スコティッシュフォールドってどんな猫?特徴やかかりやすい病気とは
スコティッシュフォールドは前方に折れ曲がった小さな耳が特徴的な猫で、日本でもとても人気の高い猫種です。
おっとりとした性格で飼いやすい猫種とされていますが、実はスコティッシュフォールド特有の好発疾患があり、飼うときには少し注意が必要です。
今回はスコティッシュフォールドについて詳しく紹介します。飼おうか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
スコティッシュフォールドの歴史
「Scottish(スコットランドの)fold(折りたたむ)」という名前の通り、スコットランドが原産の猫で、1960年代に耳の折れた猫をベースに交配を繰り返して生まれた猫種です。
スコティッシュフォールドは、進化の過程で折れ耳を獲得したのではなく、突然変異で生まれた折れ耳の猫を人為的に交配したものであるため、必ずしも折れ耳の遺伝子が発現するとは限りません。
立ち耳のスコティッシュフォールドを、「スコティッシュストレート」と呼ぶこともあるようです。
スコティッシュフォールドの特徴
性格
個体差はありますが、スコティッシュフォールドは、おだやかでのんびりとした性格をしている子が多い猫種です。
人見知りはあまりせず、見知らぬ人にもなつき甘えるほどの人懐っこさも特徴です。子供がいる家庭や、他のペットを飼っている家庭でも飼いやすい猫種でしょう。
ボディタイプ
ボディタイプは「セミコビータイプ」で、丸みを帯びた小柄な胴体や頭部、短い首、先の丸い短い尻尾や手足などの特徴があります。
被毛の特徴
スコティッシュフォールドには、短毛種と長毛種が存在します。一般的には短毛種が多く、長毛種のスコティッシュフォールドは人為的な交配により生み出されたものです。
被毛の色は、レッド、ブルー、ブラックなど様々で、ソリッド(単色)、タビー(縞模様)、キャリコ(三毛)など、柄のバリエーションも豊富です。
肥満に注意!
スコティッシュフォールドは比較的運動量が少なく、おとなしい猫だと言われています。そのため、運動不足や食べ過ぎにより肥満になりやすいのも特徴です。
毎日の遊びで適度に運動をさせたり、適切な食事管理を行うことを心がけましょう。
スコティッシュフォールドのお手入れ
ブラッシング
短毛種の場合は、抜け替わりの時期やシャンプーのタイミングなどを目安にブラッシングを行えば十分でしょう。
長毛種の場合、毛づくろいをした際に飲み込んだ毛が胃や腸で毛玉になる「毛球症」という病気にかかりやすいので、最低でも週に2〜3回、できれば1日に2回ブラッシングをしてあげるのが望ましいです。
耳掃除
折れ耳という特徴を持つスコティッシュフォールドは、耳の中に湿気がたまりやすく「外耳炎」などの疾患にかかりやすいです。
耳の中は定期的にチェックし、湿らせたコットンで優しく拭き取ってあげます。綿棒などで耳の奥までガシガシと掃除してしまうと傷ついてしまうので、表面だけをそっと拭き取りましょう。
スコティッシュフォールドが気をつけたい病気
スコティッシュフォールドは遺伝的な多様性が低く、それに起因する遺伝性の疾患を発症する確率がとても高いことで知られています。
特に以下で紹介する病気には注意が必要です。少しでもおかしいと思ったらすぐに動物病院にかかるようにしましょう。
関節疾患
スコティッシュフォールドは、遺伝的に関節疾患を発症しやすい猫種です。
特に、「骨軟骨異形成症」には要注意。指の骨などの骨格変形が特徴で、痛みが出ると足を引きずるような行動を示します。
また、両後肢を前に投げ出して座る「スコ座り」という特徴的な座り方は、関節にかかる負担を軽減するための姿勢で、関節疾患や肥満の子によく見られます。SNSではかわいいと話題の「#スコ座り」ですが、放置せずにすぐに病院に連れて行きましょう。
内臓疾患
「多発性嚢胞腎」や「肥大型心筋症」など、腎臓や心臓の病気にもかかりやすいため、尿の量の異常、嘔吐や下痢、食欲不振、元気消失などの症状には日頃から注意しましょう。
外耳炎
外耳炎は、外耳(鼓膜より外側)に細菌や真菌などの微生物が異常増殖する疾患で、垂れ耳の猫がかかりやすいとされます。特に、耳が硬い子は要注意です。
先ほど「お手入れ」の章でもお伝えした通り、定期的に優しく耳のお掃除をすることが重要です。
まとめ
今回紹介したスコティッシュフォールドは、生まれてから歴史が浅い純血種です。前述したように、遺伝性の疾患にとてもかかりやすいため、普段からチェックを欠かさず、定期的に健康診断も行いましょう。
猫も犬も、純血種は遺伝性疾患にかかりやすいとされています。そのため、あらかじめこれらの遺伝的疾患の可能性や、どういった病気であるかの予備知識を持っておくことが重要です。
スコティッシュフォールドを飼おうか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
純血種の猫がかかりやすい?代表的な遺伝性疾患を5つ紹介
純血種の猫は病気が多いとよく言われていますよね。
純血種は近親交配で生まれてくる個体が多いため、先天的疾患を持って生まれてくることが多いのです。
猫種によってかかりやすい病気は変わってきますが、純血種がかかりやすい病気にはどのようなものがあるのか、代表的なものを紹介していきたいと思います。
遺伝性疾患とは
遺伝性疾患とは、生まれつき持っている疾患のことを言います。
生まれてからすぐに症状が出て、遺伝性疾患とわかる場合もありますが、少し時間が経ってから発症がわかることもあるので、心配な場合は遺伝子検査が必要になることもあります。
近親交配の影響
純血種に遺伝性疾患がつきものである理由は、種の特徴を維持するための近親交配が理由としてあげられます。
近親交配は一度発生した病気の原因遺伝子を排除しにくいこと、特に突然変異の個体を人為的に繁殖する場合は、血筋が濃すぎるために、隠れていた原因遺伝子が顕在化しやすいということもあります。
これは猫に限った話ではなく、犬でも同じです。そのため、猫でも犬でも、ブリーダーさんから譲ってもらう場合は、そのブリーダーさんがどこまで遺伝に関する知識があるのか、きっちりと見極めることが重要になってきます。
代表的な遺伝性疾患
赤血球ピルビン酸キナーゼ欠損症
なかなか馴染みのない病名かもしれませんが、赤血球ピルピン酸キナーゼ欠損症とは、赤血球の寿命が短くなることで貧血になってしまう病気です。
赤血球ピルピン酸キナーゼ欠損症は予防することができず、治療法がないため、発症すれば寿命は4年ほどと言われています。
赤血球ピルピン酸キナーゼ欠損症の主な初期症状は以下の通りです。
- 運動をしたがらない
- 元気がない、疲れやすい
- 粘膜が青白い(まぶたの裏、口の中など)
- 頻脈
- 貧血
- 脾腫、肝臓腫大
- 黄疸 など
代表的なかかりやすい猫種
アビシニアン、ソマリ、シンガプーラ、ノルウェージャンフォレストキャット、ベンガルなど
多発性嚢胞腎(のうほうじん)
多発性嚢胞腎とは、腎臓の中に嚢胞と呼ばれる液体の詰まった袋が発生し、成長とともに大きくなり腎臓の機能を低下させてしまう病気です。
幼い頃から緩やかに進行していき、7〜10歳ごろに腎不全を引き起こしてしまいます。症状が緩やかであることから、気づかないこともあるようです。
この病気も予防することができないため、症状を和らげるため対症療法を施し、腎臓の健康な部分をできるだけ維持させることが必要になります。
親が多発性嚢胞腎の原因遺伝子を持っている場合、50〜100%の確率で発症する遺伝性の疾患です。
多発性嚢胞腎の症状は以下の通りです。
- 食欲不振
- 多飲多尿
- 体重減少
代表的なかかりやすい猫種
ペルシャ、アメリカン・ショートヘア、スコティッシュ・フォールド
肥大型心筋症
肥大型心筋症は、左心房の壁が中心に向かって分厚くなってしまうことで心機能に障害が出てくる病気です。
この病気になると、心房の内側が狭くなり、血液を貯められなくなるため血液を十分に送り出せなくなってきます。
血液が滞ると血栓もできやすくなり、命の危険があります。
肥大型心筋症もやはり治療法はありませんので、なるべく早期に発見することが望ましく、対症療法を施して進行を遅らせます。
初期症状は以下の通りです。
- 息切れ
- 呼吸困難
- 口で息をする
- 咳
代表的ななりやすい猫種
メインクーン、ペルシャ
骨軟骨形成不全症
こちらの病名は聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
骨軟骨形成不全症は、現在人気の猫種、スコティッシュフォールド特有の病気です。
骨軟骨形成不全症になると、手足やしっぽの関節部に骨瘤(こつりゅう)と呼ばれる軟骨の「こぶ」ができます。
この「こぶ」の部分は痛みを伴います。軽度であれば「他の猫より大人しいな、あまり動かないな」程度で済みますが、歩くことが困難になってしまうこともあります。
主な初期症状は以下の通りです。
- 関節が腫れる
- 変な歩き方をする
- しっぽが短く変形する
- 足や手を痛がる
- ジャンプなど激しい動きをしなくなる…など
代表的なかかりやすい猫種
スコティッシュフォールド
筋ジストロフィー
筋ジストロフィーとは、筋骨格を形成するのに必要な「ジストロフィン」が欠如することで、全身の筋肉が萎縮して歩行や運動が困難になる病気です。
進行性のため、徐々に症状が重くなり、最終的には動けなくなってしまいます。
この病気も予防法や完全な治療法が見つかっていないため、症状を遅らせてなるべく苦痛を緩和させてあげることが必要になります。
幼少期に発症することが多く、雄がかかりやすいと言われています。
主な症状は以下の通りです。
- 筋肉が硬くなっている
- 筋肉が震えている
- 手足が肥大化している
- 舌が肥大化している
- よだれを垂らしやすい
- 不自然な歩き方…など
代表的なかかりやすい猫種
短毛種、デボンレックス
気をつけるべきこと
繰り返しになってしまいますが、猫種によって差はあれど、純血種は遺伝性疾患がつきものです。
飼い始めてから思いもよらぬ苦労をして飼い主も猫も不幸にならないためには、特定の飼いたい猫種がいる場合、その猫種特有の病気や、習性などの知識を学ぶことが大事になってきます。
また、一般的に病気になりやすい猫種であっても、なるべく病気を発症しないような交配を心がけているブリーダーの方もいます。
猫の遺伝性疾患は、犬に比べるとまだ研究が進んでいないそうですが、まず購入者である飼い主が知識なしに飼わないようにすると心がけることが、少しでも状況を良くする手がかりになるのではないでしょうか。
スコティッシュフォールドの例
スコティッシュフォールドであれば、親が「折れ耳×折れ耳」から生まれた子は高確率で骨軟骨形成不全症になってしまうことがわかっているため、飼う前に両親とも折れ耳でないことを確かめた方が良いでしょう。
終わりに
猫をお迎えしようと考えた時、一人暮らしはダメなどの制約がある保護猫譲渡会を諦めて、ペットショップを考える方も未だ多くいらっしゃると思います。
飼えるハードルが少し低い分、一目惚れの出会いだけでなく、その先ずっと面倒を見るということも踏まえてお迎えできると良いですね。