【犬図鑑】陽気で賢くさまざまな個性が!スパニエル5種をご紹介
皆さんは「スパニエル」という名前がつく犬たちについて、ご存じでしょうか。キャバリアやアメリカン・コッカーはよく知られた人気の犬種ですね。
しかし、スパニエル種の犬たちが、狩猟の際にどういった役割をしていたのか、なぜ「スパニエル」と呼ばれているのかなどは、あまり知られていないかもしれません。そこで、今回はスパニエル犬種についてご紹介します。
「スパニエル」ってどんな犬?
スパニエルとは、フランス語で「スペインの(Epagneul)」を意味します。しかし、不思議なことにスペイン原産の犬にはスパニエルのような犬種がいません。一説には、スパニエルの祖先犬がスペイン地方からフランスに入ったため、フランス人がそう名付けたのではないかと言われています。
スパニエルは鳥猟犬の一種ですが、長い耳とウェーブした被毛、大きな目をした犬が多く、猟犬ながらとても愛らしい容姿をしています。
狩猟の際には、ハンターが獲物を撃ちやすいように、発見した鳥を驚かせて飛び立たせる役割を担っていました。ただし、スパニエルの中には、キャバリアなど、猟犬ではなく愛玩目的の犬もいます。
また、日本のお座敷犬である「狆」も、スパニエルの血統ではなく全く猟犬ではないにもかかわらず、スパニエルに似た外見から、英語では「ジャパニーズ・スパニエル(Japanese Spaniel)」と呼ばれることがあります。
優しく穏やかな「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルはイギリス原産の犬種で、「キャバリア」や「キャバ」などと呼ばれ、日本でも人気のある犬種です。
絹のように美しい毛並みを持ち、穏やかで友好的な性格の犬が多い犬種ですが、名前の「キャバリア」は中世の騎士にちなんだ意味を持ち、性格と正反対の勇ましい印象を与えます。「キング・チャールズ」はイギリス王室のチャールズ1世、2世に愛されていた犬の流れを汲むところからきています。
しつけに苦労することがほとんどないほど飼いやすい犬とされていますが、遺伝的に心臓病が多く、健康管理が非常に重要な犬種です。
瞬発力がすごい「イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル」
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、スパニエルの中でも特に古い歴史を持つ犬種で、現代でも猟犬として活躍しています。「スプリンガー」は、バネのような瞬発力を持つことから名付けられました。
19世紀後半までは、後述するイングリッシュ・コッカー・スパニエルと同じ犬種とされていましたが、サイズが大きいタイプをスプリンガー・スパニエル、小さいタイプをコッカー・スパニエルと区別し、別犬種として扱われるようになりました。
明るく活発で、賢くトレーニングしやすい犬種ですが、特に理由もなく突然手がつけられないほど怒り狂う「激怒症候群(レイジ・シンドローム)」という先天性疾患の好発犬種であるため、その点には注意が必要です。
優秀な猟犬「イングリッシュ・コッカー・スパニエル」
イングリッシュ・コッカー・スパニエルは、先述したイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル(以下、スプリンガー)から分かれた犬種で、スプリンガーより小型な体型ですが、狩猟犬の性質が強い犬種です。原産国のイギリスでは非常に人気があり、日本では「インギー」という愛称で呼ばれることがあります。
「コッカー」とはヤマシギという鳥を意味し、ヤマシギ猟に使われるスパニエルという意味でこの名が付けられました。
明るく従順な性格ですが、スプリンガーと同じく「激怒症候群(レイジ・シンドローム)」の好発犬種でもあるため、注意が必要です。
とにかく陽気な「アメリカン・コッカー・スパニエル」
アメリカン・コッカー・スパニエルはディズニー映画の『わんわん物語』の主役として知られ、世界的に愛されているアメリカ原産の犬種です。
非常に人懐こく明るい性格で、アメリカン・ケネル・クラブのサイトでは、「The merry and frolicsome Cocker Spaniel」(陽気で陽気なコッカー・スパニエル)と紹介されるほど、とにかく陽気な犬として知られています。日本では「アメコカ」という愛称で呼ばれています。
先述したイングリッシュ・コッカー・スパニエルから愛玩犬向きの犬が選ばれ、アメリカン・コッカー・スパニエルの基になりました。
美しい毛並みを維持するため、こまめなブラッシングや定期的なトリミングをし、垂れた耳のケアも必要になるため、手入れには手間を要する犬種です。
意外にもスパニエル種の「パピヨン」
意外なことに、パピヨンにもスパニエルの血が入っています。パピヨンの祖先は小型だったため、「一寸法師のスパニエル(エパニエルナン)」と呼ばれ、16世紀にはフランス国内に入り、王侯貴族たちに寵愛を受けていました。
当時は垂れ耳タイプのパピヨンが多く、現在のような耳が立ったタイプのパピヨンは、18世紀末頃から選択的なブリーディングにより増えていきました。
パピヨンとはフランス語で「蝶」を意味し、耳が蝶の羽のように見えることに由来しています。英語では「バタフライ・スパニエル(butterfly spaniel)」とも呼ばれることがあります。
垂れ耳タイプのパピヨンは、フランス語で「蛾」を意味する「ファレーヌ(phalene)」と呼ばれます。蛾と名付けられてしまいましたが、パピヨンは立ち耳タイプが主流なため、ファレーヌタイプは稀少だとも言えます。
まとめ
現役の逞しい猟犬から、それとはかけ離れた可愛らしい愛玩犬まで、様々なスパニエルたちを5種ご紹介しました。鳥猟犬の中にはレトリーバーやポインター、セターなど役割によって種類がありますが、スパニエルほど多様なタイプがある犬種はいません。
スパニエル種はまだまだたくさんの犬種が存在しますので、興味を持った方はご自身でも調べてみてくださいね。
【犬図鑑】穏やかさと賢さが魅力!6種のレトリーバーたちをご紹介
名前に「レトリーバー」とつく犬種としては、ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーが有名で、優れた家庭犬として広く愛される一方で、盲導犬やセラピー犬などの多岐にわたる分野で活躍することでも知られています。
しかしながら、レトリーバーと名がつく犬はこれら2犬種だけに限られません。今回は、6種類のレトリーバーを紹介いたします。中には日本ではあまり知られていない犬種も含まれていますので、どのような犬たちなのか見ていきましょう。
「レトリーバー」ってどんな犬?
レトリーバーは、ハンターが撃ち落とした獲物を回収し、ハンターの元に持ち帰る役割を担っていた鳥猟犬です。その名前は、「回収する」という意味の「レトリーブ(retrieve)」に由来し、「レトリーバー(retriever)」は「回収者」を意味します。
獲物がしばしば沼地や水中に落ちるため、泳ぐことが得意です。また、獲物を傷つけずにハンターの元に持ち帰るために、レトリーバーは獲物を柔らかく咥える「ソフトマウス」という技術を備えています。
外見的には、垂れた耳と優しい顔つきの大型犬で、がっしりとした骨格を持つという共通点があります。性格的には、穏やかで賢く、従順で遊び好きという特徴があります。
レトリーバーは多くの愛好家に支持されており、専門の雑誌も発行されています。
ちなみに、「レトリバー」と「レトリーバー」という表記の両方が使われることがありますが、どちらも間違いではありません。ジャパンケネルクラブ(JKC)では「レトリーバー」という表記に統一されており、先に紹介した雑誌でも「レトリーバー」という表記が使用されています。
明るく優秀な「ラブラドール・レトリーバー」
ラブラドール・レトリーバーは、世界的に非常に人気のある犬種であり、その人気は衰えることがありません。この犬種が家庭犬だけでなく盲導犬や介助犬、麻薬捜査犬など多岐にわたる分野で活躍する理由は、「高い服従性」と「自己判断能力」の両方を兼ね備えているからだと言われています。
また、ラブラドール・レトリーバーは明るく好奇心旺盛であり、食欲も旺盛なため、太りやすい傾向があります。
被毛は短毛ですが、ダブルコートのため下毛がよく抜けます。毛色はブラック、イエロー、チョコレートの3種類があり、ブラックは「黒ラブ」、チョコレートは「チョコラブ」という愛称で親しまれています。
穏やかで甘えん坊な「ゴールデン・レトリーバー」
ゴールデン・レトリーバーは見た目からも分かる通り、穏やかで人懐こい傾向があります。しかし、穏やかな一方で非常に体力があり、活発な犬種でもあります。日本だけでなく、世界的にもラブラドールと人気を二分する代表的なレトリーバーです。
興奮してはしゃいだり、甘えん坊で人に対して依存的な一面も見られるため、レトリーバー種の中では精神的にやや幼い傾向があるとされています。
被毛はダブルコートで、滑らかなウェーブがかかった上毛と、密生した下毛を持ちます。前足や胸の飾り毛は走るとしなやかに美しくなびきます。毛色はゴールドまたはクリームで、胸にわずかに白い毛が見られることもあります。
優雅な佇まいの「フラットコーテッド・レトリーバー」
名前の通り、長くしなやかな直毛を持つレトリーバーで、日本ではラブラドールやゴールデンに次ぐ人気を誇り、「フラッティ」という愛称で親しまれています。非常に明るく、愛嬌があり、甘えん坊な性格が人気の理由の一つです。
他のレトリーバー種ほど胸幅や腰幅はなく、スマートな印象ですが、しっかりとした筋肉を持ち、より軽快に優雅に歩きます。
非常に滑らかで美しい被毛を持ちますが、耐水性のある密生した下毛があるため、抜け毛が多く、ブラッシングが欠かせません。毛色はブラックまたはレバーの単色のみです。
小柄なレトリーバー「ノヴァ・スコシア・ダック・トーリング・レトリーバー」
「ノヴァ・スコシア・ダック・トーリング・レトリーバー」という非常に長い名前を持つ犬種ですが、「ノヴァ・スコシア」は原産地のカナダのノヴァ・スコシア半島を示し、「ダック・トーリング」はカモ猟の際に特殊な技術である「トーリング」を使ってカモをおびき寄せることから名付けられました。英語圏では一般的に「トラー」という愛称で呼ばれています。
レトリーバーの中では最も小柄なサイズですが、機敏さは群を抜いています。日本国内では飼育頭数が少なく、希少な存在ですが、カナダや北欧などでは小型のレトリーバーとして人気があります。
毛色はレッドやオレンジなどで、しっぽの先や脚、胸などに白い斑が入ります。被毛はダブルコートで、滑らかでウェーブのかかった上毛と密集した下毛を持ちます。
タフさが自慢の「チェサピーク・ベイ・レトリーバー」
名前の通り、原産地はアメリカ東部のメリーランド州チェサピーク湾周辺ですが、原産国であるアメリカではラブラドールやゴールデンなどのイギリス原産のレトリーバーの方が人気が高く、日本でも登録頭数が少ない犬種です。愛好家からは「チェシー」という愛称で呼ばれています。
他のレトリーバー種と比べて特にタフであり、最も優れた猟犬の能力を持つと言われています。アメリカでは盲導犬としても活躍しており、日本では1992年に初めての介助犬となった犬種としても知られています。
毛色はブラウン、セッジ、デッドグラス、タンなど、様々な濃淡のブラウン系バリエーションがあります。胸や腹部には小さなホワイトの斑が入ることもあります。被毛は体の中心部を中心にウェーブしており、上毛は短くて厚く、下毛は密集しており、水をよくはじきます。
自立心が高いレア犬種「カーリーコーテッド・レトリーバー」
レトリーバー種の中でも特に歴史が古いとされている犬種です。かつてカナダのニューファンドランド島に生息していた犬とイギリスの古いウォーター・ドッグとの混血の犬に、プードルを交配させたため、名前の通り強くカールした被毛を持つようになりました。この特徴的な巻き毛は狩猟時に植物から身を守り、寒い環境下で保温の役割を果たしてきました。
他のレトリーバー種と比較して、自立心が高く非常に賢い犬種と言われています。
特徴的な巻き毛はシングルコートであり、他のレトリーバー種よりも手入れは簡単ですが、換毛期には大量の毛が抜けるため、頻繁なブラッシングが必要です。毛色はブラックまたはレバーの単色です。
世界中には愛好家が存在しますが、日本では非常に希少な犬種であるため、ほとんど見かけることはありません。
まとめ
多くの人々に愛される犬種から、あまり知られていない犬種まで、様々なレトリーバーをご紹介しました。彼らの陽気さや活発さは、私たちを元気づける力を持っているように感じます。
大型犬であるため、飼うのはなかなか難しいかもしれませんが、ぜひお気に入りのレトリーバーを見つけてみてください。