【保護犬と暮らす】職員が語る「わおん」の魅力と保護犬が果たす役割

前回の記事では、ペット共生型障がい者福祉施設「わおん」の入居者さんにインタビューした様子を掲載いたしました。

【保護犬と暮らす】入居者に聞いたグループホーム「わおん」での生活

今回は、実際に「わおん」で働く職員さんの目線で、「わおん」のグループホームとはどのような施設なのか、他の施設との違いや魅力、犬の存在意義などを語っていただきました。職員さんだからこそ感じる「わおん」の魅力についてご紹介します。

「わおん」との出会い

「わおん」でエリア長を務める鮎川さん

今回訪問したグループホームの管理をしている職員の鮎川さんにお話を聞かせていただきました。

なぜ「わおん」で働こうと思ったのですか?

以前から犬を飼いたいと考えており、5年くらい前に一人暮らしを始めたことをきっかけに犬を飼い始めました。
それまでは地域の人との交流は全くありませんでしたが、犬を飼い始めて散歩をするようになると、畑仕事を手伝ったり野菜をもらったりと自然と交流が生まれるようになったんです。こういった経験を「幸せだなぁ」と感じました。

犬という存在があるだけで、入居者同士の交流だけではなく、地域との交流が生まれ、会話が弾む。「わおん」が狙った効果が実際に現れていることがわかるエピソードですね。

もともと福祉業界で働いていたんですが、障がいのある方にも、自分が犬を飼って感じた経験をしてもらいたいと思うようになりました。そこで、犬がいるからこそできる体験を生み出せる「わおん」の魅力に共感し、「ここしかない」と思ったのです。

犬と福祉という観点から仕事を探し始めたところ、偶然「わおん」の存在を知ったそう。それはまさに衝撃の出会い。会社のビジョンと鮎川さんのビジョンが完全に一致していたそうです。

実は2019年11月に入社したばかりの鮎川さん。取材当日はちょうど1ヶ月が経過しようとしていたところでした。他の職員さんや入居者さんから「まだ一ヶ月目だなんて信じられない(笑)」と言われており、すっかり「わおん」に馴染んでいらっしゃる様子が伝わってきました。

「わおん」でのお仕事

「わおん」でエリア長を務める鮎川さん

以前勤めていた施設との違いはありますか?

前は車椅子の人が多く、なかなか一人では身動きが取れない人が多い施設で勤務していました。しかし、「わおん」のグループホームは精神障がい者や知的障がい者が多く、身体的なサポートをすることはあまりありません。
そのため、地域の中で生活することになるので、自然と近隣の人との関わりが生まれてきます。

「わおん」のグループホームに入居している人は日中は仕事をしている人も多く、一緒に外に出る機会が以前の施設よりも多いそうです。

大きな施設では職員さんも多くいるため、突発的にどこかに行く必要が出て来ても人を出しやすいという利点があります。
しかし、「わおん」は比較的小規模なため、職員のスケジュール管理などが大変な面もあります。そこは私の仕事でもあるので、うまく回していけるよう頑張っていきたいですね。

施設の規模により、メリットやデメリットは生じてしまうもの。そのデメリットを鮎川さんら職員の方の努力によりフォローされています。鮎川さんはエリア長をされているため、管理業務が多く大変そうでしたが、その目からは仕事への誇りとやりがいが伝わってきました。

鮎川さんの一日のスケジュールを教えてください

午前中は市役所や病院の電話対応、通院の付き添いなどをして過ごし、午後は近隣エリアのホームを回っています。私の担当するホームが7棟あるのですが、日中は入居者さんが仕事などで家にいないことが多いのでなるべく夕方に行くようにしています。

新しい入居者さんや、ちょっとした連絡が入った人がいるとつい気になって様子を見に行ってしまうという鮎川さん。そういう小さな気遣いは入居者さんにとっては心強いですよね。

印象に残ったエピソードなどがあれば教えてください

私が担当しているホームの一つに新しい入居者さんが入ることになりました。少しサポートを必要とし、もともといる入居者さん同士の仲が良いため打ち解けるまで時間がかかるかもしれないと不安もありましたが、こちらの入る隙がないくらい打ち解けていました。
サポートしたいところも入居者さん同士でフォローし合って解決しており、「わおん」の入居者は、福祉の単なる受け手ではなく担い手にもなっているんです。

「わおん」のグループホームは、入居者同士の関わりがあまりなかったり、とても仲が良かったりと雰囲気はさまざまですが、職員さんが相性などをみながら入居するホームを決めているそうです。他の入居者さんと積極的に交流したい人もそうでない人も、自分の性格に合わせてくれるのは嬉しい点ではないでしょうか。

また、入居者さんが互いに助け合い、自らが福祉の担い手にもなっているのはとても素敵なことであり、これが福祉の理想形なのかもしれません。

ホームに犬がいるということ

「わおん」で暮らす保護犬出身のみりんちゃん

犬がいることで何か違いはありますか?

身近に犬がいることで、入居者さんは散歩に出かけたり、プラスの要素で外出することが増えました。
とある入居者さんが一人で外出する機会があり、道中の不安がありましたが、犬と一緒にいることで寄り道などもせずに無事に帰れたんです。
犬と楽しそうに遊んでいることも多く、犬がいてくれて良かったなと思いました。

職員さんにとってはどうでしょうか?

職員のモチベーションの維持にも一役買っています。
世話人さんのシフトを組むときに、どうしても都合が合わないこともあるのですが、「あの犬がいるホームだったら行きたい」という方も多いんです。犬の存在が業務を円滑に回す役割も果たしていますね。相性次第ではありますが、職員の犬を連れて行くことができるのも、犬を飼っている職員にとってはうれしいポイントです。

家や職場に犬がいるだけで、入居者さんの心の支えになるだけでなく、職員さんの仕事のモチベーション維持にも役立っているんですね。これこそがまさに「わおん」の強みだと言えるでしょう。

職員から見るアニスピホールディングスという会社

員から見るアニスピホールディングスという会社

「わおん」を運営するアニスピホールディングスはどのような会社ですか?

印象的だったのは、入社した日の朝礼で、事業の目標を達成したお祝いで特大のクラッカーを鳴らしたり、藤田社長の誕生日をサプライズでお祝いしたことです。率直にフランクで楽しい会社だなと思いました。

IT系の会社やベンチャー企業ではこういったイベントが多いイメージがありますが、どちらかというと堅いイメージのある福祉業界。社風がよく伝わってくるエピソードでした。

「わおん」での業務をどう感じていますか?

以前の施設で働いていたときは”会社の歯車”という印象を感じていました。しかし、アニスピホールディングスに入社して責任のある仕事を任されるようになり、やりがいを感じています。毎日が本当に楽しく、職場に犬がいるということもありモチベーションを高く保てています。

入居者さんにとっても「毎日が楽しい」「仕事にやりがいがある」と思っている職員さんがそばにいてくれる方が安心できることは間違いありません。また、アニスピホールディングスはもちろん、「わおん」のグループホームは犬と一緒に働けるということで、求人募集にも多くの応募が来ているそうです。

もしかすると、私たちが愛する犬という存在が、人手不足が深刻化している福祉業界の新たな光となるかもしれませんね。

最後に

殺処分直前で保護され、今はのんびり暮らすみりんちゃん

入居者さんも職員さんも終始笑顔でお話をしてくださったのがとても印象に残りました。犬という存在を介することで、人はこんなにも笑顔になれるのです。

今まで、犬は好きだけどグループホームでは飼えないから諦めていたという人も多いでしょう。しかし、施設側が犬と暮らせる環境を提供し、保護犬も救えるというのは素晴らしい取り組みだと感じました。

「わおん」のグループホームでは、動物を『飼う』のではなく、『ともに生きる』ことを大切にしています。犬にとってここが最善の環境かどうかはわかりません。しかし、藤田社長の言葉を借りるなら”救ってなんぼ”です。少なくとも実際に殺処分直前の犬の命を救い、そして犬が好きな人たちに囲まれてのんびり過ごせていることは事実です。

「わおん」は、入居者からも職員からも愛される施設でした。今後さらに新棟が増えていき、それに伴い引き取られる保護犬も増えていくでしょう。シェリー編集部では、このような社会的意義のある「わおん」の活動を今後も注目していきたいと思います。

わおん公式サイト:https://waonpet.com
(株)アニスピホールディングス公式サイト:https://anispi.co.jp/

【保護犬と暮らす】入居者に聞いたグループホーム「わおん」での生活

先日、ペット共生型障がい者福祉施設「わおん」を運営する(株)アニスピホールディングスの藤田英明社長にお話を伺い、インタビューの様子を公開いたしました。

社長直撃!保護犬と障がい者の共生型福祉施設「わおん」が目指すもの

今回は、「わおん」の入居者の方に、保護犬との関係性からグループホームに入居した経緯、一日の過ごし方までお話を伺ってきました。保護犬が果たしている役割や入居者の方と保護犬との絆が見えてきます。

ペット共生型障がい者福祉施設「わおん」とは?

「わおん」グループホームの外観

「わおん」は障がい者と保護犬が一緒に暮らせるグループホームであり、障がい者の自立サポートを行うことで、自ら稼ぎ、暮らせるようになることを目的としています。

また、殺処分される犬をグループホームで引き取ることで、犬の命を救い、犬が大好きな入居者が犬との散歩や遊びを通じて、癒されたり、信頼関係を築いたりできるのが魅力の施設です。

現在まであるようでなかった、人間と犬の両方の福祉を追求したグループホームが「わおん」なのです。

入居者に聞く「わおん」での生活

快くインタビューに応じてくださる山本さん

今回シェリー編集部は、千葉県にある「わおん」のグループホームに入居している山本さん(仮)にお話を伺いました。

「わおん」に入居された経緯は?

もともと千葉県にある別のグループホームに入居していました。支援センターの相談員さんとお話する中で「わおん」の存在を知り、興味を持ち、まずは体験入居をしてみることにしました。

「わおん」では最大50日間の体験入居ができますが、山本さんは一週間ほどの体験入居を経てここで暮らすことに魅力を感じ、入居を決めたそうです。

「わおん」に入居する決め手はやはり犬ですか?

はい。もともと犬が大好きで、実家でも犬を飼っていました。残念ですが、一般的なグループホームでは犬と一緒に暮らすことはできないので、犬と一緒に過ごす生活は諦めていました。
でも、「わおん」であれば、犬と一緒に過ごせます。現在は、仕事が終わって帰ってくると、元保護犬の「みりん」がすぐに出迎えてくれます。

お天気が良いときなど、会社に出勤する時に駅まで「みりん」と一緒にお散歩をすることもあるのだとか。こういった日常生活での遊びや触れ合いを通じ、犬が持つヒーリング効果が機能しているのが、「わおん」の最大の特徴でしょう。

保護犬のいる生活


左耳が垂れているのがトレードマークの「みりん」ちゃん(写真)は、殺処分3〜4日前とギリギリのところで引き取られ、「わおん」のグループホームにやってきました。

保護犬の受け入れは、グループホームの入居者の方たちとの相性もあるため、入居者が揃ってからみんなで話し合って決めるそうです。「わおん」は、保護団体や保護施設とのコネクションがあるため、入居者が揃った時点で、職員の方が代表して探しに行くとのこと。

普段、みりんちゃんとはどのように過ごしていますか?

仕事に行くときはみりんが玄関まで見送りに来てくれます。仕事から帰ってくると、みりんは尻尾を振って出迎えてくれます。
どういうわけか、みりんは僕が帰ってくると僕の部屋から出てくるんです。仕事に行っている間は僕の部屋で遊んでいるようです(笑)

お散歩などはどうしているのですか?

基本的に、みりんのお世話はグループホームの世話人の方がしてくれます。
出勤時にタイミングが合えば、朝のお散歩ついでに、みりんと世話人の方が最寄りの駅までお見送りをしてくれます。仕事前に、みりんから元気をもらっています。

動物好きの入居者が集まっているので、保護犬のお世話などで入居者の方の負担が増えることはありません。他の入居者の方も一緒にお散歩に行ったり、おもちゃを使って遊んだりする方が多いそうです。
みりんちゃんは共用のリビングで過ごしているので、どの入居者の方も触れ合えるようになっているのが嬉しいですね。

自分の部屋で寝ていると、みりんが部屋に入ってきて一緒の布団で寝たりします。また、僕が出かけている時も、みりんは僕の部屋で寝ていることがあります。

山本さんのお話からは、みりんちゃんへの深い愛情が見えてきます。みりんちゃんも山本さんにはよく懐いているようで、双方の信頼の深さが伺えます。

みんなのアイドル犬

わおんに暮らす保護犬と入居者の方との触れ合い

私たちがインタビューに伺った際、初めこそ警戒していたみりんちゃん。でも、すぐに慣れてしまい、お腹を出して寝ている場面も見られました。みりんちゃんがこのグループホームに来てからまだ7ヶ月程度しか経過していないということなのですが、もともと大人しい性格なのか、「わおん」での生活にはすっかり馴染んでいる様子です。

現在ではみんなのアイドル犬となっているようで、シェリー編集部もそのかわいさにすっかりメロメロになってしまいました。

グループホームでの生活

わおんのグループホームでの生活

「わおん」のグループホームでは、1つのグループホームに4〜5人の方が入居しています。こちらのグループホームでも4人の方が入居されており、一人一人が個室で生活しています。そのため、プライバシーはしっかり守られています。そして、日常的な家事は世話人の方が行っているため、食事等も心配なし。

他の入居者の方との関わりはありますか?

こちらのグループホームでは、入居者同士の交流はあまりありません。
日中はみんな仕事に行っているので、ほとんど顔を合わさないということもあるかもしれません。

ここのグループホームはのんびりとしていて、とても落ち着いた雰囲気でしたが、すごく賑やかなグループホームもあるそうです。入居者の方の性格に合わせて、入居するグループホームを割り振っているとのことで、細かいところまでケアされていることがわかります。

一日はどのように過ごしているのでしょう?

日中は運送会社の事務をしています。
朝5時半に起床して、グループホームから一時間ほどのところにある会社に出勤しています。8時から16時まで仕事をしたあと、17時半頃に帰宅します。

お仕事は残業などもあるのでしょうか?

年末年始は運送業は忙しいので、定時を過ぎて残業することもあります。
でも、その場合は手当が出て、お給料がいつもより増えるのが嬉しいです(笑)

お休みの日はどう過ごしますか?

仕事のない日は、母校にサッカーをしに行ったり、部屋の中でみりんとおもちゃで遊んだりして過ごしています。
時々、「わおん」(アニスピホールディングス)の本社のある九段下まで、藤田社長を訪ねて遊びに行きます。一緒にお話したり、お昼ごはんを食べたりするのですが、「僕のお客様をご案内してきて」と言われたりします。無茶ぶりですよね(笑)

入居者の方とこんなに親密になれるグループホームがあるのですね。会社のフランクさも伝わってくる良いエピソードだと思いました。運営者と入居者の方と双方が良い関係を作っておられ、傍から見ていて何とも羨ましいです。

入居する前と後で変わったこと

じっと入居者の方を見つめるみりんちゃん

「わおん」で最も良かったところは何でしょう?

以前のグループホームには犬がいませんでした。犬がいるということが大きいです。
もともと実家で犬を飼っていたので、現在の「わおん」での生活はとても楽しいです。

グループホームに入居して変わったことは何でしょう?

グループホームに入居する前は母親としばしばケンカをしていました。
でも、こちらに入居してからは気持ちも落ち着き、ケンカはほとんどなくなりました。病気の症状も少し落ち着いてきました。
母とは、今度一緒に旅行に行く予定です。

山本さんからは、犬の存在が大きく、離れ難く大切だというのが伝わってきます。もしかすると、落ち着いた気持ちで日々を過ごせるようになったのは、犬が身近にいるという環境も大きな要因の1つなのかもしれません。

これからチャレンジしたいこと

編集部に気遣いお茶を入れてくれる山本さん

山本さんに今後の目標を伺うと、一人暮らしをしてみたいとおっしゃっていました。料理も自分でできるので、あまり不安はないということでしたが、みりんちゃんと離れるのは寂しいからどうしようと悩んでいました。

藤田社長と一緒に「わおん」のセミナーも参加することがあるそうで、いろいろなことに積極的にチャレンジしている山本さんの今後がとても楽しみです。

編集後記

わおんのマスコットキャラクターのいるグループホームの玄関
癒し効果があることで知られる犬や猫ですが、福祉の現場で活躍している犬や猫はまだまだ少ないのが現状です。

今回山本さんのお話を聞き、犬が一緒に暮らしているだけで、入居者の方の生活を豊かにしていると感じました。自然と会話が生まれたり、積極的に散歩に行ったりなど、犬が果たす役割は大きいと思います。犬にとっても、殺処分ギリギリのところで引き取られ、犬が大好きな人たちに囲まれた生活は悪いものではないでしょう。

「わおん」の掲げるビジョンや目標は素晴らしいと思います。ただし、何事も現場の方にお話を聞いてみないと実際のところはわかりません。
今回、入居者の方自身がすごく生き生きと生活している姿を目の当たりにしたことで、「わおん」が一つずつ着実にビジョンを成し遂げようとしているのがわかりました。山本さんとのインタビューを通じ、「わおん」というグループホームは、犬にとっても、犬が大好きな障がい者にとっても魅力的な施設だと確信しました。

次回は、「わおん」で働く職員の方へ「わおん」で働く意味や「わおん」の魅力についてお伺いしたインタビューの様子を掲載いたします!

わおん公式サイト:https://waonpet.com
(株)アニスピホールディングス公式サイト:https://anispi.co.jp/

社長直撃!保護犬と障がい者の共生型福祉施設「わおん」が目指すもの

ペット共生型福祉施設「わおん」は、障がい者と保護犬が共に暮らせる障がい者グループホームです。犬が人間に与える癒し効果は科学的にも証明されており、精神障がいの症状改善にも期待が高まっています。さらに、「わおん」で保護犬を受け入れることで犬を殺処分から救うこともできます。

「わおん」はまさに、人間の福祉と犬の福祉の両方を追求したグループホームなのです。

この度シェリー編集部では、「わおん」を運営する(株)アニスピホールディングスの藤田英明社長にお話を伺ってまいりました。

ペット共生型福祉グループホーム「わおん」

ペット共生型福祉グループホーム「わおん」の社長である藤田英明氏

「わおん」に入れるのはどんな人ですか?

「わおん」は基本的に、障がい者認定を受けている人なら誰でも入ることができます。入居できるのは64歳までですが、入居後は何歳まででもグループホームで暮らせます。

グループホームとはどのような形ですか?

グループホームと一口に言っても、「わおん」のグループホームは4-5人で暮らす一戸建てタイプからアパートで共同生活を送るタイプまでさまざまです。

プライバシーをしっかり確保したい人はアパートタイプ、他の入居者さんとより近い距離でわいわい暮らしたい人は一戸建てタイプというように、入居者さんの障がいの種類や好みに合わせて選んでいただけます。身体障がいを抱えている入居者さん向けに、バリアフリーのグループホームもご用意しています。

グループホームの形をとることのメリットを教えてください。

大型の障がい者施設と比べてグループホームは規模が小さいので、他の入居者さんとのコミュニケーションが生まれやすくなります。

コミュニケーションをとるのが苦手な障がい者は多く、人が大勢いると部屋に閉じこもってしまう傾向にあります。グループホームの形を取ることで人間関係が築きやすくなり、お互いが家族のように親密な関係に発展していけます。

また、病院で暮らしているとなかなか自分で生活を選ぶことが難しいですが、グループホームなら自分で生き方を決めやすいのも重要なポイントです。犬と散歩に行ってみたり、少しずつ仕事をしてみたり。「わおん」は、障がい者が自立に向けて第一歩踏み出す後押しをする役割を担っています。」

障がい者と犬が一緒に暮らすということ


「わおん」のグループホームで障がい者と犬が暮らす

障がい者グループホームに犬を受け入れようと思ったのはなぜですか?

まず、障がい者で動物が好きという人の割合が、障がい者でない人の動物好きの割合より多いと言われています。それほど、障がい者には動物好きの人が多いです。それにもかかわらず、ペットと暮らせる物件は家賃が高い、障がい者施設が動物を受け入れていないなどの理由で、動物と一緒に暮らせない方が多くいます。

障がい者だからといって犬と暮らすことを諦めざるを得ない状況をなんとか変えたい。また、飼い主が見つからずに殺処分されてしまう動物の命をできるだけ救いたい。そんな思いからこのグループホームは生まれました。

障がい者が犬と過ごすとどんな効果がありますか?

他の人とのコミュニケーションが苦手な人でも犬となら信頼関係を築くことができたり、ストレスを軽減できたりと、障がい者が犬と暮らすメリットがたくさんあります。

さらに、犬がいると入居者さんたちは自然と散歩に行くのが日課になります。そうすると次第に、地域の人との交流が生まれます。犬の散歩を通した地域の人との交流は入居者さんの社会化にも繋がりますし、今まで障がい者に馴染みのなかった地域の人たちに、障がい者のことをよく知ってもらうきっかけにもなる。犬の散歩で仲良くなった地域の人が、「わおん」に遊びに来てくれることもあるんですよ。

保護犬にとっての「わおん」とは

保護犬にとっての「わおん」とは

「わおん」にいる犬は保護団体から受け入れていると聞きましたが、どのように受け入れているのですか?

僕は昔、動物愛護団体の活動をしていました。最初はその繋がりで犬を引き取っていました。ありがたいことに僕のビジョンに賛同してくれる保護団体の人がたくさんいて、こちらから聞かないでも引き取りの依頼を受けることがほとんどです。「わおん」のLINE@には、保護犬の写真や性格の情報がよく送られて来ます。

保護犬にとって「わおん」はどんな役割を果たしていると思いますか?

僕は、保護犬は”救ってなんぼ“だと思っています。動物愛護センターで保護された犬は、飼い主や譲渡先が見つからなければ殺処分されてしまいます。動物保護団体で保護された犬は一時的に保護されていますが、施設によっていつまで面倒を見てもらえるかわかりません。「わおん」で暮らすのが犬にとって最高の人生かどうかは不明ですが、僕は目の前の救える命は確実に救いたい

それに、「わおん」で暮らす人はみんな犬好きの人たちだし、入居者さんや世話人に囲まれながらのほほんと暮らせて、それなりに良い住環境なんじゃないかと思います。

トラブルや人手不足を防ぐ!「わおん」の工夫

「わおん」の工夫はトラブルや人手不足解消の切り札

入居者同士で相性が悪かったり、犬との相性が悪かったりすることはありませんか?

「わおん」では、最大50日の体験入居期間を設けています。体験してみて自分に合わないと思えば他のグループホームを探すこともできますし、施設側も入居を断ることもできます。体験期間を設けることで、お互いに相性が良いと感じて初めて入居が決まるので、トラブルを少なくできます。また、施設に受け入れている犬は穏やかな犬が多く、入居者も動物好きの方が集まっています。

福祉業界は人手不足が深刻化していますが、「わおん」では何か対策や工夫をしていますか?

工夫といいますか、「わおん」では犬と一緒に働けるので、そのおかげで自然と人が集まりやすくなっています。働く人が自分の犬を連れて来ることもできますし、そうでなくとも受け入れた保護犬と働くことができます。福祉系の仕事をしていると、精神的にきついと感じることもあると思います。そんな時、いつでも癒してくれる犬の存在はとても大きい。そんな犬パワーのおかげで、Facebookの求人広告にもたくさんの反応やコメントをいただいています。まさに犬様様ですね(笑)

藤田社長が思い描く未来

藤田氏が思い描く「わおん」とその未来

藤田社長が目指す「わおん」の未来は?

これから、AI技術などが発展していくとますますリストラが増え、精神を病んでしまう人も増えるかもしれません。
実際、リーマンショックの後にはうつ病患者が急増しましたよね。そういう人たちが社会からドロップアウトしないように、もししてしまっても社会復帰できるように、心地いい居場所を提供し、それぞれの状況に合わせたサポートをおこない、最終的には自立できるようにしてあげることです。

「わおん」以外にこれからやってみたいことはありますか?

障がいのある子供や虐待を受けている子供のための養護施設を手がけてみたいと思ってます。それも単なる養護施設じゃなく、プログラマーになるための教育などを提供する施設を作りたいです。

現在、発達障がいを持つ子供の数は増えています。子供に障がい者向けの特別授業を受けさせる親も多いけど、そうすると、大人になってから社会の中で働くのが難しくなってしまう。自分で働けなければ、国に頼ったり、親に頼ったりして生活するしかないし、引きこもってしまう人も少なくない。

だから、大人になって自分で働いて、自立した生活を送れるように、プログラミングなどの技術を教えながら将来の生活を支えてあげたいんです。

最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします!

現在、日本で障がい者認定されている人は約1,000万人います。これからは、ますます障がい者が社会に出てくる時代です。問題意識を持たずにいると、”気づいたら”理解のないまま周りに障がい者がたくさんいる状況になってしまいます。障がい者が社会にインクルードされていく中で、それぞれが問題意識をもったり、障がい者のことをよく知ることはますます重要になると思います。

人間の福祉、犬の福祉

人間の福祉と犬の福祉を「わおん」が変える
今回は、障がい者と犬が一緒に暮らせるグループホーム「わおん」について、(株)アニスピホールディングスの藤田社長にお話を伺いました。

「わおん」は、保護犬の命を救う場所として、そして障がい者が大好きな犬と生活し、自立に向けて一歩踏み出せる場所として、犬と障がい者双方の福祉に寄与していることがわかりました。人間と動物の幸せのためにできることを先まで見据えて考えておられる姿に、正直感銘を受けました。

シェリー編集部は今回の取材を通し、単に人が生きられる環境を提供するのではなく、人が自分の意思で、生きる意味を持って過ごせる環境を提供するのが福祉サービスにおいて最も重要なことであると感じました。
これは犬にも同じことが言えます。単に生かされれば良いのではなく、犬好きの人たちに迎えられ、のんびり安心して生きられるのが犬にとって幸せなことなのかもしれません。

福祉という言葉には主に、「公的扶助やサービスによる生活の安定」と、「幸福」の2つの意味があります。「生活の安定」は生活に必要なお金があれば満たされますが、「幸福」はそうはいきません。「幸福」を満たすには、どんなサービスが必要なのか?「わおん」の福祉サービスの形をふまえて、今後の人間の福祉サービス、動物の福祉サービスのあるべき姿をみなさんもぜひ考えてみてください。

わおん公式サイト:https://waonpet.com
(株)アニスピホールディングス公式サイト:https://anispi.co.jp/