ペットが生きがいを与えてくれる!高齢者への良い影響と問題点
ペットと暮らしていると、さまざまな恩恵を受けていると感じている方は多いでしょう。実際、「人と動物との関係学(anthropology)」という人間と動物の相互関係を研究する学問があり、飼い主はペットからさまざまな健康面での恩恵を受けていることが研究により分かっています。
そこで今回は、超高齢化社会に突入していく日本で注目されている「ペットが高齢者に与える影響」についてご紹介していきます。
ペットの飼育は高齢期の生きがいになる
医療技術の発達による平均寿命の延伸に伴い顕在化してきたのが、高齢期における「生きがい」の再獲得の問題です。
高齢期は、仕事をリタイア・子育ての終了・親や兄弟、友人との死別など、今までの立場・役割・人間関係の喪失を経験する時期です。そのため、これまでの生活と密に関わっていた生きがいも同時に喪失し、新しい生きがいを獲得しなければならない時期でもあります。
そんな超高齢化社会に突入していく日本において、「ペットの飼育」が注目されています。
ペットが高齢者に与える心理的効果
「アニマルセラピー」という言葉があるように、ペットとの関わりは飼い主に対して良い心理的な影響を与えます。
生きがいが得られる
今までの人間関係や役割を失った高齢者にとって、ペットとの関わりが新たな生きがいになります。
幸福感が増す
ペットは飼い主が何者であるかに関係なく、「無条件の愛」を与えてくれます。
科学的にも、ペットと触れ合うことで「幸せホルモン」と呼ばれる「オキシトシン」が分泌され、幸せを感じることがわかっています。
孤独感が減る
身近にペットがいるため、日々の生活で感じていた孤独感を感じにくくなります。
また、ペットを通して近隣住民との会話が増えることで、ペットの話題を通じた自然で良好な人間関係を築くことができます。
行動範囲が広くなる
ペットを飼う前までは家に篭りがちであっても、ペットと暮らすことで散歩やおでかけなどで、出かける機会が増えるでしょう。
また、飼い主同士の繋がりにより、地域交流が増え、地域活動への参加が促される傾向があります。
ストレスが減る
ペットを飼ってから家族間の会話が増えたという話もよく聞きますが、ペットを飼うことで、家族や友人とのコミュニケーションが円滑になり、ストレス軽減にもつながります。
ペットが高齢者に与える身体的効果
ペットを飼っている人は、散歩や世話をする事で生活にリズムができ、健康面においても良い影響を受けています。
運動量が増える
特に犬を飼育している高齢者は、犬の散歩に行くことから運動量が多くなり、運動機能も高くなるという報告があります。
健康的になる
運動機能が高くなることで、肥満が少なくなる傾向もあります。また、平常時の心拍数と血圧は、ペットを飼っている人の方が明らかに低い傾向があり、ストレス下でも心拍数や血圧は上昇しにくいことがわかっています。
これらにより健康寿命が長くなり、医療機関の利用回数が少なくなるともいわれています。
ペットと暮らす高齢者の問題
高齢者がペットと共に暮らす場合、もっとも問題視されるのが高齢者自身の健康や寿命です。
実際、一人暮らしの高齢者が病気になったり亡くなったりすることで飼育放棄されるペットがいたり、ペットがいることで子ども家族との同居、施設への入居、病院への入院が出来ない高齢者がいます。
これの問題を解決するためにも、普段から家族や地域とペットを通じた交流を行い、万が一の時でもスムーズに託せるようにしておくことが大切です。
ペットと一緒に暮らせる介護付き高齢者施設やサービス
最近は、ペットとの触れ合いが高齢者の心理的・身体的健康に良い影響を与えることが広まってきたことから、ペットと一緒に暮らす事ができる介護付き高齢者施設やサービスが増えてきました。
しかし、一般的な施設よりも入居費が高く、入居者がペットより先に亡くなった後の世話をしてくれる場所はまだ少ないのが現状です。
海外では柔軟な対応も
オーストラリアでは、里親を探すまでの間や、週末などのシェルターが閉まるとき限定の一時預かり先として、高齢者に預けられることがあるそうです。
また、アメリカでは、100歳を超える男性が保護犬の引き取りを希望した際に、年齢の懸念があることから、譲渡ではなく長期間の一時預かりという形での対応となりました。これであれば犬の所有権は保護団体にあるため、男性が飼えない状態になってしまっても、スムーズに団体が引き取ることができます。
人手不足の日本で同様のことを行うのは、現実的ではないかもしれません。しかし、今後日本でもこのような柔軟な対応ができていけば、さまざまな問題の一解決案になるかもしれません。
まとめ
高齢者がペットと暮らすことは、心理的・身体的・社会的に大きな利点があり、認知症や孤独死、ストレスなどの問題を解決する一助になる可能性もあるでしょう。
しかし、簡単に「高齢者はペットを飼った方が良い」とも言えないのが現状です。超高齢化社会に突入していく日本において、社会の理解が進み、ペットを社会システムにうまく取り込んでいける仕組みが整備されていくことを願います。
【新型コロナ】決めてある?もしもの時のペットの預け先
世界中に混乱を巻き起こしている新型コロナウイルス(COVID-19)。
このウイルスの感染や入院のリスクは、誰にでもあります。もしもの時、あなたのペットを預かってくれる人は決まっていますか?
「自分はかからないから大丈夫」と決して油断せず、ペットを預かってくれる人をしっかり決めておきましょう。
今回は、預け先を決める上で注意したいポイントと、預け先に伝えておきたいポイントを一緒に考えていきましょう。
基本的に人とペットの間での感染リスクは極めて低い
新型コロナウイルスが中国で爆発的に感染拡大した頃、中国国内で「ペットが新型コロナウイルスを拡散している」というデマが流れ、飼い主がペットを殺してしまうという悲しい事件が起きました。
これまでのところ、香港やベルギーで感染者により飼育されていたペットが新型コロナウイルスに感染した例もありますが、WHOや厚生労働省は、ペットから感染するという科学的なエビデンスはなく、リスクは極めて低いとしています。
まだ症例が少ないため、科学的に証明されたわけではないと言えるでしょう。今後新たな情報が出る可能性がありますが、誤った情報に惑わされないよう、情報源を必ず確認し、フェイク(誤情報)に惑わされない冷静な判断が求められています。
ペットの「コロナウイルス感染症」は別物
ペットの予防接種をする際、予防する病気のひとつとして「コロナウイルス感染症」を目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
この「コロナウイルス感染症」は、同じ種の間で感染する病気であり、ペットと人間の間で感染したり、犬と猫の間で感染したりすることは基本的にありません。
ただし、大腸菌やサルモネラ菌など、ペットと人間の間で感染する可能性の細菌は存在します。そのため、WHOは、ペットと接触した後は、日頃から手洗い等を徹底するよう呼びかけています。
感染者はなるべくペットとの濃厚接触を避けたほうがよいかも
人間からペットに新型コロナウイルスが感染することは、現段階では科学的なエビデンスがなく、可能性は極めて低いとされています。しかし、新型コロナウイルスに関しては、わからないことがまだまだ多いというのが現状です。
ペットの被毛等にウイルスが付着して、他の家族を間接的に感染させてしまう可能性はありますので、新型コロナウイルスに感染していたり、感染の疑いがある場合は、ペットとの濃厚接触も避けるようにしましょう。
もし、感染していない方にお世話を任せられない場合でも、ペットとキスをしたり、食べ物を口からあげたり、食べかけの食べ物を与えたりはしないようにし、咳やくしゃみが出る場合はできるだけマスクをしましょう。
自分が新型コロナウイルスに感染した時のことを考えておこう
どんなに感染予防を徹底していても、新型コロナウイルスに感染する可能性は誰にでもあります。
自分が新型コロナウイルスに感染することを想像するのは辛いですが、万一感染し、入院等によりペットの世話をできなくなった時に備え、ペットを他の人に預ける準備をしておきましょう。
ペットを預かってくれる人を決めておこう
万一の時、周りにペットを預かってくれる人はいますか?
ひとり暮らしの場合はもちろん、家族と一緒に住んでいる場合でも、ひとりが感染すれば他の家族にも感染する可能性が高いため、家族以外の預け先を決めておいたほうがよいでしょう。
ペットの預け先を決めるに際して、次のようなポイントを目安にしてみましょう。
- 公共交通機関の使用を避けるため、なるべく家が近い人や自家用車を使える人にお願いする。
- 感染者の家でお世話をするのは危険なので、できるだけペットを飼えるお家に住んでいる人にお願いする。
- 高齢者や持病のある人など、重症化のリスクが高い人はなるべく避ける。
もちろん、これらの条件をすべて満たす人が周りにいないこともあるでしょう。大切なのは、預かってくれるかどうかを事前にしっかり確認しておくことです。万が一に備え、できれば2人(2世帯)以上に確認しておくとなおよいでしょう。
ペットを預かってくれる人に伝えておくべきこと
ペットを預かってくれる人が決まったら、次のようなことを伝えておきましょう。
- ペットにアレルギーや持病がある場合は、必ず明確に伝えておく。
- ペットを引き取ったら、念のためペットの身体を洗い、お世話をした後は手洗いをしてもらうようお願いしておく。
- トラブルを防ぐため、ペットのお世話代など、金銭的なこともきちんと決めておく。
- ごはんやトイレの習慣(何をいつどのくらい食べて、どこでトイレをするのか)を伝えておく。
口頭で伝えただけでは忘れてしまったり、間違えて理解してしまうことがあるので、できるだけ書面にして残しておきましょう。
ペットを預ける場合に注意すべきこと
東京都獣医師会がペットの飼い主さん向けに、新型コロナウイルスに感染してしまった時のペットとの接し方について情報を出しています。
自分が感染していることがわかり、ペットを預けなくてはならなくなった場合、以下を精読してください。
東京都獣医師会 飼い主のみなさまへ
https://www.tvma.or.jp/public/items/1-20200328%28Q%26A-4%29.pdf
先にも申しましたが、ペットの被毛等についたウイルスにより、預け先の方を間接的に感染させてしまう恐れがあります。そのため、ペットをシャンプーすることはもちろん、ケージやおもちゃ等も全て消毒した上で、預ける必要があります。
自分がペットを預かることも考えよう
周りに、ペットを飼っているお年寄りや、ひとり暮らしでペットを飼っている人はいませんか?
もしもの時に、自分がペットを引き取ることも考え、よく相談しておきましょう。
高齢飼い主との話し合いは、新型コロナウイルス対策に限らず必要
新型コロナウイルスのさわぎがなかったとしても、高齢でペットを飼っている方は、もしもの時に備えて準備をしておく必要があります。
「そんな不謹慎なこと言い出しづらい…」と思う方もいらっしゃるでしょうが、ペットをひとりにしてしまう可能性があるのは、高齢の方にとっても不安なことでしょうし、何より大切なペットの命が危険にさらされてしまうことになりかねません。
高齢の飼い主や、その周りの方が考えておくべきことは、以下の記事も参考にしてください。
ウイルスを侮らず、ペットのために万全の備えを
これまで、新型コロナウイルスで重症化しやすいのは高齢者や持病のある人だとされてきましたが、若い人でもリスクがあることが報じられています。
新型コロナウイルスに感染する可能性は誰にでもあり、重症化のリスクも誰もが持っています。そして、突然の入院の可能性も同じです。
「自分は大丈夫」という甘い考えでペットをひとりぼっちにすることがないよう、事前に預かってくれる人を決めておき、必要なことを伝えておきましょう。そして、極力自分が新型コロナウイルスに感染しないように、そして誰かを感染させてしまわないように、外出を控え、予防を徹底し、この非常事態を乗り越えていきましょう。
ペットをひとりにしない!今、高齢の飼い主がやっておくべきこと
2007年に超高齢社会に突入したと言われる日本。高齢者の方がペットを飼うことには、様々なリスクが伴います。
高齢者の方が今は健康だとしても、10年後も健康でいられるのか?それとも、歩くのが少し大変になっているのか?残念ながらそれはわかりません。ペットは生き物ですから、高齢者の方と言えど、一度飼い始めたら責任を持って最後までお世話をする必要があります。
現在、ペットを飼っている人も、これからペットを飼おうとしている人も、周りにペットを飼っている高齢者がいる人も、いざという時に備え、どんなリスクがあって何をするべきなのかを学んでおきましょう。
高齢者がペットを飼うメリット
はじめに、高齢の方がペットを飼うことによって得られるメリットを見ていきましょう。
心の癒しになる
高齢者に限りませんが、ペットと触れ合うことで心が癒され幸せな気分になれることは、様々な研究により証明されています。
特に、子供が巣立ちしてしまった高齢の飼い主にとって、ペットは自分の子供のように愛おしく、寂しさを紛らわしてくれる存在と言えるのではないでしょうか。
体の健康を保てる
ペットがいることで、「長生きしよう」「元気でいよう」と健康を意識し、食事や運動に気を使っている高齢の飼い主も多いことでしょう。
さらに、お散歩が必要な犬を飼っていれば、外出する機会も自然と増えますよね。
地域の人との交流が広がる
散歩に出かけると、通りかかった地域の人たちや「犬仲間」とおしゃべりをする機会が増えることもあります。
仕事を引退したり、子育てが終わったり、配偶者が亡くなったりして、他の人と関わる機会が減ってしまいがちな高齢者にとって、こうした地域の人との関わりは心や体の安定に非常に大切な役割を果たします。
高齢者がペットを飼うリスク
高齢の方がペットを飼うことで多くのメリットを享受できる反面、考えなければならないリスクもあります。
体の衰えでペットのお世話が十分にできなくなるリスク
自身の体の衰えにより歩行困難になったりすると、お散歩に連れて行けなくなったり、ご飯やトイレのお世話も苦労することになります。
特に、犬も高齢になれば、自由に歩けなくなり介護が必要になることもあり、通常よりさらに力仕事が必要になります。小型犬であっても大変なお世話。中型犬や大型犬にもなると、高齢の方でなくても大変だということは想像に難くないでしょう。
認知症でペットのお世話が十分にできなくなるリスク
万一、認知症になってしまうと、ペットにご飯をあげ忘れたり、お世話を放棄してしまうリスクがあります。
特に一人暮らしの場合、他に気づいてくれる人がおらず、意図せずペットの「ネグレクト」をしてしまう可能性があるので要注意です。
入院や死亡でペットのお世話ができなくなるリスク
もちろん突然の入院や死亡のリスクは高齢者以外にもありますが、高齢の方はそのリスクが高いので、特に気をつける必要があります。
当然、ペットは病院に入れませんから、飼い主が入院してしまうとお世話をできなくなってしまいます。さらに、お世話をしてくれる人が突然亡くなってしまうと、ペットはひとり取り残されてしまいます。
ペットのために今できること
それでは、高齢で飼い主をされている方はどうすれば良いのでしょうか?いざと言う時に備えておくことも必要ですし、今、愛するペットに悲しい思いをさせずに済むよう、工夫をする必要もあります。
お世話を引き継いでくれる人を決めておく
自分が入院したり死亡した場合、ペットのお世話を引き継いでくれる人を前もって決めておきましょう。まず考えられるのは、ご自身の家族や親戚でしょう。次に信頼できる友人。最後が保護団体。もちろん、事前に説明をし、同意を得ておく必要があります。
それを決めた上で、どのようなことを伝えておくべきかについては次章で詳しく説明します。
民間サービスを利用する
体力の衰退で、お散歩、ブラッシング、シャンプーなどのお世話が難しい場合は、ペットシッターやペットサロンなど、民間のサービスを利用しましょう。
今では、アプリから簡単にペットシッターを探せるサービスもありますので、スマホが使えるならぜひ利用してみてください。スマホの操作がわからない方も、この機会に家族や友人に教えてもらいながらチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
ペットと一緒に老人ホームに入居する
現在では、ペットと一緒に入居できる老人ホームも出てきています。
その場合、入居者さんのお世話だけでなく、ペットのお世話もしてくれる場合がほとんどです。体力や認知力が低下して、お世話が困難な場合はこうした老人ホームを探してペットと一緒に入居するのも1つの手です。
お世話を引き継いでくれる人に伝えておくべきこと
様々なサービスを利用したとしても、自分が亡くなった時を考えると、お世話を引き継いでくれる人は必ず探しておくべきです。その引き継ぎの中で伝えておくべきことはたくさんあります。
食物アレルギーの有無
ペットに食物アレルギーがある場合、お世話を引き継ぐ人がそれを知らなければ、アレルギーの食べ物を与えてしまう可能性があります。
命に関わってくることなので、必ず前もって伝えておくようにしましょう。
これまでの注射歴
犬の場合は、自治体への畜犬登録と予防接種が義務付けられています。飼い主や住所が変わった場合は畜犬登録の手続きを再度しなければいけないため、どこの自治体にいつ届出を出したかを伝えておきましょう。
また、これまでの予防注射の摂取履歴がわかるよう、領収書や愛犬手帳など、何らかの形で保存しておきましょう。
金銭的な交渉もしておこう
ペットを飼うのはお世話をする手間だけでなく、金銭的な負担もそれなりにかかります。ペットのお世話を引き継いでもらう前に、金銭的な交渉をしておくことも重要です。
金銭的な交渉をする際は、「ペットとお金を一緒に引き継ぐこと」、「書面に残すこと」の2つがポイントです。ペットとお金を一緒に引き継げば、「お金だけを使われてペットのお世話をしてもらえないのでは…?」という心配を防げますし、引き継ぐ側としても、お世話にかかるお金をしっかり払ってもらえることは安心でしょう。
ペットのお世話とお金をセットで引き継ぐには、次のような方法があります。
負担付遺贈
ペットのお世話を引き受けることを条件にお金を託す、という遺言。自筆ではなく、公証人が作成する「公正証書遺言」にすることが大切。
負担付死因贈与
ペットとお金をセットで贈与するという契約。遺言は一方的だが、これは双方で結ぶ契約なので簡単に破棄ができない。
ペットの信託
残したお金がペットのためにちゃんと使われているかを第三者が監督する。飼い主が亡くなったときだけでなく、入院したときや認知症になったときにも対応できる。
無料の弁護士相談を受けられる市区町村も多くあります。そういう相談を活用し、相談しておくと安心です。お住まいの役所に問い合わせてみても良いでしょう。
まとめ
今回は、高齢の方がペットを飼う上で知っておきたいリスクと、飼い主が元気なうちにやっておきたいことを解説しました。
これからペットを飼おうと考えている高齢の方は、リスクを承知の上で、本当に責任を持ってペットのお世話をしたり、お世話を引き継いだりできるのかをしっかり考えてから飼うようにしましょう。
今ペットを飼っている高齢の方や、そのお身内の方は、飼い主さんが入院したり亡くなったときの手順を決めておきましょう。
高齢者がペットを飼う際は、様々なリスクがあることを理解し、ペットがお世話を放棄されたり、ひとりぼっちになったりしないよう、飼い主やその周りの人がよく考えて話し合うことが大切です。
高齢者がペットを飼うということ。メリットや考えておきたいこととは?
人間にいやしを与えてくれるペットたち。飼い主との間に強い絆を築くペットは「コンパニオン・アニマル」と呼ばれ、飼い主の心と体の健康にも好影響を与えるとされています。
特に、高齢の飼い主の支えとなるというペットの役割は、近年大きな注目を集めています。
一方で、高齢の飼い主は入院や体力の低下、認知症などによりペットの世話をできなくなってしまうリスクが高いという側面もあります。
高齢者がペットを飼うことのメリット、問題点、そして何をすべきかについて考えてみましょう。
高齢者がペットを飼うメリットは?
心の健康
セラピストとして犬が人間の専門家よりも秀でているという研究結果があります。社会学者のGillian MacCologan氏はその要因として、「なでたり抱きしめたりできる」、「相手の年齢によって対応を変えない」ということを挙げています。
高齢の飼い主でも「年寄り扱いをしない」ということは、猫などの他の動物にも同じことが言えそうです。また、ペットを飼っている人は飼っていない人に比べて、配偶者が亡くなったとき、うつになりにくい、という研究結果もあります。
体の健康
ペットを飼うことは、飼い主の心だけでなく、体の健康にもよい影響をもたらします。
「ペットの世話をするために元気でいなければ」と思い、健康に気をつける上に、犬を飼っていれば散歩に出かける機会も自然と増えます。2017年の研究(Taniguchi, 2018)では、犬を飼っている高齢者は、犬を飼っていない高齢者に比べて1日の散歩時間が約20分長いことが分かりました。
犬の散歩のおかげで、近所の人とおしゃべりをする機会が増えることもあります。他人と関わることが少なくなった高齢者にとっては、特にこのような機会はとても貴重なものではないでしょうか。
高齢者とペットを取り巻く問題
飼い主の心と体によい効果をもたらすペットですが、一方で、高齢者がペットを飼うということにはさまざまな問題もあります。
捨て犬・捨て猫問題
飼い主が長期間入院することになったときや、亡くなってしまったときなど、他にペットの世話をしてくれる人がいなくなった場合、ペットは取り残されてしまいます。
2016年に朝日新聞が全国115の自治体に対して実施した調査によると、高齢が原因と見られる理由で捨てらた犬と猫は3000匹近くにものぼり(太田, 2018)大きな社会問題となっています。そのため、保護犬や保護猫の高齢者への譲渡に制限をかけている自治体も複数あります。
ペットと離れる喪失感
ペットの世話をできなくなったとき、代わりに世話をしてくれる人がいたとしても、かわいがっていたペットと離れることで受けるショックは大きいものです。他に身寄りがなく、ペットしか家族がいない高齢者の場合はいっそうでしょう。
世話を引き継ぐ人の負担
ペットを飼えば、エサ代や予防接種代、病気になったときの治療費など、何かとお金がかかるものです。もちろんそれなりに時間もかかります。
ですから、お金や時間に余裕がない人がペットの世話を引き継いでしまうと、大きな負担となってしまいます。
何をすべきなのか
それでは高齢の飼い主は、どのようなことをやっておくべきなのでしょうか。
代わりに世話してくれる人を決めておく
もしも自分でペットの世話ができなくなってしまったとき、「代わりに世話をしてくれる人」はいるでしょうか?世話をする人が誰もいなければ、ペットを保健所に預けることになってしまいます。
なるべくペットを飼い始める前に、代わりの人がいるかどうかを考えておきましょう。
ただし、世話を頼む相手は誰でもよいわけではありません。先ほども言いましたが、ペットを飼えば、それなりに時間やお金がかかります。具体的にどのくらいのお金や時間がかかるのかを相手に伝えた上で、本当に世話ができるのかどうか、よく考えてもらう必要があります。
世話を引き継いだ「後」のことも考える
ペットを代わりに世話してくれる人が決まったら、引き継いだ後のことも考えておきましょう。
ペットにアレルギーや持病がある場合は、必ず伝えておきます。また、事前にどのような予防接種を受けたかなども伝えるようにしましょう。そしてできる限りそのことを書面に残しておくとよいでしょう。
また、「ペットとお金をセットで引き継ぐ」という方法もあります。お金が伴えば、簡単に世話を放棄できませんし、「お金とセットで託される」ことは引き継ぐ側としても安心でしょう。
- 負担付遺贈
- ペットの世話を引き受けることを条件にお金を託す、という遺言。自筆ではなく、公証人が作成する「公正証書遺言」にすることが大切。
- 負担付死因贈与
- ペットとお金をセットで贈与するという契約。遺言は一方的だが、これは双方で結ぶ契約なので簡単に破棄ができない。
- ペットの信託
- 残したお金がペットのためにちゃんと使われているかを第三者が監督する。飼い主が亡くなったときだけでなく、入院したときや認知症になったときにも対応できる
(出典:中村, 2018)
飼い主の幸せ、ペットの幸せ
ペットは高齢者にさまざまなよい影響を与えます。しかし、その一方で、多くの問題も抱えています。
もちろんこれは高齢者に限った話ではありませんが、ペットを飼うのならば、「もしも」のときにどうするのかをよく考えておく必要があります。
出典
- McColgan, Gillian(2007).The importance of companion animal relationships in the lives of older people. Nursing Older People (through 2013), 19(1), 21-3.
- Taniguchi, Yu(2018). Physical, social, and psychological characteristics of community-dwelling elderly Japanese dog and cat owners. PLoS One, 13(11)
- 太田匡彦(2018).ペットとの暮らし、生きる励み 高齢の単身生活、世話が生む張り, 朝日新聞デジタル,
https://www.asahi.com/articles/DA3S13684905.html - 中村千晶(2018).「もしも」のときペットはどうなる!? 最期まで愛犬愛猫と暮らす方法, 朝日新聞デジタル,
https://petlifenet.org/wp-content/uploads/2018/06/20180621週刊朝日PDF.pdf.