猫の「ごめん寝」の理由は?ストレスや病気のサインって本当?

猫の飼い主のみなさんは、猫が顔を両足に埋めるようにして寝る「ごめん寝(すまん寝)」を見たことがありますか?

とてもかわいらしい寝姿ですが、その理由を知ると、飼い主である私たちこそ猫に「ごめんね」をしなくてはいけない気分になります。

今回は、猫が「ごめん寝」をする理由と、見直すべき生活のポイントを解説します。

そもそも「ごめん寝」とは?

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「ごめん寝」または「すまん寝」とは、ペットが顔を両足に埋めて寝ている状態のことを言います。

インスタグラムには、#ごめん寝がついた投稿が、なんと5.3万件(2021年5月現在)も存在し、「ごめん寝」の人気ぶりが伺えます。

ちなみに、インスタグラムでは猫の投稿が圧倒的に多いですが、実は犬も「ごめん寝」をするようです。

猫が「ごめん寝」をする理由その① 光の遮断

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とてもかわいらしい寝姿ですが、猫はなぜ「ごめん寝」をするのでしょうか?
その理由には、「部屋の明かり」が関係しています。

猫にとっては眩しすぎる

猫はもともと暗闇でものを見るのが得意な動物で、人間が必要とする明るさの6〜7分の1の光量でも十分に見られます。
逆に、暗闇が得意ゆえに、部屋の電気などが眩しすぎると感じてしまうことがあります。

眠いのに明るすぎて眠れないと、視界を暗くするために「ごめん寝」をすると考えられます。

蛍光灯の「チカチカ」も原因

蛍光灯などの光は、高速でチカチカと点滅を繰り返しています。
私たち人間にはこの点滅がわかりませんが、動きを識別する「動体視力」が高い猫にとっては、チカチカして見えてしまうのです。

蛍光灯が明るすぎる上に、常にチカチカと点滅していたら、目を覆って眠りたくなる気持ちもわかりますね。

猫が「ごめん寝」をする理由その② 音の遮断

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猫の「ごめん寝」には、光だけでなく音も関係していると言われています。

寝ていてもよく聞こえている

猫の聴覚は人間の4倍以上あると言われています。
また、危険をいち早く察知するため、猫は睡眠時間の多くを浅い眠りである「レム睡眠」が占めています。

つまり、寝ている間も優れた聴力が常に働いているため、テレビや会話の音がうるさいと感じてしまうことがあります。

「ごめん寝」で音を遮断

多くの猫の耳は、前方向に向かってピンと立っています。この構造により、広い範囲から音を拾うことができます。

逆に、「ごめん寝」のポーズで耳を下に向ければ、音を遮断しやすくなります。

猫が「ごめん寝」をする理由その③ 脳の病気

「ごめん寝」とは少し違いますが、猫が長時間壁に頭を押し付ける行動「ヘッドプレッシング」と呼ばれ、脳の病気の可能性が疑われます。

引用元(YouTube)
「If You Find Your Pet Doing This, Take Them To The Vet Immediately」
https://www.youtube.com/watch?v=VzRQz5Y0-1A

どんな病気の可能性がある?

猫が「ヘッドプレッシング」をしている場合、例えば以下のような疾患が疑われます。

  • 脳腫瘍
  • 脳卒中
  • 脳炎
  • 脳部外傷
  • 毒物(鉛など)中毒
  • 神経系の感染(狂犬病、寄生虫、細菌、ウイルスなど)
  • 門脈体循環シャント

他にもこんな行動が見られたら要注意!

脳の病気の場合、ヘッドプレッシング以外に次のような行動を取ることがあります。

  • 同じ所を往復
  • 円を描くように歩く
  • 床に顔や頭を擦り付ける
  • 部屋の隅でじっと動かない
  • 壁を見つめる
  • よく見えてなさそう・聞こえてなさそう
  • 発作

猫のために飼い主さんができること

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猫によっては、単純に「ごめん寝」の態勢が好きでこの寝方をする場合もあるようですが、そうでない場合は「眩しくて/うるさくて、よく眠れないよ!」という不満のサインだと考えられます。

また、「ごめん寝」とは少し違う、「ヘッドプレッシング」の場合は、重大な脳の疾患が隠れているかもしれません。

大切な愛猫のために、飼い主の私たちは何をしたら良いのでしょうか?

1. 部屋の明かりは弱めのLEDに

蛍光灯や白熱電球に比べて比較的「チカチカ」が弱いLED電球を使用すると、猫のストレスを緩和できます。

また、特に猫がよく寝る場所では昼間の電気の使用を抑えたり、明るさが弱い電気を使用するようにしましょう。

2. テレビや会話の音を抑える

人間にとっては気にならない生活音でも、猫にとってはとても大きな音に聞こえてしまいます。
人間と猫では聞こえている世界が全く違うことを理解し、抑えられる音はなるべく抑えてあげましょう。

3. 猫が落ち着いて眠れる場所を作る

光や音を抑えようとしても、生活をしていれば常に猫のためとはいかないもの。
そこで、ダンボールやペット用のベッドなどで、光や音を遮断できる猫専用のスペースを作ってあげてはいかがでしょうか。

ポイントは、周りがしっかりと囲われていること。横と上をしっかり囲って、個室のような空間を作りましょう。

4. ヘッドプレッシングが見られたらすぐに動物病院へ

「ヘッドプレッシング」をよく知らなければ、「かわいい寝方だな」と思い、そのまま放置してしまうかもしれません。
壁に頭を押し付けて寝たり、異常行動が見られた場合は、一刻も早く動物病院に連れて行きましょう。

まとめ

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今回は、猫が「ごめん寝」をする理由と、飼い主の私たちにできることをご紹介しました。
猫の「ごめん寝」はかわいいだけでなく、住環境のストレスや病気のサインの可能性があります。

もちろん、単純にその寝方が好きなだけである場合もありますが、いずれにしても今一度生活環境を見直したり、猫の健康に異常がないか確かめてみることをおすすめします。

犬・猫の反省ポーズに要注意!ヘッドプレッシングは脳の病気のサイン

みなさんは、「ヘッドプレッシング」というペットの行動を知っていますか?
あまり馴染みのない言葉ですが、「反省ポーズ」などとも呼ばれ、SNSなどで見かけたことがあるかもしれません

このヘッドプレッシング、よく知らなければ、「何か反省しているのかな?」と勘違いをして放置してしまいやすい行動です。

しかし実は、ヘッドプレッシングは危険な脳の病気のサインの可能性があります。
今回の記事では、犬や猫がヘッドプレッシングをする理由や考えられる疾患、対処法などを解説します。

そもそもヘッドプレッシングとは?

引用元(YouTube)
「If You Find Your Pet Doing This, Take Them To The Vet Immediately」
https://www.youtube.com/watch?v=VzRQz5Y0-1A

ヘッドプレッシングとは、顔を下向きにして壁などに頭を押し付ける行動のことを言います。
犬や猫以外にも、馬や牛、ヤギもヘッドプレッシングをすることがあるようです。

何かを反省しているの?

その姿は、何かを反省して落ち込んでいるかのようにも見えるため、「反省ポーズ」とも呼ばれています。
また、光や音を遮るために顔を覆って眠る「ごめん寝」にも似ており、知らなければあまり気にせずに放置してしまうかもしれません。

実は危険な病気のサインかも

ところがこのヘッドプレッシング、実は重大な脳の疾患のサインである可能性があります。
知らないで放置してしまうと命にも関わる危険性があるため、犬や猫のヘッドプレッシングには要注意です。

ヘッドプレッシングの見分け方

ヘッドプレッシングは、顔を下向きにして眠る「ごめん寝」や、飼い主さんの足に頭をこすりつけるそぶりとは何が違うのでしょうか?

以下がその特徴です。

  • 壁や冷蔵庫、柱など、硬いものに対して頭を押し付けている
  • 頭を押し付けたまましばらくじっと動かない
  • 座ったまま頭を押し付けていて、寝ているわけではなさそう

ヘッドプレッシングで疑われる病気

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犬・猫がヘッドプレッシングをするようになった場合、疑われる疾患は主に「脳や神経系の疾患」です。

  • 脳腫瘍
  • 脳卒中
  • 前脳疾患
  • 頭部外傷
  • 脳炎
  • 毒性中毒(アルコール、殺虫剤など)
  • 門脈体循環シャント
  • 肝性脳症
  • 神経系の感染症(狂犬病・寄生虫・細菌・ウイルス・真菌感染症)
  • 代謝障害(門脈体循環シャント、高/低ナトリウム血症/低血糖症)

もし、ここ最近頭の打撲や危険物の誤飲をした場合、脳に異常が起きている場合もあります。
心当たりがある場合は、犬・猫がヘッドプレッシングをしないかどうか観察しましょう。

なお、全身麻酔による昏睡状態から目覚めた時にもヘッドプレッシングをすることがありますが、これは一時的なものであり、長引かなければあまり心配する必要はありません。

すぐに動物病院へ

脳や神経に関わる疾患は、特に早期発見・早期治療をする必要があります。
ヘッドプレッシングや、次に紹介するその他の異常行動が見られた場合は、いち早く動物病院を受診しましょう。

他にも、こんな症状・行動が見られる

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脳や神経系に疾患がある場合、ヘッドプレッシングの他に次のような異常行動や症状が見られることがあります。

  • 壁をずっと見つめている
  • 部屋の隅でじっと動かない
  • 同じ所を往復する
  • 円を描くように歩く
  • 床に顔や頭を擦り付ける
  • 聴覚・視覚障害
  • 発作

動物病院を受診する前にまとめておくと良いこと

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ヘッドプレッシングで動物病院を受診する際、次のような点を事前にまとめておくと診察がスムーズに進みます。

  • 時期:症状はいつ頃はじまったか
  • 症状:どのような症状がどの程度の頻度・時間で表れるのか
  • 思い当たる原因の有無:症状があらわれる前に、頭をぶつける・誤飲などの出来事がなかったか
  • 病歴:ペットの病歴や治療歴

ペットの様子を動画撮影しておこう

ヘッドプレッシングなどのペットの異常行動は、素人の判断ではどこまでが正常でどこからが異常なのか、判断するのが難しい場合があります。
そのため、自宅での様子を事前に動画撮影しておき、獣医師さんに見てもらうことをおすすめします。

まとめ

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今回は、犬や猫が頭を硬いものに押し付ける、「ヘッドプレッシング」について、その見分け方や疑われる疾患について解説しました。

よく知らなければ放置してしまいそうな仕草ですが、実は大変危険な病気が隠れている恐れがあり、一刻も早く動物病院に連れて行く必要があります。

ペットは調子が悪くても、飼い主さんに言葉で訴えることができません。
だからこそ、ヘッドプレッシングなどの病気の兆候を飼い主さんがよく知っておき、ペットが出してくれるサインにいち早く気づいてあげられるようにしましょう。

【獣医師監修】子犬・子猫を飼うなら知っておきたい9つの先天性疾患

子犬や子猫を飼いたいと思っている方は、犬や猫が生まれつき持っている「先天性疾患」についてご存知でしょうか?

疾患の種類によっては、早期治療や日常生活での配慮が必要な場合があります。

今回は、犬や猫の先天性疾患について、具体例や対処法を獣医師が詳しく解説します。

先天性疾患とは

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先天性疾患とは、その名の通り「生まれつきの疾患」の意味で、奇形や組織の構造異常などとも言います。

例えば、生命活動に大きな役割を果たしている心臓などに構造異常があると、わずかな異常であっても身体に大きな負担がかかります。

また、先天性疾患の中には遺伝するものもあり、親に何らかの疾患がないかどうかを確認することが非常に重要です。

注意したい先天性疾患

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ペットショップやブリーダーから子犬や子猫を迎える時に、身体の一部分が欠損していればすぐにわかります。
しかし、内臓などの組織は外からは見ただけでは判断できないため、もしかしたら先天性の異常が潜んでいるかもしれません。

ここでは、動物病院でも見かける機会の多い先天性疾患を9つ紹介します。

①動脈管開存症

【正常】
通常、生後2〜3日で「動脈管(胎児期に肺動脈と大動脈を繋いでいる穴)」は閉鎖する。
そして、肺動脈には酸素の少ない「静脈血」が、大動脈には酸素が豊富な「動脈血」が流れる。

【動脈管開存症とは】
動脈管が開口した状態で、血圧の高い大動脈の血液が肺動脈に流れ込む。
そして、肺への血液量が増加し、結果として左心房への負担が増大する。

この状態が長く続くと、逆に肺動脈から大動脈への血液の流入が起こり、酸素の少ない血液が全身を巡るようになる。

②心室中隔欠損

【正常】
心臓は4つの部屋に分かれており、その中でも右心室は肺動脈へ、左心室は大動脈へ血液を送り出す役割を担う。
右心室と左心室は「中隔(ちゅうかく)」という壁で分けられている。

【心室中隔欠損とは】
生まれつき「中隔」が欠損、あるいは一部に穴が空いた状態。

通常は、全身に血液を送らなければならないため、右心室より左心室の方が血圧が高くなっている。
中隔の欠損により血液が左心室から右心室に流れ込んでしまうと、肺への血液量が増加し、左心房への負担が大きくなる。

③門脈体循環シャント

【正常】
身体の各組織に行き渡った血液は、静脈を通って心臓に戻ってくる。
その途中で、肝臓の中の血管「門脈」を通過して、身体の老廃物を解毒する

【門脈体循環シャントとは】
肝臓の手前から肝臓の出口に直接血管が繋がっている(シャント)状態
このため、身体の毒素は肝臓を経由せず、全身を循環する
また、肝臓は糖を貯蔵する働きもしているが、肝臓への血液が少なくなると、致命的な低血糖を引き起こすこともある。

④異所性尿管

【正常】
腎臓で作られた尿は、尿管を通って膀胱に溜められる。

【異所性尿管とは】
尿管が膀胱以外の部位、例えば直接尿道や膣に開口している状態
すると、尿は膀胱を経由しないため、常に尿漏れが起こる。
尿が流れ続けている状態では、そこから細菌感染を起こすこともある。

⑤口蓋裂(こうがいれつ)

「硬口蓋(口の中の上顎の部分)」に穴が空き、口腔と鼻腔が繋がっている状態
食べたものが鼻腔を通り、肺に流れ込むと、誤嚥性肺炎に繋がることも。
食後に、未消化の食べ物のようなものが鼻から出てくることがあれば、口腔内を検査してみると良い。

⑥水頭症

【正常】
脳は、頭蓋骨の中で脳脊髄液に浮かんでいる。

【水頭症とは】
脳脊髄液が過剰に貯留している状態
脳室内の液体によって脳は圧迫され、神経症状や運動障害が引き起こされる。

⑦肘関節形成不全

【正常】
肘関節は、「上腕骨」と「前腕の骨(橈骨と尺骨)」からなる。

【肘関節形成不全とは】
この関節の咬み合わせが不十分な状態で、少しの刺激で肘関節脱臼が起こる可能性がある。
前肢を引きずる様子があれば、レントゲンを撮ってみると良い。

⑧股関節形成不全

【正常】
股関節は、骨盤を形成する「寛骨」と「大腿骨」からなる。

【股関節形成不全とは】
寛骨の溝が浅いなどによって、股関節の形成が不十分な状態で、頻繁に股関節脱臼を起こすようになる。
大型犬に多く見られ、成長期の検診ではレントゲンで股関節の状態をチェックすることも多い。

⑨膝蓋骨脱臼

【正常】
「膝蓋骨(膝の皿)」は、大腿骨の溝に沿って上下に移動することで、膝の滑らかな動きを実現している。

【膝蓋骨脱臼とは】
大腿骨の溝が生まれつき浅いなどによって、膝蓋骨が大腿骨から外れた状態
膝蓋骨の脱臼を繰り返すことによって関節炎が起きたり、前十字靭帯が断裂することもある。

寄生虫予防やワクチン接種の際にチェック

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これら先天性疾患は、初めての動物病院受診の際にしっかりとチェックします。

動物病院受診のタイミングは様々ですが、ワクチン接種やフィラリア予防薬を開始する頃が多いです。
その際、気になる健康上の問題点があれば獣医師に伝えておきましょう。

レントゲンはある程度成長してから

骨は生後、徐々に軟骨から硬骨に置き換わっていきます
そのため、あまりにも若いうちにレントゲンを撮っても意味がありません。

成長するにつれて症状が出てこないか確認しながら、時期を見て検査をしていきます。

まとめ

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犬や猫が生まれつき持っている異常は、飼い主さんの努力で予防することはできません。
しかし、できる限り早期に発見し、早めに処置をすることで、先天性疾患による様々なリスクを小さくすることはできます。

子犬や子猫の頃から、できるだけの健康管理をしてあげましょう。