スズメを飼うのは違法?ケガをしているスズメを保護するのもNG!
身近な野生動物であるスズメ。小さくてコロコロした姿がとてもかわいくて、一度は飼ってみたいと思ったことがあるのではないでしょうか。
しかし、かわいいからといって野生のスズメを捕獲・飼育してはいけません。また、ケガなどで一時的に保護することもできません。では、もしケガをしたスズメを見かけたらどうしたら良いのでしょうか?
今回は、スズメを飼ってはいけない理由と、ケガをしたスズメを見かけた時の対応について解説していきます。
スズメの飼育は法律で禁じられている
鳥獣保護法第8条により、鳥獣および鳥類の卵を捕獲・採取・損傷することが禁じられています。
野鳥を許可なく捕獲した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、飼育した場合は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
エサを与えるだけであれば問題ない
法律上はスズメのエサやりは禁じられておらず、違法ではありません。
しかし、住宅地などで鳥へのエサやりは、糞害など周辺住民へ迷惑となってしまう場合があります。不要なトラブルを防ぐためにも、周囲の配慮は怠らないように気をつけましょう。
なぜスズメを飼育してはいけないの?
端的に言えば「法律で禁止されているから」というのが理由ですが、ではなぜ法律で禁止されているのでしょうか?
1. 生態系のバランスが崩れる
生態系の一部であるスズメを捕獲したり保護したりすることにより生態系のバランスが崩れてしまい、他の生物にも影響を与えてしまう可能性があります。
自然界は「食う・食われる」という関係によって成り立っていますが、そこに人が介入することにより、本来他の動物のエサになるはずだったものが存在しなくなります。そして、エサがなくなった動物は生きていくことができなくなってしまいます。
2. 種の存続が危ぶまれる
スズメをはじめとした鳥獣の捕獲や飼育が自由に行えてしまうと、乱獲などによりその種自体の存続も危ぶまれてしまう可能性もあります。
19世紀はじめ、アメリカにはリョコウバトというハトの仲間が数億匹もいました。しかし、森林破壊による生息地の減少や食用として乱獲された結果、急激に個体数が減少し、1900年頃には野生のものが、1914年には飼育下の個体がいなくなり絶滅してしまいました。
違法でもいいから飼いたい、保護したいという気持ちは理解できますが、なぜ法律によって捕獲や飼育が禁止されているのかを冷静に考える必要があるでしょう。
弱ったスズメなら保護して良い?
鳥同士の争いや、巣から落ちてしまいカラスや猫に襲われたヒナなど、ケガをしたスズメを見かけることもあるかもしれません。このまま放っておいたら死んでしまうから保護するのは構わないのでは?と思うかもしれませんが、保護することも法律上は「捕獲」という扱いになり違法です。
以前、ある芸能人がカラスに襲われているスズメを保護して、そのまま飼育しているとニュースで取り上げられたことがありました。公的機関に保護した旨を伝えたところ、違法捕獲だから放鳥するよう注意を受けたそうです。しかし、かわいそう、野生では生きていけないなどの理由でしばらく飼育を続けていたそうですが、再度通知が届き、最終的には手放したとのことです。
一時的であれば合法的に飼育できる可能性がある
では、ケガしたスズメを見かけたらどうすれば良いのでしょうか?これまで、スズメの飼育は法律で禁止されているとお伝えしてきましたが、実は都道府県知事の許可があれば飼育ができることもあります。
ケガをしたスズメを見つけた場合は、まずは地域の環境課などに連絡し指示を仰ぎましょう。場合によっては、指定の獣医師に診察してもらうように案内され、獣医師の指示により治療と保護飼育が合法的に行えることがあります。
ただし、基本的には放鳥するよう指示が出る可能性が高いため、飼育を前提とした捕獲はやめましょう。
死亡したスズメを見つけた場合
道端で死んでしまったスズメを見かけたら、環境省か地域の保健所等に連絡しましょう。鳥インフルエンザや寄生虫などに感染している可能性もあるため、素手で触るのは危険です。
万が一、スズメが鳥インフルエンザに感染していた場合、ペットの鳥類に感染させてしまう危険もあります。自宅で鳥類を飼育している方は特に注意し、帰宅後は手洗いや消毒をしっかり行いましょう。
まとめ
スズメがかわいいという気持ちもわかりますし、保護してあげたいという気持ちもとてもわかります。しかし、私たち人間が介入することで間接的に影響を受けている動物がいるということも忘れてはいけません。
もしケガをしているスズメを見かけたら、まずは環境省や地域の環境課などに連絡をして指示を仰ぎましょう。特別な許可が下りれば違法にはなりませんし、堂々と世話をしてあげることもできます。
身近な存在だからこそ無闇に捕獲などせず、どうかそっと見守ってあげてください。
かわいいけど飼うのは違法!シカをペットにできない理由とは
6月上旬、東京都の足立区で、野生のシカが捕獲されました。
捕獲されたシカが区の施設で保護されることがメディアで報じられると、区には「かわいそうだから引き取って飼育したい」という問い合わせが寄せられました。
しかし、野生鳥獣であるシカを飼うことは法律で禁止されており、原則として飼うことはできません。一方、シカは害獣として扱われているため、野生に返すことも難しく、殺処分の可能性も十分にあるといいます。
そもそも、なぜシカを飼ってはいけないという法律ができたのでしょうか?
また、シカが害獣として捕獲・駆除されるようになったのには、どのような原因があるのでしょうか?
なぜシカを飼ってはいけないのか?
シカの飼育は、鳥獣保護管理法(正式名称:鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)によって原則禁止されています。
では、この鳥獣保護管理法とはどのようなものなのでしょうか?
鳥獣保護管理法の目的
そもそも、鳥獣保護法(鳥獣保護管理法)はどのような目的で制定されたのでしょうか?
まずは第一章第一条を見てみましょう。
第一条 この法律は、鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するとともに、猟具の使用に係る危険を予防することにより、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保(生態系の保護を含む。以下同じ。)、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資することを目的とする。
条文から、鳥獣の保護、管理、狩猟の適正化によって、「生物多様性」と「人間の生活環境、農林水産業」の2つを守っていくことを主な目的にしていることがわかります。
鳥獣保護法の歴史
鳥獣保護法の歴史は、1896年に成立した「狩猟法」まで遡ります。狩猟法は、狩猟の際の安全・秩序の確保を目的としていましたが、何度か法改正を重ねる中で、狩猟して良い鳥獣と、それ以外の鳥獣が分けられるようになり、鳥獣保護の意味合いを持つようになります。
また、生態系保護や、生活や農林水産業の保護の意味合いも含むようになり、2002年の鳥獣保護法全部改正にて、現在の鳥獣保護法の基盤が作られました。
2014年の改正で「管理」が色濃くなった
2014年に鳥獣保護法が改正されると、今まで以上に鳥獣個体数の「管理」の意味合いが強くなりました。
この背景には、1980年頃からの30年余りで、ニホンジカやイノシシの数が爆発的に増え、それに伴う鳥獣被害が増えたことが原因だとされています。
これに関して、環境保全団体からは、「生態系保全の意味合いが薄れ、増えすぎた鳥獣の管理に偏ることで、減りすぎた鳥獣の保護への考慮が不十分である」との非難も寄せられました。
シカの数は爆発的に増えた?
環境省によると、1978年から2014年までの36年間で、ニホンジカが約2.5倍まで増えたとされています。
では、ニホンジカはなぜこんなにも増えたのでしょうか?また、ニホンジカの増加でどのような影響が出ているのでしょうか?まずは、一般的に言われている説をご紹介します。
なぜ増えたのか?
ニホンジカが増えた理由として、一般的に言われているのは、「人口の変化」「オオカミの絶滅」「温暖化」の3点です。
人口の変化
明治以降、中山間地域に人口がたくさん流れ込み、耕作地を開拓していったことで、野生生物が一気に減少しました。やがて、都市部に人口が流出したため、中山間地域では野生生物が再び数を増やした、と考えられています。また、人口減少と少子高齢化によって、狩猟人口が減ったことも原因の1つだとされています。
オオカミの絶滅
ニホンジカの天敵である、ニホンオオカミの絶滅も、大きな原因だと言われています。かといって、海外からオオカミを導入すれば、生態系に悪影響を及ぼす可能性があるため、無闇に天敵を放てば良いというわけではありません。
温暖化
気候変動によって、積雪が少なくなり、ニホンジカが生息できる地域が増えたことも、ニホンジカの増加に繋がったとされています。
なぜ「害獣」なのか?
ニホンジカはとてもかわいらしい見た目をしていますが、鳥獣保護法では「害獣」として取り扱われています。その理由は、ニホンジカが数を増やしたことで、人間と自然環境に被害が及ぶようになったからです。
人間に与える被害
人間への被害は主にニホンジカが農作物を食べてしまうという被害です。そのため、電気柵を用いる、銃声を発する、罠を仕掛けるなどして、農家の人たちは様々なシカ対策を試行錯誤しています。
自然環境に与える被害
シカが増えすぎてしまえば、当然のことながら全体の食べる量も増えます。すると、山の中の植物が減ってしまったり、樹皮をはいで食べてしまったりします。全ての生き物は生態系のなかでつながりを持っていますから、ひとつバランスが崩れれば全てに影響が及ぶことになるのです。
「シカは異常に増えているわけではない」と考える専門家もいる
一般的に「シカは異常に増えている」と考えられている一方で、「確かに1970年頃と比較すると個体数は増えているが、今の状況が異常と考えるのは早計である」とする考え方もあります。
北海道大学の揚妻准教授によると、1970年よりもっと前の自然環境を考えると、オオカミが健在していた時期でもシカの数は今と同じくらいいたと推測することができ、1970年頃のシカの数が異常に少なかったという方がむしろ妥当だというのです。
つまり、人間の介入が少なかった本来の自然環境的には、シカの数を一生懸命減らそうとするよりむしろ、シカがたくさんいる状態を維持できる環境が望ましい可能性もあるということです。
シカと人間生活
シカが増えていると考えるにしろ、現在が正常であると考えるにしろ、いずれにしても人間の営みがシカの生態に影響を与えてきたことには変わりありません。
シカに限らず、「かわいいから」といってすぐにペットにしてしまったり、飼えなくなってしまって野生に返すなどといった行為も、少なからず生態系に影響を与えてしまいます。
飼ってはいけないとされる動物は飼わないこと、また、飼い始めたペットは最後までしっかり面倒をみることを、ひとりひとりがしっかり守っていくことは、地球上の生態系や私たち自身の生活を守る上で欠かせないことなのです。
足立区で捕獲されたシカのその後
足立区役所の方からご依頼を頂き、荒川の土手で保護されたシカさんが仲間入りしました❗
お名前は、エスケープしたシカという事で小百合園長が「ケープ」くんと名付けました😌
ケープくんをどうぞ、よろしくお願いいたしますm(_ _)m#市原ぞうの国#ぞうの国 #シカ pic.twitter.com/Dq9PowgKeW— 市原ぞうの国・サユリワールド【公式】 (@IEK_SW_official) June 8, 2020
今回足立区で捕獲されたシカは、区からの依頼に応じた千葉県の市原ぞうの国が引き取りました。「エスケープしてきた」ことにちなんで「ケープくん」と命名され、検疫後、体調などを見ながら一般公開時期を決めるそうです。
ツイッターやフェイスブックなどでもケープくんの様子が定期的に報告されていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
市原ぞうの国
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