子供や高齢者は特に注意!カメを飼うならサルモネラ菌に気をつけて
「サルモネラ菌」は、食中毒の原因になる細菌として有名なので、聞いたことがある方も多いでしょう。
しかし、ハ虫類からサルモネラ症に感染する可能性があることは、意外と知らない方も多いのではないでしょうか?
特に、子供や高齢者、持病持ちの人など、免疫力が弱い人は感染しやすいため、注意が必要です。
今回の記事では、ハ虫類が原因のサルモネラ菌の感染経路や症状、予防方法などをご紹介します。
ハ虫類が原因のサルモネラ症は珍しくない
ハ虫類が原因となったサルモネラ症の事例は、日本でも毎年のように発生しています。
カメ類が感染源であった事例がほとんどであり、感染者のほとんどが子どもや高齢者です。
また、海外でも多くの感染事例が見られますが、カメ類以外にも、イグアナやヘビが原因となっている場合もあります。
胃腸炎症状を主として、敗血症や髄膜炎を引き起こすこともあり、死亡例も報告されています。
サルモネラ菌の感染経路や症状
サルモネラ症とは?
「サルモネラ」という細菌が原因の感染症です。
サルモネラ菌のついた食品を食べて食中毒を引き起こすことが多いですが、ハ虫類などの動物と接触することで感染する場合もあります。
カメ等のハ虫類のサルモネラ菌の保菌率は、約50~90%だと考えられています。
ハ虫類からヒトへの感染経路
ハ虫類を触ったり、飼育箱を洗浄したりしたときに手指にサルモネラ菌が付着し、その手で口を触ったり食べ物を食べたりすることで体内に細菌が入ります。
特に子供は、無意識のうちに指を口に入れることが多いため注意が必要です。
サルモネラ症の症状
サルモネラ症を発症すると、主に急性胃腸炎が見られることが多いです。潜伏期間は通常8~48時間とされます。
まれに、小児で意識障害、けいれん、菌血症など、高齢者で急性脱水症状や菌血症を引き起こすことがあり、重症化のリスクがあります。
治療方法
胃腸炎症状の場合、下痢止めなどの市販薬を服用したくなるかもしれませんが、排泄を止めてしまうと体内からサルモネラ菌が排出されず、かえって治りが悪くなる恐れがあるため、自己判断は禁物です。
必ず医療機関を受診し、ハ虫類と接触があった時間や状況を明確に伝えた上で、医師の指示に従いましょう。
症状が重い場合には、抗菌薬による除菌が必要と判断される場合があります。
ハ虫類を飼育する際の注意点
1. 接触後は必ず手を洗う
ペットのハ虫類を触った後は、石鹸で手を洗うようにしてください。
長年飼育を続けていて愛着が湧いてくると、ペットに対して「菌を持っている生き物」という感覚が薄れてきがちですが、必ず「触ったら手を洗う」ことを習慣づけてください。
2. 飼育水は台所で扱わない
ハ虫類の多くはサルモネラ菌を保有しており、糞便にはサルモネラ菌が含まれている可能性が高いです。
そのため、飼育水には多量のサルモネラ菌が潜んでいる恐れがあり、扱いに注意しなければなりません。
飼育水の交換や水槽の掃除は、台所の流し台などの食品を扱うような場所は避け、庭やベランダなどで行うようにしましょう。
3. 家の中を歩きまわらせない
ペットに愛着が湧いてくると、ついつい飼育槽から出して家の中を自由に歩き回らせたくなるかもしれません。
しかし、ハ虫類が歩き回ったり、粗相をしてしまうことで、思わぬところにサルモネラ菌が撒き散らされてしまう可能性があるため注意が必要です。
どうしても飼育槽から出したい場合は、庭やベランダにシートを敷いて歩かせたり、台所やダイニングにバリケードを作って通れないようにするなどの工夫をしましょう。
ハ虫類はサルモネラ菌を持っているものと考えよう
ハ虫類の感染の有無は見分けられない
サルモネラ菌に感染していても、ミドリガメなどのハ虫類は症状を示さないため、外見上は感染しているかどうかわかりません。
アメリカでは、サルモネラ症を防ぐため、1975年から小さなミドリガメを含むカメの販売を禁止しています。
ハ虫類はサルモネラ菌を保有しているものと考え、次のようなポイントをおさえて飼育は慎重に検討しましょう。
- 家に小さな子供や高齢者、持病がある人など、免疫機能が低い人がいないか
- ペットを触った後は必ず手を洗うことを、家族全員が守れるか
- 台所や食卓などから十分距離を保ったところで飼育できるか
ハ虫類から菌を除去することはできない
「ペットからサルモネラ菌を除去できれば問題ないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、実際にサルモネラ菌に感染したカメに抗生物質を投与した実験では、一時的にサルモネラ菌が減ったように見えたものの、体内から完全に除菌することはできませんでした。
基本的に、爬虫類からサルモネラを除菌することはできないものと考えましょう。
まとめ
カメなどのハ虫類は、初めからサルモネラ菌を保有しているものと考えて接することが重要です。
ただし、感染を過度に恐れてペットを逃すのは、生態系に悪影響を及ぼす恐れがあるため絶対に避けなければなりません。
基本的に、手洗いを徹底し、飼育水や飼育槽の管理を適切に行えば、感染のリスクはかなり低く抑えることができます。
適切な知識を持って、適切な飼育を行うようにしましょう。
サルモネラ菌に注意!ペットフードの食中毒事件を紹介
湿度も温度も高く、食品の傷みやすい時期には人間もペットも食中毒への注意が必要です。
大袋ではなく小袋の製品にして使いきれるようにしたり、ウェットフードは必ず冷蔵庫に入れるようにしたりなど、各家庭でさまざまな工夫を行なっているでしょう。ですが、いくら食べ物が傷まないようにしっかりと管理したからといって、食中毒を完全に防げるわけではありません。
近年、ペットフードが製造過程で細菌やウイルス、寄生虫などに汚染されているという事件が繰り返し起きています。
今回の記事では、近年発生したペットフードの食中毒事件の中から2件を取り上げ、その経緯と原因を調べてみました。ここからわかることは、「いつ、どこで発生してもおかしくない」ということです。
過去の事例
まずは、最近日本で発生したペットフードの食中毒事件から見ていくことにしましょう。
2019/08 サルモネラ菌で14匹が死亡
2019年8月、北海道のペットフード業者「ノースペット」が製造した「犬・猫用ササミ姿干し 無塩」からサルモネラ菌が検出されたことを、同製品を販売した生活クラブ連合会が公式サイト上で発表しました。
同製品が原因で、計68匹のペットに嘔吐や下痢などの症状が出て、14匹が死亡しました。同製品は毎月8000〜9000個売れるほどの人気商品だったということです。
発覚までの経緯
最初に異変が報告されたのは19年1月17日で、生活クラブ連合会の組合員から異臭がするとの報告があり、製造工場に検査が依頼されました。しかし、その時点では製品サンプルに問題はないとの回答があるのみでした。
2、3週間後に異臭を訴える声が3件届き、本格的な調査に入りました。3月に入って販売を中止し、商品を注文した9000人の組合員に注意喚起のニュースを行ったところ、商品を食べてからペットが体調を崩したという報告が60件も寄せられました。
原因はサルモネラ菌
検査の結果、商品からサルモネラ菌が検出されました。しかし、菌の発生源は未だ特定されていません。これを受けて生活クラブは18年4月以降に販売した47,000個あまりを破棄するように、消費者に呼びかけています。
2013/6 サルモネラ菌検出で世界中の製品をリコール
2013年3月、ナチュラペットプロダクトがサルモネラ菌汚染のため、いくつかのブランドのドライフードをリコールすると発表しました。リコール発表はアメリカですが、日本へ販売された製品も対象となっています。
健康被害は報告されていないものの…
同製品による健康被害はまだ報告されていませんが、リコール対象の商品は6ブランド(イノーバ、EVO、カリフォルニアナチュラル、ヘルスワイズ、カルマ)にも及び、流通地域はアメリカ、カナダ、日本、香港、韓国、コスタリカ、マレーシア、シンガポールと非常に広範囲まで及びます。
原因はやはりサルモネラ菌
ミシガン農務省、ジョージア農務省、及びFDAの検査でサルモネラ菌が陽性と出たため、賞味期限が2014年6月までの製品すべてを回収すると発表しました。
食中毒事件の原因
なぜこのようなペットフードの食中毒事件が頻発し、途絶えることがないのでしょうか。その原因を見ていきます。
ペットの大敵、サルモネラ菌
上で記述した2つの事件は、いずれもサルモネラ菌が原因です。では、このサルモネラ菌とは一体どのような危険を持つのでしょうか。
サルモネラ菌はどんなものか?
サルモネラ菌は、人を始め、牛や豚、鶏などの家畜の町内、河川・下水など自然界に広く生息している細菌です。
少量の菌でも食中毒を発症し、乾燥に強いという特性を持ちます。主な症状として、吐き気や腹痛、高熱、下痢などが見られ、重症の場合、死に至る可能性もあります。潜伏期間は6〜72時間と言われています。
どう防げば良いのか?
人間の場合は手の洗浄・消毒を徹底し、低温保存、加熱処理などの対策で感染を防ぐことができます。しかし、ペットフードが既にサルモネラ菌に汚染されている場合、ペットへの感染を防ぐのは非常に難しいのが現状です。
法律による規定が不十分
ペットフードは食品衛生法の規制対象になっておらず、通常は食品扱いされません。2019年に起きたサルモネラ菌の事件においても、生活クラブ連合会はペットフードを食品ではなく生活用品として位置付けていました。
ペットフードの衛生・安全性を取り締まるためにペットフード安全法が施行されています。この法令により「名称」「賞味期限」「原材料名」「原産国名」「製造業者、輸入業者または販売業者の名称と住所」を表示することが義務付けられました。
しかし、このペットフード安全法には未だいくつかの問題点が残されています。その1つは、5%未満の原材料に表示義務がなく、そもそも法を犯したときの罰則が規定されていないということです。
食中毒問題の解決に向けて
有名企業によって大量販売されているからといって、そのペットフードの安全性が保証されているわけではありません。製造段階で菌が混入しているようなケースでは、消費者がいくら注意を払ったところで問題が起こってしまいます。
企業は社会的な責任に基づいて製造過程の管理を徹底し、政府には早急にペットフードの衛生・安全性を管理する法律を見直して欲しいですね。