柴犬?オオカミ?オーストラリアに生息するディンゴとは

オーストラリアに生息しているディンゴという動物を知っていますか?日本ではあまり馴染みのない動物ですが、柴犬のような見た目をしており、何も知らなければ犬と言われても疑うこともないでしょう。

今回は、ディンゴという動物の生態とディンゴが抱える問題についてご紹介していきます。

ディンゴとは

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ディンゴはオーストラリアとその周辺に生息する野生動物です。食肉目イヌ科に分類され、柴犬によく似た外見をしています。

ディンゴは8300年ほど前にインドネシアで飼われていた犬を起源とし、4000〜8000年ほど前に人間の手によってオーストラリアに運ばれました。

原住民のアボリジニの狩猟を手伝いながら一緒に暮らしつつ、次第に野生化していき、オーストラリア内陸部に広がると、さまざまな地域で異なる外見や行動を示すようになりました。

その後、オーストラリアでの個体数が増え、他の地域では見られなくなったことから、現在はオーストラリアの固有種として考えられています。

ディンゴの特徴

オーストラリア全域に生息するディンゴは、その生息地によって毛色や体の大きさは多少異なります。しかし、一般的なディンゴの体長は100cmほど、体重は10〜15kgほどです。体の大きさの割にスマートで、筋肉質な体つきをしています。

オオカミの性質をもつため、獰猛で、基本的に人間には懐かないとされ、単独、または10頭ほどの群れで生活しています。

ディンゴはイエイヌの仲間ではない

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これまでディンゴは「野生化した犬」だと考えられてきました。しかし、実際には、人に飼い慣らされたイエイヌが野生化によって別の種になるという複雑な過程を辿っていることが判明しました。

遺伝子解析

2014年に行われた遺伝子解析の結果では、ディンゴはイエイヌとは異なる固有種であることがわかっています。

この研究では、1頭のディンゴと、5犬種(ボクサー、ジャーマンシェパードドッグ、バセンジー、グレートデーン、ラブラドールレトリバー)、グリーンランドオオカミのゲノムを比較しました。その結果、どの種ともゲノムの構造が異なり、また、グリーンランドオオカミよりも犬のほうがより近いこともわかりました。

参考:https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abm5944

ディンゴによる被害

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ディンゴは羊などの家畜を襲い、毎年多くの金銭的な被害を出しています。1885年には牧羊が盛んなオーストラリア南東部に全長5614kmのフェンスを設けて家畜を保護してきたものの、その影響でディンゴの捕食から逃れた野生のカンガルーや野ウサギが増え、農作物への被害も深刻になっています。

かつてオーストラリアには、ディンゴの他にフクロオオカミやタスマニアデビルといった肉食獣も生息していましたが、圧倒的な勢力を誇ったディンゴがオーストラリアにおける生態系のトップに君臨しました。その結果、食性が競合する両者はオーストラリア本土から絶滅し、タスマニアデビルは現在もタスマニア島に生息しているものの、フクロオオカミを絶滅させる一因となってしまいました。

一方で、増え過ぎたキツネやカンガルーの数を抑制し生態系の安定に不可欠であるという考え方もあり、議論が続けられています。

人を襲うこともある

ディンゴはもともと警戒心の強い動物で、人に懐くことはありません。

しかし、オーストラリア東部に位置するフレーザー島では、多くのディンゴが生息しており、長らく人と交流があるためあまり人を警戒しません。もちろん、人を警戒しないからといって凶暴な性格は変わりませんが、犬のようなかわいらしい見た目をしているため、観光客が近づいたり餌を与えたりしてしまうことがあります。

その結果、フレーザー島ではディンゴによる事件が多発しており、2001年には9歳児が襲撃されて死亡するという事件も起こっています。

SNSなどではディンゴに近づいて撮影された写真も多くアップされていますが、相手は野生のオオカミだと考え安易に近づかないことが大切です。

純血のディンゴが減少?

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イエイヌとは遺伝子的には異なる生物であるものの、近い遺伝子をもつ両者は交配して子孫を残すことが可能です。そのため、イエイヌとの交配(ディンゴ・ハイブリッド)が進み、純血種は絶滅の危機に瀕していると考えられてきました。

しかし、2023年に発表された研究によると、ビクトリア州では87.1%、イエイヌとのハイブリッドが多いと考えられていたニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州では59%が純血種種であることがわかりました。

今まで考えられていたよりも純血種が多いという結果が出たものの、純血のディンゴを守るためにどうすれば良いか考えていく必要があります。

最後に

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オーストラリアに生息するディンゴは、柴犬そっくりで、大変かわいらしい見た目をしています。しかし、ディンゴは獰猛で人や家畜に危害を与える恐れがあるため、安易に近づかないことが大切です。

遺伝的に近い生き物であるイエイヌとの交配が進み、純血種が減少しつつあります。種を守るために私たちに何ができるかを考えていかなければいけません。

ギリシャから学ぶ!野良犬と共生する社会

動物愛護先進国というと、ドイツ、スイス、イギリスなどの国を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。これらの国は充実した動物保護施設や制度、動物に関する法律を厳しくするなどの方法で動物たちを守っています。

一方で動物愛護のイメージがあまりないギリシャですが、それら国とは違ったユニークな方法で野良犬たちの保護を実施しています。

今回は、そんなギリシャの動物保護の実情や課題などをご紹介していきます。

野良犬、野良猫と共生する街アテネ

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動物愛護に関心があれば「TNR」という言葉をご存じの方も多いのではないでしょうか。

主に野良猫に対して行われている活動で、「Trap(トラップ)=捕獲する」、「Neuter(ニューター)=不妊手術する」、「Return(リターン)=元の場所に帰す」の頭文字を取っています。
不妊手術済みであることがひと目で分かるように耳の先をカットした猫のことを、その耳の形が桜の花びらのように見えることから日本では「さくら猫」と呼ばれています。

ギリシャのアテネでは猫のTNRはもちろんですが、犬のTNR活動も行っています。アテネの街角では飼い主がいない野良犬たちが、自由にくつろいだり、じゃれあって遊んだりする姿が見られるのです。

飼い主がいない野良犬でありながら、同じ青い首輪をしていて、首輪に付いたプレートには、アテネ市が管理している犬であること、勝手に連れ去ることを禁止する旨、犬の名前などが記載されています。

野良犬を管理し見守る社会

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「野良犬を自由にさせて、危険ではないのか?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、アテネ市では次のような対策を取り、野良犬、野良猫と市民の共生を実現しています。

保護・管理

  • 路上などで保護された犬猫はシェルターで保護する
  • 予防注射、避妊・去勢手術を行う
  • ID番号や保護の履歴などがわかるマイクロチップを装着する

治療・訓練

  • 怪我や病気があればシェルターで治療する
  • 攻撃的な犬の場合は問題行動を解消するための訓練を受ける

譲渡・見守り

  • 譲渡会やアテネ市のウェブサイトで里親を募集する
  • 里親が見つからなかった場合は、路上生活で事故に合わないよう交通訓練を行い、元々生活していた場所に戻す
  • アテネ市、動物保護団体、地域住民が世話をする地域犬・地域猫となる

きっかけはアテネオリンピック

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かつてのギリシャでは、昔の日本と同じように犬猫は放し飼いにされ、不妊手術に対する意識も薄く、子供が産まれてしまった場合は里親を探す、もしくは飼育放棄をしてしまう人もいたそうです。

そんな意識に変化をもたらしたのが、2004年のアテネオリンピック。開催が決定されてから街中にいる野犬たちをどうするかが、大きな問題になりました。アテネ市役所の関係者や市議会では野犬の殺処分を反対する意見が大部分を占めており、保護する方向で議論を進めていくことになりました。

市民の中には殺処分を推進する意見もあり、そういった意見を持つ人々とは地道に話し合い、理解を得られるようにつとめたそうです。また、市内の一部地域で実施された試験的な犬のTNR活動の結果、問題行動が起きなかったこともあり、アテネオリンピック開催時までに犬のTNRが実現出来たのでした。

財政危機を乗り越えて

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軌道に乗っていたアテネの動物保護プログラムですが、2009年に起こった財政問題、いわゆる「ギリシャ危機」の影響を大きく受けてしまいます。
行政から割り当てられていた予算は10分の1に削減され、貧困から猫を捨てる人々が増え、猫のTNRにも本格的に取り組まなければならない状況に置かれました。

そんな状況をなんとか乗り越えた最大の要因として、「官民が一体となった動物保護活動」が挙げられます。

財政危機以前は保護プログラムに対する資金が十分にあったため、すでに充実した保護施設や設備が完備されていました。そして、以前は別々に活動していた動物保護団体と行政が、動物保護プログラムを通して連携して活動するシステムが構築されていたことも大きく影響しています。

ギリシャが抱える課題

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ここまで、ギリシャの首都アテネの動物保護プログラムを解説してきましたが、ギリシャ全体で見ると、まだまだ課題は多くあります。

2012年、ギリシャ政府は全国の自治体にアテネの動物保護プログラムと同様の取り組みを実施するように指示しましたが、財政危機の影響も色濃く残り、まだ全国的な実施には至っていません

しかし、外国人観光客が多く訪れるエーゲ海の島々では、そこに移住したドイツやオランダなどの動物愛護先進国と呼ばれる国の人々が主導し、TNR活動を行う動物保護団体も多く存在すると言われています。

まとめ

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野犬を保護する、法律を厳しくする以外の「共生する」という選択をしたギリシャ。日本で同じように犬のTNR活動を行うには、法律の改正や一時的な保護施設の整備、動物が苦手な人々の理解など多くの問題があり、実現するにはかなりハードルが高いと言えるかもしれません。

しかし、ギリシャのような選択をした国があると知ることは、動物愛護を考える上で深い学びになるのではないでしょうか。

また、アテネではオリンピックというきっかけがあったとはいえ、動物愛護に行政が深く関わっていることが、野良犬、野良猫と共生する社会を実現できている要因と言えるでしょう。

日本の行政にも、もっと市民や保護団体と連携を取りながら動物愛護に真摯に取り組んで欲しいと切に願います。