猫や、保護した猫を多頭飼いする場合は感染の可能性が高くなるため、必ずワクチンを接種しましょう。

ストレス

猫が強いストレスを感じると、血行が悪くなり毛やひげが抜け落ちることがあります。動物病院に行って、病気の可能性がない場合はこのストレス性の脱毛が疑われます。
ストレスの原因を突き止め、猫の環境を改善しましょう。

まとめ

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猫のひげには驚くほどたくさんの機能と役割があります。

猫にとってのひげは、人間にとっての髪の毛や髭などの体毛とは全く違ったものです。猫が生きるために重要な感覚器官なので、決して切ったり抜いたりすることはしないように、大切に扱ってあげてください。