今では禁止の国も!犬のしっぽを切る習慣が生まれた4つの理由
みなさんが飼っている犬や、ご近所の犬に、しっぽが丸くて短い犬がいるかもしれません。
ブルドッグなど、遺伝的にしっぽが短い犬種もいますが、プードルやシュナウザーなど、多くの犬種は子犬のときにしっぽを切ることで短くなっています。
ではそもそも、なぜしっぽを切るようになったのでしょうか?また、しっぽを切る習慣は今後も必要なのでしょうか?
今回の記事では、犬の断尾について一緒に考えてみましょう。
しっぽを切ることの多い犬種
一般的に、しっぽを短く切ることの多い犬種は以下の通りです。
- プードル
- ウェルシュ・コーギー
- シュナウザー
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- ポインター
- ジャック・ラッセル・テリア
- ドーベルマン
- ピンシャー
- ヨークシャ・テリア
しっぽを切る理由①節税の名残
一説によると、18世紀頃のイギリスでは、貴族たちが鹿狩りを犬に邪魔されるのを防ぐため、犬の足を傷つけて速く走れないよう農夫たちに義務付けていました。もしそれが嫌ならば、税金を払わなければなりませんでした。
しかし、牧羊犬などとして働いてもらうには、ちゃんと走れないと困ります。そこで考えた農夫たちは、犬のしっぽを切ることで犬が速く走れないと思わせることで、納税を免れていたという説があります。
当時は、ほとんどの犬種が断尾の対象となりましたが、この制度の廃止と同時に徐々に断尾は減っていきました。しかし、いくつかの犬種では今でもその習慣が残り続けています。
しっぽを切る理由②働く犬の名残
牧羊犬や狩猟犬は、羊がたくさんいる中で走り回るため、しっぽが踏まれて怪我をしてしまう恐れがあります。
狩猟犬の場合も、小動物を追いかける際にしっぽが障害物に引っかかってしまったり、相手にしっぽを噛まれてしまったりすることがあったと考えられます。
使役犬としての役割を全うするためには、しっぽがない方が色々と便利だったのかもしれません。
しっぽを切る理由③病気の予防の名残
しっぽがあると、肛門の周りにうんちがつきやすく、そのままにしていると、菌が繁殖してしまう原因となります。
また、野外で活動することの多かった狩猟犬などは、木の枝などが当たってしっぽに傷がつきやすかったようです。傷ついた部分から病原菌が侵入することもあるため、しっぽを切断していたとも言われています。
こんな迷信も・・・
昔のヨーロッパでは、犬のしっぽを切除すると狂犬病が予防できるという迷信もあったそうです。
今ではもちろん、狂犬病の予防はワクチン一択です。
今でもしっぽを切った方がいいの?
現代ではしっぽがあるからといって病気になりやすいとは考えにくく、予防のためにしっぽを切る必要性はないと言えます。定期的に肛門周りの毛をカットしたり、綺麗に拭き取ってあげるだけで十分です。
しっぽを切る理由④見た目の問題
現代においてしっぽを切る理由は、ほとんどが「短い方がかわいいと思うから」でしょう。
特に、プードルやコーギーなどの犬種は、短くて丸いしっぽがトレードマークであるかのように、人々の間で定着してしまいました。
コーギーはしっぽが長いとキツネに見える?
コーギーにはもともと、キツネのようなふさふさのしっぽが生えています。被毛の色もキツネとよく似ており、誤って猟師に銃で撃たれてしまう恐れがあったことから、しっぽが切られていたとも言われています。
もっとも、現代社会では、街中を散歩しているだけでキツネと間違えられることはほとんどないでしょう。
断尾をめぐる賛否両論
しっぽを切られるのは痛いのか
断尾の賛否をめぐってもっともよく議論されるのが、「犬はしっぽを切られるとき、痛みを感じるのか?」です。
結論から言うと、人間は犬ではないので誰にも分かりません。ここでは、賛成派と反対派の双方の意見をご紹介します。
断尾に賛成派の意見
生まれたばかりの子犬は神経系統が未熟で、しっぽを切られても鳴いたり逃げたりしない。したがって、子犬はしっぽを切られても痛みを感じない、または痛みがとても小さい。
断尾に反対派の意見
動物は痛みを他者に悟られるのを防ぐため、本能的に痛みを隠そうとする習性がある。リアクションが弱くても痛みは感じているはずだし、実際には痛そうにする仕草が見られた例もある。
断尾でしっぽの役割が失われてしまう?
しっぽには、身体の平衡感覚を保ったり、他の犬とコミュニケーションをとるための重要な役割があります。
しっぽを切ることで、身体能力が落ちてしまったり、他の犬と上手に意思疎通が取れなくて攻撃的になったりする可能性があるため、しっぽは切るべきでないという意見も多いようです。
しっぽの切断が禁止されている国も
世界には、動物福祉の観点から、断尾が禁止されている国があります。
断尾が禁止の国リスト
・イギリス
・エストニア
・オーストラリア
・オーストリア
・オランダ
・キプロス
・スイス
・スウェーデン
・チェコ
・デンマーク
・ドイツ
・ノルウェー
・フィンランド
・ベルギー
・ポルトガル
・ルクセンブルグ
日本では
日本では、「動物を傷つけること」は禁止されていますが、断尾については明確な規定がなく、飼い主や販売者の判断に委ねられているの現状です。
一方、国際的なドッグショーに出展をするブリーダーたちを中心に、日本でもしっぽを切らない動きが高まりつつあります。
まとめ
今回は、犬のしっぽを切る歴史的な理由のほか、断尾をめぐる様々な意見や国際的な動きをご紹介しました。
しっぽを切るのには、古くから様々な理由があったようですが、そのほとんどが今では不要となったり、無意味であることが判明したりしたもので、現代においてしっぽを切る明確な理由はないと言えるでしょう。
しかし、犬種のイメージから、特に何も考えずに断尾済みの犬の購入をしたり、手術を希望したりするする飼い主さんもまだまだ多いのが現状です。今一度、本当にしっぽを切る必要があるのかどうか、様々な意見を踏まえて、自分なりによく考えてみてはいかがでしょうか。
犬のひげは切ってもいいの?ひげの役割とカットを巡る議論
「ひげ」は陸上のほとんどの哺乳類に生えています。もちろん犬も例外ではありません。
猫のひげは重要な役割を果たしていると言われていますが、犬のひげはどのような役割を果たしているのでしょうか?
トリミングに行くとひげが短く切られていることもあるため、何となく「そこまで気にしなくても大丈夫」と思っている方も多いと思います。
しかし、「犬のひげは切らない方が良い」という意見もあるのをご存知ですか?
今回は、犬のひげの役割と、ひげのカットを巡る議論についてご紹介します。
犬のひげが果たす役割と特徴
ひげも立派な感覚器官
犬のひげは、口の左右だけでなく目の上や顎の周辺にも生えている、「触毛」と呼ばれる感覚器官です。
犬は五感の中でも特に嗅覚が発達しているため、猫ほどひげは重要ではありませんが、猫のひげと同じように、気流の動きから周囲の情報を得たり、平衡感覚を保ったりするために使われています。
犬が野生だった頃は、ひげを感覚器官として駆使し、生茂る草木の中で生活をしていたのです。
ひげは定期的に自然と生え変わる
家の中で、犬のひげが落ちているのを見かけたことがあるかもしれません。
犬のひげは、被毛と同じように、一定期間で生え変わります。
生え替わりの途中であっても無理に抜くことはせず、自然と抜け落ちるのを待ちましょう。
ただし、一度に大量に抜け落ちている場合は、皮膚に何らかのトラブルが発生している可能性があります。
皮膚の状態を確認し、動物病院に行くことをお勧めします。
ひげを切っても痛みは感じない
犬のひげを切ること自体に痛みは伴いません。しかし、根本から切ったり抜いたりすると、痛いだけでなく、皮膚のトラブルにもつながるため絶対に避けましょう。
ひげの機能の変化
野生時代は重要な役割を持っていた
上記でも触れたように、犬が野生で暮らしていたころ、ひげは外部センサーとして重要な役割を果たしていました。さらに、仲間とのコミュニケーション、感情の伝達手段としても使われていたと考えられています。
ペットの犬はひげがなくても困らない?
犬が家畜化し、品種改良が進むにつれて、以前ほどの機能は失われていきました。
特にペットや人間のパートナーとして暮らす犬は、その生活上ひげがなくても困らない、と考えられています。
これが現在犬のひげを切っても大丈夫と言われる理由となっています。
実際、犬のひげを切っても、ほとんどの場合で犬の行動や反応に変化はないようです。
ひげのことはまだよく分かっていない
一方で、犬のひげをカットした後に、犬が空間認識を失ったように見えたという報告もあるようです。
犬のひげを切るとどのような影響があるのか、という正確な研究結果は今のところまだないのが実情です。
犬のひげを切る目的
デザイン性
トリミングの際の見た目のデザイン性、ファッション性を重視してひげをカットすることがあります。
定期的にトリミングに行く必要のある長毛種や中毛種の犬には様々なカットスタイルがありますよね。そのなかでも、顔周りをすっきりさせるために毛とひげをカットする場合があります。
また、ドッグショーに出場する犬は、一般的にひげを整えるようです。
口周りの汚れ防止
プードルやシュナウザーのような、毛が長い種類の犬は、毛が伸びるにつれて口周りに食べ物や汚れが溜まってしまうことがあります。
皮膚トラブルや匂いを防ぐために、ひげを含めた毛を切ることがあります。
犬のひげは切らないほうがいい?
犬のひげは感覚器官として今も大切
先述の通り、ひげには感覚器官としての役割があります。実際に、薄暗い環境の中で、犬はひげからの情報を得ることがあるようです。
特に、加齢や病気によって視力が弱い、または失ってしまった犬にとっては、ひげから得られる情報は生活上、重要であると言えるでしょう。
ひげを切ることは犬にとって「自然」なのか
デザイン性のためだけに、「むやみに」ひげを切ることは犬にとって不自然だという意見もあります。
犬のひげをカットする理由は、「見た目上良いから」という人間側の考え方によるものがほとんどです。
ペットである犬は、確かに野生で生活をしないため、ひげがなくても普通に生活を送ることができるでしょう。しかし、ひげの有無にこだわるのではなく、犬を自然のままにしておきたいという意見は多くあるようです。
まとめ
今回は、犬のひげの役割とひげのカットを巡る議論についてご紹介しました。
犬のひげは、感覚器官です。
確かに、なくても生活に大きな支障はないとは言え、愛犬のひげをカットすることにメリットがないと感じられた場合や、不自然であると感じた場合は、あえて切る必要はありません。
また、切った後に、行動や反応に変化が見られる、あるいは視力に問題がある犬は切らないようにした方が良いでしょう。
その一方で、健康や生活上メリットがある場合は、ひげを切っても生活に大きな支障はきたさないので、問題はないということもできます。賛否はあるものの、ファッションのために切ることも、飼い主の選択肢の1つです。
犬のひげの役割を知った上で、それぞれの愛犬のためにベストな選択をするようにしましょう!