皆さんは「スパニエル」という名前がつく犬たちについて、ご存じでしょうか。キャバリアやアメリカン・コッカーはよく知られた人気の犬種ですね。
しかし、スパニエル種の犬たちが、狩猟の際にどういった役割をしていたのか、なぜ「スパニエル」と呼ばれているのかなどは、あまり知られていないかもしれません。そこで、今回はスパニエル犬種についてご紹介します。
この記事の目次
「スパニエル」ってどんな犬?
スパニエルとは、フランス語で「スペインの(Epagneul)」を意味します。しかし、不思議なことにスペイン原産の犬にはスパニエルのような犬種がいません。一説には、スパニエルの祖先犬がスペイン地方からフランスに入ったため、フランス人がそう名付けたのではないかと言われています。
スパニエルは鳥猟犬の一種ですが、長い耳とウェーブした被毛、大きな目をした犬が多く、猟犬ながらとても愛らしい容姿をしています。
狩猟の際には、ハンターが獲物を撃ちやすいように、発見した鳥を驚かせて飛び立たせる役割を担っていました。ただし、スパニエルの中には、キャバリアなど、猟犬ではなく愛玩目的の犬もいます。
また、日本のお座敷犬である「狆」も、スパニエルの血統ではなく全く猟犬ではないにもかかわらず、スパニエルに似た外見から、英語では「ジャパニーズ・スパニエル(Japanese Spaniel)」と呼ばれることがあります。
優しく穏やかな「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルはイギリス原産の犬種で、「キャバリア」や「キャバ」などと呼ばれ、日本でも人気のある犬種です。
絹のように美しい毛並みを持ち、穏やかで友好的な性格の犬が多い犬種ですが、名前の「キャバリア」は中世の騎士にちなんだ意味を持ち、性格と正反対の勇ましい印象を与えます。「キング・チャールズ」はイギリス王室のチャールズ1世、2世に愛されていた犬の流れを汲むところからきています。
しつけに苦労することがほとんどないほど飼いやすい犬とされていますが、遺伝的に心臓病が多く、健康管理が非常に重要な犬種です。
瞬発力がすごい「イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル」
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、スパニエルの中でも特に古い歴史を持つ犬種で、現代でも猟犬として活躍しています。「スプリンガー」は、バネのような瞬発力を持つことから名付けられました。
19世紀後半までは、後述するイングリッシュ・コッカー・スパニエルと同じ犬種とされていましたが、サイズが大きいタイプをスプリンガー・スパニエル、小さいタイプをコッカー・スパニエルと区別し、別犬種として扱われるようになりました。
明るく活発で、賢くトレーニングしやすい犬種ですが、運動量が多く必要で、ストレスが溜まると攻撃的になる個体もいるので、その点には注意が必要です。
優秀な猟犬「イングリッシュ・コッカー・スパニエル」
イングリッシュ・コッカー・スパニエルは、先述したイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル(以下、スプリンガー)から分かれた犬種で、スプリンガーより小型な体型ですが、狩猟犬の性質が強い犬種です。原産国のイギリスでは非常に人気があり、日本では「インギー」という愛称で呼ばれることがあります。
「コッカー」とはヤマシギという鳥を意味し、ヤマシギ猟に使われるスパニエルという意味でこの名が付けられました。
明るく従順な性格で、しつけがしやすい反面、運動量が多く必要です。
とにかく陽気な「アメリカン・コッカー・スパニエル」
アメリカン・コッカー・スパニエルはディズニー映画の『わんわん物語』の主役として知られ、世界的に愛されているアメリカ原産の犬種です。
非常に人懐こく明るい性格で、アメリカン・ケネル・クラブのサイトでは、「The merry and frolicsome Cocker Spaniel」(陽気で陽気なコッカー・スパニエル)と紹介されるほど、とにかく陽気な犬として知られています。日本では「アメコカ」という愛称で呼ばれています。
先述したイングリッシュ・コッカー・スパニエルから愛玩犬向きの犬が選ばれ、アメリカン・コッカー・スパニエルの基になりました。
美しい毛並みを維持するため、こまめなブラッシングや定期的なトリミングをし、垂れた耳のケアも必要になるため、手入れには手間を要する犬種です。
意外にもスパニエル種の「パピヨン」
意外なことに、パピヨンにもスパニエルの血が入っています。パピヨンの祖先は小型だったため、「一寸法師のスパニエル(エパニエルナン)」と呼ばれ、16世紀にはフランス国内に入り、王侯貴族たちに寵愛を受けていました。
当時は垂れ耳タイプのパピヨンが多く、現在のような耳が立ったタイプのパピヨンは、18世紀末頃から選択的なブリーディングにより増えていきました。
パピヨンとはフランス語で「蝶」を意味し、耳が蝶の羽のように見えることに由来しています。英語では「バタフライ・スパニエル(butterfly spaniel)」とも呼ばれることがあります。
垂れ耳タイプのパピヨンは、フランス語で「蛾」を意味する「ファレーヌ(phalene)」と呼ばれます。蛾と名付けられてしまいましたが、パピヨンは立ち耳タイプが主流なため、ファレーヌタイプは稀少だとも言えます。
まとめ
現役の逞しい猟犬から、それとはかけ離れた可愛らしい愛玩犬まで、様々なスパニエルたちを5種ご紹介しました。鳥猟犬の中にはレトリーバーやポインター、セターなど役割によって種類がありますが、スパニエルほど多様なタイプがある犬種はいません。
スパニエル種はまだまだたくさんの犬種が存在しますので、興味を持った方はご自身でも調べてみてくださいね。