人は他の人や動物など何かの真似をして行動をすることができます。一昔前には先輩を見て学べといった風習があったり、小さい子が親の真似をして電話をかける仕草をするなど、人が人の行動を真似てその行動をするというのは珍しいことではないでしょう。
実は、犬も人や他の犬の行動を見てその行動を真似ることができると言われています。今回は、ちょっと信じがたい気もするこの話について、研究の結果を交えて紹介します。
この記事の目次
犬は行動を真似できる
結論から言うと、犬は他者の行動を観察してその行動を真似ることができるとされています。
これは社会的学習(Social learning)といい、これまで多くの研究が行われてきました。それらの結果、犬だけでなく、チンパンジーやサル、タコも他者の行動を真似ることができることがわかっています。
実験で証明された模倣
これまで行われてきた動物の模倣に関する研究の中から、今回は犬の模倣に関する実験を1つ紹介します。
生後8週目子犬の社会的学習に関する実験
フードを隠したパズルボックスからフードを取り出すという課題に対し、
- お手本が課題に取り組む様子を見た後に、子犬も同様の課題を行った際に各条件どのような差があるか
- 得た情報を記憶し保持する能力があるか
を確認する実験が行われました。
画像:Social learning from conspecifics and humans in dog puppiesより
4つの条件
生後8週目の子犬41頭を、以下の4条件にランダムに分けました。
- 条件①お手本となる行動を見ずに課題に取り組む
- 条件②お手本である母犬が課題に取り組んでいる様子を2回見る
- 条件③お手本である馴染みのない犬が課題に取り組んでいる様子を2回見る
- 条件④お手本である人間が課題に取り組んでいる様子を2回見る
実験結果と考察
- お手本を見たグループで、解決時間が早かったのは④人間、③馴染みのない犬、②母犬の順であった。
- ①お手本を見なかったグループより④人間、③馴染みのない犬をお手本としたグループの方が統計的に解決時間が早かった。
- お手本を見たグループで、お手本の動きを見ていた時間は、②母犬よりも、③馴染みのない犬と④人間のグループの方が約15秒長かった。
- 課題に取り組んでから一時間後に再び挑戦したところ、一時間前の行動が記憶されており、課題をクリアできた。
これらの結果から、子犬は8週目の時点で人間や犬の行動を見て真似る、社会的学習ができる可能性があることが明らかにされました。また、母犬といった普段生活をしている対象よりも、馴染みのない対象の方が子犬の集中力を高め、観察学習にも良い影響を及ぼす可能性を示しています。
参考文献:Social learning from conspecifics and humans in dog puppies
愛犬も飼い主の行動を真似できるか?
イタリアのドッグトレーナー、Claudia Fugazza(クラウディア・フガッツァ)が提唱した「Do as I do! (私がやるようにやってみて!)」は、飼い主(人)の行動を犬に真似をしてもらうトレーニング方法です。
大まかなトレーニング方法は、犬にマテをしてもらい、その場で飼い主に注目をしてもらいます。そして、飼い主が行動を実際にやった後に「Do it!」などの合図を出し、犬が飼い主が行った行動を真似て行います。
もちろんすぐにで出来るものではなく、愛犬と飼い主の関係性の構築ができていることや、「Do it」の合図が行動を真似る意味であることを覚えてもらう必要もあります。練習を重ねて行動を真似ることができた際には、飼い主の愛犬に対する愛情がさらに増すでしょう。
模倣学習のメリット・デメリット
メリットが多いように感じる犬の模倣学習ですが、デメリットも考えられます。
メリットとしては、短い学習時間で行動が習得できる、罰子などの愛犬が嫌がることを使わずに行動を教えられる、食が報酬にならない犬でも行動が習得しやすいといったことが挙げられます。
一方のデメリットは、犬同士において吠えなど、人からすると真似てほしくない行動が学習される可能性があります。多頭飼いの場合、先住犬が吠えるタイミングで後住犬が吠えるようになったといった話はよく聞く話ではないでしょうか。
まとめ
犬同士が真似をするというのは、犬を見ているとなんとなく想像がつきますが、犬は人の行動を真似できるというのは驚きではないでしょうか。安易ではありますが、愛犬が自分の真似をしてくれたら面白いですし、かわいくて仕方ないですよね。
紹介した「Do as I do」は決して簡単にできるトレーニングではないかと思いますが、挑戦してみるのも楽しいのではないでしょうか。日本にも「Do as I Do」トレーニング公認のドッグトレーナーもいるようです。
愛犬とのトレーニングに刺激が欲しい時には、こういった新たなものに挑戦してみてはいかがでしょうか。