ハスキーブームが落ち着いた頃、縁あって実家に迎えたシベリアン・ハスキー。力の強さや運動量の多さなど、飼う前には想像していなかった現実に直面し「犬種の特徴を理解せずに迎えることの危うさ」を強く感じたのです。
現在は小型犬が人気ですが、どんな犬種であっても犬は長い年月を共に過ごす家族です。本記事では、愛犬との体験を通じて見えてきた「犬種選びで本当に大切な視点」を考えていきます。
この記事の目次
ハスキーブームを振り返る

30年ほど前(1990年代前半ごろ)、日本ではソリ犬のイメージや漫画の影響により、シベリアン・ハスキーが爆発的な人気を得ました。「精悍な顔立ちや青い目がかっこいい」「見た目に反して性格は穏やかなので飼いやすそう」という理由で、多くの家庭がシベリアン・ハスキーを飼い始めました。
実家でのシベリアン・ハスキーとの暮らし
実家でシベリアン・ハスキーを飼い始めたのは、ブームの終わり頃。特別にこの犬種を希望していたわけではなく、たまたま知人の紹介で譲ってもらったのがこの子でした。
実家にやってきたのは10ヶ月のときで、すでに体重は18kg。「貰い手がいなくて1匹だけ残っていた」という話を聞いていたので、この子もブームに翻弄された子だったのかもしれません。
シベリアン・ハスキーについては、「大きな犬だな」という程度の認識で、犬種の特徴や性質について深く考えたことはありませんでした。しかし実際に暮らしてみると、力の強さに驚かされることがたびたびありました。
子どもでは制御しきれない力の強さ
1歳を超える頃には体重が20kgになり、小学生だった私は犬と全力で引っ張りっこをしながら散歩していました。「さすがに動かせないだろう」と思って一時的に繋いでおいたコンクリートの重りを、家族が目を離した隙に何メートルも動かしていたこともあります。
抜け毛の量に驚く
当時は犬を外で飼うのが一般的だったため、実家でも犬小屋は外にありました。
おかげで、部屋の掃除に追われたということはないのですが、シベリアン・ハスキーの抜け毛の量はとても多く、換毛期には「抜け毛でクッションが作れるのではないか」というくらいモサッと抜けるので、犬と遊んだ後は服が毛だらけになりました。
短期間で収束したハスキーブーム
実際、ハスキーブームの後には、シベリアン・ハスキーの運動量や抜け毛、しつけの難しさなどに直面し、「イメージと違った」「飼いきれない」と飼育を放棄される例が多発しました。
その結果、動物保護センターへの持ち込み件数も増加し、社会問題となったのです。1990年代後半には急速に人気が落ちました。これは、ペットブームの負の側面を示した事例です。
実家のハスキーは幸いにも家族に最期まで愛されましたが、この経験から「犬を迎える前に犬種の特徴を理解することの大切さ」を強く感じるようになりました。
室内飼育が主流になった現代のペット事情

住宅事情が変わり、現在では犬と「室内で一緒に暮らす」ことが当たり前の時代です。それに伴い、室内で飼いやすい小型犬や中型犬が人気となり、トイ・プードルやチワワ、ミニチュア・ダックスなどがペットショップやブリーダーでよく見られるようになりました。
アニコム損保が実施した2025年における人気犬種ランキングでは、10位までに入っているのは全て小型犬もしくは中型犬です。大型犬は13位のゴールデン・レトリーバーが最上位となっています。
小型犬が選ばれやすい理由
小型犬は体重が軽く、抱っこや散歩が比較的楽です。シングルコートや短毛の犬種を選べば比較的抜け毛も少なく、掃除の負担も軽減されます。都市部のマンション住まいや、忙しくて長時間の散歩に割けない家庭にとっても、小型犬は飼育しやすい存在です。
一方で、小型犬だからこそ気をつけたいこともあります。
例えば、
- 骨が細く、高いところから飛び降りると骨折しやすい
- 繊細な性格の子が多く、大型犬に比べて吠えやすい
- ストレスに弱い
などのように、それぞれの犬種ごとに特徴や注意点があります。「小さいから飼育も簡単」というわけではなく、どの犬種も適切な知識とケアが必要です。
犬種選びで大切にしたい視点

時代や暮らしの変化によって人気の犬種は移り変わっていきますが、重要なのはいつの時代も「自分の暮らしに合っているかどうか」という視点です。
シベリアン・ハスキーの介護を経験したことで、子犬を迎えるときに「かわいい」「人気がある」だけで犬種を決めるのは特に危ういことだと感じます。迎える前に以下のような視点を持つことが大切です。
- 家族構成と自宅の環境
- 犬の体格と必要な運動量
- 性格や気質
- 寿命と健康リスク
1.家族構成と自宅の環境
小型犬:マンションや都市部でも飼いやすい。小さな子どもや高齢者がいる家庭では扱いやすいが、踏みつけや抱っこ中に落としてしまうなどの事故に注意。
大型犬:広いスペースや庭がある環境向き。子どもと元気に遊べる一方、留守が多い家庭では十分な運動やケアを与えるのが難しくなる。
2.犬の体格と必要な運動量
小型犬:散歩の負担は軽く、室内でもある程度の運動が可能。ただしちょっとした段差や落下でもケガをしやすい。
大型犬:1回の散歩で数km歩くなど十分な運動量が必須のため、飼い主の体力や時間が必要。運動不足はストレスや肥満につながりやすい。
3.性格や気質
小型犬:愛玩犬として改良されているため、人懐っこい性格である一方、警戒心が強く吠えやすい犬種も多い。
大型犬:比較的落ち着いて温厚な性格の犬種も多いが、体格が大きいためしつけを怠るとコントロールが難しい。
4.寿命と健康リスク
小型犬:寿命は長めで平均14〜16歳。心臓病や膝蓋骨脱臼など、犬種ごとにかかりやすい病気がある。
大型犬:寿命は短めで平均10〜12歳。股関節形成不全や胃捻転などに注意が必要。
将来的な認知症や介護の負担も視野に入れる
犬種に関係なく、12歳頃からは認知症を発症する犬が増えてきます。昼夜逆転や夜鳴き、徘徊などによる介護が発生する可能性があることも視野に入れておきましょう。
犬の平均寿命は15歳近いことを考えると、自分が15年後にどんなライフステージにいて、犬の介護ができるかどうかを念頭に置くことが大切です。
ペットブームに流されず、自分に合う犬を迎えるために

ペットブームはいつの時代にもあります。シベリアン・ハスキー、ウェルシュ・コーギー、チワワ、トイ・プードル。テレビやSNSの影響、有名人が飼っているといった理由で、特定の犬種が一気に人気になることは珍しくありません。
しかし、ブームに乗って迎えられた犬の中には、生活に合わず最悪の場合は手放されてしまう子もいます。
考えたい視点
犬を迎えるときに必要なのは、流行や見た目のかわいさだけではなく、自分や家族の15年後までのライフスタイルを今の段階から考えておくこと。こうした視点を持つことが、犬も人も幸せに暮らす第一歩になります。
まとめ

ペットブームは時代ごとに繰り返されますが、本当に大切なのは「流行に乗ること」ではなく、「自分や家族の暮らしに合っているか」「最期まで寄り添えるかどうか」です。
私自身、ハスキーと暮らした経験から、犬種の特徴や飼育の現実を知らずに迎えることの危うさを痛感しました。犬は10年以上共に生きる大切な家族です。体格や性格、健康リスクや介護まで含め、未来の生活と照らし合わせて選ぶことが欠かせません。
どの犬種であっても「命を預かる責任」は同じです。どうか流行や憧れだけでなく、自分の暮らしに合った犬を迎え、最後まで寄り添ってあげてください。







































