近年、犬の散歩中のトイレ問題についての議論が激化しています。
ここでの議論は「うんち」ではなく、「おしっこ」がメインです。
「うんち」を外でさせて、そのまま後片付けせずに放置しても良いという意見は「外トイレ賛成派」の範囲外です。「うんち」をさせて、それを後片付けすることは必要最低限のマナーであり、それを怠ることは絶対的な悪と考えています。
「他人の家の前でトイレをさせるなんてマナーが悪い!」と言う人がいれば、「犬なんだから外でトイレをするのは自然なこと」だと主張する人もいます。
主張の度合いも人それぞれで、「ちゃんとウンチを持ち帰って、おしっこは水で流してくれれば外でしても良い」、「他人の玄関前でさせないなど、場所を選んでくれれば外でしても良い」という意見から、「どこであっても外でのトイレはマナー違反。法律で禁止すべき」という意見までさまざまです。
この記事の中ではどちらが正しいという結ことは言えませんが、両者の意見を理解し合うことで、お互い気持ちよく過ごせる世の中を作る一助になれば幸いです。
この記事の目次
外トイレ反対派の意見
匂いが気になる
犬の外トイレ反対派から最も多く聞かれる理由が、匂い問題です。
自分の家の玄関前でトイレをされ、おしっこやウンチが残っていると匂いが蔓延して迷惑、という声がネット上でも複数見受けられます。
おしっこの跡が気になる
犬が電柱やアスファルトにおしっこをしたとき、その部分の色が変わって跡が残るのを不快に思う人もいます。
外トイレ賛成派の人の中には「おしっこをしたら水を流せばマナー的に問題ないのでは」と思う人もいるでしょうが、おしっこの跡を気にする人はおしっこを水で流しても跡が消えるどころかむしろ広がって見えるので意味がない、と感じています。
植物への悪影響、電柱の腐敗
犬のおしっこは酸性で、かつ塩分が含まれているため、植物を枯らしたり電柱を腐敗させたりする可能性があります。
もちろん一度のおしっこでそのようなことが起きるわけではありませんが、長期にわたって同じところにおしっこがかかり続けると悪影響になることがあるようです。電柱などが腐って倒れる危険性もあり、またそのようになった場合は、税金を使って建て直す必要が出てきます。
外トイレ賛成派の意見
急にするなと言われても・・・
「家でトイレを済ませてから散歩をするようにしましょう」と促している自治体もありますが、今まで外でトイレをしてきた犬にとって、急に「外でしちゃダメ」というのはなかなか難しい注文です。
外トイレ反対派のみなさんは「トイレトレーニングをすれば済むこと」と思うかもしれませんが、犬にトイレの場所を再学習させることは決して容易なことではありません。
「家でトイレを済ませるまで散歩に連れて行かない」と急に外トイレを禁じられた犬は、我慢のしすぎで膀胱炎になってしまう危険性もあります。
マーキングはやめさせるのが難しい
犬によっては普通の排尿の他に、自分の縄張りを示したり、異性に自分の匂いを残すために「マーキング」と呼ばれる行為をする場合があります。
マーキングは普通の排尿に比べて少量ですが、一箇所ではなく、あちらこちらにするのが一般的です。主に発情に起因する行動とも言われ、去勢手術・避妊手術をした犬はマーキングをしない場合も多いようです。
反対派の人は「それなら手術をしたらいい」と思うかもしれませんが、それで絶対にしなくなるわけでもありません。実際、Cheriee編集部員が飼っている犬は、去勢手術をした後も、マーキングの回数は減っていません。
これからのペット社会はどうなる?
ここまで犬の外トイレに関して、賛成派と反対派の意見をご紹介しましたが、両者の意見を受けて、みなさんはどのようなことを感じましたか?
もし、今まで「外でトイレをしてはいけないなんて、ただの意地悪だ!」と思っていた賛成派の人がいたら、外トイレを嫌がるのにはちゃんとした理由があることを理解していただけたでしょうか。
逆に、今まで「外トイレはただの嫌がらせだ!しつけをしない飼い主の怠慢だ!」と思っていた反対派の人には、犬も生き物ですから、そう簡単にコントロールできるものでもないことを理解していただけたでしょうか。
では、今まで犬に外トイレをさせてきた飼い主は、これからどうしたら良いのでしょうか?
ここでは「これが正しい!」という答えを出すことはできませんが、賛成派と反対派が互いに譲歩した際に現実的となる飼い主の行動の可能性を考えてみます。これが絶対的に、理想的な行動だと主張しているわけではないことにご留意ください。
トラブルになりやすい散歩場所を避ける
他人の玄関先や子供が遊ぶ公園は犬のトイレがとくに嫌がられやすいので、トラブルを避けるためにも、それらの場所をなるべく避けて散歩してみてはいかがでしょうか。
住宅街に住んでいて避けるのが難しいという場合は、「犬におしっこをさせないでください」と張り紙してあるお家や電柱の前はなるべく通らないようにするとよいかもしれません。
後始末を徹底する
おしっこは「マナー水」と呼ばれる匂いを消す水を用いるか、トイレシーツで吸い取るとよいでしょう。
草むらでしたらマナー水で流す、電柱やアスファルトの目立つところにしたらトイレシーツで吸い取る、というように使い分けるのも効果的かもしれません。
トイレトレーニングを実行してみる
室内でトイレをできるのは、実は飼い主にとってもメリットがあります。
例えば、雨の日や雪の日に無理して散歩に行く必要がなくなります。さらに、犬が歳をとって足が悪くなったとき、トイレの度に外に抱っこやキャリーで連れて行く、という手間を減らせます。この機会に、トイレトレーニングを始めてみましょう。
その際、「家でトイレをするまで散歩に連れて行かない」など、理不尽なトレーニングをすると犬が膀胱炎になったりストレスをためてしまう可能性があるので、犬のことを考えると、やはり少しずつトレーニングをすることの重要性を感じます。
子犬のうちからトレーニングを
子犬の方が学習効果も高く、トレーニングはしやすいです。そのため、新しく犬を迎える方は、家の中でトイレを済ませ、外ではしないように、必ずトイレトレーニングを行いましょう。
自分でトレーニングするのが難しければ、プロのドッグトレーナーに任せるか、パピーナーサリー(犬の幼稚園、保育園)に入園させることが最も早いでしょう。こうすることで、今後数十年という時間は必要になるかもしれませんが、将来的に犬のトイレトラブルを減らしていくことが可能です。
人間と犬の共生社会
全ての人が完全に納得できる社会というのは現実的ではありません。
ある公共哲学者は、自己を絶対化し相手を折伏する原理主義的思想では、善き公正な社会は作れないと言いました。コミュニティの中で他者と共生するには、「自分の意見は絶対的に正しく、他の意見など関係ない」という考え方ではなく、自分と相反する意見にも耳を傾け、物事を客観的に捉え直し、互いに譲歩し合うことが重要ではないでしょうか。
また、ペットの幸せを考えるメディアとしては、ぜひ犬も共生社会の一員として捉えていただきたいと思います。それは何も、犬のために外トイレを許してほしい、と言いたいわけではありません。犬も人間と一緒に共生しているのですから、人間の賛成派・反対派の議論に加えて、「こうしたら犬はどうなるか、どう感じるか」も考えてみてほしいのです。
犬の外トイレに賛成する人も、反対する人も、お互いの意見と犬のことを考慮した上で、譲歩し合える社会になってほしいと願っています。